最後通告。
今回は色々とごちゃごちゃするかもしれません。間違いも自信ないです…ご指摘があれば教えてください!
あれから大和率いる警告及び殲滅部隊は速力をあげ艦隊から離れていった。その間も彼女たちのことは、無人偵察機グローバルホークでちくいち見守っている。それに事前に確認し正式にガレッド帝国軍とミーシャも断言した。大和達も会敵まであと数分と言うところまで来ている。
そして俺らは大和を離れアイオワに乗り換えた。
「いよいよか~」
「はい、心配は要らないはずですよ?」
アイオワはなだめるように言ってくれた。しかしコンゴウ達はアイオワには近づかない。
「そう言えばアイオワは何が切っ掛けで人格が入れ替わるんだ?」
少し考え込むアイオワは少し顔が赤らんでいる。
「男性にお話しできることではありません…」
非常に小声だったが本能的に踏みいってはいけないと悟った俺はそれ以上聞かなかった。
「強いて言えば、今の私はミサイル戦と索敵が得意で、もう一人は砲戦が主です。あ、一応私も砲戦は出来るんですよ?その~…もう一人に比べれば命中率は下がってしまいますが…逆も同じです。」
「成る程な~役割わけしているのか」
そんなとき大和から連絡が入った。
「停船命令呼び掛けるも応答無しです~」
「な~撃って良いか?」
次々に文句混じりの連絡が入る。
「そうだな、三式弾を使えるか?相手は木造船だ。かなり効くはずだがどうだ?」
三式弾とは戦艦の主砲から放たれる対空砲弾であり、第二次世界大戦後期に日本軍が開発した砲弾だ。その能力は当時木造など燃えやすい素材で作られていた航空機の近くで時限信管により炸裂することで焼夷剤を辺り一面に撒き散らし引火させると言うものだ。しかし時限信管といういわゆる時限爆弾を、タイミングよく炸裂させるには敵機との距離と砲弾の速度の関係を正確に把握しなければならず、実戦ではあまり使われることはなく終戦をむかえてしまった。
「良いですね♪この子達もやっと活躍出来るのですか♪」
大和もノリノリだ。実を言うと俺は見てみたいだけなのだ。
「そうと決まれば早速装填ですよ~!敵艦との距離は500mぐらいですか♪」
「私達も負けませんよ!ありったけぶちこんであげますよ~!」
何だか敵が哀れに思うような会話が終わると遂にその時が来る。
「目標ガレッド帝国艦隊!全砲門開け~!」
大和の幼いが凛々しい声に反応するように各艦が船体の側面をガレッド帝国艦隊に向けた。本来この攻撃方法は船尾の砲も使えるようにして一度に大量の砲弾を放つことができるようにする反面、敵に見せる面積が増えてしまうため、被弾の確率が上がってしまうというデメリットも存在する。しかしガレッド帝国に数百メートル離れた敵に攻撃する手段はないため心置きなく全火力を注ぐことができる。
「大和、俺らの最終目標はあくまでも海龍種だからな?そのためにも極力温存しといてくれよ?俺と合流出来たら補給出来るが、そのまま戦闘になってしまっては補給は難しい。」
「分かっています!極力この一手で沈めます!」
心強いセリフを聞けたことで少し安心した。
「後はお前に任せるよ、」
「了解です♪では皆さん。」
大和はここで目を閉じ深い深呼吸をした。金剛達も今か今かと待ちわびている。大和が目を開き声を張り上げた。その声は幼さを感じるが、その姿は最強の戦艦と言われる何かがあった。
「全主砲、撃て~っ!!!!!」
その言葉により大きな…非常に大きな爆発音が伴いながら一瞬眩い閃光が花開き、大気が震え、主砲下の海がへこむ。それを無人偵察機からの映像を見ていた吉晴を含めた全員が言葉を無くす。今、大和達は砲撃の黒煙で確認はできない。そしてガレッド帝国艦隊が居たとされる場所には黒煙と水柱と炎しか見えない。
「凄い…これが戦艦…」
今の現代人は戦闘をするための船を全部あわせて戦艦という認識が高い。しかし戦艦の定義はそんなものではない。その誤った定義が正しいとするならばゴムボートに無反動砲やロケットランチャーを積めば戦艦になってしまう。絶対に違う。戦艦とは地上では運用不可能な巨大な大砲を有して、なおかつその自身と同じ砲に攻撃されたとしても耐えることのできる装甲を持っていて初めて戦艦と呼ばれる。けして戦う艦船ではないのだ。例え強大な砲を持っていたとしても、その船が民間船並みに貧弱では戦艦とは言えない。これは逆も同じことだ。
つまり戦艦とは力で海面上をねじ伏せ支配する、言うなれば1つの城なのだ。そんな戦艦の本気を見た俺らは少しばかり恐怖した。そんな俺らに問い掛けるようにアイオワが口を開いた。
「これが戦艦です。この馬鹿げた火力で敵を轟沈させる。私もこんなになってしまっていますが戦艦の端くれです。人を殺める為だけに造られました。人を守りたい。この心は大切ですが同時に敵を殺めることになります。どちらにしても人を殺めることに代わりはありません。」
アイオワは自らの呪いを語るように語った。
「私も様々な実戦を経験してきました。そのなかで顔も知らない。…殺したかも分からないまま一方的に艦砲射撃したこともありました…あのときは本当に苦しかった。大和さんも経験したはずです…一方的に艦砲射撃をして民間人を殺してしまったことが。」
大和が写るモニターを見たままのアイオワはいまだに言葉のでない俺に向き直った。
「艦長…。私達は兵器です。戦いを拒むことはしません。しかしせめて関係のない民間人を攻撃しろと言う命令はしないでください。」
正直いって、俺は最低なことを考えていた。これからのガレッド帝国への対応だ。トローデス王国の国旗を掲げてガレッドの町を艦砲射撃で焼き払えば…と言うことを一瞬でも考えた俺を自分で殴りたい。
「…。勿論だ。民間人の被害は最大限抑える。君たちに苦しい思いはさせないよ。」
「その言葉が聞けて安心しました♪」
アイオワは今までで一番の笑顔を見せたかと思うと、直ぐに表情が曇る。
「この音は…」
その異変と、こんごう達からアスロックの派生型であるVLA対潜ミサイルが放たれたのは同時だった。
「どうした!何があった!」
無線に俺は怒鳴り付けた。
「何かでかいのが海中から高速で浮上してる!状況から見て海龍種で間違いない!砲撃音で出てきたんだと思う!」
何て言うことだ…海龍種は大和達の背後から近づいている…
「大和!聞こえるか、良いかよく聞け!今背後に海龍種と思わしき反応が現れた。直ぐに反転してこちらと合流してくれ!海龍種は俺たちで足止めする!」
「了解です!」
大和は頭上を飛んで行くVLA対潜ミサイルを確認し海龍種の大体の方向を予測し迂回するように全速力で吉晴の元へと急いだ。
「対潜ミサイル着弾まで…5.4.3.2.1.今!」
ほぼ同時に発射された十数発のVLA対潜ミサイルが次々に水柱を作り出す。
「目標、いまだ行動中!…海面に出ます!モニターに出します。」
その光景にまた息を飲んだ。そいつはとんでもなくデカイ亀のような生物だった。
「結奈…ミーシャ…チョッとばかし揺れるぞ…どっかに掴まってろ…」
「う、うん。」
「あれが海龍種…」
海龍種は魚雷を食らった傷で一ヶ所だけ血をだしていた。これに俺は心安堵した。
「現代兵器は有効だ!全艦ハープーン用意!」
こんごうはハープーンが横向きに配置されているため側面を相手に見せなければならない。
「デカイですね~撃ちごたえが有ります。」
アイオワは砲撃の準備をしている。
「準備でき次第、撃ってくれ!誤射だけは気を付けてな!」
そう言うとそれぞれの船からハープーンが放たれた。その数4発。俺は息を殺してモニターを睨む。
ハープーンは一直線に海龍種に突き進む。そして大爆発を引き起こした。
「ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」
海龍種はここまで届く声で悲鳴を上げた。しかし倒しきるにはまだ火力が足りないようだ。
「くっそ!まだ足りないのか!」
「艦長その~…なんと言うか…失礼します!」
アイオワはそう言うと、出来る限りの背伸びをして、
俺にキスしてきた。その時の結奈達の目はヤバかった。頼むからそのジト目は止めてくれ!
「よ~っと久し振りの登場だな♪話は聞いてるわよ~さっさと片付けようかね!」
主砲を素早く動かし血だらけの海龍種に向ける。
そう。彼女こそアイオワのもう1つの顔。もう一人のアイオワ。
「撃て~!」
その声は9門の40.6cm砲に火を吹かせた。
初めて間近で感じる戦艦の砲撃音が体の芯を震わせる。一斉に放たれた9発の砲弾は海龍種に吸い寄せられるかのごとく、進み海龍種の肉をえぐった。この攻撃に海龍種も頭に来たのだろう。数百近い何かが空に舞い上がった。
「出てきたぞ!奴の特攻隊だ!」
「私は対空戦は得意じゃないわよ?」
「分かってる!こんごう!イージス艦の意地を見してやれ!」
イージス艦の本来の目標は対空、更には宇宙空間を漂っている弾道ミサイルの撃墜にある。イージス艦はアメリカの開発した防空火器管制システム。通称イージスシステムを搭載した船であり、128個以上の敵を判別し追尾することの他にも、最も脅威の高い目標を同時に10個以上を同時攻撃することができる。それも1隻でだ。今は5隻居ることから同時に少なくとも50の目標に対処することができる。
「アイオワは海龍種に砲撃していてくれ!対空目標はこんごう達が何とかしてくれると思うから、取り逃がしたのだけCIWSで撃ち落としてくれ!」
「了解!」
俺が空を見たときだった。次々に対空ミサイルが飛び交い、沢山の爆発がおきているなか、花火がそこに咲いた。俺はその正体が直ぐにわかった。
「三式弾!大和か!?」
「遅れてすいません!雷ちゃんが生き残った捕虜の救助したいって言ってしまいまして…」
我ら戦艦の方々のご登場だ!
「そうか、だがそれは後だ!今から戦艦の同時砲撃を海龍種にする!駆逐艦の子達はありったけの魚雷を撃ち込んでくれ!総力戦だ!」
今は海龍種は動いていない。魚雷も当たりやすいはずだ。
7隻の戦艦の砲門の総数は何と159門にも及ぶ。つまり159発の砲弾が同時に発射可能となる。これは副砲や全ての砲の総数だ。特に金剛型戦艦の砲の数がヤバかった。
「魚雷は砲撃より先に撃ってくれ、砲撃で気づかれて魚雷をかわされるかもしれない。できれば魚雷の直撃の寸前に砲撃したい」
「了解です!それにしても恐ろしいですね~これだけの砲を向けなければあの生物は倒せないなんて…。」
妙な沈黙が訪れた。皆考えているのは同じことだ。俺がその答えを話す。
「これでもダメなら…。」
皆の視線が集まる。
「核を使う。」
結奈の表情が曇った。
「か、核って原爆のことだよね…社会の先生が言ってた…」
「そうだ…。人類最強にして最悪の兵器。核兵器。あくまでも最終手段だよ…。」
核兵器。存在そのものが抑止力となる人類最終兵器。
ミーシャが訳のわからない顔をして問いかけてきた。
「そんなすごいものが有るなら何故使わないのです?」
「ミーシャ…核兵器と言うのは…使ってはいけないんだ。魔法で言う禁術みたいに。俺が使おうとすれば、例えばトローデスの真ん中で使うとすると…町のほとんどが吹き飛ばされて、焼け野はらになり、多くの人は皮膚が融けたり、助かっても病気になったり、とても大変なことになるんだ。」
信じられないという顔をしているミーシャは首をふる。
「そんなことできるはずないわ…トローデスはこの世界でも大きな国なのよ?そんな…一発で…」
俺はポケットから神様から貰ったスマホで核爆発の映像を見せた。今時この手の動画は簡単に見られる。
「これは…何て言う…」
「そう言うことだ。もしも核を使うならしっかり考えなくちゃいけないことは理解してくれたか?」
無言で頷く。
「じゃあ作戦開始だ!単縦陣で海龍種を回るように継続して砲撃を行う!」
直ぐに一直線の長い航跡が出来るようになった。
「魚雷発射用意よし!」
今まさに龍種討伐という人類始まって以来の快挙となる決戦が繰り広げられる。




