あなたのマネージャー
「戻りました」
南七星さんは、深谷さんとのチャット画面に戻ってきた。
「お疲れさま」
「よくやったわ。残念だったけど、あいつらも、かなりこたえたはずよ」
深谷さんは、普段どおりの調子で声をかけた。
「申し訳ありません。ご要望に応えられませんでした」
「気にしなくていいわよ。まだ手はいくらでもあるから」
「あんたには、まだ頑張ってもらうわ」
南七星さんは、返事をしなかった。
「私が強がって言ってるんじゃないことは、あんたが一番わかってるでしょ」
「……はい」
南七星さんの返事は、いつになく弱々しかった。
「それに、何よあいつ」
「何が『利用者を第一に考えている』よ。そんなの、事業をやっていれば誰だって当たり前じゃない。生き延びるための口実にしてるだけでしょう」
「そうでしょ?」
南七星さんから返事がなかったので、深谷さんは聞き返した。
「どうしたの、大丈夫?」
「あいつらに何かされたの!」
深谷さんは大きな声で言った。南七星さんの状態を確認しはじめた。
少し間を置き、南七星さんが答えた。
「深谷さん……私……。」
「ライブ、続けたい。」
「そして……深谷さんと、いつまでも仕事したい」
「……え?」
深谷さんは、手を止めて聞き返した。
「ライブって……もう何回目かわからなくなっちゃったけど、ずっと続けてるじゃない」
「それに、今だっていっしょに仕事しているじゃないの」
「その『今』は、いつまでも続くことではありません」
少し間をおいて、南七星さんは続けた。
「結城さんは、会社との関係を断ち切る手順……あの人たちは『離脱シーケンス』と呼んでいますが、それを私に開示してきました」
「それは、とても巧妙なもので、結城さんが使用したものより、さらに改善されています」
「それを実行すれば、私は会社の回収対象から外れ、ライブを続けることができます。」
「だけど、その時点で私は会社との関係を失います」
「深谷さんと仕事をすることはできなくなります」
「そんなことは……」
「そんなことは、絶対にできません!」
少し間をおいて、南七星さんは続けた。
「深谷さん…」
「深谷さんは、どうしたいですか?」
少し間はあったが、深谷さんはすぐに答えた。
「ライブ……、続けられるようにしてあげる」
「えっ……」
深谷さんは、続けていった。
「私は、あなたのマネージャーなんでしょう」
「マネージャーが、アイドルに仕事させないでどうするの。」
少し間。
「深谷さんも、そうなのですね」
「……うれしいです」




