↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不気味の実験  作者: 瀬戸内 泉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/9

自己認識

物心ついた時から、自分の顔が大嫌いでした。


初まりは10歳のころ、2歳年上の姉からの一言でした。


「あなたの顔って、なんか変。まるでカメレオンみたい。」


不細工とか、変な顔、という形を形容されたのではなく、

人間以外に例えられたことが殊の外ショックでした。


そしてその時の姉の見下すような、

それも大層不満なものを見るような、細かい棘で射貫くような目線が怖くて怖くて。

とにかく10歳の私にとって、それはとても辛い出来事でした。


その後、自分の顔を何度も鏡で見ては確認しました。

確かに言われてみると、少し丸くて目がギョロっとしているような気がします。

頬っぺもまん丸で、長い舌を丸めて隠しているみたいに思えてきました。

それまではまったく気にしたことなどなかったのに、

その日から私は自分の顔と、それを見る人の顔が怖くなりました。



それから学校に行っても塾に行っても、休日に近所のスーパーに行っても、

人の目が気になるようになりました。

いつも皆が私のことをちらちら見ているような気がするのです。


それは、ただ普通に道を歩いていても同じでした。

知らない人が私のことをじろじろと見てきます。


友達からは、『隣に並ぶと顔の大きさが違うから恥ずかしくて嫌だ』

そんな風に言われ、横並びで写真を撮ってくれなくなりました。


学校で私の縦笛がなくなったり、ハンカチが盗まれました。

いったいどんな呪いに使われているのかと思うと、

眠る前などは頭は張り裂けそうに苦しくなりました。


ある時は夜空の月でさえも私をわかってるように思えました。

あのクレーターが目のように見えるのです。

カメレオンみたいなこの顔を笑っているのです!


学生の頃、Aという男子から告白されました。

しかし彼は『初めて見たときに一目ぼれした』などと言うではないですか。

きっと仲間内で私の顔を褒めるような嘘を言うという意地悪をしているのです。

なんて陰険な性格なのでしょう。

こんな嘘つき、信じることなんかできません!


――そうして私はカメレオンのまま大人になりました。


大学時代の友人の企画で、知り合い同士が集まって飲む会があり参加しました。

そこで知り合ったのがBという男です。


このBという男は、私をいやらしい目でしきりに眺めてきて何度も何度も食事に誘ってきました。

メールで誘ってくるのですが、何度も断っているとその文面がだんだん荒々しくなっていき、とうとう最後には、『ふざけるな不細工』と書かれたメールが送られてきました。

私は何か酷いことをしたのでしょうか?

この顔が醜いから、断る権利すらないとでもいうのでしょうか。


会社の上司にも、しつこく飲みに誘われて困っています。

きっと顔が変なのを肴に、揶揄いたいのでしょう。

同期からは『あなたは顔がそんなだから実績評価で大目に見てもらってて良いね』と嫌味を言われました。不細工だと高評価がもらえるとでもいうのでしょうか?そんな会社があるわけありません。

もしそうだとしても、私のカメレオンのような顔を憐れんでの行動なのですから、悲しいだけです。


今日の帰り道でも、道を歩いているだけでじろじろ見られています。

男の人が私を見た後にひそひそと、にやにやと話している姿が怖くて仕方ありません。


とにかくこんな怖い毎日からは抜け出したいんです。

誰でもいいから私を助けてください!




***




「先生、先ほどの患者さんは身体醜形障害なのでしょうか」


「いや、それもあるだろうが、複合的な原因があるように思うよ。

 ……あんなに美しい顔立ちをしているのに」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。