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どこへ

 旅の道中は、仁骨にとって初めての連続であった。

 今まではどこを歩いていても怖がられていたが、陰陽師の道満と共に居ると恐れられることが少ない。

 それが仁骨には嬉しかった。


「都は人が多いだなあ」


「近江は都ではないぞ。年齢は二十代中盤くらいなんだな?」


「多分、それくらいだと思うんだけど」


 道満は近江で聞きこみを始めた。


「小春? 知らないなあ。そんな情報だけで探すのは不可能だと思うよ」


「小春ゥ? うちの店に良い子が居るぞ?」


 と中々情報は集まらなかった。


「何か情報はないのか? このままじゃ見つからないぞ」


 道満が尋ねる。


「う~ん。そうだなあ……」


 仁骨は小春のことを思い出す。

 だが、そこまでプライベートの話はしなかったのだ。

 過去を思い出すうちに気付く。


「もしかしたら……なんだけど。小春は……陰陽師だったのかもしれねえなあ。おらに人化を教えてくれたのは小春なんだあ」


「確かに一般人が、人化について詳しいのは不自然だな。近江の陰陽師なら、だいぶん絞れる。知り合いの陰陽師を当たってみよう」


 道満は近江の知り合いの元へ顔を出す。


「おう~! 道満さんじゃないか! 今をときめく芦屋家の寵児が近江に来るなんて、珍しいじゃないな!」


 と狩衣を着た男が道満の背中をバンバンと叩く。


「久しぶりだな。小春という陰陽師を探しているが、心当たりはないか?」


 小春、という言葉を聞いた瞬間、男の顔が陰る。


「道満さんも知り合いだったのか……。小春は先日、亡くなったよ。影鰐(かげわに)の祓除依頼に失敗してな。優秀な子だったんだが……」


「なっ……⁉」


 その言葉を聞き、仁骨が固まった。


「嘘だあ! 小春が死ぬ訳ねえよ! だって、この間まで普通に生きてたんだあ! おらの所に、また会いに……来るって……!」


 仁骨は男の肩を掴み、叫ぶ。


「アンタが知り合いだったのか……? すまねえな」


 男が目を逸らしたことで、仁骨はそれが真実だと悟る。


(最初の怪我は……その影鰐ってのにやられたのか?)


 生まれて初めて感じる、ドス黒い感情。

 仁骨から溢れる妖気によって、周囲が震え始める。


「おい、妖気を弱めろ。周囲に影響が出ているぞ」


「す、すまねえ……」


 仁骨は目の前の男が自分の妖気に当てられ、少し震えていることに気付いた。


「その依頼、俺が受けても?」


「天下の道満さんに受けてもらえるなら助かります。どうか、彼女の仇を」


「行くぞ。仇討ちだ。詳細は聞いていないが、大切な人だったんだろ?」


 道満が仁骨の背中をぽんと叩く。


「ああ……そうだ。大切な人だったんだ」


 仁骨は静かに拳を強く握りしめた。

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