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パラドックスライフ  作者: 水無月 俊
第五章 「星降る夜の無垢なる純情《カラーレス・ホワイト》」
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チャプター 7-4



「大丈夫ですか?」

「あ、ああ……まぁ、なんとか」

気がつくと、そこは控え室だった。

俺を見下ろすアイリは、俺が無事なのを見て、微笑んだ。

「何分ぐらい眠ってたんだ?」

アイリが横目で時計を確認してくれる。

「5分くらいよ。 機動装甲に殴られてこれで済んだ人は、あんたで2人目よ」

「2人目?」

「ええ。 ほんと、わからないわ……」

やれやれ、といった感じに首を振るアイリ。

「あ、そろそろ行かないと。 ほら、立てる?」

「大丈夫だ」

起き上がり、体に異常がないかさっと確認する。

……デバイスのおかげだな。 どこも折れてない……

「さ、行くわよ」

アイリが扉を開けてくれたので、後に続いて外へ。

「あ、目が覚めたんですね」

俺を沈めた本人が、涼しい顔をしてこちらを見る。

「あの一撃は本当に良かったですよ。 腕が吹き飛びましたし」

『そうですよ、マスター!』

……トル……

「ああ。 そうかもな」

つけっぱなしだったサーチャーの電源を落として、ベルトに付け直す。

……トルに慰めてもらう日が来るとは……

「そういえば、そのデバイスは何だったんですか?」

ソウマがサーチャーを指差してそう聞いた。

その後ろからアイリスが興味深そうにこちらを見ている。

「ああ、これはサーチャーだよ。 解析や記録をするのに使ってる。 本来は索敵機だったんだけど……」

「へぇ……。 通信機にもなるんです?」

アイリスが一歩前へ。

「え? あ、ああ」

「誰と話していたです? 彼女さんです?」

アイリスが目を光らせてさらに前進して聞いてくる。

「い、いや、サーチャー(なか)に入ってるナビゲーターだ」

「ナビゲーター? 人工知能(AI)ってこと?」

アイリが横から聞いてくる。

「まぁ、位置付け的にはそうなるかな」

「いいなぁ。 あたしも欲しいなぁ……」

そう言ってなぜかソウマのほうを見るアイリ。

「あ……わたしも欲しいです!」

便乗するようにアイリスが手を挙げる。

「僕に言われても……」

……なんだか、兄妹みたいに見えてきた……

3人の姿を見ていて、そう思ってしまった。

「そういえば天風さん。 彼女さんを迎えに行かなくて良いのですか?」

そんな様子を見守っていたシエルが口を開いた。

「あ、忘れてた……」

「忘れてたって……」

シエルが呆れたように呟く。

「様子を見に戻るか……」

……もしかしたら、もしかするかもしれないし……




*********



「ローザ!」

ローザを放置してきた場所へ再び舞い戻った俺たちは、ローザの安否を確認する。

「ら、ライト!?」

そこにいたのは……バニー衣装姿のローザ。

胸のほうはあれだが、網タイツは足ラインの美しさを強調していて、なんとも……

「……って、なんでそんな格好してるんだ?」

「……状況を見て、察して欲しいわ」

ローザは湯気が出そうなほど顔を赤くしている。

さっと周りを見ると、どこから持ってきたのか、何着もの衣装が並べられていた。

どうやら着せ替え人形として遊ばれていたらしい。

「これからこの娘にディーラーをしてもらおうと思ってたところなの」

ローザの周りにいた生徒の1人がそう言う。

「ディーラーなんて出来るのか?」

「出来るわけないわよ!!」

逆ギレ気味にローザが返す。

「もう散々遊んだでしょ! あたしたちはそろそろ帰るわ!」

ローザがそう言うので、仕方なく俺は帰る準備を始めることにした。

「……そういうことらしいから、今日はここまでらしい」

えぇ~ と残念そうな声が響く。

……歓迎されるのはうれしいけど、あんまり長居するのもな……

「そうですか……。 また機会があれば遊びに来てくださいね。 歓迎します」

「ああ。 そうさせてもらうよ」

「天風さん! 次に会ったときは、ナビゲーターさんとも話をさせて欲しいです!」

アイリスが目をキラキラさせてそう言う。

「ああ。 もちろん」

「やったですー!」

アイリスがうれしそうに飛び跳ねた。

……こうして見てるぶんには、普通の女の子なのにな……

こんな子供が戦場に立っていることが信じられない。……人のことを言えたものじゃないが。

「ま、近いうちにまた来るといいわ。 とっておきのプレゼントを用意しておきますから」

それを見て微笑んでいたアイリが、悪戯っぽく笑った。

「プレゼント?」

「楽しみにしておきなさい」

問い詰めようかと思ったが、それよりはやく、シエルにシャツの袖を引っ張られた。

「あの……よろしければ、連絡先を交換しませんか?」

「え? ああ、いいぞ」

断る理由もないので、携帯を取り出す。

……そういえば、シエルとノエルって、なんか似てる気がする……

番号を教えてもらう間、ふとそんなことを思ってしまう。

「……? どうかしましたか?」

「い、いや。 なんでもない……」

俺は、未だにあのことを忘れずにいたことに嘆息した。

……過去の話はもういいんだ……

「……では、何かあれば、互いに連絡しましょう」

「ああ」

携帯を仕舞い、周りを見渡す。

……もうやり残したことはないかな……

「さ、帰るわよ!」

いつの間にか着替えていたローザが、クリスタルを片手に俺の腕を引く。

その後ろで、少しもの寂しげに見守る生徒たち。

「正直、少しだけ心配してたんだ」

「何をよ?」

「ローザがやらかしてないか」

「……あ、あたしがあれぐらいで参ると思ったら、大間違いよ!」

「そ、そうか……」

「グチグチ言ってないで、とっとと行くわよ! ≪転移テレポート≫!」

何かを忘れている気がしたが、最後にソウマの方を見て手を振ったら、視界が暗転してしまった。




*********




「......兄さん。 何してるの?」

その晩。

ローザが先に寝てしまって手持ち無沙汰だった俺は、リビングでレポートを作っていた。

そこへ暇そうなヒカリが入って来た。

「今日手に入れた情報をまとめてるんだよ」

「......聖堂学院のこと?」

「ああ。 機動装甲も負けてないってところを見せつけられたからな」

「......へぇ」

ヒカリは俺の後ろに回って、画面を覗き込む。

俺の打ったテキストに目を通しているようだ。

俺は気にせず、今日あったことを思い返す。

……学校内を歩き回ることを避けれたのは、良かったかもな……

講堂に行くまでであの調子じゃ、学校全部なんて到底無理だろう。

……にしても、あのチームは個性派が多かったな……

あのあと、シエルといくつか情報交換をしているうちに色々わかった事があった。

トルにアイリスがあそこまで反応していたのは、アイリスが情報解析専門だったからとか。

普段のアイリスの一人称は名前なんだとか。

アイリの記憶障害は、ソウマと関係があるんだとか。

……あいつらは、ずっと生きていて欲しいな……

昔、一緒に戦った仲間を思い出す。

ノエルもその1人だ。

……同じ過ちは繰り返さないって、決めたもんな……

キーボードを打つ手をとめて、その指のシルバーリングを見た。

……あの技術が悪用されても大丈夫なように、特訓しないと……

「......兄さん」

「なんだ?」

「......機械に人は、勝てるの?」

「ん? ……そうだな……」

人間が機械に勝てるとしたら、それは意志があるかどうかだと思う。

クリスタルの力を使えるかどうかは、かなり大きな戦力差になるはずだ。

でも、今回の様に人が乗って戦ったとしたら……

「……わかんないけど、俺たちなら勝てるって。 たぶん」

「......慢心はダメ」

「そう言うなって……」

ここで素直に負けるかもしれない……なんて、言えるわけもなかった。

「ま、もしそうなっても、機械のハッキングはヒカリの十八番だし」

「......そうだっけ?」

「……ああ。 そうだよ」

……そんな記憶まで消えてるのか……

「......へぇ。 なら、きっと大丈夫ね」

「いや、過信されても困るんだけど……」

……確かにヒカリなら大丈夫かもしれないけど……

「......それで、兄さん。 レポートはもう終わりなの?」

「あ、ああ。 そろそろ終わるぞ」

「......じゃあ、一緒に、寝よ?」

ヒカリの瞳を見つめた。

ヒカリは少し恥ずかしそうに頬を染めたが、不純な考えは持っていなさそうだ。

「……ああ。 良いよ」

俺はテキストを保存し、パソコンの電源を落とす。

……ここで断って、機嫌悪くされるのもめんどうだし……

変な気が立たないように願いながら、俺はヒカリとともに寝室へと歩いていった。





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