第10話:世界の選択、真の勇者の第一歩
翌朝、聖王国レイヴァルトの王都は白銀の甲冑に身を包んだ近衛騎士団の行進によって地響きを立てていた。
その隊列の最前方に、馬を駆るセレナ、そしてその横に並び立つ神崎優斗の姿があった。
「いくぞ、勇者。ここからは正真正銘の実戦だ」
「はい!」
優斗は力強く応じ、馬の手綱を握り直した。
背後には、緊張した面持ちながらも覚悟を決めた石田翼、桜井彩、そして最後尾の補給部隊で必死に荷馬車を操る吉岡大地や山口健吾たちの姿がある。
彼らはこの世界の現実と向き合い、自らの意志で歩み始めた「本物の仲間」たちだった。
城門を出る瞬間、優斗はステータスボードを呼び出し自身の現状を再確認した。
【職業】勇者(聖王国公認)
【固有スキル】
・聖剣適性(中級)
・勇気(不屈)
・統率(部隊士気向上・小)
・人望(現地住民の信頼・中)
・成長加速(稼働中:補正率12倍)
少しずつ、だが確実に、世界が優斗を「勇者」として認め始めている。
その泥臭い歩みこそが、王道たる救世主の系譜なのだ。
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同じ頃――魔導帝国グランゼルの漆黒の謁見の間。
高橋翔、黒田蓮、相沢美月の三人は、床に両膝を突き、冷徹な宰相ヴァルター・フォン・グランゼルを見上げていた。
彼らの顔からは、かつての傲慢な全能感は消え失せ、代わりに焦燥と飢えが張り付いている。
「――宰相閣下! なぜ俺たちに前線への出撃許可を出さないんだ! 俺たちの知識は渡したはずだろ!」
高橋が声を荒らげる。
ヴァルターは冷ややかな目で彼らを見下ろし、チェスの駒を弄びながら言った。
「貴殿らのもたらした『内燃機関』や『爆薬』の概念は、我が国の魔導技術者によってすでに再現の目処が立った。つまり、貴殿らの知識としての価値はすでに消費されたのだよ」
「な、なんですって……!?」相沢美月が顔を青ざめさせる。
「だが、安心したまえ。我が帝国は無能をそのまま殺すような真似はしない」
ヴァルターは残酷な笑みを浮かべた。
「これより貴殿らを、聖王国との国境付近に新設された『特殊遊撃部隊』へと配属する。
現地でどれほど暴れようと構わん。ただし――」
ヴァルターの背後の闇から、紳士的な笑みを浮かべた一人の男が歩み出た。
闇組織「黒い牙」の幹部であり、その正体は魔族の調停者――ルーカス。
「はじめまして、異界の主役たちよ」
ルーカスは恭しく頭を下げ、懐から禍々しい紫色の光を放つ小瓶を取り出した。
「努力などという退屈な時間を飛び越え、一瞬で勇者を超える力が欲しくはありませんか?
この『神の秘薬』を飲めば、貴方こそが真の英雄になれる……」
高橋はその小瓶を見つめ、ゴクリと唾を呑み込んだ。
それが、自らを人間ですらなくす「魔族の罠」であるとも知らずに。
彼らの歪んだ欲望は、ついに大陸の絶対的な悪意と結びついた。
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かくして、世界は大きく動き出す。
ネット小説のテンプレを現実に持ち込み社会の壁に弾かれ、
ついに禁忌の力(悪意)へと手を伸ばした「暴走組」。
そして、一国の王女の涙を背負い、仲間の命への義務感を胸に、
血の滲むような努力で本物の力を培ってきた「真の勇者」神崎優斗と仲間たち。
二つの陣営の歩みは、聖王国と帝国の国境、そして魔王軍の脅威が交錯する戦場へと繋がる。
(待っていろ、高橋。僕は、絶対に誰も見捨てない。例え君たちが――)
泥をすすり鍛え上げ、白銀の剣を掲げた本物の勇者の戦いが今、幕を開ける。
(第1章:その召喚、テンプレに非ず―― 完)
(第2章:動乱の初任務と、牙を剥く現実へ)




