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チャプター01 序章:It’s SHOW TIME!!!

初めまして。雨屋悟郎と申します。


作品については気兼ねなく感想等いただけると励みになります。

また楽しい!と思っていただけたら、作品だけでなく、お気に入りユーザーに登録いただけると別作品の際にまたお知らせできるかと思います。ぜひご検討ください。

挿絵(By みてみん)



「さあさあさあ! 紳士淑女(しんししゅくじょ)の諸君、老若男女(ろうにゃくなんにょ)皆々様(みなみなさま)! 今から始まるのは世にも無様な見せ物だ! 相手は脅威度(きょういど)Aのネームドモンスター『死針』!! 対して戦うのはボク! ランクG、しかもレベル1の最底辺も最底辺、【道化師(クラウン)】の道家凪(どうけなぎ)! ボクよりステータスが低い潜行士(ダイバー)はいないはず! 勝負にならないって!? それは見てからのお楽しみ! 不可能だから面白い! 命を()すから燃える! 熱い展開を待っててね! さあッ| 殺戮遊戯(デスゲーム)の始まりだッ!」


 すらすらと口上が突いて出た後で、優雅に一礼する。

 同時にボクの顔にホログラフが現れた。それはピエロのフェイスペイントを模した涙滴型の模様。ただひたすらに目立つだけの代物だ。


 そう、これから始まるのは公演(ショー)だ。ボクはその主役。


 ここはゲームの世界じゃない。正真正銘現実の世界だ。

 なのに、唐突に顔にホログラムが出現するなんて、本当に塵界(じんかい)では何でもありだ。

 レベルがあり、スキルがあり、モンスターがいる。何も知らずに転移すればそりゃあ誰だって仮想現実(VR)だって勘違いするさ! 

 それが本当は人類滅亡寸前の300年後の日本だって言うんだから、もう開いた口が塞がらない。

 異世界ですらないなんて!


 目の前には、ネームドモンスターである『死針』が、その無機質なカメラアイをボクに向ける。

 機械の癖に、放たれる強烈な殺意に目眩すら覚える。

 陸上競技の槍投げで使うような金属製の槍を背中にびっしりと生やした、小山のようなサイズのヤマアラシと言えば、想像がつくだろうか。この深い森の中に屹立する巨木すら薙ぎ倒すほどのクソ馬力だ。

 身じろぎしただけで人間なんてあっさりと串刺しにされる。

 レベル100以上を示すランクAの潜行士(ダイバー)ですら、あっさり返り討ちにしてきた化け物を、最底辺のレベル1で挑むなんて、自分自身で考えても正気の沙汰じゃない。


 ボクの全身はすでに土と血に塗れてズタボロだ。疲労は限界を突破して視界は霞んでいるし、膝はとっくの昔に笑っている。

 それでもボクは胸を張る。背筋を伸ばす。所作の一つ一つも気を抜けない。


 魅せなければいけないからだ。


 心を鷲掴み、視線を外させない。


 ──ボクの口元には、満面の笑顔が浮かんでいた。


 ラジオの波長が合うかのように遠くで、ざわめきが聞こえた気がした。


『お、おい! あの娘めっちゃすごくないか!?』

『さっきから何なんだあの動きは!? 戦っているのは茂原外環(もばらがいかん)周辺で脅威度Aのネームドなんだよな!?』

『口上ちょっとしびれちゃったんだけど……!』

『しかも可愛くないか? めっちゃ好みなんだけど!』

『まじかよ。この状況で笑ってるぜ?』

『まずい! こんな可憐な美少女が殺されたら世界の損失だぞ!』

『はやくやれ』

『どうせすぐ死ぬだろ』

『ステータス全開示? こいつバカじゃね?』

『レベル1でこの動き、チートなのか?』『レベル1で死針に勝とうとしている時点で、バカだわ』『でも動きは半端ないぞ!?』


 潮騒のように空耳がどこからともなく聞こえてくる。

 ボクの周りに悠長に話ができる者など誰もいない。

 それどころか動けるのはボクだけだ。すでに事切れているか、迫り来る死の恐怖に震えているかのどちらか。

 この場にいる人たちの声ではない。そもそも鼓膜すら震わせてないような感じ。

 近い表現があるとすれば、動画の配信に付くコメントだ。

 接続された向こうからボクを眺めて、無責任に発言をしている。

 まあ別にいいだろう。これはエンターテイメントなんだから。楽しんでもらってなんぼだ。


 ──本当は男なんだけど!


 コメントの内容に苦笑する。

 塵界(じんかい)に来て、なんか脈絡なく女の子になってしまった。

 その上、戦闘系アイドルとして絶賛売り出し中だ。

 少し前まで全く想像できなかったことが起きている。


「ま、どっちでもいいか!」


 すぐに気持ちが切り替わる。

 男だろうが、女だろうがやることは変わらない。尊敬する人の言葉だ。

 戦って、魅せて、勝って、生き残る。

 観客さん達(オーディエンス)を楽しませられなければ、待っているのは死だけだ。


 ────やってやろうじゃないか…………!


 ボクは血だらけの少年を抱えて震える少女に、僅かに視線を向けた。

 ボクが逃げれば、彼女たちが死ぬことになる。どんなに分の悪い戦いでも逃げ出すことはできない。

 絶体絶命の危機。万に一つも勝ち目のない敵。そんな状況がボクの口角を更に押し上げる。

 つまりはこれは、ボクと死針が演じるどちらかが死ぬまで続く喜劇なのだ。

 常に見られていることを意識しろ。観客さん達(オーディエンス)は面白可笑しい殺戮遊戯(デスゲーム)を御所望だ。


「──IT‘s SHOWTIME!!!!」


 どうして、こんなことになったんだっけ?

 開戦の合図の瞬間、ボクは意識の隅で僅かな疑問が生まれるのを感じた。

 ついこの前までただの男子高校生だったボクが300年後の未来で女の子になって、絶対絶命の状況でモンスターと戦っている。

 塵界(じんかい)は決して仮想現実(VR)ではなく、まぎれもない現実だ。

 あのうだるような暑さのアパートの一室からは、到底想像もできない状況。


 鮮やかに記憶が、蘇る。

 それは塵界への転移と、師匠となる咲良(さくら)さんとの唐突な出会いから始まったのだ。

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