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洋上の決戦

登場人物

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている

ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在

ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている

ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー

ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児

羽柴藤吉郎秀吉…ルキア達の戦場での活躍を見て織田軍にスカウトした人物、後の豊臣秀吉

竹中半兵衛重治…秀吉の熱心な勧誘により配下に加わった天才軍師

明智十兵衛光秀…元は足利義昭に仕えていた、鉄砲の名手であり博学の切れ者

木津川口での織田水軍と毛利水軍の戦いは毛利水軍の圧勝で終わる


毛利軍、特に村上水軍の力をまざまざと見せつけられた九鬼嘉隆は


敗戦の報告の為に信長の前に跪いていた


「全滅!?ワシが与えた水軍を全滅させたというのか!?」


信長は思わず立ち上がるとその顔が見る見るうちに怒りへと変わる


そして頭を下げたまま上げる事のできない九鬼嘉隆に対し


唇を震わせ睨みつける様に見下ろし、言葉を発する事もなく


しばらく無言のまま九鬼嘉隆を見つめる信長、ピリピリとした


緊張感がその場に漂い誰もが息を飲んで行く末を見守った


しかしその後、信長は静かに座ると先ほどとは一転した


静かな口調で嘉隆に問いかけた


「で、今後どうやったら勝てる?」


問われた嘉隆は俯いたまま、絞り出す様に言葉を発する


「申し訳ございません、拙者にはわかりかねまする・・・」


信長の眉がピクリと動く、その時滝川一益が助け舟を


出すかの様に口を挟んだ


「我が軍は大型船を主体とした船団を形成し敵にあたるも


 敵の小型船団に翻弄されて遅れを取ったのであろう、ならば


 こちらも小型船団で敵に対すれば良いではないか!?」


滝川一益の提案に首を振る嘉隆


「我らは大型船での戦いに慣れております、編成内容を急に


 小型船に変えたとしても、そんな付け焼き刃の様な


 やり方で毛利水軍、特に百戦錬磨の村上水軍と互角に戦える


 とはとても思えません、もし小型船で戦うのであれば敵の五倍から


 十倍の数が必要と思われます、しかも揺れる船の上での戦い


 は慣れていない者にはまず無理です、水上用の特別な訓練を


 徹底的におこない、長い日にちをかけて育成しなければなりません


 頭数を揃えるだけで良いというモノでは無いのです


 ですからそのやり方では村上水軍に打ち勝つ事など到底無理


 だと言わざるを得ません」


そこに丹羽長秀が続け様に発言した


「ならば我が船団は極端な密集体形で敵に相対すれば良いではないか


 それならば敵の小型船の動きに翻弄される事もあるまい」


その提案にもゆっくりと首を振る嘉隆


「それでは敵の火矢に対してあまりに不利であります、一隻が


 炎上しただけで次々と味方の船に燃え移り、あっという間に


 壊滅的な損害を被ることとなるでしょう、昔の大陸であった


 “赤壁”の二の舞になる事は明白です」


嘉隆はそう言葉を発し、そして続けて語り始める


「通常の戦闘ならば火矢ごとき、いくらでも対応することが


 可能です、しかしあの焙烙玉という武器だけはいくら考えても


 対処法が見当たらぬのです、接近させなければいいのですが


 お恥ずかしながらその手段も皆目見当たりませぬ・・・」


嘉隆は悔しそうにそう言った、その場の全員が口をつぐむ中で


再び信長が口を挟んだ


「その焙烙玉とかいう武器を誰か知っておるか?」


皆が顔を見合わせ話始めるが誰も焙烙玉のことを


知っている者はいなかった


「半兵衛、貴様はどうじゃ?」


問われた竹中半兵衛はスッと立ち上がり静かに答える


「私も詳しい事は知りませぬ、黒き十寸程の大きさであり


 紐を付けて放り投げたり、直接手で投げたりして目標物に


 命中させると爆発、炎上する特殊な武器だと聞いたことが


 ありますが、その構造や原理までは把握しておりませぬ」


半兵衛の答えに無言で頷く信長、そしてボソリと呟く様に


口を開いた


「鉄で船を造ってはどうじゃ?」


その発言に皆がざわつく


「鉄で船をですか!?」


「しかし鉄は水に浮きませぬ、どうやって鉄で船を!?」


戸惑う家臣達に説明する様に信長が話し始める


「今よりも大きな船を作り、その周りを薄い鉄で覆えば良かろう


 そうすれば、その焙烙玉とやらにも対抗できよう」


奇想天外ともいえる信長の発想に皆が度肝を抜かれ言葉を失う


しかしそこに一人だけ異を唱えるものがいた


「恐れながらお館様の意見には反対でございます」


一瞬でその場の空気が凍りつき緊張感が走る、そして


その声の主に視線が集まった、たった一人信長に異議を唱えた者


それは明智光秀であった


「ほう、ワシの意見が間違っているというのか光秀


 ならば、なぜ反対なのか言うてみよ」


信長の視線が冷徹なモノへと変わる、口調は冷静だが、もし


光秀が少しでも的外れのことを言おうモノならばどれ程の


怒りがその身に降りかかるか計り知れない、こういう時の


信長が一番恐ろしい事を皆知っていたからである


それでも臆する事なく堂々と信長の目を見据え話し始める光秀


「では恐れながら、まず鉄で船を造ると一言でおっしゃりますが


 その作業は困難極まるからであります、鉄で船を造ると


 いうのは過去にも例がなく、大型船の外側に鉄で防御壁を


 貼り付ける為に鉄の板をどのくらいの厚さにするかを


 一から検証しなければなりません、薄くし過ぎれば


 焙烙玉の爆発に耐えられませんし、厚くすれば船自体が


 沈んでしまいます、船全体にそれを施すとなりますと


 鉄板の重量と強度の均衡を考慮しなければならず


 その計算は凄まじく複雑なものとなるでしょう、鉄の板も


 特注で製作しなければなりませんしその制作にかかる


 費用と年月を考えますれば、とても有効的な策とは思えませぬ」


光秀の言葉に眉を潜める信長、いわば自分の意見を真っ向から


否定されたのである、しかし光秀の言うことにも筋は通っている


無言のまま光秀を見つめる信長、家臣の者達が思わず息を飲む


すると信長が不意に視線を違う方に向けた


「サル、貴様はどう思う、奇譚のない意見を言うてみよ」


突然振られた秀吉は戸惑いを隠せない、何かを言いたそうではあるが


どこか言葉を選んでいるようであった


「ワシに遠慮は要らぬ、正直に言うてみよ‼︎」


煮え切らない秀吉を一喝するように意見を促す信長、すると意を


決したかのように口を開く秀吉


「では恐れながら申し上げます、拙者も光秀殿と同じで


 お館様の策には反対でございまする」


秀吉の言葉に更に場が凍りつく、すると信長は今度は


ニヤリと笑った


「ほう、貴様もワシの意見に反対と申すか、ならば理由を言うてみよ」


そう淡々と語る信長、口元は笑っていたが決して目は笑っていない


その事の意味をわからない秀吉ではなかった、ゴクリと息を飲み


語り始めた


「恐れながら申し上げます、鉄で船を造る時間と費用があれば


 先ほど嘉隆殿の言った敵の十倍で小型船団を形成しそれらを


 訓練する事も可能だと思ったからであります、それに鉄は


 錆びまする、もしその船で敵を蹴散らせたとしても一年後には


 もう使い物にならないでしょう、それはあまりに勿体無い


 そして何よりその金を使えば、敵の水路を封鎖し兵糧で攻めるという


 まだるっこしいやり方よりも圧倒的な大軍で攻め、城ごと


 落とした方が手っ取り早いと思えるからでございます


 何より最大の難点は時間が掛かるということです・・・」


秀吉は後ろを振り向き半兵衛に問いかけた


「半兵衛、お主から見て、鉄で船を造った場合、どれ程の


 年月がかかると見る!?」


問われた半兵衛は口に手を当てしばらく考えていたが、ニコリと


笑い口を開いた


「あくまで推測ですが二年から三年弱、だと思われますね」


その言葉に大きく頷く秀吉


「その様な長い時間、あの一向門徒共を放って置いては


 お館様の悲願、天下布武がどんどん遅れてしまいまする


 日の本の民は一刻も早くお館様が天下を治める事を


 待っているのです‼︎」


そんな秀吉の言葉にフッと笑う信長


「貴様は本当に口だけは達者じゃのう、だがどうする?


 鉄の船を造らないのであればどうやってあの腐れ坊主共を


 叩きのめすつもりじゃ?」


有効的な具体策までは考えていなかった秀吉、少し困った表情を


浮かべていると、それを助けるかの様に後ろから声が聞こえた


「ちょっとよろしいですか信長公」


その声はルキアのものであった、一同の視線がルキアに集まり


信長が思わず問いかけた


「どうしたルキア、何か言いたいことでもあるのか?」


「はい、今話を聞いていましたが少し気になる点がありまして」


「ほう、気になる点じゃと?何じゃ言うてみよ」


ルキアは軽く頷きスッと立ち上がる


「先ほどの話に出ていた焙烙玉という武器なのですが


 我々の知っている兵器“破城撃弾”に酷似していまして


 もしかすると又我々の世界から持ち込まれた物ではないかと


 思ったのです」


ルキアの言葉に再び城内がざわつき始める


「ほう、またもや異形の力による介入か・・・」


「はい、もしそうであれば我々が対処いたします、どうにか


 確認できると良いのですが・・・」


信長は再び視線を嘉隆に向け問いかけた


「嘉隆、残存している船はあるか?」


突然の質問に戸惑う嘉隆だったが少し考えて答える


「此度の戦闘に間に合わなかった船が一隻、そして故障で


 修理中の船が一隻、計2隻ならば可動が可能ですが・・・」


「よし、ならばその2隻で毛利水軍に仕掛けよ、ルキア達は


 その船に乗船し焙烙玉の見極めをいたせ、できるなルキア?」


「はい、信長公、我々には魔術のエキスパートが二人、


 武器の専門知識を持った者が一人おります、必ず


 見極めてみせますからお任せを」


大きく頷くルキアにニヤリと笑う信長、そんな中で


一人狼狽る嘉隆


「しかしお館様、たった2隻では毛利に、いや村上水軍の前では


 簡単に沈められます、お考え直しくだされ‼︎」


必死で訴える嘉隆を軽くあしらう信長


「心配無用じゃ、どのみち通常の船では村上水軍に勝てんのじゃろう?


 ならばここでまた、二隻沈もうが戦況に大差ない、それに


 お主は来たばかりでルキア達の力を知らんのだったな


 まあ大船に乗った気でいるがよい」


信長はそう言ってその場を立ち去った、ポカンと口を開けたまま


呆然とその場に立ちすくむ嘉隆であった



その数日後、木津川の河口では毛利軍による補給の為の輸送船が


何隻もの船団を形成しながら水上を進んでいた、その時である


船員の一人の叫び声が船内に響き渡った


「前方に正体不明の船が接近中、旗印から織田軍の船と思われます‼︎」


敵の接近を聞き、毛利軍全体にに緊張が走る、しかし村上水軍の


頭領、村上元吉は嬉しそうに口元を緩めた


「先日こっぴどくやられたってのに懲りない奴らだな、まだ


 戦力が残っていた事には驚きだが何度やっても同じことだ」


独り言の様にそう呟く元吉、そして部下に問いかけた


「で、敵は何隻いる?この前三十隻で負けたから今度は


 五十隻くらいで来たのか?」


「そ、それが・・・確認できている敵の艦影は二隻、それ以外は


 見当たらないとのことです」


その報告に顔をしかめる元吉


「はあ?そんな訳ねーだろ、この前三十隻でコテンパンに


 してやったんだぞ、たった二隻で来る訳ないだろよく探せ‼︎」


「しかし、何度確認しても二隻しかいないのです・・・」


戸惑う船員をよそに船首の先まで走って行き、身を乗り出して


確認する元吉、するとその船員の報告通り、たった二隻で


こちらに向かってくる織田軍の船が見えたのだ


「本当に二隻で来やがった、何考えているんんだ織田軍は


 やたら奇抜な戦術で大勢の敵を倒してきたとは聞いているけどよ


 こんな水上じゃ伏兵やら奇襲やらって搦め手は無理だぜ


 もしかすると本当に大うつけなのかもな、どういうつもりか


 知らないが、沈めてくださいっていうなら御要望にお応えして


 やろうじゃないの、野郎共、相手はたった二隻ださっさと


 終わらせて帰るぞ‼︎」


“おおーーー‼︎‘という歓声と共に一斉に速度を上げ近づいて来る


村上水軍、その光景を見て生きた心地がしない嘉隆


「来たぞ村上海賊だ、どうする?すぐに応戦するか!?」


嘉隆の問いかけにゆっくり首を振るルキア


「いえ、今日は相手の攻撃を見たいのです、だから


 何もしないでください」


その言葉に益々困惑する嘉隆


「何もするなとはどういう事だ、確かに我が軍はたった二隻だが


 それでも応戦しなければあっという間に沈没だぞ、とにかく


 反撃を・・・」


「無用だと言っているのです、まずは落ち着いてください


 敵が焙烙玉を使ってくる事を待ちましょう」


「何を悠長な、このまま何もせずただ傍観しているだけでは


 敵が焙烙玉を使用する前に囲まれて大量の火矢で攻められたら


 一巻の終わりだぞ!?」


一人狼狽えながら反撃を主張する嘉隆、しかしルキア達は


そんな嘉隆を尻目に兵然と敵船団を見ていた、そうしている


うちにどんどん近づいてくる村上水軍の船、元吉の命令が


水上に響き渡る


「いつもの手筈通り、矢の届かない距離を取りつつ敵側面に


 回り込め‼︎」


前回同様、まるで生き物の様に水上を滑る様に移動する


村上水軍の船達、しかし前回とは大きく違うところがあった


織田軍の二隻の船が全く反応しないのである、まるで


村上水軍の動きを無視するかの様に只々まっすぐに進むだけなのだ


その奇怪な動きに首を傾げる元吉


「何だ、何のつもりだ?無防備を装って油断を誘おうと


 でもいうのか?」


そんな元吉の所に再び報告が入る


「頭領、敵船の船上には弓兵や鉄砲兵がいないそうです‼︎」


その報告に益々困惑する元吉


「何だそりゃ、ワザワザやられに来たってのか!?」


胸の中で疑問が膨らむ元吉は目を細めジッと考えを巡らせた


『待てよ、考えてみれば敵は前回まともに戦って


 完敗しているんだ、それが今回は二隻で来るなんて


 どう考えてもおかしい、しかも無抵抗ともいえるこの


 動き、一体何を考えて・・・はっまさか!?』 


元吉はある事を思いつき全軍に指示を出した


「全員、敵船から距離をとれ、近づいてはならん‼︎」


元吉の指示で接近しかけた村上水軍の船が一斉に離れていく


何とも不可思議な指示に部下達も驚きを隠せなかった


「頭領、一体どうしたんですか?このまま一気に


 沈めてしまうんじゃなかったんですか!?」


元吉はまっすぐに敵船を見つめ静かに語り始めた


「おかしいと思わないのか?前回三十隻の船で完敗したんだ


 あれからそんなに時間も経っていないのに、また織田軍が


 たった二隻で来るなんて、しかもほぼ無防備な状態


 これは罠だ・・・」


「罠ですか?一体どんな罠だというのですか!?」


「恐らく敵の船にはほとんど人が乗っておらず船内には


 火薬が目一杯積み込まれているのであろう、そして


 我らが近づいたところで火薬に引火させ大爆発と共に


 我らを巻き込んで壊滅させようと目論んでいるはずだ」


それを聞いた元吉の部下達の顔から血の気がひいていく


「なんて事を・・・それじゃあ迂闊に近づけませんね


 どうしますか?」


その質問に少し考え込む元吉、そしてある決断をした


「よし通常の半分の乗員を乗せた船二隻で敵船に近づき


 いきなり焙烙玉を喰らわせてやれ、そうしたらさっさと


 離脱しろ、敵からの応戦は無いはずだから


 援護なしの半分の人数でもいけるだろう、もし敵が


 応戦してくる様なら、その時は戦わずすぐさま引き返せ


 そうなれば改めて立て直し、通常戦闘で仕留める‼︎」


「わかりやしたーーー‼︎」


村上水軍は元吉の指示の元、早速その作戦の準備を始めた


一方その頃、九鬼嘉隆は一斉に後退する敵船団の動きを見て


何が何だか全くわからず困惑するばかりであった


「なぜ敵は攻めてこないのだ?コッチはたった二隻、しかも


 ほぼ無防備なのだぞ、一体どうして!?」


そんな元吉に優しく答えるステイメン


「敵は警戒しているのですよ、前回三十隻もの大軍で完敗した


 織田軍がたったの二隻で来ているのです、しかもほぼ無防備な


 状態で、頭の回る人間ほど疑心暗鬼に囚われ“何か裏があるはず”


 と勘ぐり邪推するものです、ですから我らはその考えを


 逆手にとれば目的通り必ず焙烙玉を使ってくれるはずです」


なにもかも計画通りといった様子のルキア達に対して完全に


思考の範囲を超えてしまった嘉隆、もはや何も言うまいと


黙ってルキア達の指示に従うこととした、するとしばらくして


村上水軍の中から船が一隻づつ近づいてくるのが見えた


特に回避行動を取るわけでもなく、まるで仲間の船に近づいてくる


連絡艇の様な動きでまっすぐ接近して来るその船は織田軍の


船に近接すると船上の兵が黒い球体を織田軍の船に投げつけた


放たれた焙烙玉は織田軍の船に命中し爆発、炎上し始めた


それを見届ける間もなく即座に離脱して行く村上水軍の二隻の船


その動きを見て思わず感心するライオス


「いい動きだ、ありゃあかなり訓練されているな


  前回織田軍が負けたのも納得できるぜ」


そんなライオスにすかさず突っ込む嘉隆


「感心している場合ではないですぞ、このままでは二隻とも


 炎上し沈没するのを待つばかり、ああどうしたものか・・・」


頭を抱えながらオロオロするばかりだった、そんな嘉隆を


まるで気にもしないルキア達は燃え始めている船の上で


も動じることなく検証を始めていた、まずはルキアが口を開く


「みんなはあの焙烙玉という物についてどう思った?


 正直俺にはよくわからなかったんだが」


続けてステイメンが語り始めた


「そうですね、あの焙烙玉という兵器から魔力は感じましたが


 何らかの術式が発動した様には見えませんでした」


そしてフリニオーラが続く


「確かに、あの兵器が魔法に類する物であれば恐らくは


 爆裂系の術式が発動しているはず、しかし炎の精霊が


 働いた気配は全くありませんでした、他の聖霊や闇の波動が


 干渉した気配はありませんし、魔法ではない様です」


その時ゼファーが静かに口を開く


「アレは魔法使いや魔道士といった者達が作った物とは違う


 全く別の概念で作られた物だ・・・」


皆の注目がゼファーに集まり、すかさずゾフィが問いかけた


「じゃあアレは誰が作ったどんな物なのよ?」


ゼファーは視線を移すことなく村上水軍の本隊を見つめながら


落ち着いた口調で答えた


「誰が作ったのかまではわからないが、アレを作ったのは


 恐らく錬金術師だ」


「錬金術師!?あの何でもない石ころを金に変えることが


 できるとかいう連中の事?本当にいるのそんな人達!?」


ゾフィの問い掛けにフッと笑いながら答えるゼファー


「普通の人が想像する錬金術師というのはそういう怪しげな


 実験をする変わった人種というオカルティックな


 イメージが強い、それが一般的な印象だろうね


 まあ完全に間違っている訳ではないけど、基本的に


 錬金術というのは科学的に様々な薬品を精製したり


 人体の秘密や謎を解明したりという、どちらかというと


 科学者に近い者たちなんだよ、だからああいった火薬とか


 爆薬とかいった薬品の専門家でもある、最大の特徴は


 この焙烙玉の様に使用する際に全く魔力を必要としないという点だ


 魔法使いや魔道士といった人達が作るものは根本的に


 自分達が使う事が前提で使用の際に魔力を必要とする物が


 ほとんどだ、だからああいった普通の人間が簡単に使用する事は


 不可能に近い、しかし錬金術によって作り出された物は


 誰でも簡単に使用可能で威力はご覧の通りというわけさ」


皆がゼファーの話を感心しながら聞いていたが、ライオスが


不意に質問した


「だけどこの世界の物では無いって事だよな、レスティアレ・ラドス


 から持ち込まれた兵器、それで間違い無いんだろ?」


その質問にコクリと頷くゼファー


「まあね、爆薬の精製に魔力が使われていることも事実だし


 まあ俺達の出番だといえる案件だ、この一件に錬金術師が


 絡んでいるとなると、もっと威力や殺傷能力のある兵器を


 隠し持っている可能性もあるしね・・・」


「だったらどうする?ここは海の上だ、敵に走って近づいて


 その兵器をぶっ壊すって訳にもいかないだろ」


「そうですね、私が防御結界を張り敵の兵器を無力化する事は


 できますが・・・」


「いっそ私が攻撃魔法で敵を全滅させましょうか!?


 あの位の数でしたら楽勝ですよ‼︎」


「いや、いくら相手が超兵器を持っているからといって


 使っているのは普通の人間だ、できればそこまではしたくないな」


皆がそれぞれの意見を口にしている時、発言のタイミングを


計っていたかの様に、満を辞してゾフィが口を開いた


「どうやらここは私の出番の様ね」


「何かいい案があるのかゾフィ?」


自信満々のゾフィに思わず問いかけるルキア


「まあ任せて頂戴、もうこの船も沈みそうだしいいタイミングね」


ルキア達の乗っている船は燃え盛る炎によって船体の半分は


既に炎上し、その影響で船体がもう傾きかけていたのだ


「どうするつもりだ、このままでは何もしないまま


 沈没してしまうではないか!?」


焦った表情で九鬼嘉隆がルキア達に問い詰める、そんな嘉隆を


嘲笑うかの様にゾフィがフリニオーラに声をかける


「ねえフリニオーラ、今ここで霧を発生させることはできる?」


「えっ!?はい、それぐらいなら容易いですが・・・」


「じゃあお願いね」


突然霧を発生させろと頼まれたフリニオーラは説明もないまま


魔法の準備にかかる、右手の杖を高々と上げ魔法を発動させた


「オコアー ミスト ディスパージョン‼︎」


するとルキア達の周りを急に深い霧が発生し始め


炎上している船ごとその姿を包み隠して行く


その突然発生した摩訶不思議な現象に元吉は思わず立ち上がって


驚き、その霧をマジマジと凝視した


「何だありゃ!?何でこの時期、この時刻に霧が出るんだ!?


 有り得ないぞ!?」


突然起こった奇怪な現象に戸惑う元吉とその部下達


そんな敵の困惑など知る由もないゾフィは周りを見渡すと


軽く頷き、両手を高々と掲げた


「汝が主 ライドン・ゾフィの呼びかけに応えよ


 来てアクア‼︎」


ゾフィの声とともに巨大な魔法陣が頭上に発生し、その中から


青き竜王がゆっくりと姿を表す、ルキア達の乗っている大型船よりも


一回りほど大きな体が静かに海上に着水しその翼を優雅に広げた


「やあゾフィ、今回はどの様な用件だい?」


竜王の名に相応しいそのどこまでも青く雄大な体と美しい翼


そして全身から漂う威厳に満ちた雰囲気、しかしそれに不釣り合い


ともとも思えるゾフィを見つめる優しげな眼差し


水を操るドラゴンに相応しく海の上に浮かぶその姿はまるで


一枚の絵画の様に美しかった、しかしその姿を初めて


目の当たりにした九鬼嘉隆は驚きのあまり尻餅をつき


口を大きく開けながら言葉を出すこともできなかった


そんな義隆を尻目に話し始めるゾフィ


「ねえアクア、今日は貴方に頼みがあるのよ」


「何だいゾフィ、君の頼みならどんなことでも叶えてみせよう」


その言葉にニコリと笑うゾフィ、そして懐から一枚の紙を取り出し


青き竜王に見せた、それは信長が提案した鉄甲船の完成予想図である


「貴方にはこれに変身して欲しいの、出来る?」


アクアはジッとその紙を見つめ軽く頷いた


「これは鉄で覆われた船か、これに変身することなど


 造作もないが、本当にこれで良いのか?何なら君に相応しい


 オリハルコンで覆われたもっとスタイリッシュな船に


 変身しても良いのだぞ?」


クスリと笑いながらゆっくりと首を振るゾフィ


「これでいいのよ、てゆうか信長公が考えた船なんだから


 これじゃないとダメなのよ」


目を閉じ再び軽く頷くアクア


「人間というのは何ともおかしな生き物だな・・・


 わかった、君の願いがそれであれば我はそれに従うまで


 フン‼︎」


すると青き竜王の体が見る見るうちに巨大な鉄甲船へと変貌していく


三秒も経たないうちに完全な鉄甲線へと変身したアクア


ゾフィ達はその鉄甲船に次々と乗り移っていく、しかし


完全に理解の範囲を超えてしまった嘉隆は目の前で起こっている事を


理解できず呆然と立ちすくんでいた


「嘉隆さん早くしないと焼け死ぬわよ、さっさとコッチに


 乗り移りなさいよ‼︎」


ゾフィに促され頭がパニックのままアクアの化けた鉄甲船に


乗り移った嘉隆、そしてその後一分もかからないうちに


乗っていた船は大きく傾き、そのまま海中へと沈んでいった




しばらくして霧が晴れ始めると村上水軍頭領の元吉は


信じられないものを目の当たりにする、さっきまで


炎上していた二隻の敵船の姿はどこにもなく、代わりに


見たこともない鉄甲船が現れたのである、あまりの出来事に


言葉を失う元吉


「何だ!?一体何が起こった、俺は夢でも見ているのか?


 それとも相手は妖術でも使えるっていうのか!?」


しかし一軍の指揮官としていつまでも呆けてはいられない


気を取り直し部下達に命令を下す


「全軍、敵大型船に総攻撃をかける、見たこともない大型船だが


 敵はたった一隻だ、我ら村上水軍の敵ではない、いつもの手筈通り


 仕留めるぞ、ただし相手は見たこともない新型船だ


 どんな装備があるのかもわからん、くれぐれも慎重にな‼︎」


“おおーー‼︎”と応える部下達、前回同様機敏な動きで水上を


駆け巡る村上水軍、まるで海洋生物の様に小型船を操りながら


敵に近づき包囲陣を形成していく


「今だ、火矢を放ちつつ近接して焙烙玉を浴びせろ‼︎」


号令と同時に四方から一気に接近してくる村上水軍、指示通り


一斉に火矢を放つが竜王にそんな物が効くはずもなく


その全てを弾き返す、続けて近接した船達は焙烙玉を次々と


放った、アクアの化けた鉄甲船に命中し爆発する焙烙玉


しかし壊れて炎上するどころか擦り傷一つ付かない鉄甲船


そんな様子を見てゾフィの頭に話しかけるアクア


『聞こえるかゾフィ、人間は面白いことを考えるのだな


 薬品の調合し魔力を干渉させることによって爆破炎上を


 目的とする兵器を作るとは、これは錬金術という科学


 で作った物だな』


「さすがアクア、何んでも知っているわね、でも大丈夫?


 痛くない?」


『心配は無用だ、この様な攻撃、毛ほどの痛みも感じぬ


 で、どうするゾフィ、君がやれというのであればあの様な


 虫ども十秒で海の藻屑に変えてやるが?』


「ありがとうアクア、でもそれはまだいいわ、ゼファーの読みだと


 あの連中はまだ別の兵器を隠し持っている可能性もあるって


 だからもしそれがあるのなら、確認の為にもう少し様子を


 見ていたいのよ、更に攻撃を受けることになるけど


 お願いできるアクア?」


『勿論だゾフィ、君の言うことは全て従う、それが我の意思と


 思ってくれていい、伺いなど立てる必要はない


 君はただ命令すれば良いのだ、さすれば・・・あっ!?』


その時アクアは気がついたが既に遅かった、ゾフィが


とてつもなく怒っている事に


「アクアーー‼︎貴方は何年同じことを言わせるのよ‼︎


 貴方と私は友達でしょ、命令とか有り得ないでしょ


 あーもうわかったわ、貴方は本当は私のこと馬鹿に


 しているんでしょ?どれだけ言っても私の言うこと無視して


 いいわ貴方がその気なら私にも考えがあるんだから


 もうアンタなんか・・・」


『ちょっと待ってくれ待ってくれゾフィ、私が悪かった


 謝るから機嫌を治してくれないか、君を馬鹿にするなんて


 あるわけないだろう、私は君のことを・・・』


「うるっさいわね、ゴチャゴチャと言い訳はもうたくさんよ


 貴方は黙って私の言うこと聞きなさいよ‼︎」


『いやそれは・・・友達としてどうなのだ?君は言っている事


 が激しく矛盾しているぞ、まずは落ち着いて話を・・・』


ヒステリー気味にまくし立てるゾフィに対し、必死に


なだめるアクア、メンバーには見慣れた光景だが、もはや


自分の頭の許容範囲を遥かに超えた嘉隆は、考えることを


放棄し”今後何にも驚かない”と心に決めたので


頭を真っ白にしてその痴話喧嘩の様な会話を只々黙って聞いていた


織田軍側でそんな会話がおこなわれているとは


つゆ知らず、どれだけ焙烙玉を浴びせようとビクともしない


敵の船を見て歯軋りしながら見つめている元吉


「何なんだあの船は・・・鉄で覆われているのか


 だったら・・・迫撃飛翔弾を用意せよ‼︎」


元吉の命令で大きな筒状の物体が運ばれてくる、数人の部下達が


それを肩に担ぎ更にその者達を数人で支えるという態勢をとった


「準備完了です‼」


「よし、放て‼︎」


元吉の号令が海上に響き渡る、一人の男が紐を引っ張ると


大きな筒状の兵器の先端から凄まじい轟音と激しい爆炎が


その筒状の兵器から巻き起こり、その先端から何かが放たれた


発射時の衝撃と反動でその兵器を抱えていた者と支えていた者達が


一斉に後ろにそっくり返り、数人がそのまま海に落下した


黒い煙を吐き出しながらその弾丸は凄まじい速度で弧を描き


鉄甲船に化けたアクアに直撃する、着弾と同時に激しい爆発音と


衝撃が襲い、それは乗っていた者達にもダイレクトに伝わった


船体が激しく揺れ、ルキア達がバランスを崩す程の衝撃が伝わる


幸い海に落ちた者は無く、嘉隆を含め何とか踏ん張ったメンバー達


心配したゾフィは慌ててアクアに問いかけた


「大丈夫アクア?ケガはない!?」


『ん、何のことだ?それよりゾフィ、私はこう思うのだ


 私たちはもっと話し合わなければいけないのでは


 ないかと・・・』


まるで何事もなかったかの様に話し続けるアクア


ホッと胸をなでおろすゾフィ、もう既に怒りはどこかに


吹き飛んでいたのだが、それとは知らずにアクアは


言い訳の様な話をずっと続けていた


一方元吉は、敵船に”迫撃飛翔弾”が当たったにもかかわらず


全くの無傷であることに戸惑いを隠せなかった


「どうなってやがる、全くの無傷じゃねーか!?


 畜生、あの腐れ商人どもめ〈この”迫撃飛翔弾”はどんな船だろうが


 城だろうが当たれば必ず即座に木っ端みじんになります〉


 とか言ってやがったくせに、これにいくらかかったと思ってやがる‼」


「どうしますか。頭領?」


心配そうに問いかける部下たちに対し唇をかみしめ


絞り出すように言葉を発した元吉


「撤退だ・・・」


「撤退ですか!?」


「たりめーだろ”迫撃飛翔弾”が効かない相手に


 どうやって戦えっていうんだ、海に落ちた者達を


 引き上げ次第、即時撤退だ、急げ‼」


「了解です‼」


即座に撤退の準備を始める村上水軍、そんな時


元吉の耳に信じられない報告が入る


「頭領、友軍が微速前進を始めました‼」


「なんだと、そんな馬鹿な、今の戦いを見ていなかったのか!?」


元吉は船首から身を乗り出してその報告を確認する


すると村上水軍以外の味方の船が敵船に対して前進を始めている


ことが視認できた、この毛利水軍というのは三勢力による


混成艦隊で構成されている、まずは村上水軍


そして毛利水軍と小早川水軍である、そして


村上水軍以外の毛利水軍と小早川水軍が敵船に向かって


前進を始めたのである、それを見て呆れ顔の元吉


「何考えているんだあの連中は・・・」


「頭領、我々はどうしますか?」


「撤退だ撤退、あんなの相手にしていられるか


 付き合ってられねえぜ」


友軍の動きと反するかのように撤退を始める村上水軍


そんな時、毛利水軍の船の上に見慣れない集団が乗っているのを


目にする元吉、全員が黒いローブを身に纏っており、右手には


怪しげな杖を持っている奇怪な集団が船の上に立っていたのである


「なんだありゃ、見たこともない奴らがいるな、お前ら


 あの連中のこと知っているか?」


思わず部下たちに問いかけた元吉だったが


部下たちは顔を見合わせ首をかしげるだけであった


「いえ、知りません、何でしょう?陰陽師でしょうか?」


その瞬間、黒いローブを身に纏った謎の集団は右手の杖を


一斉に上げる、するとその杖の先から炎の槍が発生し


敵船目掛けて発射されたのである


「なんだありゃあ!?」


驚きを隠せない元吉を尻目に唸りをあげて目標に向かって


飛んでいく炎の槍、しかし着弾寸前で発生した結界に


阻まれた、戸惑う元吉を気にする事もなく今度は


小早川水軍が前進してくる、その船上には白いローブを


纏った集団がおりその頭上には巨大な魔法人が発生していた


次の瞬間、水面がバシャバシャと音を立て水しぶきが舞う


何か大量の生物が水面で跳ねながら泳いでいたのだ


呆気に取られ言葉を失う元吉、そんな時、部下の一人が叫ぶ


「ありゃあ人魚じゃねーか!?」


元吉が改めて水面に視線を移すと、確かにそれは


人魚であった、長い髪、上半身は人間で下半身は魚


トビウオの様に海面を跳ねる様に泳ぐ姿は


言い伝えに聞く人魚そのものともいえた、しかしその顔は


想像していたものとは一線を画すモノであった、大きく開いた口


からは肉食獣の様な鋭い牙が何本も生えており、白目のない


真っ黒で大きな目に長い舌と、とてもグロテスクな姿を


しているのである


「うげっ、あんなのが人魚の正体かよ・・・噂じゃ


 美女と聞いていたから、人魚と一緒に酒でも飲んだら


 幸せな気分になれると思っていたけどよ・・・


 あんなのと酒を飲むのは死んでも御免だぜ」


冗談ぽいことを口にしながらも真剣に考え込む元吉


『何が起こっているんだ、一体こいつらは何だ!?


 わからねえ、さっぱりわからねえことばかりだ』


そんなことを思いながら戦場から撤退していく元吉であった


一方、ルキア達は敵からの攻撃を見て話し始めた


「ありゃあ攻撃魔法と召喚魔法による魔獣だろ!?」


「いよいよなりふり構っていられないって感じで来たね」


「先ほどの火炎魔法による攻撃は私がとっさに防御結界を


 張って防ぎましたが、これからどうします?」


「ここは私にお任せください、あんな奴ら私の


 魔法で鎧袖一触にしてやりますよ‼


 ようやく私の出番が・・・」


その時、皆の頭に静かで低い声が聞こえた


『先程結界を張った僧侶と小さき魔法使いよ、この戦いは


 我が預かりしモノ、手出しは一切無用だ』


それはアクアの声であった、それを聞いて微笑みながら


目を閉じるステイメン


「わかりました、竜王殿にお任せしましょう」


しかしそれに納得できないものがいたフリニオーラである


彼女は戦いたいのだ、特に毛利水軍は魔法使い集団である


先に相手に魔法を見せつけられ、自分の魔法を相手に


見せつけてやりたくてウズウズしているのである


「お言葉ですがドラゴンさん、私にも魔法使いとしての


 プライドというものがあります、せめてあの魔法使い集団


 だけは私に譲ってもらえませんでしょうか?」


『ダメだ、その要求は却下する、小さき魔法使いよ』


「なぜですか、魔獣は魔獣と魔法使いは魔法使いとで


 戦うなら理にかなっていると思いますが・・・それと


 その”小さき魔法使い”っての止めてくれませんか?」


『何と言われようとも断る、それが理にかなっているという


 低俗な問題ではないのだ、私はゾフィの信用を取り戻さねば


 ならぬ、私一人の力で敵を撃滅しその姿をゾフィに見てもらい


 機嫌を直してもらうという崇高な使命があるのだ、よって君の


 要望は却下だ、小さき魔法使いよ』


「だからその”小さき魔法使い”ってのを止めてくださいと


 これでも私はこっちの世界に来てから背が3ミリも


 伸びたのですよ‼はっ、まさかその”小さき”ってのは


 私の胸を見ての事ではないでしょうね!?それならば


 たとえ竜王といえど許しませんよ、ちょっと聞いてますか?


 もしもーし・・・」


そんなアクアにゾフィが話しかけた


「相手は結構な数だけど大丈夫アクア?」


『問題ない、ここは異世界とはいえ海の上だ


 この場所で私が負けることなど万に一つもない


 ここで私に勝てる者など存在しないという事を


 証明しよう、見ていてくれるねゾフィ」


もうすでに怒っていないゾフィはクスリと笑う


「わかったわ、じゃあサッサと片付けて帰りましょう」


『了解だ、2分・・・いや1分で終わらせる』


どこか嬉しそうなアクアがそう言うとなだらかだった海上が


急に激しく波打ちだす、突然の嵐が来襲したかのように


荒れに荒れる水面、毛利水軍の魔法使い達は船から落ちないように


することだけで必死であり、人魚でさえまともに泳ぐことが


できないほど荒れ狂う海、そしてアクアがボソリと呟くように


言葉を発した


『低俗なゴミ共が、さっさと海の藻屑となって消え去るがよい


 せめてゾフィの機嫌回復に使われたことを光栄に思うのだな』


すると海面の波に異変が起きる、それはまるで波一つ一つの個々に


意思があるかのように動き始め、突如肉食獣の様に魔法使いや


人魚たちに襲いかかったのだ、手足を食いちぎり、胴体を食い破りながら


次々と獲物を飲み込んでいく、先ほどまで青かった水面が


真っ赤に染まり絶叫と悲鳴があちらこちらで聞こえる


そしてそれら全てを飲み込むように荒れ狂う嵐、そしてアクアの


予告通り一分後には嵐はピタリと止み、なだらかで穏やかな


海が戻ってきた、しかしそこに敵の姿は無く海面にはその


痕跡すら残ってはいなかった、文字通り全てが海の藻屑と


消えたのである


「じゃあ帰りましょうか」


『そうだな・・・もう機嫌は直ったようだなゾフィ』


「機嫌って何よ、別に私は怒ってなかったわよ」


『いや君は怒っていたぞ、激怒していたといっていいい程に』


「怒ってないって言ってるじゃない、あんまりしつこいと


 最後には怒るわよアクア‼」


『怒るわよって、もうすでに怒っているじゃないか?


 君はもう少し感情をだな・・・』


こうして毛利水軍は壊滅し本願寺は大阪を明け渡すこととなる


長きにわたった石山本願寺との激闘の終わりを告げる様に


静かな海の波の音が心地よく聞こえてきた。

















 










 




 



 











 



 

これで木津川口の戦い編は終了です、いかがだったでしょうか?とんでもない内容に変更してしまいましたが、これも愛嬌と思って暖かく見守ってください、この物語もいよいよ終盤に入ってきました

ここからはややファンタジー感が強くなると思いますが生暖かい目で見てくれると嬉しいです、では。

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