~ヘンリーナ視点~ 叫ぶ男と少女
あるじからの指示で、とある貴族の臣下である男性を尾行するように指示してもらいました。
この男性は粗暴で目立つので直ぐに見つかりました。
しかし、この男性は馬鹿なように見えてそうでもないらしいです。
わざと目立つような行為をして、自分は第一王子に継いで欲しいんだと叫んでいるので、第一王子の印象を悪くする為の諜報員と言った所でしょうか?
たまに街の人に絡んだりしてますけど、その中に情報のやり取りを瞬時に交わしているような素振りも見受けられます。
私の耳はいいので、しっかり聞き取れました。
どうやら適当ではなく、狙った場所で印象操作を行っているらしく、そろそろ場所を変るようですね。
私も見つかる必要があるので、さりげなく目立つように動きましょう。
その後、この男性はずっと私の存在に気が付かずに、飽きもせずに印象操作を続けている。
途中この男性と接触した仲間と思われる人達との会話でも、私の存在を気にしている様子はありません。
大した情報交換も無い様ですし、この男は場所だけ聞いてそこで印象操作しているだけなので、そもそもの話、尾行を気にしていないですし、重要な人物でもなく、ただ、誰かから指示を貰って動いているだけのようですね。
それならこちらから強引に接触してみましょうか。
印象を深くした方が都合よくいくと思われるので、挑発も兼ねて話した方が良さげですね。
「あなたは第三王子の手先ですよね? 死ねばいいのに」
「何言ってんだ! 俺は第一王子に王になって欲しいんだ! ぶっ殺すぞガキ!」
「見透かされている事をご存知ないのですか? あなたがやっている事は第一王子の印象を悪くするのが目的ですよね? 本当に第一王子の為を思うなら、死ねばいいのに」
「喧嘩売ってんのかこのガキ! 子供だからって用者しねえからな!」
「成程、ここで私を攻撃して捕まり、更にそこで第一王子の印象を悪くする企みですね。 死ねばいいのに」
「このガキ!」と大声を上げながらこの男性は私に掴みかかって来ますが、それを受け止めて力で押さえつける。
身体能力を強化する術は得意なので、この程度の人間なら簡単にねじ伏せる事が出来ます。
遠目に見れば、体格差もありますし、男性が争っているのではなく、意外にこの男性が優しく、私の様な生意気な子供を相手にしている様に見えているはずです。
演技も得意と言う訳ではないですし、この辺りで私は引きますか……
私の声は小さい様なので、周りの人には聞かれる事はないと思いますが、念の為、男性の耳元で囁くように言葉を伝える。
「あなたが第三王子の諜報員だと知って接触してみましたけど、あなたはハズレの様ですね。 何の情報もなく、指示を受けているだけの様です。 時間を無駄にしてしまいました。 死ねばいいのに」
最後にパアンと平手打ちをして、周りの人も男性も、呆気に取られている内にその場から去りました。
尾行などをされていない事も確認して宿に戻ると、セリルさんが先に帰ってきていた様です。
セリルさんは完璧な仕事を熟した様で、「お姉さんだからね!」と言って頭を撫でてくれました。
今回私はハズレではありましたけど、これで警戒すべき人物が探りを入れていると言う事くらいは伝わったでしょう。
その事をセリルさんに伝えると、よく頑張ったねと褒めてくれたので、嬉しいです。
二人であるじとアトラスさんの帰りを待つ間、魔法を使った遊びをして待つ事にしました。




