私はなぜここにいる!?
(。・ω・。)はじめましての方ははじめまして。お久しぶりな方はお久しぶりと思います。行き当たりばったりな失踪系作者です。
さて、プロローグと同時進行で本編の方を上げていきますので、ながったるいプロローグを飛ばしたいと言う人は次の章へとお進みくださいませ。
《少女は自分の目に映る光景を前に驚きを隠せなかった。》
目が覚めた彼女の目に映るのは、見回す限りの大草原。あまりに澄んだ空気と安らかで心地よい風が吹き、日陰者には少々厳しすぎる柔らかな太陽の光が地面を照らし温めていた。それらのあまりにリアルすぎる感覚がこれは夢なんかではない、現実であるということを彼女に示唆しているかのようだった。
(は……?えっ……ちょ……!?)
呆然と草原のど真ん中で立ち尽くしている制服姿の少女、〈霧風葉羽〉は自分の胸元にある黒ブレザーのラベルを掴み、状況が呑み込めてないのか辺りを何度も見回した。
(いやなんで、えぇ……?しかも制服のままだし……。何処なんこれ……。拉致?拉致されたん?私自宅にいたはずなんだけど……一体どういうことなの……?あれ、そもそも何処で寝て────)
彼女が一向に変わらない状況に思考を奪われ、自分が意識を失う前のことですら忘れかかってる状態だったが、ふとなにかを思い出したかのようにハッとなり、ブレザーの胸ポケットに手を入れる。
なにかを探しているのか数秒ほどその仕草をした後、どうやら「目的のものがなかった」らしく絶望したかのような表情を浮かべ動かなくなった。
(携帯が……スマホがない!?)
スマホが無いことに遅れて気づいた彼女はそのまま膝をつき、ガクリと前のめりに倒れた。その事実は彼女を絶望の淵へと立たせ、そのまま崖から落としてしまう程の衝撃を与えたのだろう。
彼女は全身に熱が籠るような感覚に襲われながらも必死に身体を起こし、まとまらない思考を無意味にぐるぐると空回りさせていた。
まあ当然事態が好転することはなかったのだが。
「はあー……なんだよこれ。」
すべてを諦め自暴自棄になったのか、彼女は仰向けになりそのままだらしなく大の字に倒れた。柔らかい草のクッションが彼女の頬や指先、露出した範囲全てを撫でる。風に煽られ触れたその感触が少々こそばゆいものだったのか、顔を軽く掻く素振りを見せる。
(辞世の句でも考えておくかなぁ……。社畜にもなれない社会不適合者ですみません……ってなにやってるんだ私は。)
何度目かになる溜め息を吐き捨てるようにすると、左腕を自分の額に添え、日射を遮るようにしながら流れる雲をぼうっと眺めていた。その表情は絶望にひきつったものから、徐々に穏やかなものへと変わっていく。
(いい天気……だな。こんな状況なのに不思議と苦しくならないこの感じ、結構好きかな。)
先程の絶望から一転して、彼女は一人笑みを溢した。澄んだ空気の心地よさに身体をリラックスさせながら、数回深呼吸を繰り返し、腕から爪先までをピンと伸ばす。
(……!!足つった。疲れてたのかな。)
黒のストッキング越しに右の脚に触れ、今度は苦笑いをした。先程のような絶望や不安は何処へやら、冷静さを取り戻したのか一周回ってしまったかはわからないが、この状況に順応しつつあるようだ。
暫く考え込むように唸った後、彼女はスッと立ち上がって辺りを見回し、宛もなくゆっくりと歩き出す。だがその表情は何処から来ているのかもわからない自信に満ち溢れているようであった。
(まあとりあえず歩けば目印のひとつでもあるっしょ。)
彼女はそんなざっくりともしていない、根拠のない自信を引っ提げて歩き出した。
──
物事というのはよい方向に考えれば割とどうでもなるものだ。今までもそう実感させる出来事な何回かあったような気がする。
宛もなく草原を歩いていると、荷車を引く馬に乗った齢40ほどの黒髭の目立つ山賊みたいな男と出会った。
風貌はシンプルな布の服に身を包んだ、最低限の露出だけで済ましているというものであり、布を貼り付けたような……お洒落とは一切思えないそれは私の過ごしてきたこれまでの価値観から著しくズレたものだと感じさせる。
それでも構わんと藁にもすがる勢いで彼を呼び止め、事情を説明するとどうやら近くの街まで行くついでだと連れていってくれることになった。言葉は通じるようで助かった。
─現在は荷車の上で商品らしき樽やら木箱の上に座らせてもらっている。
「お嬢ちゃんは珍しい服を着ているね。お金ないって言ってたけど、その服売れば結構な額になるんじゃないか?」
「それって……裸になれということですか?」
私は戸惑いと嫌悪感マシマシでそう言い返すと、男は「冗談だよ。」と大袈裟に笑った。乗せて貰っている手前逆らえないだろうし、足を貸してもらっている以上お金を取り立てられても文句は言えない。
だがそうしない彼の優しさに感謝するべきなのだろうがどうしてもこういうノリは苦手だ。冗談なら言わないでほしい。言葉が通じるのは有り難いんだけどね。
「すまんすまん。今から向かう街はこの大陸で一番の大国、〔商人〕や〔冒険者〕、名のある貴族が集まる〈エインハル〉だ。お嬢ちゃんは見た感じまだ未熟だろうし、職の適正を知る機会じゃないかな!」
男はそう自信に満ち溢れた大声でそう言った。職の適正て……ハローワークとか能力開発センターかよとツッコミたくもなるが、冒険者や貴族という言葉に妙な引っ掛かりを感じた。
まさかとは思うが……ここって異世界かナニかですかね?
私はそれなりにゲームを嗜んでいる方であると自称しており、ある程度のライトノベルは読んできたと思う。
その中のいくつかは異世界転生という、主人公が前世で死んだ結果新しい世界でヒャッハーするという内容の小説だ。そんな小説の世界と、今の状況な何処か似ている気もする。
……まあそんな私の質問を返してくれるSir○のような存在がここにいるわけもなく、馬の蹄が地を踏む音と荷車が軋む音だけが虚しく響き渡っている。
いや……まさかね?




