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外伝 若き天才

アドリアン・ルキア…母と共に難民として流れ着いた少年、母の厳しい教えの元強く正しくあろうとする。

アドリアン・メルダ…ルキアの母、非常に厳しくルキアを育てている、子持ちとは思えない程若く美人

メッサーオルランド…聖剣ヴレイヴハートの持ち主”光の英雄”と呼ばれることとなる

レインヘル・ベルフォード…ベルドルア聖王国の若き”覇剣鬼”オルランドとはライバルであり友人

ベルドゲン・バルデル…ベルドゲン侯爵家の息子、ルキアを敵視している

バーナベンデ・ベルガー…国内一の剣士、バルデルの剣の教師でもある


          

大会が始まる直前、ルキアはキョロキョロと観客席を見回し


軽くため息をついた、先日この大会の事を母に告げ見に来て欲しいと


頼んでいたのだ、しかし母メルダの返事はそっけないモノだった


「私には仕事があります、そんな個人の都合で抜けて他の人に


 迷惑をかけるわけにはいきません、私が見ていなくとも


 しっかりとやりなさい、私以外の者と剣を合わせるのも


 良い勉強になるでしょう、しっかりと学んできなさい」


ある程度わかってはいたが、見に来てもらえないことに少し


寂しさを覚えるルキア、だが”ひょっとして見に来て


くれているのでは!?”と観客席を見渡したのだ


『あの母が自分の信念を曲げるわけないよな・・・』


自分自身に納得させるようにつぶやくルキア、そうこうしている内に


大会は華やかに始まった、学園長が全校生徒の前に立ち、満面の笑みで


大会の開始を告げる


「本日は天気にも恵まれ、このように盛大にこの大会が開催できたのも


 ひとえにこの大会を支えてくださった御父兄の方々のおかげであります


 この場を借りてお礼申し上げます、生徒の皆さん、日ごろの成果を


 存分に発揮し悔いのない戦いをしてください、では開始いたします!!」


学園長がそう言い終わると観客席からは物凄い歓声が起きた


ベルドゲン侯爵だけでなく、皆今か今かと待っていたのである


大会参加者は全部で216人、内訳は貴族&富豪組が48人、平民組が98人


難民組が70人といった内訳である、各所で一回戦が始まり貴族&富豪組は


全て一回戦の対戦相手が難民組であり、予想通りそのほとんどが


勝ちあがる、難民組で一回戦を勝ち上がったのはルキアを含めて


わずか3名、二回戦を勝ち抜いたのはルキアだけであった、午前中の予選を


終え、ベスト16に残ったメンバーの内、貴族&富豪組が14人という


圧倒的な内容だった、その中でもベルドゲン侯爵の息子、バルドルは


圧勝に次ぐ圧勝で優勝候補にふさわしい勝ちっぷりを見せていた


ベルドゲン侯爵は終始興奮しっぱなしであり、解説するベルガー将軍も


上機嫌で愛弟子の活躍を見守っていた、一方ルキアは最小限度の動きで


勝ち抜いていた、ここまで貴族ばかりと当たってきたが正直レベルが


違うため、手加減する余裕すらあったのだ、だから一部の女生徒を除き


だれもルキアの事なんか気にしていなかったのである、昼休みに入り


午後の決勝へ向けて取り巻き達と共に決勝トーナメント表を見る


バルドル、そこで初めてルキアが勝ち上がっている事に気が付いたのだ


「おいおい、あのルキアが勝ち上がっているじゃねーか!?


 どうなっていやがるんだこれは?おいナッシュ、お前ルキアと


 当たったんだろ、あいつそんなに強かったのか!?」


横にいた取り巻きのナッシュに声をかけるバルドル、問われたナッシュは


恥ずかしそうに小声で答えた


「強くは無かったよ・・・でも何ていうか、いつの間にかやられていた


 感じだ、正直もう一度やれば絶対に負けない、油断しちゃったんだよ


 多分、じゃなきゃ僕がルキアなんかに負けるわけないもん、だから


 バルドル君なら楽勝だよ・・・」


気を使ったつもりのナッシュに対し、烈火のごとく怒るバルドル


「当たり前だろうが、俺が難民のカッコ付け野郎ルキアなんかに


 負けるわけないだろ、あんな奴と比べるなボケ!!」


興奮気味にまくしたてるバルドル、彼がこれほどまでにルキアを


目の敵にするのは理由があった、彼らのクラスにはオストフ伯爵家の


令嬢であるクラリスという女の子がいるのだが、以前よりバルドルは


彼女に好意を持っていた、明るくてかわいいクラリスは家柄も良く


親同士も親交が深い、そんな両家の子供同士いずれ将来結婚できると


思っていたのだ、しかし突然現れたルキアという男にクラリスの心は


奪われた、彼女は誰が見てもわかる程ルキアにゾッコンなのである


バルドルにとって今までに味わったことのない屈辱、嫉妬と憎悪で


気が狂いそうになるほどルキアを憎んでいた、しかしルキアを含む


”難民の子達を虐めるな!!”と難民組を庇っている女性陣の中心人物が


クラリスなのだ、だからこそバルドルもルキアにおいそれと手出し


できなくなっていたのだ


『見てろよクラリス、誰が君にふさわしいか、今日ハッキリ


 わからせてやる、とくとその目に焼き付けろ、俺が一番強い


 俺が一番なんだ!!』


バルドルの拳に力が入る、昼休憩も終わり午後になるといよいよ


決勝トーナメントが始まった、トーナメント一回戦で試合早々


勝ちを決めたバルドルが今から試合に臨もうとしているルキアの


背中に声をかけた


「おいルキア、どうせなら決勝まで上がって来い、そうしたら


 俺が直接ぶちのめしてやる、まあ無理だとは思うが精々


 頑張りな」


余裕たっぷりで見下しながらしゃべるバルドルに微笑み返すルキア


「ありがとう、僕も頑張るよ、一緒に優勝を目指して


 頑張ろうバルドル君!!」


そういいながら、さわやかに礼を告げて試合に向かって行く


嫌味や皮肉が通じないルキアという男に益々苛立つバルドル


その鬱憤を晴らすかのように試合で次々と相手をねじ伏せていく


『ふざけやがって、スカシやがって、俺を舐めてるのか!?


 見てろよクソが~!!』


準決勝もわずか14秒で相手を倒し早々に決勝旬出を決めたバルドル


父ベルドゲン侯爵は大喜びで拍手喝さいを送っていた


「やりおった、さすが我が息子、準決勝でも圧勝じゃないか!?


 これは凄い事じゃないのかベルガー将軍!!」


その言葉に大きく頷くベルガー将軍


「はい、試合内容も圧倒的です、それと気が付いていましたか?


 ベルドゲン侯爵、バルドル君はここまで全て別の技で勝ち上がって


 来ています、これは偶然ではなく狙っていると思われます」


「それはどういうことかね将軍、わかりやすく説明してくれ」


「ええ、つまりバルドル君は最初から”今回はこの技で決めてやる”


 と考えながら戦っていたという事です、これは相手との力量に


 かなりの差がないとできません、それをいともたやすくやってしまう


 というのが凄いんですよ!!」


「なるほど、つまり息子は手を抜きながらでも圧勝している

 

 という事なのかね!?」


「まあ、ありていに言えばそういう事ですね、ただ少々


 強引と言いますか・・・気負い気味と言いますか


 気合いが入っているのはいい事ですが、それが空回り


 しなければいいのですが・・・」


ベルガー将軍の心配を軽く笑い飛ばすベルドゲン侯爵


「はっはっは、私や先生が見に来ているのでいいところを


 見せたくて気合いが入っているのでしょう、やる気が


 あるのはいい事じゃないですか、このまま圧勝で


 優勝しますよ、さあ決勝戦だ行け~バルドル!!」


もう優勝した様な気分でいるベルドゲン侯爵だったがベルガー将軍の


心配はもう一人の決勝進出者を見たからだった、反対ブロックでも


圧倒的な内容で決勝まで勝ち上がってきたルキアという少年の剣は


ベルガー将軍をして驚嘆に値するものであった、試合開始早々に


手数と圧力で相手を圧倒するバルドルとは対照的にルキアは


自分からは仕掛けず相手の攻撃に合わせ最小限度の動きで


返し技を繰り出し勝負を一瞬で決めていた、派手な勝ち方の


バルドルに比べ地味な勝ち方のルキアは当初あまり注目されて


いなかったが決勝に勝ち上がってきた両名は全ての試合を


一分以内で決めていた、まさにここまでの試合は全て


ウォーミングアップと言っても過言ではない程この両名は


抜けていたのだ、決勝の試合会場で入場前に改めて対峙する二人


ルキアの顔を見てニヤリと笑うバルドル


「本当にここまで上がってくるとはな、褒めてやるぜルキア」


「ありがとう、君と戦えるよう頑張って来たからね、お互い


 全力を尽くして戦おう!!」


敵意と闘志をむき出しにして睨みつけるバルドルに対し


さわやかな笑顔で右手を差し出すルキア、もちろんバルドルは


握手に応えることなくさっさと試合会場の中央に歩いて行く


そして審判を務める教師が会場に響き渡るような大声で高らかに


選手紹介を始めた


「ではこれより決勝戦を始めたいと思います、まずAブロックを


 圧倒的内容で勝ち上がり決勝進出を決めた今大会の大本命


 噂にたがわぬその強さを闕所戦でも遺憾なく発揮するのか!?


 ベルドゲン・バルドル選手~!!


 そしてBブロックを勝ち抜いてきた今大会のダークホース


 優勝候補バルドル選手にどこまで食い下がれるか


 アドリアン・ルキア選手~!!両者前に出て構え


 では決勝戦、始め~~~!!」


開始の合図とともに物凄い歓声が沸き上がった、貴族&富豪組の


父兄による野太い応援の声と難民組の子供と女生徒からの黄色い


声援が入交り、隣の人の声すら聞いとることが困難なほどであった


しかしそれとは対照的に戦っている二人は冷静であった


「せっかくの決勝戦だ、せめて1分ぐらいは耐えてくれよルキア」


サディスティックな笑みを浮かべペロリと舌を出し舌なめずりする


バルドル、ルキアはニコリと微笑むだけで言葉を返しはしなかった


「じゃあ行くぞ、精々死なないように頑張りな!!」


そこからバルドルの嵐の様な猛攻が始まった、観客にも見えない程の


連続攻撃がルキアを襲う


『どうだ、お前はここまで返し技ばかりで勝ち上がってきたようだが


 この俺の連続攻撃の前では返し技どころか手も足も出まい


 このっま押しつぶしてやる!!』


一方的にバルドルが攻めルキアが守るという展開、貴族側の歓声が


一段と大きくなり難民側の声援は完全に止まった


「行け~バルドル、そのまま圧し潰せ!!」


「難民何かに負けるんじゃねーぞ、貴族の誇りを見せてやれ!!」


大興奮の貴族側観客席、そんな中にクラスの女生徒クラリスもいた


「ああ、ルキア君が負けちゃう・・・そんな・・・」


一方的な展開に涙目で見つめるクラリス、難民組のクラスメートも


拳を握り締め歯ぎしりしていた


「ちくしょう、やっぱり俺達じゃ貴族には勝てないのかよ・・・」


もちろんバルドルの父ベルドゲン侯爵も大興奮で試合を観戦していた


「いける、いけるぞ~やれバルドル、それでこそ私の息子だ!!」


大歓声の中で一人厳しい表情で試合を見つめている男がいた


ベルガー将軍である、そんなベルガーの様子に気が付き


ふと問いかけるベルドゲン侯爵


「どうしました将軍、もはや試合の結果は火を見るより明らか


 バルドルが勝つのも時間の問題でしょう!?」


そんな問いかけに試合を見続けながら視線を動かすことなく


答えるベルガー


「いえ、人の体力というのは無限ではありません、あれ程の


 猛攻を繰り返していれば、その反動は必ず来ます・・・


 そしてバルドル君の相手をしているルキアという少年


 あれは化け物です、なぜあんな無名の子供があれほどの


 力を持っている、信じられない・・・」


ベルドゲン侯爵にはベルガーの言っている意味が理解できなかった


しかし徐々に観客席からどよめきが起こり始める、人々がこの試合の


異変に段々と気が付き始めたのだ


「おい、あれほど一方的に攻めているのになぜまだ決まらないんだ?」


「そうよね、守ってばかりの子の方が何か余裕の顔していない?」


それは戦っているバルドルが一番感じていた、鬼気迫る表情で


一心不乱に剣を振りあらゆる攻撃を繰り出し攻めるがどうしても


ルキアの牙城を崩すことができない、そして対峙している者なら


わかる事があった、ルキアにはまだ余裕があるという事が・・・


『何故だ、俺がこれほど攻めているのになぜまだ決まらない!?


 ベルガー先生に教えてもらった技を全て出しているんだぞ


 なんだその余裕の表情は!?ちくしょう、こいつは一体・・・』


対するルキアは冷静にバルドルの剣を見ていた、今までの試合でも


自分から手を出さなかったのには理由があった、それは母の


”私以外の者と剣を合わせるのも良い勉強になるでしょう

 

 しっかりと学んできなさい”という言葉を忠実に守っているからである


今までの相手は一見してレベルの差を感じ”学ぶべきものなし”と判断し


返し技一撃で決めてきたがこのバルドルは今までの相手とは明らかに


レベルが違う、だから自分に吸収できるところがないか?どういった


技を持っているのか?と勉強がてら見ていたのだ、しかしそれも終わりに


近づいてくる、バルドルの剣を完全に見切ったルキアは返し技で


決めようとした、その瞬間バルドルは何かを感じバックステップで


間を取る、ハアハアと息を切らせながらルキアを睨みつける


「なんだ今のは!?一瞬背中に寒気が走った・・・」


その時初めてルキアが嬉しそうな表情を見せた


「へえ~僕の殺気を感じて間を取ったんだ、凄いねバルドル君


 露骨な殺気は相手に感づかれるっていつも母から言われて


 いるのに・・・まだまだ未熟だな僕は」


しばらく両者は距離を取って見つめ合う、あれ程激しい戦いが


急に膠着したことに戸惑う観客たち、ベルドゲン侯爵も何が


起こっているのか全く理解できずキョロキョロしながら


ベルガーに質問した


「急に動かなくなったが、一体何があったのですか?」


ベルガーは試合ではなくルキアをジッと見つめていた


「バルドル君は勝てません、相手が悪かった・・・信じられませんが


 あの少年は天才です、しかしいくら天賦の才があるとはいえ


 あの年でどうやってあれほどの剣を身に着けたのか・・・」


ベルドゲン侯爵はベルガーが何を言っているのか理解できない


しかし対峙しているバルドルにはそれが痛いほどわかった


この相手には勝てない、力が違う、今まで自分こそが天才だと


思っていたバルドルにとって初めて感じる屈辱と敗北感


圧倒的な力量と才能、バルドル自身なまじ強いだけにそれを


感じ、嫌と言う程思い知らされたのだ、しかしそれをそのまま


受け入れられるほどの器は無かった、それこそバルドルは


強くなるため誰よりも研鑽を積んできた、性格的にはやや難がある


このバルドルだが剣に対しては真摯で愚直に高みを目指し


頑張ってきたのだ、だからこそこの国最強の剣士ベルガーも


熱心に教え”いずれは自分の後継者にも”とまで考えるほどであった


そんな中でぶち当たった巨大すぎる壁、貫けないとわかっていても


認めるわけにはいかなかった、バルドルは覚悟を決めルキアに


捨て身の一撃を放つことを決める、それを感じたのかルキアも


その日初めて真剣な表情を見せ剣を構える、動かない両者に


会場が息を飲むほどの緊張感が走る、そんな愛弟子の姿を見て


満足げなベルガー


『凄いじゃないかバルドル、今ここで負けたとしてもここでの


 戦いは将来必ず役に立つ、こんな戦いは早々できるものじゃない


 全身全霊をかけてぶつかるんだ!!』


先に動いたのはバルドルだった、防御もかわされた後の事も考えず


ただその一撃に全てをかけ放った、そして決着はついた


バルドルの渾身の一撃をかわしその喉元に剣を突き付けるルキア


呆気にとられていた審判の教師が随分と間を開けて渋々勝ち名乗りをあげた


「勝者アドリアン・ルキア!!」


その瞬間、どっと沸きあがる難民側の歓声と女性の黄色い声援


「すげールキアが勝った、勝っちゃったよ!!」


クラリスも父親に抱きつきながらはしゃぎまわっていた


「凄い凄い、ルキア君が勝った、見たお父様、あれがルキア君よ!!」


逆に貴族側の観客席は呆然として事態を飲み込めない様子であった


ベルドゲン侯爵などは大きく口を開けたまま唖然としていた


そんな中で一人大きな拍手を送る者がいた、ベルガー将軍である


そんなベルガーの姿を見て我に返るベルドゲン侯爵、ベルガーを


睨みつけるように見つめ恨めし気に口を開いた


「ベルガー将軍、なぜあなたは愛弟子である息子が負けて


 そんなに嬉しそうな顔をしているのですか!!」


ヤレヤレとばかりに軽くため息をつき語り始めるベルガー


「バルドル君は本当にいい試合をしたんです、今回は相手が


 悪く負けてしまいましたが、この戦いは彼にとって必ず


 プラスになるはずです、ベルドゲン侯爵、バルドル君を


 褒めてやってください、彼は本当に立派でした」


満足げなベルガーを見てどうしてもな得できないベルドゲン侯爵


息子が負けた悔しさと腹立たしさで居ても立っても居られない程であった


そして次の瞬間、何かを思いついたのか意地の悪い笑みを浮かべる


「なあベルガー将軍、あの少年がそれほどまでに強いというのであれば


 君が直接手合わせしてあげればいいじゃないか、もちろん真剣勝負でだ


 よもや断るなんてことは無いだろうね!?」


ベルガーがギョッとして振り向く、しかしベルドゲン侯爵は


我を忘れる程怒り狂っていることが見て取れた、もはや何を言っても


説得できないと覚悟したベルガーは仕方がなく頷いた、国最強の剣士が


わずか12歳の子供相手に手加減なしで戦う、これ以上大人げない行為が


あるのか?とも思えたが正直ベルガーはあのルキアという少年の力を


直接確かめてみたいという衝動もあった、だからベルドゲン侯爵の


無茶な要求にも首を縦に振ったのだ、最後の表彰式で優勝と準優勝の


ルキアとバルドルが並んでいた、涼しい顔をしているルキアとは


対照的に口惜しさで涙が止まらないバルドル、そんな時学園長の


元に伝令の者が駆けつけ耳元でささやいた、学園長は大きく頷き


皆に向かって大きく発表した


「みなさんとんでもないサプライズです、今日ここにきている


 我が国最強の剣士、バーナベンデ・ベルガー将軍が優勝者の


 ルキア君に祝いとして手合わせしてくれるそうです、この


 スペシャルマッチをどうかお楽しみください!!」


その言葉に驚くルキア、ふと視線を移すとベルガー将軍が


ゆっくりと近づいてきていた


「初めましてルキア君、優勝おめでとう、そしてバルドル


 よくやった、結果は負けだったが本当にいい試合だったよ」


ペコリと頭を下げるルキアに益々大泣きするバルドル


「せ、せんぜい・・・僕は・・・僕は・・・」


大きく頷きそっとバルドルの頭を抱きしめるベルガー


そんなやり取りがあり、早速ルキア対ベルガーの


エキシビジョンマッチが始まろうとしていた


「ベルガー将軍、お噂は常々伺っております、この国最強の剣士で


 あられる将軍と手合わせできることは本当に光栄です、どうか


 よろしくお願いいたします」


そう言って丁寧に頭を下げるルキア、そのあまりに礼儀正しい姿勢に


面食らうベルガー


「ああ、こちらこそよろしく頼むよルキア君、君の実力を見せてくれ」


ニコリと微笑みながら右手を差し出すベルガー、両者はがっちり


握手をした後試合開始を待つ、そして審判の開始の合図とともに


対峙する二人、しかしその瞬間、ベルガーの表情が一変した


『この子は・・・これはモノが違う、これが12歳の子供の


 剣気か!?』


まだ剣を合わせてもいない状態で驚きを隠せないベルガー


『そうか、バルドルを相手にしていた時でもまだ本気ではなかった


 という事なんだな、それにしても末恐ろしい子供だな・・・』


最初は受けて立つつもりだったベルガーだが、予定を変更し


先手必勝とばかり先制攻撃を仕掛けた、攻撃内容はバルドルと


同じだったが速度が違う、威力が違う、鋭さが違う、正に


文字通り怒涛の攻撃を繰り出すベルガー、見ていた観客も


呆気にとられる、12歳の少年相手に国最強の剣士がまさか


本気で戦うとは誰も思っていなかったからだ、しかしその全てを


受け止めるルキア、それを見ていたバルドルが驚愕の表情を浮かべ


思わずつぶやいた


「嘘だろ、あれは先生の本気の剣だぞ、それを全て


 受け止めるなんて・・・あいつは一体」


両者が激しい戦いを繰り広げていた時、その会場に向かって


走ってくる人影があった、ルキアの母メルダである、ルキアには


見に行けないと言ってはいたがどうしても息子の晴れ姿が見たくて


仕事を抜けてきたのだ、しかしこの国では難民の労働者に対する


風当たりはルキアが考えているよりもはるかに強い、普段気位が高く


頭を下げることなどないメルダが雇い主や同僚に散々頭を下げ


一時間だけ仕事を抜けてきたのである


「ハアハア、もう時間的に大会は終わっている頃かしら?


 間に合うといいけど・・・えっ!?」


会場近くにたどり着いたメルダが驚いたのは物凄い大歓声が


上がっていたからだ、急いで中に入り試合を見てみると


自分の息子ルキアが明らかに大人と戦っていたからである


しかも一目見ただけでその剣士が一流であることがわかった


メルダは思わず隣で見ていた観客の一人に聞いてみた


「あのスイマセン、私は今来たばかりなのですが

 

 この大会は子供同士の戦いではないのですか?」


「ああそうだよ、それであのルキアって子が優勝してね


 そのお祝いってことでこの国最強の剣士ベルガー様と


 急遽エキジビションマッチをすることになったんだよ


 だけどベルガー様あれ本気に見えるけど・・・


 そんな訳ないよね、いくら何でも子供相手に


 本気出すわけないし、ちゃんと手加減してくれて


 いるんだろうさ」


笑いながら説明してくれた男に礼を言って事態を把握するメルダ


その勝負の行方をしっかり見届ける為、ジッと我が子を見つめていた


一方ベルガーは本気で挑んでいた、凄まじい連続攻撃がルキアを襲う


しかしルキアも今回は反撃に移る、この相手には受けの一手では


不利になると考えたからだ、両者の剣がうなりをあげて空を切る


激しくぶつかる金属音が会場中に鳴り響く、それに従い観客の


ボルテージがどんどん上がっていく、何せ国内最強剣士と12歳の


少年が信じられない様な攻防を繰り広げているからだ、凄まじい


歓声で隣の人間の声も聞こえない程、会場は盛り上がっていた


『何だこの少年は!?とてつもない才能、とんでもない化け物だ


 しかしこの国最強の剣士としてまだ私が負けるかけにはいかん


 いずれ負ける日が来ることは間違いないが、それは決して


 今ではない、まだ負けられないんだ!!』


ルキアの才能を目の前にしながら全力でぶつかるベルガー


それに対しルキアは冷静であった


『さすがに鋭い、速い、そして剣が重い、これが国内最強の剣士


 ベルガー将軍の剣か!?でも剣の重さはともかく、鋭さと速さは


 正直、母上の方が上だ・・・こうして他の人達と戦ってみると良く


 わかる、母上はどうしてあれほどの剣を身に着けているのであろうか?』


そんな事を考えながらも激しい攻防が続く、そしてベルガーが間を取り


一旦仕切りなおす


『単純に勝つだけならこのまま消耗戦に持っていき体力勝負に


 持ち込むのが良策だ、いくら剣の才能があってもまだ体は子供


 体力的には私に絶対的なアドバンテージがある、しかしそんな


 戦い方をして、もし私が勝ったとしてもそれが実力で勝ったと


 言えるのか?ならばとるべき手段は一つ・・・私の持つ


 最大最強の奥義をもって挑むのみ、あの少年ならば死ぬことは


 あるまい、行くぞ!!』


ベルガーの構えと剣気、そしてその目を見たときルキアにはすぐに


わかった、渾身の一撃が来ると、厳しい表情を向け今までよりも


やや低く構えるルキア、その瞬間ベルガーが奥義による渾身の


一撃を放った、それに対し真っ向から剣を向けるルキア


『馬鹿な、私の奥義は受けることもかわすことも困難な技だ


 ましてや真っ向から向かってくるなんて無謀にも程がある!!』


両者の剣が空中で激しく衝突した、その際の甲高い金属音が会場中に


響き観客皆が思わず耳を塞ぎ顔をしかめる、次の瞬間両者の剣が


真っ二つに折れ宙に舞う


「なっ!?」


驚き一瞬動きが止まるベルガー、ルキアはそれを見逃さなかった


すかさずベルガーの片足にタックルし地面に倒すと折れた剣の鍔元を


ベルガーの首に突きつける、そうして決着はついた


「ま、参った、君の勝ちだルキア君」


その瞬間、怒涛の歓声が会場に鳴り響いた、信じられないモノを見た


とばかりに大声で叫ぶ観客と若い女性の甲高い黄色い声援が他人の


鼓膜を責め立てるように鳴り止まなかった


「すげー、あの子我が国最強の剣士ベルガー様に勝っちゃったよ!?」


「見てお父様、あれが私のお慕いしているルキア君よ、おねがい


 ルキア君を何としても我がオストフ家の婿にして頂戴


 私の一生のお願いよ、ねえいいでしょお父様!!」


凄まじい歓声の中、静かに見守り嬉しそうに頷く母メルダ、そして


彼女は仕事場へと戻っていった、戦いが終わりベルガーがルキアの元に


近づいて来て話しかけた


「なあルキア君、君はどうしてとっさにあんな行動ができたんだい?」


「あの攻撃が来る前、将軍の構えと目を見てかなりの一撃が来ることが


 わかりました、だから考えたんです、今回の大会はあくまで競技


 ですから殺傷能力のない剣を使っています、普段将軍がお使いに


 なっている剣とは強度が比べ物にならないはずです、だから・・・」


その時ハッとした表情でルキアを見つめるベルガー


「じゃあ君は最初から剣を狙っていたのか!?両者の剣が折れる事を


 想定して・・・だからあんなに手際よく次への行動を!?


 なんて子だ、認めるよ、君はこの国最強の剣士だ、ひょっとしたら


 君みたいな子が魔王を倒すのかもな、今日はありがとう、俺にも


 勉強になったよ、また何か俺にできることがあったら声をかけてくれ


 じゃあな」


そう言って立ち去るベルガー、その後姿に深々と頭を下げるルキアであった


家に帰るとルキアは今日の大会の報告と優勝の盾を母に差し出した


「母上、僕今日優勝しました、その後この国最強の剣士ベルガー様と


 手合わせすることができて本当に勉強になりました!!」


嬉々として報告するルキアに対して


「そうですか、よくがんばりましたね、何事も勉強です


 その積み重ねが貴方を強くすると心しなさい、さあ明日は


 早いのでしょう、もう寝なさい、いくら剣が強くとも


 勉学をおろそかにして授業中に寝てしまうような事があっては


 本末転倒ですからね、学生の本分は勉学にあると知りなさい


 わかりましたねルキア」


「はい、わかりました母上、おやすみなさい」


そう言ってペコリと頭を下げ寝室へと向かうルキア、そんな息子の


後姿を見守り、仕事を続けるメルダ、今日抜け出した埋め合わせに


家でも仕事をしなくてはならなくなったからである、しかしメルダに


後悔は無かった、しばらくしてルキアの置いていった優勝の盾を


そっと手に取り寝室へと向かうメルダ、もう既に寝息を立てて


熟睡している我が子を愛おしい目で見つめる、それは紛れもなく


一人の母親の目だった


「本当によく頑張りましたルキア、本来ならもっと盛大に祝い


 手放しで褒めてあげたいのです、でも私にはそれができません


 こんな母を許してくださいね、貴方は本当に自慢の息子です


 あの会場で”あれは私の息子なんですよ!!”とどれほど


 自慢したかったか・・・ごめんなさいルキア、愛していますよ」


寝ている我が子にそっと手を添えるメルダ、この後とんでもない事件が


二人を襲う事を、この時点では知る由もなかった。







 









 













 





PCの調子が悪く投稿が遅れてしまいました、外伝ルキア編の二話目ですがいかがだっでしょうか?

比較的ベタな話になってしまいましたが、ルキアには合っていると思い書いてみました

おそらく四話構成になると思われますので、よろしくお付き合いください、では。

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