二択
二択を迫られている。
考えてみれば人生とはそういうものではないか。
常に二択のうち一方を選び続ける連鎖の連なりなのだ。
そして今私は二択を迫られている。
ある惑星で犯罪者を捕らえたため宇宙連邦本部まで護送していた。
その最中、磁気嵐に巻き込まれ惑星Xに不時着したのだ。
今隣にいるのは護送していた犯罪者と、宇宙船のポッドに搭載していた人型ドロイドだけ。
「なぁ、あんた取り締まっている最中に不時着なんてしたら
懲戒処分なんじゃないか?俺と同じく犯罪者だなぁ。」
「そんなことはない、これは不可避だった。」
星間を取り締まる任務についてからは常にドロイドとの二人旅だったため、
犯罪者とはいえ生身の生物と話したのは何年ぶりだろうか。
若干緊張してしまう自分に戸惑っている。
私は今、二択を迫られている。
乗ってきた宇宙船と牽引していた護送船のうち、
不時着の衝撃で護送船が破損してしまったのだ。
外に降りて、破損部分を確認すしたが、かなり損傷が大きく、修復は難しいだろう。
つまり、宇宙船しかない状態だ。
宇宙船には操縦席と、ドロイド用のポッドがある。
定員2名(ドロイドも含む)だ。
ここに人員は3名(ドロイドも含む)だ。
そして定員2名の船が一つ。
さて、ポッド部分にはドロイドを乗せるべきか、それともこの犯罪者を乗せるべきか…。
仮説で考えてみよう。
仮説1。
ポッドにドロイドを乗せた場合。
私は問題なくこの星を出て宇宙連邦本部へ戻れるだろう。
しかしこの星には犯罪者が取り残されてしまう。
手錠がかけられている状態でそこら辺の木か何かに固定したとして、
またここに戻ってくるには日数がかかってしまうため、生き倒れてしまうかもしれない。
しかしだからといって、手錠を外すのはまずい。
非常にまずい。
なぜならばこの星にはこの犯罪者の拠点があることが判明しているからだ。
手錠が外れたまま野放しにすれば必ず仲間の元へ行き、逃げてしまうだろう。
それは非常にまずい。
仮説2。
ポッドに犯罪者を乗せた場合。
私はやや不安定な飛行ながら、おそらくこの星は出ることができるだろう。
しかし、数年間ドロイドの運転に頼りきっていた運転操作の腕は…言うまでもない。
星を出られたとしても星間飛行を繰り返し、宇宙連邦本部までたどり着くのは至難の業だろう。
生きて帰ることが先決だから、この手はなるべく避けたいが、不可能ではない。
可能性は五分五分といったところか。
そして別問題として、ドロイドをこの星に置き去りにするのもまずい。
ドロイドには色々な記録が残されている。
まずはロックを解除して、記録データをサーバ上に連携しアップロードしたうえで全消去するべきだろう。
迷った末、私は大きな声でドロイドのロックを解除することに決めた。
「OK、ドロイド。ロック解除:▶M◆◆S〇EL¥|!」
<<< ロックを解除しました>>>
ロック解除の通知音がしたその時だった―――
「この星を出て惑星Yまで飛行しろ!!」
私よりも大きな声で叫んだのは、
いつの間にか宇宙船の操縦席に座っていた犯罪者だ。
<<< 了解しました >>>
ウィーンと耳を裂くような音を立て
ドロイドと犯罪者はあっという間にこの星を飛び立っていった。
私を置き去りにして。
私は知らなかったのだ。
自分が選べるのは二択でも、他の誰かにはもっと選択肢があるということを。
了




