4話 入学
題名のとおりです。
では、どうぞ。
「……でかいな…」
王立グロワール護神騎士学校の前で次々と、紺を基調とした防刃防弾仕様の制服に身を包み、剣や杖、銃などを装備した少年少女たちが校門をくぐる中、黒髪黒目で鋭い目つきのとても整った顔立ちをした少年が軽く呆けたような声を出した。
腰には鞘が真っ黒な刀を差し、両足のホルスターにはそれぞれ右に黒と左に銀のゴツいハンドガンが、収まっている。
その少年はかなり目立っていた。
原因は唯一つ。
それは少年の容姿である。正確にはその髪と目の色が。
黒髪黒目はこの国ではかなり珍しい。
そのせいで、少年はかなりの注目を受けていた。
そこかしこで話し声が聞こえてくる。
「ねぇ……あの人の髪と目」
「黒色ね、珍しい…」
「てゆうか、それよりもあの人…すごく――」
「「「「「かっこいい……///」」」」」
「「「「「…く…そ…が…」」」」」
「「「「「………イケメンは死ねぇーー!!!」」」」」
――主に顔立ちについてで髪と目にはあまり触れていないが。
と、少年は自らの腰に差した刀が軽く振動したような気がした。そして、それと同時に透き通るような少女の声が少年の「心」は確かに捉えた。
(注目を受けてますよ、マスター)
(だな。だけどアレだろ、俺の髪と目が珍しいだけだろ。でもまあ、それにしては受ける注目が多い気がしないでもないが)
(……はあ。相変わらずマスターは鈍いですね)
(うん?)
(もういいですっ。けど、確かに大きいですね)
(だろ?)
少年は自分の相棒と「念話」しながらも、驚いていた。
それもその筈である。このグロワール王立護神騎士学校は初め見る者が腰を抜かすほど大きくて広い。
まず校舎が小さめの城くらいの大きさを誇っている(デザインは現代の校舎)。そして何よりグラウンドが半端じゃない。校舎の4分の1くらいの練習場が三つに、同じくらいの大きさのアリーナ(稼動形ドーム付なので雨天時使用可能)が2つ、ついでに校舎の半分ぐらいの寮と、小さい村くらいの敷地面積がある。
こんなに広いと移動が大変ではないか、という声もあるのだがそれは要所要所に設置されている「移動門」同士を接続することで何とかしているようだ。
(さすが、神を護ろうとしているだけあるな)
(ですね)
(でも周りと違和感ありすぎだろ)
彼の言うことも最もで、この学校の敷地だけが周りの西洋の中世のような町並みと比べて異世界のように見える。
しかし、
(誰も違和感を持っていないんだな……)
少年が軽く辺りを見回してみても、大きさに驚いている者が少しいるだけで彼と同じ反応はどこにも見られなかった。
(まあ生まれた時からそこにある訳だから違和感なんて感じるはず無いか)
自分の結論に納得して少年は足を再び進めだした。
SIDE~貫在恭也~
俺は、家を追い出されてから国に外れにある「恐れの森」という所で野宿をして暮らしていたんだが(食料は魔物ども。そしてこの喋る刀(喋るだけじゃないですよ)…………喋るだけではない刀、「月夜」とも出会った、というか創った場所でもある)、2週間くらいたったころに普通に寝ていたところを迷子と間違われて、魔物の討伐に来ていた女性に保護された。
そして、その人の養子となり他にその女性に拾われたという、3人の義兄妹達今まで過ごしていた。(その人の苗字は奇跡的に貫在だった。本当に不思議だ)。
で、その女性と1人の義妹に一ヶ月前くらいに、此処へ入学したいことを伝え、拝み倒してOKしてもらった。
だが、そんな昔話はどうでもいい。今は歓喜すべきときだ。なぜなら…………。
「……ですから、君たちはここで心して学業や訓練に励んでください」
「これで校長先生の話を終わります。礼」
三十分に渡る校長の話が終わったからだ。
あのバーコード頭め!ずっと立たされているこっちの身にもなれってんだ。
…………何がともあれ、後は壁に張り出されているクラス表を確認して教室に向かい、クラスメイトと顔合わせすれば今日は寮に帰れる。
「これで入学式を終わります。1年生は順番に壁に向かって歩き出してください。あ、今並んでいる列ごとに、ですよ~」
俺は長話で削られた精神力を振り絞って足を踏み出した。
クラス表の辺りはかなり混雑していたが、かろうじて自分のクラスを確認できた。
この学校は筆記試験と実技試験の成績でクラスを決める。
進級してからは、全部で五年ある学校生活の中で進級前にやる試験で。
「魔法」と「闘気」は碌に扱えず、「能力」すら発現していないという設定の俺は当然ながら最下位のFクラス。
試験の結果が返ってきたときは結構焦った。自分で落第ギリギリを狙ったんだがギリギリ過ぎて、危うく本当に落第するところだった。
ついでで最高位のSクラスの表を確認してみたんだが、ヤバイ名前を見つけてしまった。
東条紗枝と如月美香子、北森綾香だ。
おそらくだが三人ともかなりの実力者だ。
紗枝と美香子――美香子は親父の弟の娘、つまり従兄弟――は言わずもがな。小さい頃から一緒に遊んでいた俺は二人の実力をよく把握している。
そして北森綾香。こいつは学年主席だ。なんと入学試験では筆記、実技ともに満点。ちなみに面識は無い。だが北森ってのは東条に並ぶ四大将軍家の一つだ。警戒はすべきだろう。
あと最初に言った二人は俺が「如月」であることを知っているから危険度アップだ。てゆうかこいつらが同い年なの忘れてたな、完全に。
まあFクラスの俺が接触することも無いだろう。
そう思って俺は自分の教室に向かった。
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はじめに魔法。これが一番この世界で使われている「力」だ。基本属性は四つの火、水、風、土、その上位属性に炎、氷、雷、地属性がある。また特別属性として光、闇属性。最後に、どの属性にも当てはまらない、なおかつ高難易度の無属性。
以上、全十一属性が存在している。
一人の人間が使える属性はせいぜい一つか二つほどで、三つ以上の属性を扱えるものは中々いない。
ほとんどの魔法は六つの系統に分かれており、それぞれ攻撃系統、防御系統、強化系統、治癒系統、精神系統、空間系統だ(「系統」の部分を「魔法」と言う時もある)。
中でも無属性魔法はさっきも言ったように難易度が高い。属性魔法と違って簡単にイメージできないのが理由とされている。無属性魔法を一系統でも使えると一目置かれるようになるくらいだ。
そして無属性魔法とそれ以外の属性魔法はそれぞれ長所と短所があり、無属性魔法が強化、治癒、精神、空間系統の効果が高いのに対して属性魔法は攻撃、防御系統の魔法に特化しているということ。属性魔法は火とか水のイメージが付加されていて、身体に掛けるタイプの魔法とは相性が悪いのが理由だ。
発動方法についてだが基本は呪文の詠唱で、自分の保有している魔力か、空気中を漂う自然魔力を取り入れて、それを燃料として発動する。自然魔力は自己魔力と違って、制御が難しい。魔術師は基本、体内の魔力を使うが、優秀な者はなるべく空気中の自然魔力を使用し、いざという時まで自分の自己魔力を温存しておく。当然のことだ。何故なら自己魔力は有限で自然魔力は無限だからだ。
そもそも魔力の源は、この後説明する「魂の力」と呼ばれる魂だ。睡眠中に自動的にアルマが魔力に変換され、その者の魔力を満たす。それによって自己魔力が生成される。
自己魔力を使用することは、ある意味命を消費しているから、使えるなら無限に存在する自然魔力(使いすぎればさすがに大気中の魔力は薄くなり、取り入れることはしばらく出来ないが)を、使うに決まっている。
ただ、さっきも言ったように自然魔力は制御が難しい。何故なら、魔力の制御、および魔法の制御は精神力が命だ。自然魔力と違い、自己魔力の大元は自分の命――魂だ。自然魔力に比べ比較的容易に操れる。だが自然魔力はそもそも正体不明で実態がよくわかっていない。そんなものを操ることが難しくないわけがない、ということだ。
さて、先ほどの続きだが呪文が必ずしも必用と言う訳ではない。
魔法は体内の魔力を制御し、使う魔法を強く「イメージ」して形にし、対外に放出する、という術だ。
呪文はあくまでも、その魔法を発動させるために、必要なイメージを作るための鍵でしかない。つまり、詠唱破棄というものも可能、ということだ。だが、この技術を会得するには相当な努力と才能がいる。しかも魔法の難易度が上がるにつれて難しくなるというおまけ付き。だからこんな技術を修めようという者は少なく、普通に自分の使える魔法を増やそうとするものの方が多い。何故なら、できるかどうかもわからないものに時間を掛けるより、圧倒的に効率がいいからだ。
次に闘気についてだが、こいつの使用方法は主に身体強化だ。戦闘意欲を鍵に意識的にアルマ――魂を闘気に変換して、それを纏ことが可能だ。
命を懸けているだけあって強化系統の魔法のおよそ二、三倍の強化をする事が出来る。
他に闘気で出来ることといったら、対外に放出して「気弾」として飛ばすか、障壁を作ることぐらいか。
最後に能力。この「力」は大体三歳~五歳の間に発現する。発現数は人それぞれで一つ。
強さによってそれ相応の「魂の力【アルマ】」を持っていかれる。
この力は魔法や闘気の使えない(精神力が足りなかったり、アルマの闘気への変換が苦手な者の事)者でも生命力である「魂の力【アルマ】」を犠牲に「力」を発揮することができる。
しかもこの「力」はほぼ全員が発現するので、落ちこぼれの人間(こういう表現は好きじゃないが)にとっては救いと言えるだろう。
そして、上記二つの「力」違うところは使用したのを悟られないというものだ。魔法と闘気はある程度修めれば、使用したときの気配を悟れるのに対して、能力にはそのデメリットが一切無い。つまり、使った気配が悟られず、暗殺にもってこいの「力」ということだ。この「力」がいちばん強いのではないか、という声もあるのだがそうでもない。使用者自身の気配が消えている訳じゃ、無いからだ。
そもそも、この世界の人間は能力はあまり重視していない。まあ自分の戦い方に合わないものなら習得しても意味がないしな。だがどんな役立たずな能力でも一応は使いこなせるようになっておくのがこの世界の常識らしいが。
最後に「魂の力」についての説明。
気配の元は「魂の力」というものだ。「魂の力」は「魂の器」に納まっており(器は睡眠中に満たされており、魔力変換されていても、常に満たされている状態)、そいつの「力」が強くなると、それに比例して「魂の器」が大きくなり、ついでに身体能力も上がる。つまり、相手のアルマが探れるようになると、そいつの強さも漠然とだが、分かるようになるということだ。まあ、それなりの実力を持つものは気配を消すこともできるのだが。
(誰に向かって言ってるんですか?マスター)
(さあ?誰だろうな)
(……?)
ようやく一年生の教室がある三階にたどり着いた。
いや~アリーナから結構遠かったな。いくら「移動門」使ってもやっぱり広いな此処は。
そしてはたと、ある事に気づき足を止める。
――俺がここへ来た目的は何だ?
――この世界と、そのうち来る戦争とやらについて、調べる事だ。
――この学校の四階には、相当な蔵書を誇る図書館が存在するらしいな。それこそ読みきるのに一年以上、かかる程の。
――俺がまじめに学校生活を送る必要性は?
――…………ないな。
(ええっ!?)
俺は踵を返し図書館のある四階を目指す。が、またすぐに足を止める。
――さすがに授業をサボると目立つよな。
(そうですよ!)
――……よし。
久しぶりに「力」を使うことを決める。
(えええっ!?)
覚悟を決めると俺は、周りにこちらに注目している者が、誰もいないのを周囲のアルマを探って確認したあとに、能力『知覚阻害』を発動する。これは読んで字のごとくの効果で、対象を知覚できなくするものだ。
今回の対象は俺自身と今から発動する魔法。ちなみに今、俺はある意味透明人間だ。
その状態で無属性魔法『幻像投影』を無詠唱で発動する。この魔法も名前からわかるように、自分の望んだ幻を出現させるものだ。
俺が出現させたのは俺の分身。
(お~上手いですね~)
(ありがと)
月夜の柄部分を撫でてあげる。
(はぅっ!?……いえいえ///)
(うん?)
この分身に、幻という事がばれない様に二つの対策を施す。
一つ目は、俺の一割くらいのアルマを分け与えること。ただしこの時、アルマの一部に『知覚阻害』を掛け、気配を探られても一般人レベルに見えるように偽装しておく。この工程を施すことによって、こいつは物質に触れられるようになり、気配では幻ということに気づかれないようになる。だが一つ欠点があって、向こうから触れてきた場合簡単にすり抜けてしまうというものだ。まあでも、俺に好き好んで触れてくる奴なんて、居ないから問題ないだろう。
(それはどうですかね)
(どういう意味だ?)
(鈍感なマスターには分かりませんよ~だ)
そして二つ目。俺は能力『思考分担』を発動する。この能力は複数の事を同時に考えることができる能力だ。この場合は二つだが。
一つの思考は幻の脳に、直結させる。もう一つの思考はもちろん、本体である俺。これでこの幻は、人形ではなく本当の意味での俺の「分身」になった。
最後に装備を渡しとくか。俺は「月夜が」良いから銃だけ渡しとこ。
(はぅ~///)
作業を終えると『知覚阻害』を行使したまま、俺は図書室のある四階へ歩き出した。
――自分とは反対方向に進む、足音を聞きながら…………。
時間があれば感想、アドバイスよろしくお願いします!!
あと誤字脱字報告もできたらお願いします。
3/20一部改稿
4/29能力について 改稿




