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外伝 激闘 ネズミVS キツネ

登場人物


ハインリヒ・メルカント…享楽札魔術師の異名をとった凄腕のカードキャスター

 酒と女が大好きなお調子者


ギャレット・ゼファー…カードキャスターに憧れてメルカントに弟子入りした少年


アダム・サラ…武器を扱う店でモデルをしている、美人で気遣いの出来る女性


メルカントとゼファーの奇妙な新生活が始まり


はや一週間が過ぎようとしていた


二人の間にはピリピリとした妙な緊張感が漂い


やもすれば師弟関係がギクシャクし


不仲になってしまうかも!?・・・


という危惧すら想像できた


しかしそんな二人の関係が


おかしくならなかったのは


二人の間を見事に中和してくれる


人物がいたからだサラである


元々彼女の提案から始まった


この二人のおかしな


生活に対し提案者として


責任を感じたのか三日に一度は


メルカントの家を訪れ色々な世話を


焼いてくれたのだ、食事の用意から


洗濯、掃除、買い物、部屋や倉庫の


片付けまでもやってくれた


男二人の生活にとっては


とてもありがたい事であった


「ねえ師匠、サラさんは何で


 ここまでしてくれるん


 でしょうね?」


「そりゃあお前、俺に


 惚れてるからに


 決まってるだろ


 そんな事もわからん


 お子様なのかお前は?」


「はっはっは、師匠のどこに


 女が惚れる要素があるんですか?


 本当に師匠は冗談が上手いですねぇ」


「てめえケンカ売ってるのか!?」


「あれ?カードキャスターは


 平常心が大事なんじゃ


 なかったんでしたっけ?」


「バーローそれは戦闘での


 話だ、それに俺は全然


 怒ってなんかないからな!?」


「そんな嘘ばっか言っていると


 サラさんに愛想つかされますよ


 まあでもその時は俺がサラさんを


 幸せにしてあげますから


 師匠は草葉の陰で喜んで


 いてください!?」


「バーカ、サラがお前みたいな


 ガキ相手にするかよ


 なあサラ!?」


その時、近くで掃除をしていたサラに


対し急に話しかけるメルカント


「えっ!?なんの話?」


突然呼びかけられ思わず問い返すサラ


「いやゼファーの奴が


 生意気にもお前を


 嫁にするとか言ってな」


師匠によりいきなりバラされた


プロポーズ発言に滑稽な程


慌てふためくゼファー


「いえそれはそんな


 意味じゃなくてですね


 それは話の流れと言うか


 そのですね・・・」


そのアタフタするゼファーの


仕草を見てクスクス笑うサラ


「そうありがとう


 でもゼファー君みたいな


 若い子から見たら私なんて


 おばちゃんよ!?」


「いえ、そんなことないです


 サラさんは凄くきれいで


 全然若いですよ!?」


「まあ若いくせにお上手ね!?」


ゼファーはこのサラの笑顔が


たまらなく好きだった


少し気が強いところはあるものの


美人なのにちっとも気取ったところが無く


人が触れてほしくない部分には絶対に触れない


優しさと気遣いがあった、しかしそんな


淡くてほのかな少年の心を踏みにじる男がいた


勿論師匠であるメルカントである


彼はゼファーの心を知りながら徹底的に


そこを攻めて来たのだ、ゼファーとサラの


会話が終わる頃、何気にサラに声をかけた


「なあサラ、今日は泊まっていくんだろ?」


「えっ!?あ・・・うん、そうしようかな」



少し恥ずかしそうに顔を伏せそう答えるサラ


その姿を見て勝ち誇ったかのように


二マリとゼファーを見つめるメルカント


ゼファーは思わず目を逸らし舌打ちをして


家を出て行く、サラが泊まる日は気をきかせて


必ず外泊する事にしていたのだ


それは一昨日の夜から始まった


二人が生活をしているメルカントの家は


町はずれの荒野に一軒だけ建っており


二人で住むには大きすぎるほどに


広いのだが壁が薄く部屋の声や音が


外に漏れるのだ、その日夜中に目を覚ました


ゼファーが師匠の部屋の前を通ると中から


漏れてくる声に思わず固まってしまった



それはサラが色っぽい声をあげながら


喘ぐ声だったのだ、部屋の中で何が


おこなわれているかはすぐにわかった


思わぬ事態に慌てて自分の部屋に戻り


布団をかぶって眠ろうとした


ゼファーだったがその日の晩は


サラの声がずっと頭を離れず


結局その日は一睡もできなかった


次の日の朝、恥ずかしくてサラの顔を


まともに見る事すらできないゼファー


当のサラには気づかれなかったが


ゼファーのよそよそしい態度を見て


全てを悟ったメルカントは二マリと


微笑みながらゼファーに近付き耳元で


ささやいた


「さてはお前、昨夜の俺達の事を


 盗み聞きしていたな~


 このエロガキが!?」


ゼファーはビクッと反応し固まってしまう


それはもうメルカントにとっては


白状しているのと同じであった


「じゃあ何があったか


 教えてやろうか?


 サラはなああ見えて


 凄いんだぞ!?


 昨日も☓△◎☆で


 ※▲□〇な△☓☆▲でな


 〇▲□※☓☆△◎・・・


 どうだ?女は凄いだろ


 そして女は怖いぞ~」


聞いているゼファーは耳が真っ赤になり


恥ずかしさで居ても立ってもいられなくなる


ただでさえ思春期に入る頃の男子でありしかも


憧れている女性のそんな事を聞かされたら


頭の中は完全にオーバーヒートしてしまい


心臓がおかしくなるほど鼓動し血が逆流


するかのような錯覚を覚えてしまった


そんな状態に耐えられるはずも無く


ゼファーは逃げ出す様に走り去った


そんな後姿をニヤニヤしながら


見守るメルカント


「ねえゼファー君どうしたの?」


キョトンとした表情で問いかけるサラ


「さあ?急に腹でも痛く


 なったんじゃねーのか?」


何事も無かったかのようにそう答える


メルカント、しかしこの男の執拗な攻撃は


これで終わるはずが無かった


ゼファーが何か口げんかを仕掛けてくると


必ずこれを持ち出してくるのだ


それはゼファーにとって


最恐最悪の武器であり


メルカントにとっては絶対防御に


等しい武器であった


その日も夜を別の場所ですごし朝になって


家に帰って来たゼファー”どうにかせねば・・・”


と考えながら玄関のドアを開けると


奥からほのかにいい匂いがしてきた


どうやらサラが朝食の用意をしているようで


奥に入って行くとサラがエプロン姿で


優しく迎えてくれた


「おはようゼファー君


 もしかしてまた外泊したの?


 そんなとこばっか師匠の真似


 しなくてもいいのよ


 まぁ夜遊びしたい年頃だもんね


 でも最近は魔族も近くで


 目撃されていてるって聞くし


 ほどほどにして


 おかないと危ないわよ!?」


そのサラの屈託のない笑顔を


見てどうしようもなく師匠に


腹が立ってくるゼファー


「まだ朝食は食べてないんでしょ?


 あの人はまだ寝てるけど


 貴方の分も作ってあるから


 二人で先に食べちゃおうか!?」


嬉しそうに話しかけてくるサラを見ていて


その時ゼファーの中で何かが弾けた


もうこれ以上サラを辱める言動を


聞きたくないという思いが


とんでもない決断を導いたのだ、ゼファーは


思い詰めたような表情でサラに話しかける


「あの、実はサラさんに折り入って


 相談したい事がありまして・・・」


あまりに唐突な相談の申し出に


少し戸惑うサラ、しかしゼファーの


深刻な表情を見て無下にはできないと


判断し目の前の少年に真剣な眼差しを向け


精一杯受ける事にした


「何、あらたまって・・・


 私で解決できる相談なら


 いいのだけど・・・」


「はい、ていうかサラさんにしか


 解決できない相談なのです・・・」


「なに?私にしかできない事って・・・」


そこから聞かされる内容はサラの想像を


遥かに超えるとてつもない内容であった


「実はその・・・大変言いにくい


 のですが・・・師匠がサラさん


 との夜の事を事細かに僕に


 話してくるんです・・・


 僕が照れながら恥ずかしがって


 逃げ出すのが楽しくて仕方がない


 みたいでして・・・


 どれだけ止めてくれと頼んでも


 余計に面白がってしまって・・・


 僕もう耐えられないんです


 サラさんの方から師匠に言って


 くださいませんか?」


その話を聞いたサラは哀れな程


取り乱していた、顔は真っ赤になり


首を振りながら頭を抱えていた


半開きの口は震えながらパクパクと


動いて何かを言いたがっている様だが


全く言葉になっていなかった


あまりの恥ずかしさにゼファーの顔も


見れなくなると急に立ち上がり


背中を向けて頭を抱えながらうずくまった


サラはそのままずっと動かなかったが


しばらくするとワナワナと震え出し


スッと立ち上がる、そして台所にあった


フライパンを勢いよく掴み大股で


メルカントの部屋へと向かうサラ


その表情は正に鬼の形相と呼ぶに


ふさわしいモノだった


その姿を見ながら呆然と立ち尽くすゼファー


すると師匠の部屋のドアを


激しく開ける音がした後


今まで聞いた事も無いサラの


金切り声が家じゅうに響いた


「メルカント~‼


 アンタって人は‼」


その後ボコボコという打撃音と


般若と化したサラの金切り声が


怒号の様に響き渡る


「まて、まずは落ち着け‼」


「落ち着いていられる訳ないでしょ


 アンタなんか殺してやる‼」


「まてサラ、暴力はいけない


 暴力反対‼」


そんなメルカントによる停戦協定の


要求はむなしく却下され


サラ正規軍による絨毯爆撃《じゅうたんばくげき》が


容赦なくメルカントの


顔面を襲い焦土と化した


そんな激しい猛攻が15分程続いた後


ようやく気が済んだのか息を荒げながら


サラが部屋を出て行く姿が見えた


もうゼファーは考える事を止め


サラが用意してくれた朝食を一人


黙々と食べ始める、しばらくすると


完全に別人となり果てたメルカントが


ゼファーの前にぬ~っと現れた


「あっ、おはようございます師匠


 どうしたのですかその顔は?


 猫にでも引っ掻かれましたか?」


座って黙々と食事をしているゼファーを


ジッと見下ろすメルカント、その顔は


原形をとどめない程にボコボコに


腫れ上がっていて、各所に爪で


引っかかれたような傷が見受けられた


「まあな、いつもは可愛くて


 愛らしい猫がどういう訳か


 今日は虎になっていたんだ


 ・・・おそらく小賢しい


 ネズミにでもおかしな事を


 吹き込まれたと思うんだが


 お前何か心当たりは無いか?」


完璧にゼファーが犯人だと目星を付けている


メルカント刑事、どうやって追い詰め


自白《ボロ》を出させるか


虎視眈々とうかがっていた


「さあ?まるで心当たりは


 有りませんが・・・


 こういう場合おとぎ話だと


 性悪狐が悪さの限りを


 尽くして最後にしっぺ返し


 を食らうってのが定番


 ですよね!?


 どうせソレに近いんじゃ


 ないんでしょうか!?」


メルカントの追及にもまるで


動揺することなく淡々と答える


怪盗ゼファー、その目は決して


証拠はつかませないぞ!?


と言っていた


「ほぅ~そうかそうか


 だが性悪狐ってのは


 懲りないんだぜ!?


 どんな困難が待っていても


 相手の嫌がる事を確実に


 成し遂げる、それが


 性悪狐のアイデンティティ


 なんでな!?」


呆れる様に首を振るゼファー


「志が高いのか低いのか


 わからん発言ですね・・・


 正義は必ず勝つんですから


 もう止めておいた方が


 いいですよ性悪狐師匠!?」


ニヤリと笑いながらメルカントが


話し始めた


「今、可愛い子猫ちゃんは


 裏の庭で洗濯物を干している


 最中だ・・・これで終わりだと


 思うなよ!?言っただろ


 カードキャスターは相手の


 弱い所をとことん突くのが


 戦略だと」


呆れる様にジト目で


師匠を見つめるゼファー


それにもかまわず嬉しそうに


語り始めるメルカント


「じゃあ昨日出来たばかりの


 おとぎ話の始まり始まり~


 むか~し むかしじゃない


 昨日の夜にベッドの上で


 可愛い子猫ちゃんと


 ハンサムな狼さんが


 仲睦まじく遊んでいると・・・」


その話が始まるとゼファーは


大きく息を吸い込み


一瞬息を止めると


裏庭にも聞こえる程の


大声で叫んだのだ


「サラさ~ん‼師匠が


 昨日の夜の話を僕に


 聞かせようとして


 いますけど~~‼」


その瞬間、裏庭で何かを落とした様な


”ガシャーン”という音が響き


猛然とこちらへ走って来る


足音が聞こえたのだ


ゼファーによる突然の通報に


一瞬にして顔色が変わるメルカント


「このガキ、なんてことしやがる‼」


それに対し平然とした表情で


諭す様に語るゼファー


「いいんですか師匠?


 フライパンを持った子猫ちゃんが


 もうすぐ狐退治に現れますよ!?」


「てめ~覚えてやがれ‼」


すでに後ろを向き走りながら


捨て台詞を言って去っていくメルカント


そんな師匠の後姿を見つめながら一言つぶやく


「無理ですね~


 俺忘れっぽいんで・・・


 しかし人間追い詰められると


 あんな雑魚キャラが


 使うようなテンプレなセリフも


 出るもんなんだ・・・


 やっぱ大事なのは平常心か


 勉強になりますよ師匠」


そう言い終わるか否かの時


息を切らせながらサラが入って来た


右手にはフライパンを握り締め


殺気混じりのギラついた眼で周りを


キョロキョロ見回していた


「あの馬鹿はどこ?


 どこ行ったのよ‼」


ゼファーはペコリと頭を下げ口を開く


「すみません、今しがた逃げました


 ウチの師匠は逃げ足だけは世界一な


 モノですから・・・」


その言葉に思わず吹き出すサラ


そして我に返ると恥ずかしそうに問いかけて来た


「御免なさいねゼファー君


 変な事に巻き込んじゃって・・・


 私の事、軽蔑した?」


その言葉に勢いよく首を振る


「まさか!?悪いのはウチの


 馬鹿師匠じゃないですか!?


 むしろサラさんは被害者です


 もう二度あんな事言わせない


 ようにしましょうね


 僕はいつでもサラさんの


 味方ですから」


 「ありがとうゼファー君」


ニコリと微笑むサラのその姿に


心癒されるゼファーだった





メルカントとゼファーの奇妙な師弟生活は


六年続いた、相変わらずサラは通いながら


甲斐甲斐しく二人の世話を焼いてくれていた


その頃になると勉強も専門的な事が増えてきていた


「いいかゼファー、諜報活動や


 隠ぺい工作、潜入捜査に


 要人暗殺なんかの隠密行動は


 カードキャスターの本分と知れ


 戦闘じゃないから好きなカードを


 使いながら行動できるという


 メリットがある、汚れ仕事を嫌がるな


 それがチームの為になると心しろ」


その教えにうなづくゼファー


「そしてこんな言葉がある


 ”カードキャスターは万能たれ”


 だこれは至言と言ってもいい


 まあ俺の言葉なんだけどな


 薬、植物、動物、地理、科学


 全てにおいて専門家並みの


 知識を持て」


一般教養に近いモノから専門的な事まで


実戦においていかに役に立つかをふまえての


講義は本当に役に立った、ゼファーが師匠を


見直す数少ない機会でもあった


「いいかゼファー


 よく”五感を研ぎ澄ませて戦う”


 なんて言葉を聞くがなありゃあ嘘だ


 ほとんど奴は視覚と聴覚を頼りに


 戦っているのに過ぎない


 だが俺たちカードキャスターは


 これに嗅覚を使うんだ」


「嗅覚?つまり匂いですか!?」


大きくうなづくメルカント


「匂いってのは意外と盲点なんだ


何せ見えないし聞こえないからな


それが鼻をつく嫌な異臭、悪臭なら


 逃げられたり防がれたりする


 可能性も高いがもしそれが


 いい香りだったらどうだ!?


 相手が動揺していたり


 心が弱っている時に


 鼻をくすぐる優しげな香り・・・


 これで相手が一瞬でも心奪われたら


 もうこっちのものだ


 これは戦闘時以外でも使い道は多い


 よく覚えておけよ」


そして師匠の話は続く


「いいかゼファー、特に知って


 おかなければいけないのは


 武器、装備品、アイテムの事だ


 皆知っている様だが意外と


 知らない奴が多いんだ


 なぜなら皆自分の専門外の物には


 無頓着だからな、しかし相手の


 武器や装備、アイテムを一目見て


 その特性を見抜ければそれだけで


 戦術が変る戦況を有利に戦える


 俺達がラッキーなのはそれに


 関してはサラが詳しいからだ


 下手な専門家や俺なんかよりも


 ずっとな、俺も色々教えて


 もらったもんだぜベッドの上でな」


そう言いながらニヤリと笑うメルカント


もはや呆れてツッコまないゼファー


『どうしてこの人は


 尊敬できそうになると


 自分で自分を落とす


 んだろう・・・自虐癖


 でもあるのか!?』


ため息をつき呆れるゼファー


そんな事もありながらサラにも


特別講義をしてもらう事となった


その内容は非常に濃く専門的で


後々までゼファーを助ける事となる


「いいゼファー君 


 武器、装備品、アイテムで


 重要なのは


 ・何でできているか?


 ・どんな力があるのか?


 ・どんな特性があるのか?


 この三つと思っていいわ


 二つ目と三つ目を同じと


 考えている人が結構多い


 んだけどこれは似て非なるもので


 それを見誤るとその物の本質を


 見抜けないわ、一見何の変哲もない


 物に見えても実はとんでもない


 代物だったなんてのはこれに


 よくあるパターンね、具体的には


 伝説の武器とか呪われたアイテム


 とかに多く、その見分け方はね


 ・・・」


サラの講義は特に熱心に聞いていた為


ゼファーの頭の中にいつまでも


深く刻まれる事となる


ある時不思議に思ったゼファーが


サラに聞いた事があった


「サラさんはなぜそんなに武器や


 アイテムに詳しいんですか?」


サラは少し照れながらこう答えた


「私は今の仕事好きだし


 誇りを持ってやっている


 でもねモデルなんて


 いつまでもやれる仕事


 じゃないからね・・・


 せっかく武器やアイテムと


 近い仕事してるんだから


 将来販売や斡旋


 コーディネイトみたいな


 仕事が出来たらいいな・・・


 って思っているのよ


 でもあいつにはこの事は


 内緒にしててね!?」


舌を出してイタズラっぽく笑う


その笑顔の奥には


”将来メルカントと一緒に・・・”


という思いが見え隠れしていた


そんなけなげな姿に


益々惹かれるゼファーだった


  


 


修行の方も実戦形式のモノが増え


二人で旅をしながら魔族と戦うという事も


増えてきた、既に6回目の旅となった今回


星空の下でたき火をしながら会話する


メルカントとゼファー


「もう今回で何度目の旅だ?」


「そうですねぇ・・・


 確か6回目になると思いますよ」


「そうか・・・じゃあそろそろ


 終了だな、お前に教える事も


 もうほとんど無くなった


 思ったより早かったが


 帰ったら卒業だ


 どうだ感想は?」


「感想は?ってそんな


 いきなり言われても


 困りますよ・・・


 仮にも六年も師弟を


 やってるんですから


 もう少し感慨深げに


 言うもんじゃないん


 ですか!?


 ムードも何もあった


 もんじゃないですね!?」


「男同士でムードとか


 言ってるんじゃねーよ


 気持ち悪い奴だな


 四の五の言ってないで


 何か感想言え、俺に対して


 感謝と賛辞以外の言葉が


 入っていた場合は


 やり直しだからな!?」


呆れ顔でため息をつくゼファー


「なんすかそれ?そういうのも


 パワハラって言いませんか?


 そうですね・・・


 正直こんなガキ相手に


 六年間も付き合ってくれた


 事には素直に感謝です・・・


 まあ後半の4年ぐらいは


 俺が付き合ってやった気が


 しないでもないですが・・・」


「なんだそれは!?やり直し‼」


ゼファーは呆れてお手上げとばかりに


両手をかかげ首を振る


「でもカードキャスター


 という職業に出会えたことは


 本当に感謝です、もう少し


 まともな師匠なら尚よかった


 気がしないでもないですが


 ・・・」


メルカントは睨んだまま無言で


”もう一度”とジェスチャーで伝えた


ヤレヤレとばかりのジェスチャーで


返すゼファー


「カードキャスターになるってのは


 一応子供の頃からの夢でしたからね


 正直想像していたのと現実は


 かなり違いましたが・・・」


その時メルカントがある事に気が付いた


「お前そう言えばいきなり


 俺の所に訪ねて来て


 ”カードキャスターになりたい”


 って言ってきたよな!?」


「はい、ですから子供の頃からの


 夢だと今言ったばかりですよ


 三歩も歩いてないのにもう


 忘れちゃったんですか?」


メルカントはその言葉には反応せず話を続けた


「しかし何でカードキャスター


 になりたいなんて思ったんだ


 お前は? 少なくとも


 子供が憧れる職業としては


 マイナーでマニアックだし


 俺に憧れて・・・ってのは


 少し考えにくい、なにせ俺は


 昔からやたら誤解されやすい


 人間だからな・・・」


ゼファーは大きくため息をつく


「ツッコみませんけどいいですか?


 不本意ながらあなたに憧れていた


 というのは事実ですよ、子供の頃は


 それこそあなたの事を誤解して


 いましたからね、師匠の事は


 両親から聞いていたんですよ


 ・・・」


「ほぉ~両親?


 俺の事を知っているとは


 中々の人物だったんだな・・・


 そういえばお前のフルネームって


 知らねえな、なんていう名前なんだ


 お前は?」


もはや呆れて答える気力すら失せてくる


内容の発言に、何とか気力を振り絞って


答えるゼファー


「六年ずっと一緒にいてもうすぐ


 卒業って時に”名前おしえろ!?”


 ですか!?どんな神経しているん


 ですか師匠は・・・俺の名は


 ギャレットですよ・・・


 ギャレット・ゼファー


 それが俺のフルネームです」


その名を聞いて驚愕の表情を


浮かべるメルカント


「ギャレット?ギャレットだと!?


 じゃあお前まさかマリーナの!?」


再び呆れる様に答えるゼファー


「そうですよ・・・


 師匠が理想の女性とか言ってた


 ギャレット・マリーナは



 俺の母親です、もちろん


 ギャレット・ミッテンベルグが


 俺の親父ですけどね・・・


 今ようやく気付いたんですか!?」


額に手を当て天を仰ぐメルカント


「なんてこった!?


 衝撃の事実ってやつだな


 まさかこんなオチが


 待っていたとは!?」


「オチとか言わないで


 くださいよ全く・・・


 俺の両親が生きていた頃


 師匠の事を聞いたんです


 ”凄い人がいる”って


 ”カードキャスターは凄い”って


 その未知の職業を耳にして俺は


 子供心にワクワクして聞いたんです


 だから俺はカードキャスターを


 目指したんですよ・・・」


しばらく黙って考え事をしているメルカント


そして静かに問いかけた


「お前・・・俺が二人を見捨てて


 逃げたって事を知ってて何で


 俺の弟子になった?」


少し間を空け夜空を見上げる様に


語り始めたゼファー


「最初は師匠の事恨みましたよ


 周りの大人たちも皆


 師匠の悪口ばかり言って


 ましたからね・・・


 でもあの人たちに


 ”母と父の仇を取って‼”と


 頼んでも誤魔化すだけで


 誰も返事は返って


 きませんでした


所詮魔王も魔族も他人事と


思っている人達ばかりでした


 結局魔王と戦った事も


 無い奴が魔王と戦った奴の


 悪口を言う権利なんて無い


 と子供心にそう思ったんです・・・


 そして師匠を逃がす為に


 体を張って死んだ両親は


 師匠にそれだけの期待と


 可能性を感じていたからだと


 思いました・・・


 だからここに来たんです


 父と母が信じた


 ”カードキャスター”の力を


 もし師匠がダメでも俺が


 その技で魔王を倒してやる


 ってね・・・」


メルカントはその話をジッと聞いていた


「何ですか師匠そのシリアスな顔は!?


 止めてください似合いませんから」


それでもジッと見つめ続けるメルカント


「ゼファー・・・お前・・・」


「な、なんですか!?」


「お前やっぱマリーナに似てるな!?


 よく見ると顔つきとか目元なんか


 そっくりじゃねーか!?」


「ま、まあ親子ですから・・・


 似ていても不思議じゃない


 でしょう・・・」


「髪色が親父と同じ黒髪だったから


 気が付かなかったが・・・


 そうだ!?お前この旅が


 終わって家に帰ったら


 金髪のカツラ買ってこい


 そしてそれかぶって


 俺にキスさせろ‼」


「げえ、何言ってるんですか!?


 気持ちの悪い事言わないで


 くださいよ全く・・・珍しく


 シリアス展開かと思ったら


 台無しだな・・・」


「ちっ!?恩義を感じない


 弟子を持つと師匠も苦労するぜ」


”ダメだこりゃ”とばかりに


ゆっくり首を振るゼファー


「じゃあ俺からシリアスな


 話していいですか?」


少しビビった様に構えるメルカント


「何だよあらたまって・・・


 俺は男とはシリアスな話


 しない事にしてるんだが!?」


「安心してください、話の


 内容は女性の事ですから・・・


 話というのはサラさんの事です


 いい加減サラさんを待たせるのは


 止めたらどうですか!?」


痛い所を突かれたとばかりに


顔をそむけるメルカント


「俺の卒業はいい機会です


 ちゃんとサラさんに


 向き合ってあげて下さいよ


 師匠だってわかっているはずです


 サラさんはずっと師匠の言葉


 を待っています、男らしく


 責任を取ったらどうですか!?」


ゼファーの言葉にうつむき


静かに考えるメルカント


「お前みたいなガキに


 言われるとは・・・


 わかってる、でも俺じゃあ


 ダメなんだよ・・・」


「そりゃあダメでしょう


 師匠みたいなダメ人間に 


 本来サラさんは釣り合いません


 言っておきますがサラさんは


 相当いい女ですよ


 美人で優しくて家庭的だし


 頭もいいし気遣いが出来て


 しっかりしている・・・


 長所を上げればキリがない位の


 凄い女性なんですよ


 唯一の欠点と言えば絶望的な程に


 男を見る目が無いって事ぐらいです



 でもこの際その欠点につけこんで


 師匠らしい戦いをすれば


 いいじゃないですか!?」


「てめえ黙って聞いていれば


 言いたい放題言いやがって


 ・・・そもそもお前だって


 サラに惚れてるんだろが!?


 俺とくっついてもいいのかよ!?」


「いいわけないでしょ‼


 惚れた女《ひと》がみすみす不幸になる


 のを歓迎する男がいると


 思いますか!?


 でもしょうがないんです


 サラさんがそれを望んで


 いるんですから・・・


 大体師匠だってサラさんの


 事が好きなんでしょ?」


 思わず息を飲むメルカント


「しかしよ・・・惚れた女の


 幸せを願うのが男だろ」


またもや大きなため息をつくゼファー


「あのですねぇ・・・


 人の母親に岡惚れしておいて


 今更カッコいい事言っても


 説得力なんかありませんよ」


「岡惚れって・・・


 嫌な言葉知ってやがるな


 せめてもう少しロマンチックな


 言い方ってもんがあるだろ


 横恋慕とか片思いとか・・・」


「いい方なんかどうでもいいですよ


 やってることは同じなんですから


 今思えば俺のガキの頃


 サラさんとの情事をわざわざ


 俺に話したのも


 ”これは俺の女だから手を出すな”


 ってアピールでしょ!?


 今ならわかりますよ・・・


 全く10歳のガキ相手に


 何やってるんですか・・・


 そんなことしちゃうくらい


 サラさんが好きなんでしょ?


 いい加減ちゃんとして


 あげてください‼」


メルカントは珍しく深刻な表情で


夜空を見上げ独り言のようにつぶやく


「そうだな・・・その通りだ


 ちゃんとしなきゃな・・・」


満天の星空が二人の未来を歓迎


しているかのように瞬いている


と感じたゼファーだったが


その予感は大きくはずれる事となる。


 




 

ゼファー編の3話目でしたがいかがだったでしょうか?

今回はバトルも中二的な要素もあまりない日常回でしたが

かなり長くなってしまいました、これでもかなり

削ったつもりなのでどうかご容赦ください

次回の4話と5話がこの話の本題ですので

懲りずにおつきあいください、では。

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