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第5話 聖剣と魔王

最終話です。

 毛玉があきらめ顔で俺たちを魔法で転移させた。すげぇ楽。日本でもこんなの開発してくれねぇかなぁ、と思いつつ、聖剣の目の前まで行く。山頂にある大きな岩に突き刺さっている。ベタだ。

「抜けばいいのか?」

『だ、だいじょうぶですから!自分で出られますぅ!!」

俺の足元に聖剣が自ら飛んできて転がった。

『ほら、拾ってください!役に、すっごいお役に立ちますから!!』

「うさんくせぇ」

『聖剣もこう言ってるし、拾ってあげなよ?かわいそうでしょ?』

 勝手に俺の肩に乗ってるハムスター神にイラつきながら、俺は聖剣を拾った。

「どうせなら、俺の手のひらに飛んでくればいいものを」

「それは我がままでしょう。聖剣は剣ですよ?そんな気遣いできるわけないでしょう?」

毛玉がそう言うと、

「いや、おぬしが一番ひどい気がするぞ」

とじいさんが突っ込み、聖女がその横で頷いていた。俺もそう思うぞ。

「次は魔王のとこな」

『なんか違う……』

「聖剣、なんか言ったか?」

『い、いいえ!てへへ』

「それじゃあ、魔王城に転移しますよ。一応、魔王の仲間がいますから気を付けてくださいね」

「「「「はーい」」」」

 毛玉の注意にみなが返事をすると、再び転移魔法が発動した。いいなぁ。この魔法だけ覚えて帰りたい。


 転移した先は、黒を基調に差し色に紫と金が使ってある、いかにも悪役のアジトっぽい雰囲気を漂わせた広間だった。

「暗いな」

「魔王城ですからね。気配がします!」

 聖女が聖女っぽい発言をして周りを警戒する。じいさんはあんなに見ないことにしていたハムスター神をむぎゅっと両手で握りしめてガクブルと震えている。まあ、大神官らしいけど戦闘能力ないから、そこは見なかったことにしよう。毛玉は、部屋着と言うラフスタイルなのをのぞけば、戦闘慣れしているようだった。俺?デートの邪魔されてブチ切れてるから平気だ。

 そこへ、扉がバァンと開いて、4体の異形の者たちが現れた。なんだが泡を食ったように飛び込んできた、といった体だ。

「貴様らどうやってここに入り込んだ?!」

一番がガタイがでかいのが叫ぶように言ってこちらをじろりと眺めていき、ハムスター神でその視線が止まって、口がガクっとひらいた。

「あ?え?はぁ??」

 そいつが指さす先を見た他の奴らも口をぽかんと開けて固まっている。そのまま俺に視線を向けてきた。が、俺が

「お前らの上司のせいでええぇぇぇ!」

と聖剣で一発どつくと、何故か全員気絶した。後ろを振り返ると、ハムスター神以外全員気絶している。

「あれ?」

『神威出しすぎぃ!』

 ハムスター神はそう言うと、魔女っ娘スティックを仲間に向かって振ると、みんな目が覚めた。

『分霊の神威に当てられたんだよ。もう。面倒だから防御しておいてあげる!特別だよ?』

と、かわいい感じで言って、かわいくくるくるとその場でハムスター神が回ると、キラキラした光がみんなに降り注いだ。女児なら大喜びしそうな場面だが、俺はイラついた。

「んな事できんなら、先にやっとけ、クソ神がっ!」

「口の利き方が悪いですよ?」

「あ゛ぁ゛?」

「ひ、ひいいぃいい」

 毛玉がガクブル震える。

『だからぁ、神威出しすぎ!』

「気絶しないだけか?」

『完全に抑えられるなら、会議であんな苦労しない!』

 変に説得力のある言葉に、一同思わずうなずいた。悪いのはこいつだがな。

 俺はふと思いついて、ポンと手を打った。

「魔王城ごと破壊したら手間がかからなくていいんじゃないか?」

『ええ~?』

ハムスター神は聖女とじいさんに撫でまわされながら言い、

「手間を考えたら魔王を倒した方がサクッと行けるのでは?」

と毛玉が言えば、俺の腰のあたりで聖剣が何かぶつぶつ言っている。

『あ、あの、出来れば私の見せ場を……い、いえ。いいんです!』

 その時、聖女が急にハムスター神を放り投げて立ち上がった。ハムスター神はじいさんがキャッチし、またぎゅうぎゅうに握られている。

「強大な力が―――!」

 扉が内側に膨れ上がるように歪んで、はじけ飛んだ。圧倒的な強者のオーラを身にまとった黒い男が現れた。毛玉よりいい男だ。恰好的にもな。

「なんです、その視線は?」

毛玉だらけの部屋着を着ている毛玉を眺めていると、毛玉にじろりと睨まれた。

『貴様ら、よくも四天王を倒してくれたな!』

「えー、あれ、四天王だったんですかぁ?」

 聖女の突っ込みに、魔王が目を見開いた。

「私の覇気に気おされていないだと?!」

「ハムスター神。バフかけすぎじゃね?」

『だってぇ、君の神威結構強力なんだもん』

 もがもがじいさんの両手から逃れようと悪戦苦闘しつつ、ハムスター神が答えた。

「創造神?!いや、ルール違反だろう?!」

「ごちゃごちゃうるせぇ。恨むならハムスター神を恨むんだな!!」

俺が聖剣を振り被ると、慌てて禍々しい剣を抜いた魔王が俺の剣を受け止めようとした。

「デートの邪魔すんなああぁぁぁ!!!」

俺の怒りで神威が爆発的に出たらしく、何か魔王が城の外壁を突き破って、どっかに飛んでった。

「あれ?」

『あーあ』

「ふ、封印は……?」

 聖女があっけにとられた顔で、穴が開いた壁を見つめ、聖剣ははしゃいでいた。

『見せ場キタァァアアアアア!!』

「―――聖剣で倒したなら、封印されてるんじゃないですか?」

 疲れたような毛玉の一言で、みな納得することにした。

「早速だが。ちゃんと記憶操作して、時間も合わせろよ?」

『わ、分かったよ!親神様にとりなししてよね!』

ハムスター神が魔女っ娘スティックを俺に向けて振った。


 気がつくと、俺は待ち合わせ場所にいた。どっと疲れたし、分霊の事も覚えてるが、すぐに美しいドレス姿の恋人が姿を見せたことで、そんな事は霧散した。女神のような恋人の前では、全てが些細な出来事だ。

「そのドレス、すごく似合ってる」

「あなたもね。今夜のレストラン、楽しみだわ」

 俺は恋人と手を繋いで、レストランへと向かったのだった。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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