私の能力
エイン大聖堂はかなり広い建物なのだが、実は本堂まで一本道で行けるらしい。中には壁画や翼の生えた馬や人間の彫刻が立ち並んでいて、床は深紅のカーペットが敷かれているなどかなり豪華な造りになっている。
暫く進むと突き当たりに達したようで、一人の神父か教会のトップらしき人物と、それを取り囲むように6人の教徒らしき人がこちらを見つめているのがわかった。
「……天より抱きし〈贈臓〉を開ける者は前へ。」
二人と目配せすると、「行ってこい」と言わんばかりに彼らは強く頷いた。どうやら例の適性検査というやつらしい。私は階段の下で一度片膝を突き礼の念を込めた。別に騎士でもなんでもないのだが、こうでもしないと失礼に当たりそうだと思ったからである。別に他意はない。
「……お願いします。」
その後無駄なことを考えないように一礼した。すると周りを取り囲んでいた6人の教徒らが一人ずつ私の手を触れる。
各々の姿をよく見ると、髪の毛と瞳の色が違うだけのほぼ瓜二つで中性的な顔立ちなのがわかった。
6つ子の双子か何かか……と思うくらいそっくりで内心ギョッとした。これを生んだ母親とは一体……。そんな私の想像をそっちのけに、彼ら(彼女ら?)は互いに頷いたり首を振ったりしてなにやらコミュニケーションを取り合っているようだ。
……連携の取り方凄いな。だって何も喋ってないんだよこの人たち。
暫くして真ん中の神父らしき男が謎のペンと紙を持ち、スラスラと文字を綴りながら話しだした。
「〈蜘蛛脚〉……〈六芒の六〉……〈暗視〉の明……。以上。」
結構あっさりしてるものなんだな、と私は神父に差し出された紙を受け取った。聞こえた単語としては暗視とスパイダくらいだ。ろく……なんとかはよくわからない。差し出された紙の文字は全くもって読めない。なんだこれ。
「……貴女の〈アーツ〉は〈蜘蛛脚〉……要するに貴女は蜘蛛が糸を張り巡らせるように……針に糸を通すことも造作ではない、器用な手先と優れた身体能力を持ちます。」
私の疑問に答えるように黒髪の教徒らしき人が口を開いた。よくわからないけど身体能力が優遇されているということでいいのかな。蜘蛛っていうとあまり頑強なイメージはないから、どちらかというと素早さ重視的な意味合いかな。
「六芒の六……それはこの世界に溢れる気質を現したものの一つ……。貴女の色は私のような……「黒」の色です。」
なるほど。これは属性みたいなものか。で、恐らくこの世界?には6つの属性があるのだろう。そのうちの黒……闇か影かを操る能力に長けているのだろうな。
そして追加機能は暗視……ファンタジー小説あるあるの、夜でも目が効く便利能力だ。あるのとないのとでは次元が違う。あるにこしたことはない、決してハズレ枠ではないものだ。
「貴女の適正は……〈暗殺者〉。暗闇に紛れ相手を確実に仕留めることに長けた……職業です。その他としては〈盗賊〉や〈テラー〉ですね。」
なるほど────結構隠避なところだな、ついで言うと職業が被ってるこれ。あと〈テラー〉ってなんだよ初めて聞いたわ。私はとりあえず二人の元に駆け寄って結果を見せることにした。
≧≦
「そうか……スレインと職業が被っちゃうのか。」
あの後私達はエイン大聖堂を後にして、ひとまず休めるベンチらしき役割をした椅子に腰かけていた。因みにガラ悪そうな盗賊の方がスレインで、ローブを着た方がイアンと言うらしい。
「六芒星の六……〈虫の極意〉……〈暗視〉……えっ終わり?」
イアンが目を見開いてこちらに聞いてきたので、私はこくりと頷く。すると彼は「そっかぁ……」と呟いた後、こちらに向かい合った。
「これが僕のステータスなんだけどね……?〈六芒星の二〉・〈六芒星の三〉……アーツは〈想像詠唱〉で〈魔力循環機構〉、〈鳥加護〉、〈水変化〉……」
イアンは延々と追加機能について語り続けた。その数はざっと15から20くらいだったと思う。暫く聞いていてこのアドオンとやらはファンタジー小説やゲームでいう〈パッシブ〉だということになんとなくではあるが気がついた。
要するに彼は二つの属性に恵まれ15~20程度のスキルに恵まれ……〈想像詠唱〉ができるというトンデモチートみたいな実力者だったわけだ。
「因みに〈魔力循環機構〉がないと〈魔術師〉になるのは絶望的だぜ?魔力を行き渡らせる機能がないからすぐに切れちまう。」
そう言ったスレインの表情も苦いものであり、彼もその類いのスキルは持ってなかったようである。このスキルがないとまともに魔法を使うこともできない……か。現実ってのは厳しいものだと私の心はボロボロに打ちひしがれた。
「まぁ先天的な〈アーツ〉ではないし、正直なここら辺はどうとでもなると思うよ。これでも全然少ないし、暫くしたらまたここに来ようと思ってる。」
イアンはそうやる気に道溢れた顔つきでそう言い放った。こいつよりも上がいるの……!?イアンですら頭おかしいと思っていたのに、世界とはかくも広いものである。
「イアンはこういうやつなんだよ……自分の才能を努力と言い放つ……スゴい奴なのさ……。」
スレインも私をよき理解者だという風に認識したのだろう。それでも彼のスキルも7.8個はあったので格上であることには間違いなく、私の理解者にはなり得ないということは明白であるのだが。




