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闇夜の暗殺者

登場人物

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児

杉谷善住坊…甲賀忍者の流れをくむ傭兵、鉄砲の名手であり信長の命を狙う

近江の領主、浅井長政の裏切りにより


撤退を余儀なくされた信長は


わずかばかりの家臣を連れて


急ぎ馬を走らせていた


一刻も早くこの場を離れる為に


本隊をも置き去りにする形で



一心不乱に京都を目指す信長一向


夜の闇が辺りを包み込む中


月明かりのみで森の中を駆ける


信長の脳裏には恐怖と怒りが入り交じった


複雑なものが湧きあがっていた


『おのれ長政、絶対に許さぬ


 この借りは必ず返すぞ‼』


そんな時である、信長の背中から不意に


自分を呼ぶ声が聞こえてきた


「ご無事ですか信長公!?」


驚いて声の方向に振り向いた信長は


驚きのあまり目を大きく見開き


半ば口を開けたまま絶句してしまった


そこには全力で走らせている馬に


グングン近づいて来るフリニオーラがいた


決して長いとは言えない足を信じられない程


激しく動かし物凄い速度で走って来たのだ


「フリニオーラ・・・


 お主一体!?・・・」


ようやく絞り出す様に問いかける信長


まるで出来の悪い特撮でも見ているような


その奇怪な光景を理解できない様子であった


そんな信長の態度を気にする様子も無く


説明を始めたフリニオーラ


「これは肉体の強化魔法により


 走る速度を強引に引き上げたんです


 しかし私は元々足腰があまり


 強くありません、ですから


 この魔法の効果ももうすぐ切れます


 できればどなたか一緒に馬に


 乗せてもらえると助かるのですが」


冷静に話すフリニオーラにうなづく信長


「しかしてお主はなぜここにおるのじゃ!?」


「ルキアさんの指示で信長公を護衛するために


 来ました、御無事で何よりです」


その説明にようやく納得したのと同時に


思いもよらないうら若き女性の援軍が


現れたせいか心なしか表情が緩む信長


「そうであったか


 誰ぞフリニオーラを


 馬に乗せて・・・」


信長がそう言いかけた時フリニオーラは


何かの気配を感じ表情が急に険しくなった


『これは闇の波動!?


 一体どこから!?』


「信長公、暗黒魔法が来ます


 伏せてください‼」


フリニオーラがそう叫んだ瞬間


”パパーン”という数発の銃声が


夜の闇を切り裂くように鳴り響いた


「ぐあぁぁぁ~‼」


「うぐっ!?」


「ぐはっ‼」


狙撃された信長の周りの者達が


うめき声をあげながら次々と


落馬していった


「うぐっ!?」


信長も肩を押えながら馬上でうずくまる


「大丈夫ですか信長公!?」


「大丈夫、かすり傷程度じゃ


 おのれ~どこから!?」


心配そうに駆け寄り周りを見渡すフリニオーラ


しかし先ほどの激しい銃声が鳴り響いた時とは


打って変わり、夜の森は再び静寂を取り戻す


ザワザワと風が木々を揺らす音だけが信長達の


耳に入って来てその静寂がいっそう不気味さを


感じさせた、そんな夜の森の中で隠れている


狙撃者を見つける事は至難の業である


おそらくは訓練を受けたプロの仕業である


ことは間違いなく、その姿はおろか


気配も全く感じさせなかった


『このままでは一方的に狙撃される


 だけになってしまいますね・・・


 ならば・・・』


フリニオーラは何かを決意すると背中の


マントをひるがえし信長の顔を覆い隠す様に被せた


「一体何を!?・・・」


驚き問いかける信長には何も答えず


右手の杖を高々とかかげた


「スパーキングハレーション‼」


その瞬間フリニオーラを中心に強烈な閃光が


辺りを照らした、それは昼間の日の光などとは


比べ物にならない程のまぶしい光であり


目の前が何も見えなくなるほど辺りを


真っ白に包み込むという凄まじい光だった


「ぐああぁぁぁ~‼」


周りの森から数々の叫び声が聞こえてくる


数秒後その強烈な閃光が収まると


フリニオーラは信長の顔を隠していた


マントを戻す、信長が辺りを見渡すと


周りにいた供回りの者達は全員目を押え


うめき声をあげていた


「目が、目が~‼」


何が起こったのか全く事態が飲み込めず


その光景を茫然と眺めている信長


「一体何をしたのだフリニオーラ?」


質問されたフリニオーラはすでに次の魔法の


準備に入りながら信長の問いに答えた


「皆に命の心配はありません


 いずれ回復しますから・・・


 先程の魔法は強烈な光を発生


 させただけのモノです


 人間の目は自分の許容範囲を


 超えた強い光を網膜に受けると


 光量調節が間に合わず目がくらみ


 一定時間見る事が出来なくなります


 特に夜目が効くような人間には


 効果覿面のはずです、その隙に


 敵の位置と数を探ります」


信長にはフリニオーラの言っている意味が


理解できない事も多々あったがそんな事には


お構いなしとばかりに次の魔法の準備に入る


フリニオーラ、下を向きながら目を閉じ


集中すると杖を地面に”コン”と叩きつけた


すると杖の先から光の波紋が一気に広がる


「21、22、23人ですね・・・」


そう言うとそっと目を開け静かに話しはじめた


「敵の総数と位置を補足しました


 これより掃討します」


そう言い終わるか否かの間に再び杖をかかげ叫んだ


「ミーティアレイン‼」


すると夜空がキラリと光り極小の流れ星の様な光が


頭上から次々と舞い降りてきた、そしてそれは


まるで一つ一つが意思を持っている生き物の様に


少しずつ軌道を修正していきながら次々と


闇夜の森に落下していった


「ぐああぁぁぁ~‼」


「ぎゃあああぁぁぁ~‼」


魔法による流れ星が森に落下する度


断末魔の様な悲鳴と絶叫がこだまする


フリニオーラの魔法によって


ロックオンされた敵は確実に


ホーミングされ次々と倒されていく


その光景を呆気に取られながら見守る信長


「これを全てフリニオーラが


 やっておるのか凄いモノじゃな・・・」


信長がそう呟いて感心していたその瞬間


「あっ!?」


フリニオーラが不意に驚きの声をあげ


厳しい表情を見せた


「一体どうしたのじゃ?」


その質問に歯ぎしりしながら口を開く


「私のマジックレインをかわした者が


 一人います、一体何者!?


 ・・・くっ、逃げるつもりですね」


そう言うと信長の方に振り向き告げる


「私はこれから狙撃手を追撃します


 おそらくあれが敵の首魁のはずです


 もう周りに敵はいないはずですから


 信長公は逃げてください、私も


 すぐに追いつきますから」


そう告げると信長の返事も効かずに走り始めた


強化魔法による凄まじい足運びで駆け抜けると


地面を覆い尽くしている大量の落ち葉が


その都度高く舞い上がった、そうして森の中を


しばらく走ると敵の背中をその視界に捕えた


黒い忍び装束に身を包んだその男は木々や


障害物を上手くかわし、まるで自分の庭を


走っているかのようにスイスイと進んでいたが


後ろからの気配を感じ思わず振り向いた


そしてフリニオーラの姿を確認すると


目を細め更に加速したのだ


「くっ!?逃がしませんよ‼」


それに合わせフリニオーラもさらに加速するが


その差は縮まるどころかジリジリと離されていき


ついには視界から消え去るほど


離されてしまったのだ


「くっ、足腰の差が出てしまいましたね


 そろそろ魔法の効力も切れそうですし


 魔力消費が更に大きくなるのでコレは


 使いたくは無かったですが・・・」


そう言いながら勢いよくジャンプすると


助走の効果もありその小さな体は


高々と宙に舞い上がった


最高点に達し落下が始まる寸前に


フリニオーラがボソリとつぶやく


「ハイフライ・・・」


その瞬間フリニオーラは空中でフワリと止まると


その真下にある地面の落ち葉が一気に舞い上がる


「行きますよ‼」


次の瞬間まるでロケットの様に加速する


フリニオーラ、飛行魔法の影響で地面の


木の葉が左右に分かれ吹き飛んで行く


森の木々をかいくぐり軽やかに飛翔する


その姿はまるで燕のごとくであった




「ようやく振り切ったか・・・」


野生の獣の様に森の中を疾走する


忍び装束の男はそうつぶやき一安心した


しかし背後からのただならぬ気配を感じ


再び振り向くとそこには一度振り切ったと


思っていた相手が飛翔しながらグングンと


迫っていたのである


「なっ!?」


その姿に驚き更に加速するがどうしても


振りきれない、木々をかき分けるように走り


何とか逃げようと試みたが疾風の様に猛然と迫る


フリニオーラ相手に引き離すどころかジリジリと


距離を詰められ追いつかれるのは時間の問題で


あった、とうとう覚悟を決めたのか


森の中の少し開けた場所で止まると


仁王立ちするような格好でクルリと反転した


「どうしました、もう諦めましたか?」


完全に追いついたフリニオーラは空中で


フワリと止まりまるで重力を無視するかの様に


ゆっくりと降下を始め地面に降り立った


「このままおとなしく捕縛されてくれると


 嬉しいのですが!?」


その言葉に忍び装束の奥の目が笑う


「何をたわけた事を・・・貴様のような


 小娘にみすみす捕まる俺ではないわ!?」


そんな怪しげな男相手に冷静な視線を向け


観察するようにしばらくジッと見つめていたが


向こうもこちらを見つめながら口を開く様子が


見えなかったので静かに問い掛けた


「貴方の最初の狙撃ですが鉄砲に暗黒魔法を


 加味して使用していましたね?


 先ほどの体術といい、もしかして貴方は


 レスティアレ・ラドスの関係者では


 ないのですか!?」


その問いかけに対し覆面越しに


ニヤリと笑う忍び装束の男


「レスティアレ・ラドス?なんだそれは


 聞いた事も無い名前だが!?」


まるで尋問するかのような視線を向け


再び問いかけるフリニオーラ


「ではあなたは一体何者ですか?


 なぜ信長公を狙ったのですか!?」


「人に名をたずねる時はまず自分から


 名乗るのが礼儀であろう・・・


 全く最近の若い奴らは・・・」


呆れる様にそう言い放つ忍び装束の男


『暗闇に紛れて暗殺を企てるような


 やからに礼儀を問われるとは・・・


 でも言っている事自体は正しいですので


 仕方ない、ここは自分から名乗って


 おきますか・・・』


フリニオーラはそう自分に言い聞かせると


そっと頭を下げ精一杯礼儀正しく答えた


「私の名はクルム・フリニオーラ


 魔法を少々たしなみます」


その瞬間、忍び装束の男の目が細まり


静かながらも少し険しい口調に変った


「クルムだと!?じゃあお前は


 あのハイドニールの・・・」


その言葉を聞いてフリニオーラのまぶたが


ピクリと反応する


「語るに落ちるとはこの事ですね


 師匠の名前を知っているという事は


 間違いなくレスティアレ・ラドスの


 関係者じゃないですか・・・しかし


 なぜあちらの世界の人間が信長公を


 狙うのです?そしてどうやって


 あちらの世界からここへ


 来たのですか!?」


そんな問い掛けに自嘲気味に笑う男


「これはしたり、まさかそんな事で


 ボロを出してしまうとはな・・・


 よかろう俺の名前は杉谷善住坊すぎたにぜんじゅぼう


 甲賀の流れをくむ忍びだ、今回は


 ある人からの依頼で信長の暗殺を


 請け負った、それが誰かは


 言えんがな・・・」


人を食ったような口調で淡々と話す杉谷善住坊


しかしフリニオーラが一番引っかかったのは


別の発言であった


「先ほどの言い回しですとどうやら


 貴方は師匠の事を知っている


 ようですね、どうして師匠を


 知っているのですか?」


その問い掛けに少し考え込む杉谷善住坊


どうやらその事について答えるべきか


どうかを迷っている様であった


「ふっ まあいいだろう、俺は貴様の


 師匠であるハイドニールと昔


 やり合った事があるんでな・・・


 だから知っているという訳だ


 あの糞ババアと戦った時には


 とても勝てる相手じゃないと感じて


 さっさと逃げたけどな、それ以来


 あのババアとの再戦の為に色々


 準備したんだが・・・どうやら


 アイツはくたばったらしいな!?


 はっ、いい気味だぜ はっはっは


 俺はその経験を生かして辛酸を重ね


 アレから魔法使いには連戦連勝だ


 俺にしてみれば魔法使いなど皆


 雑魚に等しい、お前が魔法使いで


 ある以上俺には絶対勝てんよ・・・


 相手が悪かったと諦めるんだな」


ヘラヘラと笑いながら師匠ハイドニールと


魔法使いを小馬鹿にするような発言をする


杉谷善住坊、以前のフリニオーラであれば


これだけ師匠と魔法使いの事を馬鹿にされたら


怒り心頭でムキになって攻撃したはずである


しかし今の彼女は怒りの気持ちを抱きながらも


冷静に相手を観察していた


『あの師匠相手に曲がりなりにも


 戦って生き残っているという事は


 それなりの力を持っているようですね


 そして相手の精神を逆なでする様な


 この戦い方は・・・』


何となく相手の正体をつかんだ


フリニオーラは冷静な口調で話しかけた


「貴方は暗殺者アサシンですね!?」


フリニオーラの言葉に初めて


厳しい目を見せる杉谷善住坊


「ほう、よくわかったな


 いかにも俺は暗殺者アサシン


 まあ少ししゃべりすぎたかな


 この辺でそろそろお前には


 死んでもらおうか・・・


 我が暗黒魔法の前に屍を


 さらすがよい‼」


そう言うと杉谷善住坊は両手を激しく動かし始め


顔の前で複雑な印を結び始めた


「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前‼」


その仕草に違和感を覚えるフリニオーラ


その時ふとある事を思い出した


『そう言えばゼファーさんが


 以前私に教えてくれましたね・・・』


前にゼファーが戦いについて教えてくれた


事があり、今それを思い出したのだ


その内容はこうであった


『いいかフリニオーラ


 相手がどんな攻撃をしてくるか


 わざわざ宣言したり大袈裟な仕草を


 してきた時はそれを印象付けて


 別の狙いがある場合が多い


 いわゆるミスリードというやつだ


 そういう時は冷静に相手を観察して


 敵の本当の狙いを探るのが先決だ


 必ず何か手がかりがあるはず


 それを見逃すなよ!?』


そんなゼファーの言葉が頭に浮かび思わず


ニヤリと微笑むフリニオーラ


そんな彼女の微笑む姿を見て不思議に思う


杉谷善住坊


『なぜ笑う?まあどうせこちらの


 魔法を侮り余裕を見せている


 つもりだろうが、お前ら


 魔法使いなど学校で勉強


 してきたことしか知らない


 世間知らずのボンボンだろ


 ・・・効率だの理論だの


 そんな杓子定規でしか物事を


 考えられないお嬢ちゃんに


 本当の実戦というものを


 たっぷり教えてやるぜ


 クックック・・・』


杉谷善住坊は激しい手振りで仰々しく派手な


仕草を繰り返し闇の波動をくり出していく


その時フリニオーラはある事に気が付いた


『あれだけ上半身でオーバーアクションを


 繰り出しながら下半身はほとんど


 動いていない・・・あっ、右足が!?』


杉谷善住坊の右足の足首から先だけ地面の


枯葉の山に埋まっていたのだ、次の瞬間


その右足を蹴り上げる様に高く上げた


その右足のつま先にはロープが引っかかって


いて枯葉に隠してあったロープをつま先で


引っ張る杉谷善住坊、その瞬間四方の木々から


数十本という竹槍の雨がフリニオーラの


頭上に降り注いだのだ、大量の竹槍が


一斉にフリニオーラを襲いその体を


次々と貫いていった


「はっはっは馬鹿め‼


 本当に魔法使いという


 人種はチョロすぎるな!?


 育ちのいいお嬢様がこれで


 実戦の恐ろしさというもの


 を思い知ったか!?


 とはいえまあ死んでるだろうから


 高い授業料だったと思って


 あの世で反省しな はっはっは」


高笑いしながら勝ち誇る杉谷善住坊


しかし次の瞬間笑い声がピタリと止み


唖然とした表情に変わった


何本もの竹槍で貫いたはずのフリニオーラ


の姿が徐々に薄くなっていき


やがて消えてしまったからである


「空蝉の術!?いや幻術イリュージョンか!?」


驚愕の表情を浮かべ周りをキョロキョロと見回す


杉谷善住坊、その時背後から声が聞こえたのだ


「すみませんねぇ、私育ちがあまり


 良くなくてお嬢様とは程遠い人生を


 歩んできておりまして・・・」


驚愕の表情で振り向くとそこには


フリニオーラが微笑みながら立っていた


「馬鹿な!?クソっ‼」


一瞬信じられないと言った表情を見せ


激しく動揺するがすぐさま我に返り


懐からクナイを取り出し反撃しようと試みる


「遅いですよ、ガイアズ アントライオン‼」


フリニオーラがそう叫ぶと杉谷善住坊の足元が


急に崩れる様に柔らかくなり、まるで


アリ地獄の様に地面に吸い込まれていく


「何だこれは!?」


何とかそこから脱出しようと色々試してみるが


もがけばもがくほど地面に埋まっていく


杉谷善住坊の体は徐々に沈んでいき


遂には地面から首だけを出しその下の


胴体部分は全て地面に埋まってしまうと


完全に身動きが取れなくなってしまった


そんな杉谷善住坊にゆっくりと近づき


冷徹な表情で見下ろすフリニオーラ


「どうして俺の攻撃がわかった!?


 魔法使いならばまず引っかかる


 あの罠になぜ!?」


その問い掛けにフッと笑い答えるフリニオーラ


「私の仲間にあの手の戦い方が得意な


 人がいるんですよ、あの人以上の


 トリックスターじゃない限り


 私を出し抜く事は出来ません・・・


 そしてあれ程”暗黒魔法”と強調する


 からには魔法以外の攻撃、つまり


 物理的な攻撃が来ると思っていました


 そして上半身が不自然なまでに激しい


 オーバーアクションの割に下半身は


 ほぼ不動でしたからね下半身の動きに


 注意を払っていたら案の定・・・


 という訳です、そしてあなたは


 魔法使いと戦いなれている様でした


 から幻術の後背後に回り隙ができる


 まで気配を消していたんです


 ”魔法使いは距離を取りたがる”


 という常識に囚われ私を見失ったら


 遠くを探索すると思ったので」


その淡々とした説明を茫然と聞いている


杉谷善住坊


『何てことだ・・・全てコイツの


 掌の上だったのか!?』


その時フリニオーラは地面から出ている


杉谷善住坊の頭を踏みつける様に右足を乗せた


その瞬間見る見るうちに顔色が変わり


見あげながら怒りの表情を見せ激怒する


「貴様何をするか!?この私を


 愚弄したいのか!?」


そんな言葉にも動揺することなく


冷静に答えるフリニオーラ


「別にあなたに屈辱を与えたいから


 頭の上に足を乗せた訳ではありません


 こうしてあなたの魔力系の術を封じて


 いるだけですよ、そもそもあなたは


 信長公を狙撃している犯人なんです


 このままの状態で信長公に引き渡したら


 あなたノコギリ引きの刑にでも


 処されますよ!?」


その言葉に思わず笑い始める杉谷善住坊


「はっはっは、私の魔力系の技を


 封じるだと!?馬鹿馬鹿しい


 そんな事ができる訳なかろう


 こんな束縛など一瞬で抜け出して


 見せるわ‼・・・あれ?なぜだ


 何も術が発動せんぞ!?・・・」


必死にもがきながら何とか術を使い


脱出を図るがどうにもならない様で


焦り始める杉谷善住坊


「だから言ったじゃないですか・・・


 今ここを中心に半径1.25m以内の



 全ての精霊、闇の波動、自然界の現象は


 全て私の支配下にあります、よって


 今の貴方はそれらを使った術を行使


 しても一切発動しませんから事実上


 使用不可能な状態なんですよ・・・」


その説明に対し苛立ち交じりに


反論する杉谷善住坊


「さっきから何を馬鹿な事を!?


 全ての精霊や闇、自然を支配下に置く


 だと!?俺を相手にそんな事が出来る


 はず無かろうが、そんなのは両者に


 余程の実力差が無い限り不可能な・・・」


吐き捨てる様にそう言いながら突然


ハッと何かに気づき思わずゆっくりと


フリニオーラを見あげる杉谷善住坊


その時ようやくわかったのだ


自分はとんでもない怪物に喧嘩を売って


しまった事に、そして目の前で自分を


見下ろす、まだあどけなさすら残る


この少女が桁違いの魔法使いだという事に


しかし気が付くのがあまりにも遅かった


しばらく呆然としながら言葉も


出せなかったがようやく口を開いた


「貴様のような小娘が・・・


 あのハイドニールより上の力を


 持っているとでもいうのか!?」


今まで冷静に対応していたフリニオーラが


その言葉に対し急に怒りはじめたのだ


「何を言っているのですか!?


 私ごときが師匠より上な訳


 ないでしょうが‼そんな言葉で


 私を惑わせようとしても無駄です


 嘘でももう少しマシなモノを


 ついてください‼」


杉谷善住坊はフリニオーラが


なぜこれほど怒っているのか


皆目見当がつかなかったが


何かを思いつき覚悟を決めた表情を


見せると体に力を込めはじめた


その気配に気づき忠告するフリニオーラ


「貴方は一体何をしようとして


 いるのですか?魔力を使った


 術式は発動しないとあれ程・・・」


しかしその忠告を無視するかのように


顔を真っ赤にして力を込める杉谷善住坊


「一体何をやっているんです!?


 体内でそれ程の魔力を暴走させたら


 貴方の体が・・・まさか自爆術式!?」


その言葉にニヤリと笑う杉谷善住坊


「貴様に勝つことは出来なかったが


 このまま無様に負けはせんぞ


 貴様もろとも地獄まで道連れ


 にしてくれるわ‼」


その覚悟に初めて慌てるフリニオーラ


すでに魔力の暴走は抑え様のない


ところまで来ていて、もう爆発寸前に


なっていたのだ


「もっと聞きたい事があったのですが


 ・・・仕方がありません


 グレーターボルケーノ‼」


爆発寸前の杉谷善住坊の体が


強烈な炎に包まれた


「ぎゃあああぁぁぁ~~‼」


杉谷善住坊の断末魔と共に


暗い森の夜空に立ち上る巨大な火柱


天まで届くかと思われた火柱だったが


数秒後にそれは収束していき、何事も


無かったように再び静寂が訪れた


一人残されたフリニオーラはガックリと


肩を落とし信長の元へと急ぐこととした


「結局真相は何もわからなかったです


 ・・・でもレスティアレ・ラドスと


 この世界が何かでつながっている事


 そして信長公が狙われている事が


 ハッキリわかった事だけが収穫ですね」


そう呟きながら飛行魔法で再び


浮かび上がるフリニオーラ


数刻前まで死闘があったとは思えない程


静寂と闇が辺りを支配し木々を揺らす


風の音だけが聞こえるその場所で


舞い上がった落ち葉だけがその場を飛び去る


フリニオーラを称えているかのようであった。


 


 


 






 


今回はバトル中心のお話しですいかがだったでしょうか?

この話から三話ほどバトル展開が中心です、今回はフリニオーラ

の戦いでした、敵として登場させた杉谷善住坊は信長を狙撃し

かすり傷を負わせた後逃亡しましたが数年後に捕えられ

首から下を地面に埋められノコギリ引きの刑に処されたそうです

今回はそれっぽい流れをやってみましたが、正直難しかったです

ちゃんとできていたと思っていただけると嬉しいです

次話はルキアとゼファーのバトル中心となります

また懲りずにおつきあいください、では。

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