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『虎と呼ばれる男の素顔、そして龍の奏でる交響曲』  作者: 趙雲
おまけ~借りキャラストーリー~
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「借りキャラストーリー第2話-idun(イズン)~一葉知秋の子どもたち~(後編)-」

後編。


菅野と裾野さんとどう付き合っていたのか。

また、初めての共同作業はケーキ入刀ではなかったようです。


カフェの場面では、意外な人物との交流もあるみたいなのでお楽しみに!


※約6,200字です。


2010年1月某日……

藍竜組 廊下

龍勢淳



 利佳子ちゃんには悪いんやけど、龍の事あまり好きちゃうかった頃から話すな。

大体今から5年前くらいのお話。

それまでも、竜斗と龍がイチャイチャしてるのが気になっててん。

いつも2人だけの世界。

龍はいつも、私が来ると邪険そうな目で見てきて、めっちゃ悲しかった。

せやからすぐにでもやめてほしいって言えたら良かってんけど、2人の前になると絶対言われへんし、竜斗に言ったら困るやろから。

かと言って、龍は近寄るなオーラが出てたから話しかける事も出来へんかった。

どないしたらええんやろ、って、ずっと一人で悩んでてん。


 ほんで竜斗と付き合い始めて1か月くらいやったから、尚更2人ではしゃいだりすることも多かってん。

でもそれをたまたま龍に見られたときがあってな。

龍、めっちゃ睨みながらこっち来てん。

眼光で人殺せるぐらいやったわ。

「何をしている?」

龍は竜斗の腕を引いて自分の方に引き寄せて、頭をふわふわって撫でてん。

「裾野……。だって……付き合ったこと、許してくれたやんか。別に……ええやん」

竜斗は龍に撫でられるのが好きやから、頬を赤く染めながら言ってん。

せやけどここでちゃんと言ってくれて良かった。せやけど龍は、

「そうだな」

って、竜斗の髪に口づけを落として、そのまま竜斗にだけ手振って去って行ってん。

 そしたら竜斗は申し訳なさそうに目伏せて、

「気に入らないんかなぁ……。ごめんな」

って、後頭部を擦りながら引きつった笑顔で言ってん。

「うん」

ほんまはそこだけやなくて、人前でイチャイチャしてることも謝って欲しかったから、やるせなかったわ。


 それからも龍は何もしてこーへんけど、竜斗と付き合ってからは女子達のイジメが勃発して、ダブルパンチやってん。

龍の行動が心臓グサグサ突き刺してくるし、女子たちのイジメは陰湿で誰かに言ったら殺すとか言われるし……。

多分女子達に関しては、本気出せば力でねじ伏せられてんけど、藍龍組の敷地内ではそういった事は禁止されてるし、何よりも自分の信念に反する事になるから我慢するしかなかってん。

それでずっと竜斗にも言われへんかった。

 それにあんな光景見たら……。

龍と竜斗がふざけてなんか本気なんか、見つめ合いながら物陰に隠れてたとこ、見てしまってん。

すぐにバレへんように息殺しながら覗いてみたら、どう考えても抱き合ってるようにしか見えへんかった。

すると二人の声が聞こえたから、忍びないけど聞いてみることにしてん。

「こんなこと、あかんて~」

「ふふっ……」

「好きになってまうやん、こんなことされたら……」

「好きになれよ。今すぐ」

「え~? アホなんとちゃうか~?」

「……お前を盗られたくない」

「……っ!?」

この言葉以降、目の前が真っ暗なって、全く聞こえへんくなって……私、やっぱり邪魔なんかな?

龍と竜斗にとって、私の存在自体が迷惑なんかな?

私殺し屋ちゃうし、藍竜組抜けた方がええんやろな……。

そう思て立ち去ろうとしたら、

「って、彼女に言ってやれよ! 菅野!」

龍の言葉がふいに聞こえて、私は思わず足止めてん。

「お前らのあんなに幸せそうな顔を見たら、4つも年上なのに何やってるんだろうって思ったんだ。それに……詠飛さんにも言われた。女性は大事にしないと駄目だ、とな」

龍のその言葉に、知らず知らずのうちに涙流れててんけど、いつの間にか後ろに居った竜斗に抱きしめられてん。

ほんで龍は私の目の前に跪いて、

「本当に申し訳ない」

と、首を垂れて謝ってきてん。

でも、何もかもが遅かった。

何で1か月も苦しまなあかんかったん?

今更都合がええんとちゃうん?

「……何やねん今更」

龍も私がイジメられてて、1か月ずっとダブルパンチ食らってた事は分かってた筈や。

段々色んな感情が沸き上がってきて、必死に張っていた糸がプツッて切れた音がした。

「すまない。謝っても謝りきれない……」

龍は私の呟きを聞いて更に深く頭下げてんけど、限界やった私は、

「全部わざとやってたんは知ってるんや!! そんな事も棚に上げて急に申し訳ないって何の風の吹き回しやねん!! ごめんで済んだら警察いらんわ!!」

って、感情の赴くまま怒鳴り散らしてた。


 ほんまは……

何でこんな事したん?

……とか、

竜斗が好きやからやったんやろ?

…………とか、

色々話してみたい事沢山あったのに。

それを見た竜斗は慌てて集まってきた野次馬たちを帰して、そのあと龍の隣に跪いて地面に頭を擦りつけて何度も「ごめん! ごめん! 俺がちゃんとしてへんかったから!」って、泣き叫んでてん。


 ほんまは二人にこうして欲しいんとちゃうのに……。

「2人とも、もうええから……私こそ、ごめん」

私はなるべく出来るだけの力を顔に集めて笑顔にしてから2人に頭上げてもらって、正座してんけど、

「……」

「……」

やっぱり無言で、申し訳なさそうにしててん。

許してもらえるなんて、思ってへんのやろな……。

でもここで許さへん! って突っぱねるのはあかんよな? 何でも歩み寄る事が必要やもんな!

「これからも、よろしくお願いします」

私が笑顔を崩さへんまま言うと、2人は重苦しい空気のまま頷いてん。

……これやったらあかんよな。

「2人は相棒やから、今まで通りでおって。そういう2人がありのままでええと思うし、そうやって強くなった竜斗を好きになってんから」

って言うと、竜斗はほんまに嬉しそうに抱きしめてくるし、龍はそっぽ向いたまま竜斗の頭をぐりぐり撫でててん。

「ありがとう」


 この出来事から、竜斗とは今まで以上に心許し合える仲になってん。

龍には最初の頃何度も謝られたんやけど、それからよく話しかけてくれたり気にかけてくれたりするようになってくれて、段々仲良くなってってん。

その過程があったから、暴走した時も龍を親友やって言えたし、スキンシップが多くても受け入れられるようになってってん。

ま、親友やって思ってるんは私だけかもしれへんけどな。

 それにたまに龍に稽古付けてもらうこともあるし、ほんまに今でも……お世話になってるんやで。

ちなみになんやけど、義兄の龍也は、私がイジメを受けてた事も、龍から冷たい態度取られてた事も、何故か知ってたみたい。

やから、私を見かねた龍也が龍を呼び出してブチ切れたみたいで、信じられへんねんけど思いっきり殴りかかったみたいなんよ。

ああ~龍、ごめんなぁ。謝っても謝り切れんわ……。


 ほんでほんで、この話以外にも初めて竜斗と共闘した事、話してもええかな?

この話から1か月後のデートの時やねんけど、初めて利佳子ちゃんの他のお兄さん……透理(とうり)さんとバッタリ会ってん。

竜斗と一緒に戦うなんて初めてやったから、ちょっと嬉しかってん。


 その日は映画観に行った帰りやってん。

竜斗はグッズ買わへん派で、私は買う派やねん。

竜斗はお金の無駄遣いを龍に怒られるかららしいんやけど、私は兄から少しだけお小遣いもらってるから、記念にグッズ買うって感じなんよ。

せやけど出てちょっと行った、シックストゥエルブ前に周りに全く溶け込んでない異質な人居ってん。

それに苦しそうに咳して座りこみだしたから、この時期やし凍死するやん! って思って駆け寄ったら……

「血……くれない……?」

って、フード深く被ってて顔は見えへんかってんけど、苦しそうに痰混じりに言ってきてん。

でも……血って? 吸血鬼なんかな?

竜斗の顔見たら、やっぱり聞き間違いか何かと思ってて首捻っててん。

「え? お兄さんやけど、カーミラなん?」

って、龍に本でも借りたんか、覚えのある吸血鬼の名前まで出して……。

それでもお兄さんは首を横に振ってるから、

「血液型は何ですか?」

って訊いてみたら、お兄さんは咳混じりに頭を振ってん。

「A型……」

「え……」

竜斗は私見て顔面蒼白になっててんけど、これは輸血と思えばええんよな……?

そう思って腕まくって口元に白い肌晒すと、お兄さんは勢いよく噛みついてん。

牙が入った時に多少血が飛び散ってんけど、気にするほどちゃうかった。

せやけど竜斗がほんま心配そうに私を見ててん。

「大丈夫やで」

私は愛想笑いで言うてんけど、少し頭がクラクラしてきた時、お兄さんが「ぷはぁ」言うて腕から口離してん。


「……」

それからお兄さんはフードゆっくり脱いで、ミルクティー色の艶のある髪が露わになってん。

それで口の端にうっすら私の血が残ったまま、うさぎみたいな可愛い赤い眼でうちら見上げると、

「ありがとう……菅野の彼女さん」

そうクセのある中低音の声で言うて、イタズラ笑顔を浮かべると裁縫針くらいの毒針を私めがけて投げてきてん。

「なっ……!」

竜斗がすぐ槍で防いでくれたから助かってんけど、大振りの槍を街中で出したことで警察に通報する人がちらほら居ってん。

「君、馬鹿じゃないの?」

お兄さんは嘲り笑いながら言うと、人気の少ない場所まで走って逃げてん。

「あいつ……誰や!? その前にあいつ追わんと!」

竜斗は槍出したまま逃げた方に走って行ってんけど、一本道やし深追いしたら危ないんちゃうん!?

「もうええよ! とりあえず、ここから離れることだけ考えよ!」

血を大分吸われてしまったから、ふらつきながら追いかけると、前を走ってた筈のお兄さんが私の目の前降り立ってん。

「殺し屋って大変だね」

そう皮肉の笑み浮かべて言うお兄さん、正体分かったで……!

声が若干やけど、立ち方も……。

「あれ!? そっち行ったんか!!」

って、竜斗の声が大分遠くから聞こえてきてん。

「……2人とも、もうここまでなんじゃない? 〈辺鄙な毒針〉!!」

お兄さんがそう叫ぶと、一本道とビルの壁に仕掛けてた200本以上の毒針が一斉にうちら目掛けて飛んできてん!!

でも普段、龍也のスパルタ修行受けてるくらいやもん、そう簡単にやられる訳ないやん。

……特にスピード勝負なら十八番やで!

「竜斗!」

って竜斗に目配せしながら叫ぶと、私は刀構えて竜斗が通れるように自分の周りだけ振り払ってん。私が道を作るって事、伝わってるみたいやな。

「よっしゃ! 力仕事は任しとき!」

竜斗は親指立ててニッて笑ってん。

それから龍に習ったあの技、とくとご覧あれ、やで!!

「弾くばっか」

って、紅い眼光らせて堂々と腕組して言うお兄さん。

油断してくれてありがとさーん。

こういう時、無名で良かったなぁって心から思うわ。

そんな事を考えながら私は口の端クイッて上げて、

「斬撃はどうするものでしょう?」

って、刀に力込めてお兄さんの真正面に振り下ろすと三日月形の斬撃が飛んで、お兄さんまでの道が出来てん。

「はぁ!? 龍みたいなことを……!」

やっぱりな。

その驚いた顔……龍のお兄さんの透理さんや!!

「ちょっと通るで~」

続いて竜斗が私の間抜けて、斬撃で作った道駆け抜けてん。

「〈龍の威を借る白猫〉!」

ほんで斬撃の後ろから槍を回しながら、斬撃を薙ぎ払った間から脳天をかち割る感じで下してん。

「くっ……!!」

お兄さんは辛うじて尻餅をついて足を開いたおかげで避けられたみたいやけど、完全に勝負ありやな!

竜斗が矛先を眉間に向けて、

「……まだ何か?」

って、普段絶対聞かへんくらい無慈悲な声色で言ってん。

「ふっ……卑怯者!!」

お兄さんは竜斗睨み上げながら立ち上がって、ミルクティー色の髪揺らしながら逃げ去ってん。卑怯者はそっちやんな。

「……」

竜斗は仕事の顔して無言で槍を模造紙入れみたいなケースにしまって振り向いてんけど、ハッと普段の顔に戻った思たら、

「名前訊いてへんやん! あ~誰やったんやろ!?」

って、急に髪くしゃくしゃにしながら慌てる姿、めっちゃ可愛かったで!

「龍のお兄さんの透理さん」

ってボソッと言うと、竜斗は毒針拾いながら首捻ってん。

「毒針と吸血かぁ……。今度裾野ん()行くし、覚えとこ」

竜斗がそう呟くと、一陣の風が吹き抜けて2人で冬本番の寒さに身震いしてん。

「せや、初めて一緒に戦ったやんな?竜斗とやったらめっちゃ戦い易かったわぁ」

私が満面の笑みで言うと、竜斗はボッと顔を真っ赤にして、

「足引っ張ったやろ~ごめんな! でもそれ抜きなら、俺も楽しかったで」

って、星が飛びそうなくらい綺麗なウィンクして快活に言う竜斗って、ほんま恰好ええなぁ。

 この後、竜斗と戦う機会めっきり減ってしもてんけど、また戦えたらええな~って思てんねん。

せやけど密かに龍と一緒に戦ってる姿は見てるし、いつ見ても楽しそうにしてるから、これからも陰ながら支えていきたいなぁって思ってる。



現在に戻る……

カフェ『12』

龍勢淳



 利佳子ちゃんに一通り話してるときも、ほんま表情豊かに聞いてくれててん。

コメントは言われへんけど、思ってる事分かるから、それだけで十分やで。

「話聞いてくれてありがとう!」

私がにこにこしてる利佳子ちゃん見て言うと、ふんふんって頷いてくれてん。

すると偶然なんか、誰かが情報拡散したんか、うちらの席の隣に鳩やんと藍竜居ってん。

総長って呼ばへんかったり、敬語使わなかったりするのは、湊のおかげで小さい頃から付き合いがあるからやで。

しかも藍竜めっちゃええ笑顔してるし……。

「いい話だ、面白かった。ね、鳩村?」

って、急に話振られて冷や汗掻いてる鳩やん、微笑ましいわ~。

「えっ……は、はいっ……!」

鳩やんは、机の下でスマフォ操作して私にCAINでメッセージ送ってくれてん。

『菅野くんが教えてくれたんだ! 自分は仕事が入ったから、代わりに護衛を頼んでくれって……。そしたらその場に総長が居てね、重い空気にしてごめん!』

これ、5秒で打てるって凄ない?

私は鳩やんと目配せして、気にしてへんこと目で伝えると、ほっと胸なでおろしててん。

 しばらく4人で話してたら、休憩に入った組の子なんか、

「藍竜総長、お疲れ様です!!」

「珍しいですね!」

「女子ってますね!」

とか色々言われててん。

総長なのにほんまよく廊下歩いてるし、人望ありありやなぁって思ったわ~。

その度に嬉しそうに頷いたり、からかい返したりしてるとこ、ほんま1人1人とよく向き合ってるなって、めっちゃ感動。

「……ん~!」

そしたら、利佳子ちゃんが机叩きながら腕時計指差してん。

もう17時前!?

じゃあそろそろ帰らな、またお兄ちゃんに怒られるわぁ……。

 私と利佳子ちゃんは、そろって2人の机の前立つと、

「ごめんな、時間きたからそろそろ帰るわぁ」

って頭下げながら言うと、藍竜は私が左手に持ってた伝票取り上げて、

「途中まで送っていくよ」

と、2つの伝票を持ったままレジ行ってしまって、利佳子ちゃんと鳩やん大慌て。

2人して1,000円差し出してるんやけど、私には分かるで。

周りに龍也、湊と颯雅が居るからな。


 それから総長に御馳走なったこと引きずる鳩やんと、何度もぺこぺこ頭下げる利佳子ちゃん、総長オーラ醸し出しながらも近寄りやすい雰囲気の藍竜と話しながら、無事に家路についてん。

そのとき、夏祭りに向かう子どもたちがうちらの前無邪気に走り抜けてったの見て、

「あの子たちを守るのが仕事だ」

と、胸張ってんのに寂しそうに言う藍竜に、鳩やんは俯きながらも頷いててん。


 今日もあの子たちの前から、危険な大人たちや汚いこと消してる殺し屋。

それがほんまに正しいかどうかは分からんけど……ああやって笑ってるんやから、間違いないんちゃうかな、って私は深呼吸しながら思ってん。


「ちゃんと守れてるで」



“雪の日には凍えて雷には怯えて月の日には辺りがよく見えたりもしてて

次の日には忘れて風の日には飛ぼうとしてみる

そんなもんさ

僕らはそんなもんさ”

『風の日』より抜粋

冷泉湊(れいぜい みなと)です。


淳の話はいかがでしたか。

彼女らしい悩みや、交友関係の広さについての一面が垣間見えるお話でしたね。

これからも彼女を応援して頂けたら嬉しいです。


次回は(わたくし)、冷泉湊のお話を書いていただけるそうです。

投稿予定日は9月2日(土)らしいのですが、もし2日(土)23時59分になっても投稿されなかった場合は、9月7日(木)に変更となるそうです。

趙雲さん曰く、諸事情により投稿日を大幅に変更する可能性がある、との事です。

よろしければ、気長に待っていただけると幸いです。


最近天候の変化が著しいので、お身体を壊さないよう気を付けてください。

そして残り少ない夏を、目一杯楽しんで下さいね。


冷泉湊

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