第76話 風の罠と“風の民の記憶”
カマイタチを退けた4人は、霧の回廊をさらに奥へと進んでいた。
しかし――
ヒュオォォォォ・・・
不自然な風が吹き抜ける。
サーヤが眉をひそめる。
「むぅ・・・この風、ただの風ではないのだ・・・!」
ミィは髪を押さえながら言う。
「・・・つよい・・・まえより・・・つよい・・・」
壮真は壁に刻まれた古代文字を照らした。
「“風の試練”・・・?ここ、罠エリアか・・・?」
リュミナは風を感じ取るように目を閉じた。
「・・・この風・・・わたしの村の・・・“試練の洞”と同じ・・・」
壮真「試練の洞?」
サーヤ「むっ!?リュミナの世界の話なのだな!」
ミィ「・・・ききたい・・・」
リュミナは少しだけ寂しそうに微笑んだ。
「・・・風の民はね、“風を読む力”があるかどうかで、村の中での立場が決まるの・・・」
壮真は息を呑む。
「・・・それで“要らない子”なんて言われてたのか・・・」
リュミナは小さく頷いた。
「・・・うん・・・わたし・・・風が読めなかったから・・・試練の洞にも入れなかった・・・だから・・・村の外れで・・・」
サーヤは拳を握りしめた。
「むぅぅぅぅぅ!!なんなのだその村は!!リュミナはこんなに優しくて、かわいくて、いい子なのだ!!」
ミィもこくり。
「・・・リュミナ・・・すごい・・・いま・・・かぜ・・・よめてる・・・」
リュミナは驚いたように目を見開いた。
「・・・わたし・・・風を読めてる・・・?」
壮真は頷く。
「さっきのカマイタチの動き、お前がいなかったら読めなかったぞ」
リュミナは胸に手を当て、小さく震えながら呟いた。
「・・・わたし・・・できてる・・・風の民として・・・初めて・・・」
サーヤは涙目で叫ぶ。
「リュミナぁぁぁぁぁぁ!!成長してるのだぁぁぁぁ!!」
壮真「泣くなサーヤ!」
ミィ「・・・なみだ・・・はやい・・・」
ヒュオォォォォ・・・
突然、強烈な風が吹き荒れた。
壮真「うわっ!?風が強い!!」
サーヤ「むぅぅぅ!!前に進めぬのだ!!」
ミィは踏ん張りながら言う。
「・・・これ・・・おす・・・かぜ・・・おとす・・・かぜ・・・」
リュミナは風の流れを読み取り、叫んだ。
「・・・みんな!右側の壁に沿って進んで!!そこだけ風が弱い!!」
壮真「本当か!?」
サーヤ「信じるのだ!!」
4人は右側へ移動する。
すると――
風が弱まった。
壮真「本当だ・・・!進める!」
ミィ「・・・リュミナ・・・すごい・・・」
サーヤは感動で震えていた。
「むぅぅぅぅ!!リュミナはもう立派な風の民なのだ!!」
リュミナは照れながら微笑んだ。
「みんなのおかげ!わたし!がんばれる!次は左!」
リュミナの指示のもと風の罠を次々と切り抜けていく4人。
風の回廊を抜けると、こには古い石碑が立っていた。
途中、指示を間違えたサーヤが吹き飛ばされて、壮真にぶつかり全員が最初に戻されるというハプニングもあったが何とか回廊を抜け出せた。
壮真がライトを向ける。
「“風を読む者、道を開く”・・・?」
リュミナは石碑に触れ、小さく呟いた。
「・・・これ、わたしの世界の古い文字・・・“風の民の証”・・・」
サーヤ「むっ!?どういう意味なのだ?」
リュミナは少しだけ誇らしげに微笑んだ。
「・・・風を読める者だけが、この先へ進める・・・そういう意味・・・」
壮真は目を見開いた。
「じゃあ・・・リュミナがいなかったら、ここは突破できなかったってことか?」
ミィもこくり。
「・・・リュミナ・・・だいじ・・・」
リュミナは胸に手を当て、涙をこらえながら言った。
「・・・わたし・・・初めて・・・“風の民でよかった”って・・・思えた・・・」
サーヤは号泣した。
「リュミナぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!よかったのだぁぁぁぁぁ!!」
壮真「泣くなサーヤ!!」
ミィ「・・・また・・・ないてる・・・」
4人は風の回廊を抜けて、その先のボス部屋へと足を運んだ。
霧は薄れ、代わりに重たい静寂が満ちている。
サーヤが剣を握り直す。
「むぅ・・・空気が違うのだ・・・ここから先、ただの魔物ではないのだ・・・!」
ミィは拳を構え、じっと前を見つめる。
「・・・つよい・・・きけん・・・でも・・・いく・・・」
リュミナは胸に手を当て、深呼吸した。
「・・・風が・・・ざわざわしてる・・・この先に“何か”がいる。でも、わたし・・・もう逃げない!」
壮真は仲間たちを見回し、力強く頷いた。
「よし・・・ここまで来たんだ。家族で、乗り越えるぞ」
重厚な扉の前に立つ4人。
風の罠を突破した先に待つのは――リュミナの世界に関わる“何か”を守る、この階層の主。
壮真が扉に手をかけた。
「行くぞ・・・!」
扉が、ゆっくりと開いていく――。




