第二章〈千早〉二話
朝5時起床。非常に規則的な生活…ではなく、寝る時間がどんどん遅くなっていき最終的に朝5時くらいまでずっと意識がハッキリしてしまう日々が続いていたため、それをリセットすべく寝ることを諦めたのであった。
以前店に務めていた時は、夜職ということもあり健常な人とは異なるリズムであったがそれでもしっかりと機能するリズムが存在していた。しかし社会という鎖を解かれた千早にはもはやそういったものは完全に消失してしまったようで千早自身も以前どうやって寝ていたのかを思い出すことが出来ない。
まだまだ金には余裕があり数年、節約すれば10年弱は暮らしていけそうな額は残っており正直このままの生活を続けるのも良いが千早はある事が気になっておりそれを解決したかった。その事とは他でもない"暗号"の事である。
『名前に対する名字の日にて燃え盛る二と三の炎を切る双子の槍。炎を切る槍を裂く四つ目の光線と三十八の光線が交わる地にて任意の時に日が沈み、昇る迄見届けよ。』
正直手に負えない代物だ。千早は小中の勉強をほぼやってこなかったため考える力が少し乏しかった。やろうと思えばできるがやろうと思えないといった具合でもちろん高校でもそれをキチンと継続したため立派な怠け者人間に育った。高校の偏差値は低くは無い方でやらなくてこれかは絶対センスがあるといったようなことを担任や親から言われていたが、千早は好きでもない事を続けていく気力を持ち合わせていなかった為、大学にも進学しなかった。
そんな感じであるから、いきなり意味の分からない言葉を並べられて思わず目を背けたくなってしまった。発見した瞬間は本当に嬉しかったが、これを自分が解決しなければならないということに気づいた瞬間から力が抜けていってしまった。
これが本当に謎解きのようなものなのであれば作った人はきっと性格が悪魔のようであるに違いない。
朝活を始めよう。コーヒーを入れ砂糖とミルクを大量に投入する。コーヒーはインスタントでミルクは一番安いやつでありそれら単体だと飲めたものではないがこれらを合成することにより問題なく飲めるようになる。節約のライフハックである。しかも甘さを砂糖の量で調整できるためコンビニなどに売っているカフェオレよりもこちらで飲むようにしている。完成品を持ち席に着く。リモコンを取り適当にチャンネルを合わせた。
『おはようございます。5月27日月曜日です。新しい週が始まりますね、頑張っていきま……』
半ば思考を放棄した千早はニュースキャスターの言葉をを聞き流す。もう6月になろうとしている世界に驚いた。日の流れというものは年齢を重ねる度に早くなっていく。どこかで人生の体感時間は20歳で折り返しになるということを聞いていたがそれが本当ならば千早はもう半分生きてしまったことになる。少し惜しい気もするがそれも悪くないかななどとしみじみと感じた。
6月といえば暑いのと寒いのの境目のような季節だ。朝は外を歩くには風が少し肌寒く感じるが昼は太陽の日差しと上着のコンボ技で暑くなってくる。上着を持っていくか持っていかないかのギャンブルが発生する、それが6月である。上着を持っていけば朝の寒さは回避することが出来るが昼に少し荷物がかさばってしまう。逆に持っていかなければ朝の寒さは確定で、昼が暑くならなければ一日中肌寒さを抱えならければならない。その代わりに荷物は少なくなり身軽である。
『まだまだ涼しい日が続いて居ますね。昨日は久しぶりに時間があったので家族にパウンドケーキを作ってあげたんですが、うっかり砂糖と塩を間違えてしまいまして…』
『うふふ、定番すぎますよ〜』
『何やってるんですか!』
ニュース番組に特にこだわりは無いがこのチャンネルのニュースキャスターは毎回このような小ボケを挟んでくるのだが、何故かそれを見ていると少しだけ元気をもらうことが出来る。しかし本当に元気な時には鬱陶しいだけであるので気分が上がらなかったり落ち込んでいる時などはこのチャンネルにするようにしていた。今日は無意識にこのチャンネルに合わせていたがやはり暗号のことでモヤモヤしていたのが行動に現れてしまったようだ。何とか解決したいがどうにかできる気もしない。
『パウンドケーキ皆さんもぜひ作ってみてください!上手くいく時は本当に美味しいんですよ。ということで最初のコーナーは、教えてあなたのデザート作り!』
手持ち無沙汰であるから、少し癪だがおふざけニュースキャスターのパウンドケーキを作ってみることにした。
レシピを見て必要な材料を調べた。卵、薄力粉、無塩バターは既にあったが、パウンドケーキの型だけが家になかった為それを買いに行くことにした。普段からお菓子作りは少しするが、クッキーやパンケーキ、マカロンなどでありケーキは初めてであった。そのため千早は少し張り切り気味である。
徒歩20分ほどのところに大型の雑貨屋があるからそこまで買いに行った。遠出したかいがありしっかりパウンドケーキ用の型が売っていた。せっかくなので2個買って種類を変えてみようなどと考えた。1つはプレーンのもの、もう1つはチョコ味にしようと考え追加で板チョコとココアパウダーを購入し帰宅した。
早速取り掛かった。レシピによればパウンドケーキ1本分が卵2個、砂糖120g、薄力粉120g、無塩バター120gを要するらしい。つまり2本分だとこの2倍の量が必要で卵4個、砂糖240g、薄力粉240g、無塩バター240gが必要になるということか。
…?何だろう。大切なことを思い出したかのような感覚だがそれが何だか分からない。
よくある事だ気にしないで続けよう。まずはバターと砂糖を混ぜ合わせる。ボウルにバター240g、砂糖240gを入れ泡立て器でかき混ぜていく。
『名前に対する名字の日にて燃え盛る二と三の炎を切る双子の槍。炎を切る槍を裂く四つ目の光線と三十八の光線が交わる地にて任意の時に日が沈み、昇る迄見届けよ。』
次に卵4個を入れて更にかき混ぜていく。この時卵を少しずついれてゆっくり混ぜていくのがポイントだそうだ。
いや、そういう事なのか…?12/24日、十六夜、名前に対する名字の日…
千早は何かに気がついたようで、目にも止まらぬ早さで絶品のパウンドケーキを二本分作り一瞬で平らげた。そして自身のスマホを使いある単語を調べる。
……
…………!!!
「ガチか…ガチだこれ。いや、、いや、マジだわコレ…」
千早は何かに辿り着いたようだ。
お久しぶりです。骸です。大学合格(一浪)してドタバタしてたですがまた書き始めます。諸事情により8/3までに完結目標で書いていきます。流れは完全に決まっているので質に問題はございません




