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清州勇同盟

アドリアン・ルキア…伝説の聖剣”ブレイヴ・。ハート”を持つ勇者、人々の為に戦うという信念を持っている

ロット・ステイメン…主に回復や防御をおこなう僧侶、常に冷静沈着で戦術指示も出すチームの頭脳的な存在

ルース・ライオス…2m近い長身で屈強な戦士、一人で魔獣を倒したこともあり”魔獣殺し”の異名を持つ、兄貴肌な性格でチームの精神的支柱にもなっている

ギャレット・ゼファー…カードキャスターという珍しい職業だが非常に優秀、自分からチームに売り込みに来たが自分の事は話したがらない、いつも冗談を言って場を和ませるチームのムードメーカー

ライドン・ゾフィ…召喚魔術師の名門ライドン家の生き残りで五体ものドラゴンを操る事ができる凄腕、一族の間では”神に愛された至高の召喚魔術師”と言われていた

クルム・フリニオーラ…世界最強の魔法使いと言われたクルム・ハイドニールの弟子で師匠の仇である魔王を憎んでいた、史上最年少で”クルム”の名を継いだ天才魔法使い

織田信長…尾張の大名、頭が切れ行動力とカリスマ性を兼ね備えた戦国時代の風雲児

木下藤吉郎…ルキア達の戦場での活躍を診て織田軍にスカウトした人物後の豊臣秀吉

柴田勝家…織田軍の猛将、のちに家臣筆頭となる人物で”鬼柴田”言われている


尾張の大名、織田信長と条件付きながら


同盟を締結したルキア達は織田信長らと共に


尾張の国の居城である清州城に向かった


道中何事も無く無事に尾張に到着すると


尾張の国の者達は今回の勝利を大いに称え喜んでいた


「おめでとうございますお館様‼」


「さすがでございます信長様‼」


「あの今川軍を破るとはお館様こそ天下一の弓取りでございます‼」


道中のいたるところで人々が出迎え武家の者達だけでなく


農民や商人に至るまで信長の偉業を称え喜んでいた


そんな人々の様子を見てステイメンに近づき耳元に小声でささやくゾフィ


「意外ね、信長公ってもっと怖がられているかと思ったわ」


「そうですね、領民の反応を見る限り良き君主であるようです」


そんな事を話しているうちに清州城に到着した


「お帰りなさいませ殿、思うたよりお早いお帰りでございましたね」


一人の女性が信長に近づき微笑みながら話しかけた


「おう帰蝶か、此度は思いがけぬこともあってな


 予想より早く帰って来れたのじゃ


 遅いよりは早い方が良いであろう


 なにせ勝ち戦であるからな」


信長も上機嫌で答えていた、そんな二人の様子を見て


ルキアが木下藤吉郎に問いかけた


「あのお方はどのような方なのですか?


 信長公とは随分親しげの様ですが・・・」


「あのお方はお館様の奥方様で帰蝶さまです」


その事実にゾフィとフリニオーラが驚いていた


「あの人が信長公の奥さん!?結婚していたんだ、でもキレイな人ね」


「目に強い意志を感じます、芯の強い方なのではないでしょうか!?」


そんな時、別の女性が信長に駆け寄ってきて抱きついた


「此度の大勝利おめでとうございます、さすがは兄上様です‼」


「いきなり驚くではないか市、此度は天運も味方した


 熱田神宮に参った甲斐があったというモノじゃ」


「何をおっしゃいますか、全て兄上様のお力です‼」


二人のやり取りを茫然と眺めているライオスとゼファー


「お美しい姫君でございましょう?


 あのお方はお館様の妹君のお市様でございます」


そんな木下藤吉郎の説明が終わるか終わらないかの内に


サッとお市に近づき目の前でひざまづくゼファー


「初めましてお市様、私はギャレット・ゼファーと申します


 以後お見知りおきを」


片膝を付きお市を見上げ微笑むゼファー


精一杯のアピールで好印象を与えようと試みたのだが


逆にお市は怪訝そうな表情を浮かべ不快感をあらわにしていた


「何じゃお主は?随分と馴れ馴れしいのう」


その言葉にニヤリと笑う信長


「まあそう言うでない市、こ奴らはとても不思議な術を使う


 我が尾張の力強き味方となってくれるはずの者達じゃ」


「ふ~ん、兄上様がそうおっしゃるのでしたら信じますが


 わらわは軽薄な者は好かぬ


 今後あまり気安く話しかけないでくれるか!?」


そう言うとプイッと顔を逸らすお市


その言葉にわかりやすく落胆するゼファーだった


それを見たゾフィは笑いを堪えるのに必死の様子で


フリニオーラはウンウンとうなづいていた


そんな時お市の視界にライオスがうつった


その2m近い大きな体をしばらくジッと見つめていたが


興味深げにゆっくりと近づき目の前まで来ると


ライオスを見上げながら興味ありげに問いかけた


「そなたは随分と大きいのですね、六尺・・・


 いや七尺近くありそうですが」


急に話しかけられ戸惑うライオスはどう対応していいのかわからず


思わずステイメンの方を見て目で助けを求めた


「彼は六尺六寸ほどあるのですよ、お市様」


ライオスに代わって優しく答えるステイメン


そしてその数字に驚くお市


「六尺六寸ですか!?それは凄いですね


 私の知る限りそれ程大きな殿方はいません


 さぞかしお強いのでしょね!?」


そんなお市の無邪気な言葉に今度は信長が答えた


「そ奴は我が精鋭母衣衆の成正や弥三郎ら四人を一度に相手して


 子ども扱いにしたほどの剛の者じゃ


 巨大な虎を一人で退治したとも聞く」


それを聞いたお市は目を丸くして驚いていた


「それは凄いですね!?今度是非その武勇を聞かせてくださいませ」


にこやかにほほ笑みながら一礼してその場を立ち去るお市


呆気に取られ思わずその後ろ姿を目で追っていたライオスだったが


ただならぬ視線を感じ振り向くとゼファーが顔を引きつらせながら


作り笑顔を浮かべていた


「まんまとやられたよライオス君、まさか君が僕をダシにして


 美女の好感度を上げにかかるとは・・・


 僕は君のピエロ役を演じ切る事ができて実に光栄だよウン」


ゼファーは笑顔でそう言っていたが


その目と態度を見ると絶対にそう思っていない事は明白だった


「ちょっと待てゼファー、お前何か変な勘違いしてるだろ!?」


「何を言うんだいライオス、君の男を上げるために


 協力できたことを僕はとても嬉しく思っているだけさ


 でも今度君が模擬戦を披露する機会があったら


 その時は俺が相手させてもらうよ、文句はないだろ」


ゼファーのその態度にライオスは


もう何を言っても無駄だと諦めた様子で両手を広げ


「わかったよ、好きにしろ」


そうゼファーに吐き捨てるように言った


その言葉にフッと笑みを浮かべその場を立ち去るゼファー


そんなゼファーの背中を見つめ思わずニヤけるライオス


ライオスはゼファーがチームに入る際に


テストとして模擬戦の相手をしたことがある


そしてゼファーの底知れない強さに非常に興味があった


昔からライオスの目標はただ一つである、”世界最強の男になる”事


だからこそ強い相手と戦いたいという思いは誰よりも強い


それは相手がチームメンバーのゼファーと言えど例外ではない


寧ろ今回の事をラッキーと思える程ライオスの心は高揚し


もはやお市の事など頭から消し飛んでしまっていた。




ルキア達が尾張国に来てからいくらかの時が過ぎた


木下藤吉郎が信長にルキア達を引き合わせた手柄により


出世を果たし、ルキア達の正式な付きの者となった


そんなある日ルキア達の部屋に木下藤吉郎が慌てて入って来た


「皆の方、大変でござる‼︎」


息を切らして部屋に入って来た藤吉郎に全員の視線が集まる


「一体なにがあったのですか、藤吉郎殿?」


皆を代表する様にルキアが問いかけた


「実は三河の守護大名、松平元康公からの要望で


此度我が尾張の国と同盟を組む事と相成りましてな


元康公が近日中にこの尾張に来られるとの事なのです


つきましてはルキア殿達にも同席して欲しいと


お館様からの御達しなのでござるよ」


ルキアを始め皆顔を見合わせるが特に拒否する理由もない為


「わかりました、味方が増えるというのは喜ばしい事ですからね


 我々も是非出席させていただきます」


それを聞いた藤吉郎の表情はパッと明るくなる


「さようでござるか!?実は断られたらどうしようかと


 内心ヒヤヒヤしていたのでござる


 では拙者は早速お館様に報告してくるでござるよ」


藤吉郎は元気よくそう話すと


開けた襖も閉めずに走り去って行った


「慌ただしい人ですね・・・


 あの人はもう少し落ち着いた方がいいと思いますが」


「いやあの人はアレでいいと思いますよ


 口ではあんな事を言いながらも


 我々が引き受けてくれるだろうと


 ちゃんと計算していたはずです」


フリニオーラの意見にステイメンが冷静に分析した


「確かにあの木下藤吉郎って人


 信長公とは全く違うタイプだけど


 出世欲が全面に出ていて


 上昇志向の塊みたいな感じがするもんね」


そんなゾフィーの印象を否定も肯定もせずライオスが口を開いた


「俺はあの手の人間は信用できないな


 あの男は常に何かを考えながら行動するタイプだろ


 ああいう人間は他人に見せる態度や


 表情が本心と違う事が多々ある


 そういう人間とは腹を割って話し辛いからな」


「そうかい?俺はああいう目端の利く


 人間が最後は勝つと思ってるぜ


 こんな殺伐とした世界だと人間性より


 能力の方が重要だ、いい人ってだけじゃ


 役に立たないし、寧ろ足を引っ張りかねない

 

 そういう意味ではあの藤吉郎という男が

 

 俺達の担当になったというのは

 

 ラッキーだと思ってるぜ」


ライオスの意見を真っ向否定するかのようにゼファーが発言した


ライオスとゼファーの間に少しピりついたムードが漂う


それを察したかのようにルキアが口を開いた


「皆の意見はバラバラだったがどれもあながち間違っていないと思う


 彼に関してはそれぞれ各自の考えで対応してもかまわないと思っている


 みんなそのつもりで行動してくれ」


ルキアの言葉に皆うなづいた




そして同盟締結の日となった、三河の松平元康が家臣の者数人を連れ


尾張を訪れた


木下藤吉郎の紹介でルキア達も一人づつ挨拶を交わし


尾張、三河の両国は何事も無く無事同盟締結と成った


その夜、同盟の成立とルキア達の歓迎も込めて祝宴が催された


その夜の信長はすこぶる上機嫌で


松平元康の肩を抱きながら終始笑っていた


「なつかしいのう、ここにおる三河守《みかわのかみ》殿とは旧知の仲で

な


 幼き頃はよく遊んだものじゃ」


「懐かしき思い出でございます、それで信長様


 実は此度の同盟を区切りに某は改名したいと思っておりまして


 今後は”德川家康”と名乗ろうと思っているのであります」


「おぉ良いではないか!?元康と言う名はあの公家かぶれの


 今川義元めに気を使っての事であろうからな


 実に良い名じゃ、三河守《みかわのかみ》殿とルキア殿達がおれば


 甲斐の信玄猿などもう恐れるに足りん


 我らが天下を治めるのも遠い日ではないぞ!?はっはっは」


その言葉に微笑みながらうなづく家康


そしてふと視線をルキア達に移し話しかけてきた


「ルキア殿達は気が付いておられないであろうが


 拙者は桶狭間での戦いの時


 今川軍として参加していたのでござるよ


 其処《そこもと》らの戦いぶりは見ておらぬのだが


 それは凄まじかったと聞いておりまする」


その時信長はグッと身を乗り出しルキア達を見つめると


睨むような鋭い目で得意げに話始めた


「なにせこやつ等はたった六人で今川軍を撃破し


 義元の首をあげたのだからな


 我等では到底理解できぬ不思議な術を使うのじゃ」


家康は感心しながらその話を聞いていると


再びルキア達の方に向かって問いかけて来た


「ルキア殿達に一つお聞きしたいのですが


 その不思議な術と言うのは鍛錬次第で


 我々にも使えるモノなのでしょうか!?」


その思わぬ質問に一瞬動きが止まるルキア達


信長や家臣達も意表を突かれた様に動きを止め


ルキアに注目が集まる、ルキアがどう答えていいのか


困惑している時ステイメンが静かな口調で説明し始めた


「できますよ、しかし我らの使う術は鍛錬より


 どちらかと言えば資質の方が重要なのです


 人には向き不向きがありますからね・・・」


先程とは違い信長の口調が鋭いモノに変わる


「ほう資質とな、ではその適正があるのか否かを


 確かめるにはどうすればよいのじゃ?」


ステイメンが顎に手を当てながら少し考える


「そうですね、それぞれの職業によって


 確認方法に違いはありますが・・・


 実際やってみるのが手っ取り早いでしょうね


 まずは・・・フリニオーラ、お願いします」


急に話を振られたフリニオーラは目の前に並んでいる料理に


戸惑っていてステイメンの話をあまり聞いていなかった


今回は祝いの意味合いもあり膳の上には豪華な和食が


並んでいたのだが今までパンやチーズ、スープなどの


簡素な食事しかしてこなかった彼女にとって


和食は未知の料理であり中々手を付けられなかったのだ


そして最大の難関は箸の使い方である


この世界に来てからというもの、他のメンバーは


すぐに箸の使い方をマスターし


器用に使いこなして食事していたのだが


フリニオーラだけはどうにも馴染めず未だに


悪戦苦闘しているのである


「えっ!?なんですか、あぁ魔法使いの適正ですか・・・


 そうですね・・・」


フリニオーラは少し考えた後、膳の上にある白い小皿を手に取った


「この小皿を右手で持ち目の前に持ってきます


 そしてその姿を目に焼き付けてから


 目を閉じます、それから心の中で


 目の前の皿を思い出し認識します」


フリニオーラは説明通りの行動を取り小皿を


顔の目の前に掲げ目を閉じていた


「そして目を開けたと同時に目の前の皿の中心を


 気で貫く事を想像するのです・・・すると」


フリニオーラが目を大きく見開くと


手に持っていた目の前の小皿が粉々に砕け散ったのだ


周りからは”おおぉぉ~~~‼”という歓声が上がり


一部からは拍手喝采している者達すらいた


「ほう面白い、では皆の者やってみせい」


その信長の命令に最初に立ち上がったのは柴田勝家だった 


「では拙者からやるでござる


 う~~~~ん  喝‼」


目を大きく見開き大声を上げて小皿を睨みつけたが


そんな気合いとは裏腹に小皿には何の反応も無く


少しがっかりとした表情を見せる柴田勝家


逆にそんな態度を見てニヤつく信長


「お主はトコトン使えんのぅ権六、他の者もやってみせい」


信長の命令で家臣たちが次々と試してみるが


誰がやっても小皿に反応は無かった


「魔法使いの資質がある人はこの中にはいないようですね・・・」


フリニオーラの冷静な言葉にも家臣の落胆した表情が


滑稽に見えたのか終始上機嫌な信長


その時信長に向かって挙手をした人物がいた、信長の妹 お市である


「兄上様、私もやってよろしいでしょうか!?」


「おうかまわんやってみせい、どうせ余興であるからな」


そんな信長の言葉を受け嬉しそうに小皿を持つお市


目を閉じて力を込めていた


「う~~~ん えい‼」


お市が目を見開いたとき小皿の中心に亀裂が走ったのだ


これには信長も驚き家臣の者達も感嘆の声をあげた


「凄いでござるなお市様、さすがでございまする‼」


「まさかお市様だけができるとは、いや感服いたしました」


「こんな事できる者などいる訳がないと思っておりましたが


 こんな近くにいらしたとは、お見事でございます」


皆がお市を褒め称え、お市も誇らしげに胸を張っていた


「凄いではないか市、フリニオーラ殿


 市には魔法とやらの資質があるのか!?」


「はい、お市様には中々の資質があるようです」


フリニオーラの言葉に嬉しそうにはしゃぐお市


そして目を輝かせながら信長の腕を掴むと


「ねえ兄上様もやってみてくださいよ


 もしかしたら凄い資質があるかも知れませんよ!?」


そんなお市の提案に笑いながらもやや戸惑い気味の信長


「ワシはよい、どうせ出来ぬ」


「そんなのやってみなければわからぬではないですか!?」


そんなやり取りを聞いていた家臣の中から


柴田勝家が笑いながら信長に大声で


「そうですぞ殿、我々だけに恥をかかせるのは


 ズルいですぞ!?一度やってみてくだされ!?」


宴会のノリで家臣一同から”是非やってくだされ”


という雰囲気が場に漂う


「仕方がないのぅ、お主ら笑うでないぞ!?」


そんな事を言いながら白い小皿を手に取り目を閉じる信長


「ふん‼」


そんな掛け声と共に両目を見開くと白い小皿は見事に


砕け散ったのだ、その瞬間周りから凄まじい歓声が起こる


「凄いですな、さすがは殿‼」


「やはり我々とは違います、感服いたしました‼」


「お館様はやはり天下人の器という証なのでしょう」


その様子を見てお市が大喜びで飛び跳ねていた


「凄い凄い兄上様、さすがでございます‼」


信長自身少し驚いていたがフリニオーラの方を向き


「これはどうなのだ、フリニオーラ殿?」


質問されたフリニオーラも驚いていてしばらく呆然としていた


「あっはい、凄いです信長公は素晴らしい魔法使いの才能を


 お持ちの様です、正直驚きました・・・」


「そうか、ではそなたの様に稲妻を操る様になれるまで


 いかほどの時間を必要とするのじゃ?」


「そうですね・・・信長公程の資質があれば


 じっくり二年ほど修行すれば相当の魔法を


 使う事ができると思われます」


それを聞いた信長は目を閉じ上を向いて考えてみたが


「ふむ二年か・・・残念じゃがワシには


 天下統一という使命がある。二年も


 無駄な時間を過ごす訳にはいかぬからな」


「そうですか、本当に残念です」


フリニオーラはそう言いながらも少しホッとしていた


魔法の文化の無い世界の住人に魔法を教えるという事に


何ともいえない危機感を感じていたからである


それと同時にこれほどの資質をみすみす見逃してしまう事を


一魔法使いの立場からすれば惜しいという気持ちもあった


複雑な心境ながらも”これでよかったのだ”と自分に言い聞かせ


無理やり納得するフリニオーラ


「では次は私がやってみましょう


 やり方は、そうですね・・・」


次にステイメンが名乗りをあげ、適正判定の方法を思案していた


その時目の前にある膳の上に出されている数々の料理の中で


一匹の焼き魚がふと目に入った


「そうですね、ではこの魚を使って試してみましょうか」


そう言うとステイメンは焼き魚に両手をかざす


すると掌から緑色の光がうっすらと発生し焼き魚を照らした


その瞬間、その焼き魚は見る見る内に焼き目が消え


生魚に戻っていったのだ”おお~~‼”という感嘆の声が


周りから上がり近づいて来てその魚を覗き込む者すらいた


「今のはどういう理屈でそんな事になるのじゃ?」


興味深げに信長が問いかける


「これは慈悲の心です、対象を慈しむ心があれば神のご加護で


 癒しを与えてくれるのです」


ステイメンが諭す様に静かに語った


その気になったら焼き魚を生に戻した後、生き返らせることも


可能だったがそれは止めておいたのだが・・・


信長はその話を聞いて思わず目を細める


「そなたは僧侶であったな


 いわば異国の坊主という訳か・・・


 坊主はどの国の者も同じような事を言う、のう沢彦《たくげん》」


信長の参謀の一人である沢彦宗恩《たくげんそうおん》は静かにうなづく


「生きとし生ける者全てに慈しみの心を持つ事こそが


 悟りの境地に近づく事につながりまする」


それを聞いた信長はいぶかしげな表情を浮かべる


「そんなモノで天下が太平になるなら苦労はせぬわ


 では早速やってみせい、お前からじゃ権六」


「また拙者からでございますか!?」


渋々ながらやり始める柴田勝家


しかし予想どおり何も起こらなかった


次々と試みる家臣達だったが誰一人成功した者はいなかった


この適性テストに関しては信長やお市がやっても何も起こらず


今回は全員無理かと思われた、その時信長の横に座っていた家康に


「三河守殿、お主もやってみたらどうじゃ!?」 


最初は渋っていた家康だったが


信長の強い勧めもあり仕方なくやる事となった


どうせ無理だろうと思われながらも全員が注目する


家康が焼き魚に対して両手をかざした


するとジワジワと焼き魚の焼き目が消えていったのだ


「やるではないか!?流石は三河守殿じゃ‼」


周りから再び歓声が起こり家康自身驚きの表情で


自分の両手の掌をマジマジと見つめ信じられないといった様子だった


「素晴らしいです家康公、貴方には


 僧侶としての資質があるようですよ」


ニコリと笑って話しかけるステイメンに戸惑い気味の家康


「拙者にそのような力があるとは信じられませぬ


 薬などを調合するのは好きなのでござるが・・・」


「医道も治癒魔法も”仁”の心が合ってこそですからね」


ステイメンのそんな言葉に大きううなづく沢彦


信長は面白く無さげに横を向いた


「じゃあ次は私の番ね」


今度はゾフィがすっと立ち上がった、そして両手を天に掲げる


「汝が主ライドン・ゾフィの呼びかけに応えよ


 来なさいベアリス」


小さな魔法陣から身長30㎝程の珍妙な生物が現れた


それは黄色の体で真っ黒な大きな目と大きな耳を持ち


モコモコとした姿でひょこひょこ動いていた


それはまるで黄色い熊のぬいぐるみが動いている


ようかのな不思議な生き物であった


「まあ随分と愛らしき物の怪《もののけ》ですね」


お市が思わずクスリと笑った


「この子はベアリスといって凄く感受性の強い子なの


 適正判定は簡単よ、この子に話しかけて反応すれば


 召喚士の適正アリってこと、さあみんなやってみて」


ゾフィの言葉に皆が小さな珍獣に呼びかけるが一向に反応しない


ベアリスはヨタヨタと歩きながら周りを見回していた


「コッチを向くでござるよベアリス」


一人の声にビクッと反応し急に振り向いたベアリス


その声の主は木下藤吉郎であった


「コッチへ来てお辞儀してみるのでござる」


藤吉郎の指示に従い先程よりも急ぎ足で近づくと


目の前に来てペコリとお辞儀をしたのだ


「やるではないかサル」


ニヤけながら褒める信長に


「ありがとうございますお館様」


嬉しそうに藤吉郎が深々と頭を下げた、それを見ていたベアリスが


まるでそれに倣うかのように同じポーズで頭を下げたのだ


「さすがはサルじゃ、猿回しが上手いのう」


その信長の言葉に一同が笑いに包まれた


しかしそんな和やかな雰囲気の中、家康の表情が


やや暗く曇った事をルキアは見逃さなかった



「どうかなさったのですか家康公?


 何か浮かない顔をしておいででしたが?」


思わず出てしまった感情を気付かれた事に少し驚いた家康だったが


「いえ、申し訳ありません、このようなめでたい席で・・・


 少し身内の事を考えてしまって・・・」


急に城内の雰囲気が一変し、信長が真剣な表情で話し始めた


「じつは三河守殿の奥方と嫡男はまだ駿府城におってな


 いわば今川の人質になっている状態なのじゃ」


家康に代わり信長が事情を説明した


「それは心配でございましょう、無事に再会できるといいですね」


そんな慰めともいえるルキアの言葉に再び信長が口を挟む


「のうルキア殿、お主達の力で三河守殿の奥方と


 嫡男の二人を助け出す事はできぬか!?」


信長の言葉に少し驚いたルキアだったが


すぐさま横目でチラリとステイメンを見た


判ったとばかりに大きくうなづくステイメン


「わかりました、我々でやってみましょう」


唖然として状況が飲み込めないでいる家康


「ルキア殿が瀬名と信康を助けてくれるのでありますか!?


 しかしたった六人で駿府城にいる我が妻と息子を救出など・・・」


ニヤリと笑う信長


「こやつらはそのたった六人で義元の首をあげた者たちぞ!?


 自在に空を飛んだり稲妻を落としたりできる連中じゃ


 やってみる価値はあろうて、のうルキア殿」


「はい、我々の中にも人質の救出する事に反対の者はいないはずです


 そうだろう、みんな!?」


振り向きながら問いかけるルキア


「もちろんですよ」


「奥さんと息子さんが人質じゃあ心配だもんね」


「俺としては強い相手がいると嬉しいんだけどな」


「ルキアさんの意見は正しいと思いますから賛成です」


「救出するのが人妻ってのがやや気乗りしないが


 いいんじゃないの」


皆の言葉に家康が深々と頭を下げた


「本当にかたじけない、感謝いたしまする」


こうしてルキア達における”駿府城潜入人質奪還作戦”が


決行されることとなった、そこにいる皆がこの同盟を




喜びめでたい事だと称賛した、しかしそんな中 


それをいぶかしげな表情で見つめ


あまり良く思わない人物がいた事を


信長を含めほとんどの者が気が付かなかった。





今回から本編に帰ってきました、架空の人物はともかく歴史上の人物を

書くのは中々難しく”信長ってこんな事言うかな?”とか思いながら書いています

皆様も色々思う所はあるでしょうが生暖かく見守ってください、では。

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