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そこに、彼女はいた。
雪のように白く、長い白銀の髪が風も無いのにゆっくりと揺れている。
その姿は人に似ているが人ではない。
触れれば溶けて消えてしまいそうな身体。
リアは、ゆっくりとその存在へ近づいた。
ユースティアは、静かにリアを見つめている。
敵意は感じられなかった。
ずっと、誰かが来るのを待っていたような目をしていた。
リアは彼女に声をかけた。
「……あなたがユースティアね」
白い女は、小さく頷いた。
「ずっと……私に話しかけていた……」
再び頷く。
リアはユースティアを真っ直ぐに見据え言った。
「ユースティア」
「私は…こんな…皆が苦しむ呪いを終わらせたい」
その言葉に、レイが目を丸くする。
「だから、私と一緒に終わらせよう」
「力を貸してくれる?」
周りを静寂が包む。
ユースティアはほんの少し目を伏せた。
まるで、遠い昔を思い出すように…
そしてそっと、リアへ手を伸ばす。
白い指先がリアの手に触れる。
凍えるほど冷たい感覚が走ると同時に、強い意思が伝わってきた。
一人でいた寂しさと、本当はこの国を終わらせたくないという願い。
リアは小さく息を呑む。
ユースティアが口を開いた。
『…来て』
一同は、祠の前へ立つ。
黒い呪いは岩の隙間からヌルリと漏れ出し、地面を這いずり空へ向かって伸びながら王都の方向へ流れていた。
ルシナスが眉をしかめ露骨に嫌そうな顔をした。
「……これを開けろっていうのか」
「こういう虫みたいなやつ苦手なんだよね」
リアが思わず少しだけ笑いそうになる。
そんなことを言いながらも、ルシナスはそのまま岩に手をかけた。
「……ったく、仕方がねーな」
騎士たちが慌てて駆け寄る。
「せーの!!」
重い音が響き巨大な岩がゆっくりと転がった。
祠を開けた瞬間、爆発したように呪いが噴き出す。
「っ!」
騎士たちが腕で顔を覆う。
呼吸が苦しい。
まるで、“憎悪”そのものが溢れ出してきたようだった。
迷っている暇は無かった。
リアは、ユースティアと共に祠の中へ飛び込む。
「リア!」
レイが即座に追う。
ルシナス、アルヴェイン、騎士たちも後に続いた。
全員が中へ入ったのを確認したユースティアは、白い指先で静かに宙をなぞった。
パキ……ッ
入口が、氷で閉ざされる。
騎士の一人が息を呑む。
「閉じ……!?」
アルヴェインが低く言った。
「他に人を近づけないためか……」
中は深く暗かった。
レイが呪文を唱えると、淡い光が祠の中全体を照らす。
数歩先には、下へ降りる階段のようなものが続いている。
階段はそう長くは無く、部屋のような場所へ辿り着いた。
レイとルシナスが自然とリアの前へ出る。
騎士たちも周囲を警戒する。
足元を良く見ると巨大な禍々しい物体を抑えるように、白の陣が地面いっぱいに刻まれていた。
呪いはその中心から脈打つように溢れ出し、まるで生きている心臓のようだった。
白の陣が今にも消えそうなほど弱く光っている。
リアは、無意識に一歩前へ出る。
ユースティアは、静かにその黒を見つめて言う。
『もう限界なの』
その声は、震えていた。




