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『虎と呼ばれる男の素顔、そして龍の奏でる交響曲』  作者: 趙雲
おまけ~借りキャラストーリー~
69/69

「借りキャラストーリー最終話-Thor(トール)~ゼラニウムの咲かぬかきりはあらじとそ思ふ~(後編)-」

後編さん。


珍しく面倒臭がりで適当なからすさんが話します。

意外と冷たい人なので、そこらへんはご了承ください。


淳ちゃんみたいに明るい子が世界を救う気がいたします。


※約5,600字です。

1995年1月某日。

裏町

藤堂からす



 むか~しむか~しあるところに、片桐組隊員が極秘任務によく使う公園ぐらい広い場所があったそうな~……どうでもいいけどね。

そこは“裏町”って呼ばれていて、情報屋としても警戒を強めていた場所ってとこかなぁ。

ほら、一応監察はいるんだけどさぁ……買収しちゃえばいいような人たちだから、お金で動かない烏階が何とかしないと? そういうことで。

それで裏町があった頃っていうから、20年前なんだよね。

もうおじさんだよね~。

俺は覚えていなかったんだけど、恋愛相談も乗ってくれる感じの龍也が過去の事話すっていうからさ……探したら自分のパソコンの記録に入っていたし話そうってなった。

 この時はね、龍也が裏町で隊員と戦っているところを目撃しちゃったんだよね~。

はいそれじゃあ、それっぽく話してみるかな~。


 俺が裏町を見張っていた頃、龍也の映像がパソコンのモニターに映し出された。

即座に現場に駆け付けると、返り血をふんだんに浴びた龍也と息の無い隊員たち5,6人が無残な姿で倒れていたそうな。

龍也って人を救うことを信条にしているからさ、本当に()っちゃったのかさ~……目を疑いたくなったんだよね~。

「え? 何やっちゃってんの?」

俺は心底呆れた顔を向けると、龍也は無機質な顔で振り向いた。

こりゃたまげたって思った。

しかも龍也はそのままの顔で、

「こいつらの事知ってんだろ?」

って、これは何かの冗談かなって思ってさ……ほら、俺の誕生日も近かったから!

実は全部イチゴジャムとかさぁ、知らないけどね。

だから俺は信じられなくて、

「イライラした?」

肩竦めてそう返しちゃったんだよね。

とりあえず、この頃の記録によれば誕生日プレゼント欲しかったらしいし。

でも龍也は俺の言葉は聞こえてないみたいで、握りこぶし作って胸の前から首元まで力みながらあげて、

「こいつらは今まで散々……! 人の命を弄んできたんだ!!!!」

と、覇気すら感じる叫び声をあげた。

たまげたどころじゃなかったね。

普段こんなことしないから、ひっさびさに目見開いたな~。

 えっと流石の俺もここでやっと、本気で殺っちゃったって理解したんだ。

だからしゃんとしてさ、顔をキリって引き締めて、

「そりゃ……殺し屋だし、片桐の制服着ているしね~」

って、もしゃもしゃ烏ヘアーを弄りながら流れるように言葉を紡いだ。

殺し屋が命どうこうって道徳を習って殺す時点で、俺からしたらおっかしい話なんだけどさ、こういう為にあんのかね~。

ボランティアで人を救う実力者、人を救う殺し屋も出たし、裾野がそれっぽいのもさ。

菅野が殺すのを躊躇うのも、優太が毎回花束を置いてってたことも。

……みんな、道徳のおかげなのかねぇ。

 あーあ話逸れた、閑話休題っと。

「珍しいね~、どした?」

って、俺が眉をあげて訊くと、龍也は場所を移すってさ。

それで裏町から少し離れた裏路地に移動したんだっけ。



(如月龍也視点に移ります)



 俺は移動するなり座り込み、隣にからすも腰を下ろした。

なぜだろう、疲れたな……。

俺はからすに、奴らが好き勝手に人を殺しまくっていたことを補足説明として話し、

「あのまま野放しにしておけば、ただでさえ被害が酷かったのに、これからもっと悲惨な事になるところだったんだ」

と、首を垂れ疲労で掠れた声で言うと、からすは鼻を鳴らした。

「決定的なところを押さえていたんだったら、牢屋行きに出来たけどね~」

からすは壁に背中を沿わせながら立ち上がり、「うっわ、立ちくらみ!」と、額を右手の上に乗せるようにし、安静体勢をとった。

「大丈夫か?」

俺は疲れた顔をしていただろうが、からすが心配になりそっと支えると、

「あーどうも」

と、街でよく見るサラリーマンのように手を軽くあげて会釈をした。

本当に面白い親友だ。

「牢屋行きにしても、また同じこと繰り返すだろ」

俺はからすの左腕を掴んで振り向かせると、

「俺は大丈夫だ。俺の強さ、知ってるだろ?」

と、語気を強めつつも作り笑いをすると、からすは大きく口を開き欠伸をした。

欠伸は肯定の意味、爽やかな笑顔は許さない……これはどこかにメモすべき事項だな。

「人殺しが好きになったのかと思った」

からすは烏たちが肩に止っていくのを見届け、それぞれに視線を送っている。

「そんな訳ねぇだろ。出来る事ならやりたくねぇよ」

そう肩に止り終えた烏たちを見上げるからすに言うと、からすは餌のついた髪をわしゃわしゃと撫でつけ、

「情報屋だって人を殺すこの業界だしね~。そういうモンだよなぁ」

と、またも大きく口を開けて欠伸をする。

「……これは俺にしかできなかった」

俺は日の差し具合ではなく、影の自分を垣間見せると、

「へぇ。俺は?」

と、自分の鼻先を指差すからす。

……調子の良いところもあるが、そういう気持ちが無いとそもそもこんなことを言わない誠実なところがある男だ。

「その気持ちだけで十分だ。片桐組の奴にお前が手を下したら、後でどうなるか分かったもんじゃねぇしな。……それに元より何も障壁の無い道を歩むつもりはない。これからもずっと業火に見舞われながら歩いていくしかねぇんだ」

と、俺が少し寂しそうな笑顔で、立ち上がりながらからすの背中を叩き、

「からすがそんな道を進まなければならなくなったら、俺が肩代わりしてやる」

と、烏たちの餌を空にばら撒くからすの前を横切って立ち去ると、俺の中で何かがカチッと合点がいった。

俺は悪人を“ただ”殺すのではない。

人を助ける為に、自分だけ手を汚せばいい。

この時、俺の信念が漸く確立したんだ。

「からーす! カラース!」

俺の疑問に答えるように曇りの無い青空へと翼を広げ、その中のリーダーが野太い声で鳴き急上昇していく烏たち。

一陣の風が吹く。

季節外れのゼラニウムの花びらが烏の羽と絡まって舞い、俺の頬を撫でていった……



数か月後……

片桐組 総長室

藤堂からす



 役員に好かれているって話したっけ?

父親も祖父も天才情報屋って呼ばれていて、片桐組に貢献してきた人たちだから、役員も頭が上がらないんだって。

それが皆からすれば、好かれているってことになるらしいよ。

皆は誰って……他の隊員たち。

 総長室に入ると、俺は龍也が起こした事件の報告をした。

あのね、何か月も隠してきたけど、この業界も狭いから鳩村にリークされちゃったんだよね~。

それで何とか、「今度話します~」って、切り抜けていたんだけど、流石に呼び出し喰らったら無理だよね。

 総長は俺の報告を聞き終えると、顔を上げないまま、

「消せ」

って、ドスの利いた声でおっしゃった。

片桐組は非情であることでも有名。

それはまさにこの方が作り出した雰囲気。

……いくら情報屋が俺以外に居ないとはいえ、ここで断れば命は無いに等しい。

その一言に酷く動揺する俺に対し、総長は鼻で笑い、

「お前が手を下さないなら、お前を――」

と、言いかけたところで、副総長が大量の文書を抱えて総長机の左側にある扉から入ってきた。

即ち、向こう側が副総長室。

「それ、やってきましょうか?」

と、バカにしたような目で見下し、口パクで「お前には出来ないでしょうね」と、挑発を吹っ掛け、元の媚び売りの顔で総長の机に文書の山を積み上げた。

でも総長は首の間接音を鳴らすと、

「いや、からすだ。しくじったら、お前が行け」

そうおっしゃる総長の目は、俺を試したい気持ちが表れていた。

それと同時に、しくじれば仕事を取られるという肉体的拷問よりも辛い現実が待っている。

「はい」

俺は肩に乗った烏越しに副総長を睨み、あくまでも真面目に返事をした。

 あ~真面目な文だったね~。

これでも総長の前だけはしゃんとしているからね。

で、このあと龍也と戦うんだけど、本気で戦えなかった。

そのときから記録を遡ってみるや。



1995年5月某日

片桐組付近

藤堂からす



 片桐組付近の第二の裏町に呼び出したときの口実は、常套手段なんだけどね~……新しい情報が入ったよ~ってやつ。

逆に誰も使わないから。

それで記録によると昼だったらしいから、晴れていたのかな~。

俺、雨だったら昼かどうかすら分からないからさ。

それにかなり入口手前にいたらしいし。

 だから第二の裏町の砂利を踏んできたときに、とっとと気絶させて殺したことにしちゃおうかな~って思ったんだけどね……。

「……終われ」

俺は烏たちで体を覆うと、大きく手を高くあげた。

すると烏たちは一斉に俺の指示通り、トルネード型に腕に絡みついたから、すぐに龍也に向けて銃を撃つ感覚かな~?

そうすると、上手いこと竜巻になってくれるんだよね!

だけど龍也は剣を出さずに高く右にジャンプして避けて、脳天目掛けて剣を振り下ろした。

……どうでもいいね。

俺は烏を引き寄せ爪で防がせると、刃の部分を鷲掴みしてグニャって曲げた。

でも感触が気持ち悪いから、護身用の物だね?

「練習用かな~?」

って、俺が刃から爪を離して言うと、龍也はいたって落ち着いた顔で頷いた。

俺は心底安心して、6匹くらいの烏たちを密集させて上に乗ると、

「新しい情報だよ~。藤堂からすが如月龍也を消しに来た……ってね!」

って、もしゃもしゃヘアーが崩れるくらい一気に急降下して、攻撃するフリをして龍也を中心として両側に避けさせた。

そのすれ違いざまに、

「死んだフリしてね~」

って、俺なりに1番高くジャンプして頭の上を飛び越えながら言うと、

「ははっ。やっぱりな」

って、見透かしたみたいに言われちゃった。


 これ、総長は絶対に隊員の殺し方なんて見ないからいいけど、執拗に見る副総長の目は騙せなかった。

普段何しているかよく分からない人だけど、汚い仕事を請け負っているらしいから、そういう目ばっかり鍛えられちゃったんじゃないの?

それだからか、第二の裏町にドスンって副総長が降ってきたときは驚いた!

ビルの屋上に居たのは知っていたけど、4階建てから飛び降りますかねって思った。


 黒と白のストライプのスーツなんて着ちゃって、ディーラーみたいだね~。

相変わらず巨体だけど、頭の中もそうだから、この人。

「手加減、していますよね?」

まぁ……はい。

待って、何で俺がこんなに副総長に反抗的なのかは、総長と違って実力があっても性格とか顔が嫌いとかで評価を下げたりするからだね。

「それが何ですか~」

俺が烏たちの体に付いた汚れを払ってあげながら適当に言うと、副総長は龍也が居るにも関わらず、

「貴方なんて、早く消えればいいんですけどね……あいつみたいに一突きで」

って、ふざけたこと言って、俺の首の前で十字を切ると、

「墓には大きく名前を刻んであげましょうね」

副総長は手を下したことのある言い振りで、俺は内心の9割はどうでもいいって思っていたけど、1割で覇気を感じたね~。

「あーあ。龍也、倒しちゃってよ」

俺は面倒になって肩をすくめて、龍也の後ろに歩いていくと、副総長は皺の多い頬に更に笑い皺を刻んだ。



 俺が説明下手だから割愛するけど、五分五分になったんだよ。

10分くらい白熱した戦いが続いていてさ。

そしたら龍也が急に納刀して、

「もうちょっとあんたの相手してやりたいんだけど」

って、言い出したものだから、もう終わるのかと思ったら、

(わたくし)も忙しいですから?」

なんて強がって早口で捲し立てて、去り際に俺の腹に拳を見舞おうとしていたんだけど、龍也がその拳をしっかり握った。

「……」

しかも無言で、ギチギチ言うまで握り潰そうとして、副総長が逆に諦めて睨み合ったまま解散。

と思ったら、龍也が立ち去る副総長の背中に向かって、

「からすに何かしたら許さねぇぞ」

って、覇気出して警告していたんだよね~。

それから独り言で、「お前の罪は必ず償わせる」って、呟いていたとさ。

あーあ、面倒だな~。

 ……だからかな~龍也と会うってだけで総長が怒ったり、隊員から白い目で見られたりするんだよな。

俺、そういうのよく分からないから。

妬み嫉みとか、時間の無駄だしどうでもいいから、とりあえず情報処理と情報分析が出来ればいいし。

まぁそういう感じかなぁ……。

で、俺がどうして記憶じゃなくて記録に頼るかは分かると思うよ。

まぁ……人間の記憶力を信じていないだけさ。



1995年8月

某病院 801号室

如月龍也



 あれから数か月。

義理の妹である淳が産まれ、俺はまだ何も知らない美しい瞳を見つめながら胸に抱いていた。

その様子を湊、颯雅も見守っている。

「俺は淳や颯雅みたいな罪のない奴らを守る為なら、自分の手がどれだけ汚れても構わない」

と、罪という言葉も知らない澄んだ目を覗き込んで言うと、湊が微笑みながら、

「あぁ……俺もだ」

と、視線を交わし、最後に颯雅を見遣ると、

「俺もー!」

と、元気にはしゃぎながら言ったので、しばらく3人で笑ってた。



現在に戻る……

4人の自宅

如月龍也



 ふと家に飾ってある大皿を覗き込みながら、円卓を囲む俺たちが話した過去の話。

春は冬を思いやり、夏は冬を想い、秋は子どもたちを可愛がり、冬は春を気遣う。

今までの話は、この皿を見てそれぞれが思いを馳せた過去を主に語られたもの。

これを知った皆は、今また夏に感じた冬への想いを考察するだろう。


「それにしても、めっちゃ話し込んでもたな~」

淳は夕日を見つめながらそう言うと、

「なあなあ、今日の夜ご飯は?」

と、目を輝かせながら湊に質問した。

「ん~……お寿司はどうかな?」

料理が上手い湊が作る料理は、本当に何でも美味しい。

「じゃ、酒飲みまくるぞ~!」

と意気揚々に言う俺に対して、颯雅が微笑みながら、

「兄貴酔っぱらったらダルがらみしてくるから面倒くせぇよ」

と反論してくる。

「ん? もう一度言ってみろ~」

と笑いながら言うと、淳が

「おっちゃんが酔っぱらったら面倒くさいってお兄ちゃん言ってるで~」

と冗談をかましてくる。

「全く、お前らもう酔っぱらってるのか?」

と湊が言い、皆で笑い合った。


 こうして、またいつものように何気ない日々を過ごしていくんだろうな。

辛いことの方が多いが、恐らく俺達は同じことを感じ、これからも生きていくんだと俺は思う。


“ときどき目から水がこぼれるけど

それも幸せだと思えてるよ”

『PRAYING RUN』より抜粋

作者です。


借りキャラパート全4話は、いかがでしたか?

楽しんでいただけたら何よりです。

私も何分、うちの子大好きな一次創作者ですので……どう接したら良いかが1番難しかったです。

なので草案の時点で、かなり直されていますが、これも1つの勉強だと思って努力を重ねてまいりました。


よろしければ、

http://ncode.syosetu.com/n3935eg/

こちらの短編集も暇つぶし程度に読んでいただければ幸いでございます。


それでは、これにて番外編は完結です。

ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。


……続編が公開されるその日まで!!


趙雲

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