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偽者語り

登場人物

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている

ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在

ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている

ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー

ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児

木下藤吉郎秀吉…ルキア達の戦場での活躍を見て織田軍にスカウトした人物、後の豊臣秀吉

ねね…秀吉の妻、若い頃から秀吉を支えてきた良妻

秀吉とねねに真逆の依頼を受けていたゾフィとフリニオーラは


水面下で激しい争いをした後、ようやく和解への方向へ行きかけた時


思わぬ訪問者に動揺を隠せなかった、両者は焦りながら顔を見合わせた


「な、なんで信長公が来るのよ!?」


「これは想定外です、どうするんですかゾフィさん!?」


「どうするもこうするも無いわよ、今の秀吉さんに会わせるわけには


 いかないじゃない‼」


「では信長公に正直に事情を話しましょうか!?」


その提案に少し考えるゾフィ


「それは・・・止めた方がいいわね、私達のせいで秀吉さんと


 ねねさんが女性問題でもめている何てバレたら二人に申し訳ないもの


 ステイメンの治療ももうすぐ終わるはずよ、それまで時間を稼ぐのよ


 いい?これは二人の為なの、決して私達が引き起した問題を


 信長公に知られたくないからじゃないのよ‼」


その言葉にコクリとうなづくフリニオーラ


「わかりました、我々の事はともかく、こんな事で信長公と秀吉さんの


 主従関係にヒビが入る事になったら織田家、ひいては日の本の国の


 行く末に関わる大問題ですからね、全国の民草の為という崇高な


 理念の為に、やむを得ずそうしましょう、決して我らの失態を


 隠ぺいしたいから・・・などという低俗な思い付きではない事を


 読者に対しても重ねてここに宣言しましょう‼」


二人はお互いに見つめ合い、大きくうなづいた


「まあ今作戦において作戦遂行を優先するために阻害要素が


 発生した場合それを排除する・・・というのは大前提として


 具体的にはどうしましょう?ステイメンさんの治療が


 終わるのに、あとどれぐらいかかるかはわかりませんし・・・」


フリニオーラの問いに目を閉じ腕組みをしながら考え込むゾフィ


「そうね・・・あっ、いい事を思いついたわ!?」


その言葉にフリニオーラは目を輝かせる


「本当ですか!?で、どんな作戦で行くのでしょうか!?」


「あなたの魔法であなたが秀吉さんに化けてこの場をつなぐのよ


 どう?名案でしょ!?」


フリニオーラが愕然として思わずゾフィの胸倉を掴む


「そんな魔法ありませんよ‼何ですかそれは!?」


「そうなの?意外と役に立たないわね魔法って・・・」


ゾフィの言葉にカチンときたフリニオーラが反論する


「魔法は崇高で高貴な技術と理論なんです、そんな馬鹿馬鹿しい


 目的の為に術式を組む愚か者はいません、だったらゾフィさんが


 魔獣を使ってそれをやればいいじゃないですか!?」


今度はゾフィがカチンときた様子で言い返す


「何よその言い方、それじゃあまるで私が馬鹿馬鹿しい術を使う


 愚か者みたいじゃないのよ!?」


「ちゃんとそう聞こえたならゾフィさんも私の想像よりは


 愚か者じゃなかったようですね、魔法を馬鹿にする


 ような人は全て愚か者です‼」


「なんですって!?」


再び二人の間に不穏な空気が漂った、お互い怒りの表情を見せ


睨み合う二人に、割り込むようにボソリと佐吉が口を挟んだ


「あの~お二人とも、喧嘩している場合ではないのでは・・・


 別室でお館様を待たせてるのです、早く対応を!?」


佐吉の忠告にハッと我に返る二人


「そうだった、私とした事が・・・」


「危ない、危ない・・・ゾフィさん、ここは一時休戦して


 早急に対策を考えましょう!?」


「そうね、魔法でも魔獣でも変身する事なんて・・・あっ!?」


ゾフィが何かを閃いたようで表情が一気に明るくなる


「何か思いついたんですか!?早く教えてくださいゾフィさん‼」


「う~ん、どうしようかな~聞きたい?どうしても聞きたい!?」


そう言いながら得意げな顔でニヤつくゾフィ


「もうそういうのいいですから、早く言ってください」


「なによその態度、そんなんなら教えるの止めようかな!?」


そう言ってプイッと横を向くゾフィ、それをイラつきながら


見つめるフリニオーラ


『本当に面倒臭い人ですねぇ・・・仕方がありません


 ここは私が大人の対応で相対しましょう、でも


 ここまで勿体付けておいて、いつもの様なくだらない


 結論だったら、飛び切りの報復措置をとります・・・


 ふふふ 何て大人な私なのでしょう』


そんな事を考えながら作り笑顔で問いかけるフリニオーラ


「お願いしますゾフィさん・・・いや頼れるお姉ちゃん


 どうか教えてください、お願いします」


その言葉に満面の笑みを浮かべてうなづくゾフィ


「わかったわ、そこまで言うのなら教えてあげる、私達は魔法や


 魔獣の力で変身する事は出来ないけど、変身する事が出来る魔獣なら


 いるわ!?」


「えっ、本当ですか?それは一体!?・・・」


「ドラゴンよ、あの子達なら秀吉さんに化けるなんて事、造作もないわ」


「おおぉぉ~~さすがは最強生物と言われたドラゴンですね!?


 じゃあ早速呼び出してください、早く‼」


せかすフリニオーラにあえて余裕を見せつけるゾフィ


両手を前に出し首を振った


「待ちなさい、まだ慌てるような時間じゃないわ」


「慌てる時間でしょ、何言っているんですか!?」


「ちょっと待ってよ、ドラゴンと言ってもどの子を呼び出すか


 考えているんだから・・・そうね、やっぱりアクアかしらね」


するとゾフィは両手を広げドラゴンを呼び出す


「汝が主 ライドン・ゾフィの呼びかけに応えよ


 来て アクア‼」


するとゾフィの頭上に小さな魔法陣が発生しそこからミニサイズの


青いドラゴンが現れた


「どうしたゾフィ、我をこの姿で呼び出すとは・・・何かあったのか!?」


「そうなの、実はねあなたに頼みたい事があって・・・」


ゾフィは今までの事情を説明した


「という訳なのよ、お願いアクア 何とかして頂戴」


青いミニサイズの竜王はフッと笑い優しく語りかけた


「任せておけ、そのような事造作もない、私がゾフィの為に


 一肌脱ぐのは当然の事だ、あの秀吉という男に化けて対応


 すれば良いのだな?」


「そう、その通りよ、よろしく頼むわ 何とか上手く


 穏便につつがなくつないで頂戴」


「委細承知した、フン‼」


掛け声と共に光に包まれたアクアは一瞬で秀吉へと変身した


「さすがはアクア、完璧よ完璧‼じゃあ頼むわね!?」


「ああ、行って来る」


そう言い残し颯爽と信長の待つ別室へと歩いて行くアクア


「ふう、一時はどうなる事かと思ったけどこれで・・・


 ん、どうしたのよフリニオーラ、そんな難しい顔して?」


フリニオーラはアクアの化けた秀吉に何か違和感を感じていた


「本当に大丈夫でしょうか?確かに変身は完ぺきでしたが


 何か胸騒ぎがしてしょうがないのです・・・


 それが何なのか具体的には言えないのですが・・・」


ゾフィは両手を腰に当て軽くため息をついた


「あなたも大概心配性ね、大丈夫よ私とアクアに


 任せておいて、まあ大船に乗った気でいていいわ」


自信満々にそう言い放つゾフィ、もちろん本人はそのセリフを


フリにしているつもりなど毛頭なく本気でそう言っているのだが・・・


こうして二人を乗せた泥船は絶望という大海に向け出港した


秀吉に化けたアクアドラゴンは信長の待っている別室の襖を静かに開けた


部屋の上座に座り入って来た秀吉を鋭い目で見上げる信長


「随分と待たせるではないかサル、一体何をしておったのじゃ!?」


秀吉に化けたアクアは冷徹な目で信長を見下ろし落ち着いた口調で


静かに口を開く


「待たせたようだな、しかして此度は何用だ?」


その秀吉のいつになく尊大な態度に信長の顔が険しく歪む


傍からこっそり見ていたゾフィとフリニオーラも思わず凍り付く


「なんじゃサルその態度は!?」


「何かおかしいのか?我はそなたが訪ねて来た要件を聞いておるのだ

 

 速やかに答えぬか!?」


その秀吉の言葉に見る見る表情が怒りに変る信長


唖然とするゾフィの後ろからフリニオーラがボソリと話しかけた


「ゾフィさん・・・一言言っていいですか?」


「な、何よ、言ってみなさいよ・・・」


「これダメなやつですよね!?」


「・・・・・」


その言葉に答える事の出来なかった、ゾフィはなぜこうなってしまったか


考えていた


『アクアはいつも私には優しく話してくれるから


 気が付かなかったけど、あの子は竜王だもんね・・・


 本来、人間の事なんか虫けらぐらいにしか思ってない


 ドラゴン族の長、だから信長公相手でもあんな態度に


 なっちゃうんだ!?人選誤ったかな・・・』


そんな事を考えている内に信長との間はどんどん険悪なムードに


なっていく


「マズイですよゾフィさん、このままじゃ!?」


「ここは一時撤退よ、帰って来なさいアクア‼」


ゾフィの声と共に信長の前からいきなり姿を消すアクア秀吉


目の前から忽然と姿を消した秀吉に、何が起こったのかわからず


茫然とする信長


「どうするんですかゾフィさん!?」


「ちょっと待ちなさいよ、今考えてるから・・・


 よし、この子にしよう 来てフレイム‼」


ゾフィの頭上の魔方陣から今度は赤いドラゴンが現れる、ミニサイズながら


翼をバタつかせ口から火を吐き、気合十分といった様子であった


「ゾフィ殿、いかがなされた!?むむっ、ここは屋敷の中ですかな!?


 では此度は戦いではないのかな!?」


そんなフレイムに手早く事情を説明するゾフィ


「そういう訳なの、いいフレイム、絶対に偉そうな態度は厳禁よ


 なんとか上手く話をまとめて来て、お願いよ」


「合点承知、我に任せてくれれば万事解決


 いくぞ~~~‼1,2,3 ファイヤ~‼」


何故か気合い満々のフレイムに一抹の不安を覚える二人、しかし


緊急を要する事態にフレイムに任せるしかなかった、二人は


祈る様な気持ちでフレイム秀吉を送り出す、しかし二人の祈りが


天に届く事は無かった・・・


「いや~待たせたでござる、本っっっ当に申し訳ないでござった」


部屋に入るなり信長の前にひれ伏し深々と頭を下げるフレイム秀吉に


やや溜飲が下がったような仕草を見せる信長


「サル、貴様が酒宴を開いておると聞いて顔を出して見たのじゃ」


「それはかたじけない、感謝の言葉もござらん、ファイヤ~‼」


秀吉の異常なまでのテンションの高さに若干引き気味の信長


しかし気を取り直したかのように再び話し始めた


「サル、ここだけの話じゃが、今後お主には中国攻めを任せようと


 思うておる、それについてどのように思うておる?お主なりの


 戦略があれば聞いてやろう、言うてみよ!?」


フレイム秀吉はおもむろに立ち上がり両拳を握り締め叫ぶ


「どのような敵が現れようと、気合いと根性で打ち破って見せまする‼」


「お、おうそうか・・・しかしワシが聞きたいのは具体的な戦略じゃ


 無いというのであれば致し方ないがあるのであれば言うてみよ」


フレイム秀吉はニヤリと笑って再び大声で語り始めた


「そんなモノ必要ないでござる、全員が気合いと根性で当たれば


 どのような敵も相手ではないでござるよ‼熱意、根性、気合い


 この三つで万事解決オールオッケー‼ 御唱和ください~~‼


 気合いだ~~~気合いだ気合いだ気合いだ気合いだ~京子~~~‼」


フレイム秀吉の異常な熱弁に唖然とする信長とゾフィ、フリニオーラ


「京子とはなんじゃ?一体お主は・・・」


あまりの展開に言葉もでないゾフィ、その後ろから再び


問いかけるフリニオーラ


「ゾフィさん・・・一言言っていいですか?」


「な、何よ・・・言いたい事は大体わかるけど言ってみなさいよ・・・」


「これ、ダメなやつですよね・・・」


「・・・・・」


再び考え込むゾフィ、部屋の中では益々ヒートアップしながら熱弁をふるう


フレイム秀吉の声が響いていた


『今度こそ何とかしなきゃ、でもあの子達でダメだったしどうしよう?


 フロストは屁理屈ばっかでおそらく信長公を更に怒らせるだろうし


 ダークネスはアクア以上に人間を馬鹿にしているからもっとダメ


 もうトルネードの社交性に賭けるしかないわね・・・』


「汝が主 ライドン・ゾフィの呼びかけに応えよ


 来て トルネードドラゴン‼」


ゾフィの魔法陣から茶褐色のミニサイズドラゴンが現れ


羽根を広げながら大きく口を開いた


「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン‼って違うか、違うか~!?」


もはや言葉を失うゾフィ、そして後ろから声が聞こえた


「ゾフィさん・・・一言言っていいですか?」


「もう言わなくていいわ・・・」


「これ、ダメなやつですよね・・・」


「・・・・・」


大きくため息をついてトルネードを帰そうとするゾフィ


「ちょ、ちょっと待ってーな!?久々の出番なんや、もう少し


 ワテに喋らせて~な、ホンマにもう少ししゃべらせてくれたら


 会場を爆笑の渦に巻き込んで・・・」


トルネードを帰した後、大きく肩を落としうなだれるゾフィ


その時フリニオーラが何かに気が付いたかのように手を叩いた


「ゾフィさん、私いい事思いつきました!?もう一度アクアさんを


 呼び出してもらって喋りだけゾフィさんにしてもらうのは


 どうでしょうか?」


「どういう事よそれ?」


「つまり私が魔法でゾフィさんの声だけ転送してアクア秀吉が


 喋っているように見せるんです、いうなれば魔術による腹話術ですよ!?」


それを聞いたゾフィの表情がパッと明るくなる


「いいじゃないそれ!?早速それでいきましょうよ‼」


ゾフィは再びアクアを呼び出し事情を説明した


「いいアクア、私が喋るからあなたはその話の内容に沿った


 動きをしてね、お願いよ」


「仕方がないな、他ならぬゾフィの頼みとあっては断る訳にもいかぬな」


「ありがとうアクア、じゃあ頼むわね!?」


再び瞬間的に信長の目の前から姿を消すフレイム秀吉、そして再び


襖を開け入って来るアクア秀吉に目を丸くする信長


「サル、お前は今、目の前にいたはずでは・・・・」


一瞬ギクリとするゾフィ、しかし何とか話で誤魔化そうと


喋り始めるゾフィ秀吉


「ま、まあいいじゃない細かい事は、それより何の話だったっけ?」


一瞬呆気に取られていた信長だったが気を取り直し再び話し始める


「中国攻めの話じゃ、何を聞いておったのじゃお前は!?」


「ああ、それね・・・わかってるわ・・・え~と ガーっと攻めて


 ドバってやっつけちゃえばいいんじゃないかしら!?」


そんなゾフィの対応に思わず絶句するフリニオーラ


血の気が引き顔面蒼白になりながら心の中でつぶやいた


『ゾフィさん・・・それダメなやつです・・・』


ゾフィが誤魔化そうとすればするほど深みにはまって行く


信長の怒りも頂点に達したのか思わず立ち上がりゾフィ秀吉を睨みつけた


「もうよいサル、此度の無礼許される事ではないぞ、そなたの事は


 追って沙汰致す、屋敷にて謹慎しておれ‼」


そう吐き捨てる様に言い放ち部屋を出て行こうとした


「ど、どうしよう!?信長公怒らせちゃった!?」


「どうするんですかゾフィさん、このままじゃ秀吉さん良くて降格

 

 最悪の場合切腹も有り得ますよ!?」


「どうしよう、どうしよう・・・」


あまりの事態に半べそになってしまうゾフィ、そんな取り乱す彼女の姿を


見てフリニオーラはある事を思い出した


それは師匠ハイドニールの言葉だった


『いいかいフリニオーラ、戦場では焦ってパニックになった奴は


 確実に死ぬ、どんな時でも冷静かつ冷徹に判断するんだ、情に


 流されず的確な判断を下せる者こそ真の勝者足りえるのさ・・・』


そんな言葉を思い出し咄嗟に冷静さを取り戻すと瞬時に考えをまとめ


半べそ状態のゾフィに言い聞かせるように告げた


「ゾフィさん聞いてください、今我々の置かれている状況とこれから


 どういった行動をとればいいのか、冷静かつ客観的に判断しました」


目に涙を一杯貯めながら息を飲みフリニオーラの言葉を聞くゾフィ


「まず我々にとれる選択肢は二つです、一つ目は”このまま何もせず


 信長公を帰してしまう”です、これのデメリットは秀吉さんが


 良くて降格、悪ければ切腹まであるという事です、そして


 これのメリットは”我々は怒られない”という事です


 二つ目の選択肢は”今まで起こった事を全て信長公に正直に話す” 


 です、これは逆に秀吉さんは被害者ですからお咎めは無いでしょう


 しかし我々はおそらく”オシッコちびるくらい怒られる”という事です


 この二つの検証から判断される予想を元に冷静かつ客観的に判断し


 我らが採るべき選択肢を模索した結果・・・どちらかというと


 後者を選択した方が良いのではないか!?という結論に達しましたが


 いかがでしょうかゾフィさん?」


先程まで涙目だったゾフィが呆れ顔でフリニオーラを見つめる


「どちらかというと・・・じゃないでしょ!?”良いのではないか”


 じゃなくって、絶対そうしなきゃダメじゃない!?


 どんな判断基準してるのよ、さあ信長公が


 帰ってしまう前に正直に言って謝るわよ‼」

 

「う、そうですね・・・」


二人は慌てて部屋に飛び込む、見慣れぬ二人の芸者姿の女性を


怪しげな目で見つめる信長


「なんじゃお主らは?」


「すみません信長公、ゾフィとフリニオーラです


 実はかくかくしかじかで・・・」


事情を説明して謝る二人、信長は軽くため息をつき半分呆れながらも


少し怒った程度で済んだ、反省しながらもどうやら大事には至らず


一安心する二人


「では、サルめが正気に戻ったらワシの所へ来るよう伝えてくれ」


「はい、わかりました」


「必ずやお伝えいたします」


二人はホッと胸をなでおろし、これで一件落着かと安堵した


信長は部屋を出ようと襖《ふすま》を開けた、その瞬間


目の前を何かが通りすぎた


「おまつ~~~~‼」


フンドシ一丁の姿で信長の前を駆け抜ける男、そしてあっという間に


廊下の奥へと消えていった、それはまるで一陣の風であった


三人の前を駆け抜けたのは前田利家、のちに加賀百万石の大大名となり


秀吉が天下を取った後でも唯一対等に意見できた人物である


あまりの事態に思わず固まる信長、ゾフィとフリニオーラの二人も


口を大きく開けたまま言葉を発する事が出来なかった


「なんじゃ今のは?」


ようやく口を開いた信長が問い掛ける、二人は”首がおかしくなるのでは!?”


と思う程、信長から顔を背け明後日の方向を向きながら


絞り出す様に口を開いた


「さ、さあ何でしょう・・・」


「私達には何も見えませんでしたが・・・」


睨みつけるようにジッと見つめる信長、もはや目線を合わせられない二人


無言の重圧が二人を責め立て滝のような大量の汗がボタボタと流れ落ちる


「今のは又左に見えたが・・・どうなっておる!?」


もう言い逃れできないと悟った二人は再び正直に話した


「お主らは何をやっておるのじゃ!?で、もう他にはないのか?


 もしあるのであればこの場で包み隠さず申せ‼」


信長の気迫に押され渋々自白する二人、今度は信長をつれ倉へと案内する


扉を開けると暗い倉内の片隅で膝を抱えながらすすり泣く男がいた


「お主・・・権六か?」


信長の呼びかけるような声に面を上げる柴田勝家、その顔は涙と鼻水で


グシャグシャになっていた


「お、お館様・・・おやがだざまは・・・僕よりも、秀吉くんや


 光秀くんの方が好きなの?・・・僕なんか・・・僕の事なんか・・・」


涙ながら訴える様に問いかけた、のちに秀吉と賤ヶ岳にて


天下分け目の大戦《おおいくさ》をする織田家一の猛将 柴田勝家である


「何じゃ権六、気色の悪い‼」


やや引き気味の信長、その言葉に余計に泣き出す柴田勝家


「うっうっうっ・・・やっぱりお館様は・・・僕の事なんか・・・」


信長はそんな柴田勝家を無言のままジッと見つめ静かに倉の扉を閉めた


次々と余罪が発覚しいたたまれない二人、その後、当然のように


信長からオシッコがちびる程怒られた、信長が帰った後も部屋の中で


正座しながらうなだれる二人、特にフリニオーラの落ち込み様は酷かった


ゾフィはそんな彼女を慰める様に明るく声をかける


「まあ、しょうがないわね・・・でも大事には至らず良かったじゃない


 しかし信長公もあんなに怒らなくてもいいと思わない?


 女の子がついたお茶目で可愛い嘘なんだから・・・」


フリニオーラはジト目でゾフィを見つめる


「何が”女の子がついたお茶目で可愛い嘘”ですか!?我々がやった事は


 悪質で姑息な隠ぺい工作ですよ、そんな可愛いモノじゃないです・・・」


「まあそうなのかもしれないけどさ・・・でもいつまでも落ち込んでても


 しょうがないじゃない、まだみんな宴会やっているだろうからさ


 気分転換に宴会会場に行かない?」


「とてもそんな気分になれませんよ・・・どうしてゾフィさんは


 そんなにお気楽なんですか、私は貴方のそういうところが・・・」


フリニオーラがそう言いかけた時、立ち上がろうとしたゾフィが


よろけて床に倒れ込んだ


「どうしたんですかゾフィさん、大丈夫ですか!?」


慌てて駆け寄るフリニオーラ、ゾフィは床に伏せながら


自分の状態を確認するかのように考えていた


『今日はこの子とやり合った時にサキュバリアスをいっぱい呼び出したし


 ドラゴンも三体呼んだからね・・・ちょっと魔力切れを


 起しかけてるのかな?それと正座で足がしびれて・・・


 こうして少し横になって休んでいればすぐに回復できるでしょ・・・』


そんな事を考えて天井を見上げていた時、フリニオーラが涙目で


覗き込み必死に話しかけてきている事に気が付く


「大丈夫ですかゾフィさん!?何があったんですか!?」


『心配してくれているんだ、かわいいなぁこの子は・・・そうだ!?』


ゾフィは何かを思いつき心の中でニヤリと笑う


「フリニオーラ・・・私はもうダメみたい・・・」


「な、何を言っているんですか、しっかりしてください‼」


「最後に私のいう事聞いてくれる?」


「何でも聞きます、聞きますから最後何て言わないでください‼」


「ありがとう・・・でもこれは私の遺言と思って聞いて・・・」


そんなゾフィの言葉に唇を震わせ涙があふれ出るフリニオーラ


「私の事は”お姉ちゃん”って呼んでくれる?」


「はい、わかりましたお姉ちゃん・・・」


「それと、毎日身だしなみはきちんとしなさいよ、毎朝ボサボサの髪で


 みんなの前に現れるなんて年頃の女の子がする事じゃないわよ・・・」


「わかりました、わかりましたから・・・死なないでください!?」


フリニオーラの流す涙がゾフィの顔にこぼれ落ちる


「あと服装や下着もダサすぎるからもっとちゃんとしたものを付けなさい


 それともう少し家事とかできないと将来困るわよ、あとあなたは


 胸が小さすぎるからバストアップを目指しての食事や運動をするの


 私が言い方法を知っているから後で教えてあげるわ


 それからね え~っとえ~っと・・・」


すでにフリニオーラの涙は止まっていた、無感情な表情を浮かべ


饒舌になって来たゾフィをジト目で見つめる


「あのお姉ちゃん・・・今から雷撃魔法を食らわしてもいい?


 それで目が覚めると思うんだ!?」


ゾフィはハッと気づき、すかさず起き上った


「違うのよフリニオーラ、今のはその・・・」


その瞬間フリニオーラは背中を向け強い口調で言い放った


「どうしてあなたはそんなにいい加減なんですか!?人がどれだけ


 心配したと・・・そもそも今回の事だって考え無しにその場の


 勢いと感情だけで行動するからこんな事になるんじゃないですか!?


 もう知りません‼大体あなたはですね・・・」


そこからフリニオーラの説教タイムが始まった、流れでジッと聞くしかない


ゾフィ、ヒートアップしていたフリニオーラの説教は一時間近く続いた


「わかりましたかゾフィさん、貴方はもっとちゃんとしてください


 いいですね‼」


長い説教の後、そう言い放ち部屋を出て行くフリニオーラ


一人部屋に残されたゾフィはフリニオーラに言われた事を考え


しばらくジッとしていたが時間が経つにつれ沸々と怒りが込み上げて来た


「なによあの子偉そうに・・・今回の事はあの子だって色々


 失敗してるじゃない!?いいわお姉ちゃんを怒らせると


 どうなるか・・・見てなさいよ!?」


ゾフィの目はすでに復讐者のモノへと変わっていた




翌朝フリニオーラはもはや日課になっている入浴の為に


浴場に向いながら昨日の事を思い出し少し反省していた


『昨日はゾフィさんに言いすぎたかな、私も気が立っていたんで


 つい・・・このままゾフィさんと気まずいのも嫌だな・・・』


そんな事を考えている時、前からルキアとライオスが歩いて来た


「おはようフリニオーラ、昨日は色々あったんだって?」


「ゼファーから聞いたぜ、俺達は剣の稽古でいけなかったけど


 なんか大変だったらしいな!?」


フリニオーラは思わず二人に昨日あった事を話し、信長公を


怒らせてしまった事、ゾフィに対して言い過ぎた事を反省している


と吐露しどうすればいいか助言を求めた


「そうか・・・でもそんなの簡単さ、その気持ちを正直に言えばいい


 ゾフィは根に持つような人間じゃないさ、素直に話せば必ず


 わかってくれるはずだよ、信長公には俺からも話しておくよ」


「そうだな、一番ダメなのはこのままずっと気まずいまま


 話しかけられないって事だからな、あいつの性格からして


 案外ケロッとしてると思うぜ!?信長公の事は俺達に任せておけ」


その二人の言葉に大きくうなづくフリニオーラ


「そうか、そうですよね、ありがとうございます、早速ゾフィさんに


 謝りに行ってきます‼」


嬉しそうな態度で二人に深く頭を下げ礼をするフリニオーラ


それを見て微笑むルキアとライオス、しかし二人はわかっていなかった


ゾフィは案外根に持つタイプでケロッとしていないという事に・・・


フリニオーラは浴場へ行くのを中止しゾフィの居場所を捜す


すると広間で朝食をとっているゾフィを見つけた、早速近づき話しかける


「あの、ゾフィさん・・・昨日の事でお話が・・・」


後から声をかけられたゾフィは思わず振り向くとそこには


何かを言いたそうでモジモジしているフリニオーラがいた


昨日の事を思い出し一瞬キッっと睨みつけるゾフィ


しかし何かを思いついたかのように態度を変えニコリと微笑む


「おはようフリニオーラ、話って何?」


「いえ昨日の事で・・・実は・・・」


フリニオーラが話し始めようとしたその時


それを遮るかのように口を挟んだ


「ちょっと待って、こんなみんなのいる所で話すのもなんだから


 後で私の部屋に来て頂戴、そこでゆっくり話しましょう」


微笑みながらそう優しく話しかけるゾフィに思わず嬉しくなるフリニオーラ


「はい、後でうかがいます‼」


嬉しそうにそう答えるフリニオーラ、そして踵を返し浴場へと向かった


『良かった、本当に怒ってないみたい、やっぱりルキアさんと


 ライオスさんに相談して良かった・・・』


そんな事を思いながらウキウキ気分で浴場へ向かう


フリニオーラの背中を睨みつけるように見つめるゾフィ


『また昨日の続きをしようって訳、まだ言い足りないっていうの!?


 いつまでも私が言われっぱなしで終わると思っているみたいね・・・


 いいわよ見てなさい、あなたに地獄を見せてやるわ・・・』


ゾフィの口元が怪しく笑った





ゾフィは部屋に帰ると早速、魔獣ブロレティアロドンを呼び出す


そして魔獣の能力でフリニオーラの天敵である虫を大量に呼び出し


部屋中を虫で埋め尽くした、その光景をマジマジと見つめるゾフィ


「自分の部屋が虫で埋め尽くされるなんて、我ながら


 気持ち悪い光景ね・・・でもこれで完璧よ


 さあいらっしゃいフリニオーラ、貴方が入口から入って来た途端


 この虫達が一斉にあなたに襲いかかるわ


 入口にはフロストの結界を張っておいて、入ってきたら最後


 10分は外に出られないようにしてある、私を馬鹿にした事を


 死ぬほど後悔するがいいわ!?」


思わずほくそ笑むゾフィ、そうとは知らず浮かれ気分でゾフィの部屋に


向うフリニオーラ


『よく考えてみればゾフィさんは少し考えが足りないだけで


 いつも悪気はないんですよね・・・いつも私の事を気にかけてくれる


 優しくてお節介で思い込みが激しくて早とちりな私のお姉さん・・・』


そう思うと自然と口元が緩むフリニオーラ


「よし、部屋に入ったらすぐ謝ろう、そしていつまでも私の


 お姉ちゃんでいてくださいって言おう・・・」


そう決意しゾフィの部屋をノックする


「どうぞ~」


部屋の中からゾフィの返事が聞こえた、嬉しそうに入口の


襖《ふすま》の取っ手に手をかけると何やら中で


ゴソゴソと不思議な音がしている事に気が付く


『何の音だろう?まあいいいか・・・』


音の事は異に返さずフリニオーラは満面の笑みで入口の襖《ふすま》を開けた


「あのねゾフィさん、私ね・・・・」



























 





 






今回でコメディ3部作は完結です、いかがだったでしょうか?やや悪乗りが過ぎたかな?

と思うところも多々ありましたが、基本楽しく書けました、私は重い話や暗い話を

書いた後に自分自身で気分が落ち込む為、精神衛生上楽しい話を書くことにしていますが

先日、"この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説”という映画を見てきまして

大変面白かったので気分的にコメディを書きたくなり、衝動的に書き上げた話があります

また近いうちにアップしたいと思いますので懲りずにお付き合いください

さて次話から本編に戻ります、こんな回り道ばかりしている為、本編が遅々として

進みませんが何とか頑張って最後まで書きたいと思いますのでよろしくお願いします、では。

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