現代兵器の異常性
俺はさっきまで何をしていた?そうだ…トローデスに奇襲をかけるために命がけで海龍種のいる海域を進んでいたんだ…。しかし今俺はどこにいる?あの時…そうだ。
「俺達は、負けたんだ…戦う前から負けていた…勝負にすらなっていない…ガレッド帝国最強の艦隊が…」
一人の男が呟いた。あるものはこう話す。
「あんなの異常だ!あんな船見たことねーよ!」
「でかすぎだ…200m以上ありやがった…」
「気づいたら目の前が水だらけ…俺たちの船は無かった…」
彼らは駆逐艦、雷に助けられたガレッド帝国の水兵達である。今彼らは雷の一室に軟禁状態にある。これは彼女(雷)達自身には戦闘能力はなく、救助された水兵が船内を占拠してしまったら大変なことになるためである。
「本当はこんなことしたくないのですが…しかたありません…」
雷はため息混じりの深呼吸してから鉄製のドアの鍵を開け、中に入った。救助した船員はほとんどが目をさましていた。
「初めまして。駆逐艦雷です。この中で一番偉い人は誰でしょうか?話があるのですが…」
船員達の視線がある男に集まった。それは周りよりもいくらか豪華な服装をしている。
「私だ…。ガレッド帝国主力艦隊指揮官のバーマスだ。ここは船なのか?」
「えぇ。そうですよ?バーマスさんついてきてください。他の方はしばらくここにいてください。」
「処刑するのか…」
この世界において敵の指揮官は処刑するのが当然だ。彼も目が覚めたときから覚悟をしていた。
「いいえ?確かに軍ならそうかもしれませんね~?しかし今はどこの軍にも属していません。処刑するのかしないかは私の指揮官である吉晴艦長が決めることです。安心してください。艦長はお優しい方です。特に問題はありません。他の皆さんも同じです。こちらの指示を聞いてくれれば特になにもしません。」
「本気でいっているのか?敵である我らを…」
「敵?そっか敵か~一応敵なんだっけ?…そうです!私達の今回の航海の目的は海龍種の討伐です。そこに偶然あなたたちがいただけですよ?別にあなた方を倒すために来たわけではありません。たまたま艦長の奥さんがトローデスの人だったからついでに倒しただけのことですから♪」
彼らはさらに驚いた。海龍種の討伐と確かにいった。そんなことは不可能だ…。しかし自分のみで起きたことを思いだし口に出すのをやめた。
「本当にそんなこと出来るのか?」
「もちろんです!貴方には見ていてほしいのです。私達の海戦を。」
雷はバーマスを連れて甲板に上がった。
「何と!?船全体が金属でできているだと!?信じられん…これ程大きなものをどうやって…」
「大きい?私がですか?」
「ん?この船のことだが…」
雷はやっと話が噛み合っていないことに気づいた。
「言ってませんでしたね…私は人間ではありません!私はこの船その物でこの船は私自身です。」
「な、何を言っているんだ?」
「分かりづらいですね…ではこの船のどこかで乗組員を見かけましたか?」
その言葉を聞きバーマスは未だに彼女以外に人影を見ていないことに気づいた。
「まさか…」
「わかってもらいましたか。それが私がこの船その物という意味です。」
「それに私が大きいと言いましたね?それは間違いです。むしろ私は小さい方ですよ?」
一瞬バーマスは言葉を失った…
「これが小さい?この様な…」
「あれ見てください!あれが世界最大の戦艦ですよ?」
今までバーマスは雷のことに気をとられて、前方にいる巨艦に気づくことはできなかった。
「な、なんという!まるで城ではないか!それが何隻も…」
今までの海軍に捧げた人生が崩壊するように落胆していたとき肝心なことを聞いていなかったことに気づいた。
「この船はどこに向かっているのだ?」
「今、艦長の艦隊が海龍種と交戦中なので合流するのです。流石にあの艦隊では戦闘継続能力も火力も足りないはずなので防戦一方になってしまっていると思いますから…」
「な!?本当に戦っているのか!?」
「嘘なんてつきませんよ!さっきの報告では海龍種は血だらけになってもまだピンピンしてるって聞きましたから…」
「海龍種に傷を負わせることが出来たのか!?なんという…」
「さ、そろそろ見えてきますよ?あ、大和さんの砲搭が動き始めました~♪」
どうやら前方の巨艦はヤマトと言う名前らしい。
「大和さんの砲撃は凄いんですよ!あ~憧れますよね~」
そんなことを目を輝かしながら話してくるが、ホウゲキと言うのは分からないが恐らく攻撃の名前なのだろう。
「あ、見えてきましたよ!?海龍種!」
距離が近づくにつれその大きさと血だらけの様子が鮮明に分かるようになってきた。
話には聞いていたが俺は目の前のことが信じられなかった。絶対的な力を持って魔王も退けたとされる龍種が血を流している姿など。
「あ、言い忘れてました。もうすぐ耳を、」ドゴォォォォン!
「ウワァァ~耳が…。なんだ…この爆音は…」
「遅かったですか…大和さんの三式弾を撃ったんでしょうか…始まりましたよ?決戦が。」
「魚雷、撃て~!」
暁型駆逐艦の全発射から菅放たれた大量の魚雷が海龍種に群がっていく。それは途中で魚雷同士がぶつかってしまう位の密度だった。刻々と過ぎる時間をただひたすらまつ。
「魚雷到達まで、5.4.3.」
「全主砲撃て~ッ!」
今戦艦率いる主力は海龍種との距離を2000mに保って円を書くように一列で進んでいる。
さっきの魚雷攻撃とほぼ同時に砲弾を命中させなければならない。その為には砲弾に比べ遥かに遅い魚雷に合わせる必要がある。
放たれた砲弾の総数130発以上。だが直ぐに再装填が行われる。砲撃も雷撃も次弾からは自由に撃てるやつから撃つと言うことになっている。
「まるで地獄だな…俺らの世界でもこんな戦闘は無いな。」
吉晴が自分の計画した作戦に少しばかり絶句した。
「吉晴様も凄いことをお考えになられますよね…」
「海龍種…可哀想…」
結奈…そんな目で見ないでくれ…仕方ないことなんだ…。
目の前のモニターには砲弾が次々に放たれたり、魚雷もすごい数だ…もう怪獣をリンチしているようにしか見えない。てか、この映像ハリウッドにいくらで売れるかな…
そんな海龍種は水しぶきと黒煙に包まれ確認は出来ないが確かにそこにいるのは感覚でわかる。
そんな攻撃が10分間続いた。途中から駆逐艦の子達も雷撃しながらも砲撃に参加した。
「攻撃止め~!」
「良いサンドバックだったですね~」
何と恐ろしいことを… 海龍種をおおっていた黒煙が徐々に晴れていく。
「嘘だろ…」
「化け物ですね…」
「どんな生命力を持っているんでしょうか…」
「うへ~お手上げだよ~」
海龍種はまだ生きていた。瀕死だが確かに生きていた。殆どがあの硬い甲羅に弾かれたようだ。
「戦艦の砲弾を跳ね返す甲羅…チートかよ…」
俺が言えたことではないが…ん?硬い…
「そうか~甲羅なんて壊さなくても良いんだ~」
「どういうことです?」
「内側から攻撃するんだ。」
そうと決まればさっそく行動だ。
俺は影の薄かった空母二隻に連絡した。
「機種は何でも良い!ありったけ燃料気化爆弾を装備して甲羅に落としてくれ!沢山だ!」
なんだ…そう言うことだったのか…海龍種を倒すなんて簡単なことだったんだ。
直ぐに二隻の原子力空母から沢山の戦闘機が轟音を響かせ次々に飛び立っていく。
「何をする気なの?」
「見てなって?」
高速で海龍種の上を飛んでいき、続け様に何かを落としていく。
突如落ちたものが爆発したかと思うと、白い何かが広がった。この世界には無いであろう衝撃波だ。
この世界の爆発魔法は、炎自体を急速に大きくすると言う発想の元に使われている。この方法では衝撃波は生まれない。つまり海龍種の甲羅に攻撃するのではなく衝撃波で甲羅のした。つまり臓器、血管筋肉などを破壊して出血死を狙う作戦に変更した。先程から砲撃の他に衝撃波を伴う兵器は多数登場していたが、やはりミサイルや魚雷の方が効果があると見た目で思っていた。海龍種は予想通りに口から血を吐き、遂に朽ち果てようとしている。今大和率いる艦隊は海龍種の正面目の前に弧を描くように停船している。
「全主砲、目標海龍種頭部…。」
海龍種は動けもしない状態だ。例えここで逃がしても出欠多量で長くは持たないだろう。
ちょうど、こんごう達の方も終わったようだ。じっと、こちらを見守っている。
「良いのですか?」
「あぁ。やってくれ。」
戦いの終りを告げる最後の砲撃は、全艦揃って波の音がする海にただ響き渡った。
しかし砲撃の残響が静まる頃、俺達は再び壁に突き当たることになる。
「どうすれば良いんだろ…持ってく部位とか決まってるのかな…」
肝心なことを聞いてくるのを忘れていた…
「倒したらどうすんだろ…本当…。」
「取り敢えず…引っ張って港にいきましょう…何とかなるでしょ?」
今のところはミーシャの提案しか無いようだ。
「そうだな…曳航していけるか?」
「ギリギリ…何とか…」
「よし、帰るか…」
こうして海龍種を倒すことに成功した吉晴達はトローデスに帰還するのであった。
「あの~…艦長?少しお話が…ミーシャ様も結奈様も宜しければ…」
「何だ?問題か?」
「私で良いのかしら…?」
「ん?私?!」
申し訳なさそうな顔をして近づいてきたのが駆逐艦雷だった。何の用なのだろうか…あれ?何か忘れてるような…
「捕虜の方々についてです…」
「あ、あぁ…あったなそんなこと…すっかり抜けてた…」
そういや雷がガレッドの水兵救助したって言ってたっけか…
「それは困りましたね…軍につきだして仕舞うと…」
「し、処刑…ですよね…」
ミーシャが困った顔をしている。その理由は俺にだって予想できる。
「何人くらいですか…?」
「86人です…」
「結構多いですね…しかし…」
「無かったことにして帰しちゃえば良いんじゃないか?」
ミーシャがまた複雑な表情を取る。
「吉晴様…ガレッド帝国の主力である艦隊をすべて沈められた指揮官はどうなると思いますか…?」
その問いかけでやっと言いたいことが分かった。
「彼らにしては、残るも帰るもどちらも同じなのか…」
これは難しい状況になってしまったようだ…
「その事でガレッド帝国の主力艦隊の指揮官さんが吉晴艦長に相談があるそうです。」
「しょうがない…行きますか…」
「私も行くよ!」
「結奈がか?面白い話じゃないぞ?むしろつまらないと思うぞ?」
「良いの!」
「私もトローデスの姫として行きます!」
トラブルメーカーな事を呪う吉晴だった。
「はぁ、はぁ…はぁ…何で…私が…こんな目に…なにもしていないのに…」
とある森を必死で駆け抜ける少女がいた。何かから逃げているようだ。しかしお世辞にもそんなに足が早いわけではない。その目には涙が光っている。
「これだから人間は信用ならないんだ…信じようと歩み寄ったのが悪かったんだ…」
何でみんな、私を恐がるの…なんもしてないのに…遊びたいだけなのに…
「へへ、見つけたぜ…」
「賞金首さんよ…」ニヒ
ここでこんなやつに殺されるぐらいなら、いっそのことそこの崖から飛び降りちゃおうかな…
こうして少女は自ら崖から運命に身を任せた。少女の体はフワリと飛んだような気がしたあと少女は行方不明となった。




