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世界の悪意

 ディノニス軍がかつて保有していた砦を巡る魔族と人間共の争いは、俺が砦ごとアルカイン王国の兵士共、そして勇者共を吹き飛ばす形で決着を付けた。

 まあ、勇者共は直前で脱出してそうだがな。

 そしてその後、ジャックから今度は近くの一回俺たちが落とした街に、兵士共が向かっているという情報を得て、早速俺たちは向かう事にした。



「待ってたっす」


 俺たちは街の地下にあるシェルターっぽい所に来た。

 ここには街の住民もいる……というかジャックに言ってここに移動させてもらった。


「アルカイン王国の兵士共がもうすぐで乗り込んで来るっす」

「ああ、わかっ……」

「我々をここに入れてどういうつもりだ!?」

「あ?」


 あまりガタガタ抜かすな。お前らの為を思ってやってる行為だからな。

 大人しくしてろよ全く………。


「アルカイン王国が来てくれたのだろう?なら我々は……」

「何だ?外に出るのか?」


 俺はここから出ようとする住民共の道を剣で塞ぐ。

 こいつら何も分かっちゃいない。


「クッ……どこまでも魔族の下に付けと……?」

「それもあるがそうじゃない、お前らのた……」

「隙あり!」


 チッ……別の所から何人か出やがった……仕方ない。

 この魔法具は本来この付近を監視するために用意してたものだが……。


「ランティス、魔法具は準備出来てるな?」

「はい」


 ま、出ていった奴らには悪いが犠牲になってもらう……見せしめだ。


『よし、やっと出れた!』

『このまま助けてもらおう』


 俺たちの目の前には外に設置した魔法具から記録した映像が流れている。

 勿論、住民たちにも見せている。


「何が起こるのだね?」

「黙って見ていろ」


 アルカイン王国はどうも危険な存在だと思うんだよな……俺の予想が正しければ奴らは……!

 お、どうやら街の中に兵士共が入ってきたようだ……さて、予想通りの動きをするか?


『お願いします!助け……ギャア!』

『な、何を……ひっ……ヒギャア!』

『フン、我々はここの施設さえ開放すればいい、一度魔族の下に付いた者など殺してしまえ』

『了解』


 ……ほらな、言わんこっちゃない。

 どうせこんな事だろうと思った……だからこいつらを地下に避難させてやったんだ、感謝するんだな。


「な、我々は……!」

「ああ、見捨てられたのさ」

「そんな……」

「もう、おしまいだぁ……」


 うん、予想通りだが住民たちにかなりの動揺が広がっているな。まあ無理も無い、同族であるはずの人間が人間を殺したんだ。今こいつらは絶望の淵に居る事だろう。


「ジョーカーさん、あんたが人間を憎む理由が分かる気がするっす」

「………」


 いつもチャラけてるジャックですら今のアルカイン王国の兵士の所業に苦い顔をしている。

 クインティーに至っては見てられないのか、少し離れた場所で蹲っている。

 確か人間恐怖症だったな……今のでトラウマでも刺激された……か。悪いことしたな……。


「しかし……なぜそうなる事が分かったのです?」

「簡単な事だランティス、俺はアルカイン王国の実態を知っている」

「どういう事です?」


 そうだな……一応こいつに俺が魔族側に付くきっかけを教えてやるか……。


「俺がアルカイン王国に召喚された勇者だってことは知ってるだろ?」

「はい」

「そっすね」


 なんかジャックまでも俺の話に聞き入ってるんだが……まあいいか。

 というかここで話してるから住民にも聞こえてるよな絶対。


「勇者!?」

「それは本当か!?」


 ほらな、まあ別に隠す事じゃない……のかどうかは知らんが別に良いだろ。


「あれは召喚されてから二日目の夜だ」


 今思うと懐かしいな……ってまだ一ヶ月も経ってないか。

 精々三週間ってところか……懐かしく思うのは色んな事があったからだな。


「王と側近の会話を聞いて勇者が捨駒だという事といずれは自分たちが世界を手中に収めるって事を聞いてな……ムカついたからだな」

「要は気に食わないから……ですか」

「ハハ、ジョーカーさんらしいっす」


 俺は天道にもイラついてるがアルカイン王国にも心底イラついている。

 それに天道はどうなったか知らないし。


 しかしアルカイン王国は何がしたいんだ?

 世界征服……そう言ってはいるが何か引っ掛かる……そもそも奴らが行っているのは支配じゃなく虐殺だ。

 本当の目的は世界征服じゃない気がする……。



『しかし魔族どころか人も居やしない』

『人はさっき出てきた奴ら以外会って無いな』

『探せ、魔族諸共皆殺しだ!』

『了解』


 チッ……どうやら悠長に考えてる暇は無いようだな。

 兵士共が虱潰しに俺たちを探しているようだ……入口は分かりやすいからバレるのも時間の問題か。


「ジョーカー様、どうしますか?」

「……これはガラじゃないが………」

「ジョーカーさん?」

「正義の味方……なりたいと思わないか」

「は?」


 アルカイン王国は悪意の塊だ。

 つまり俺たちがあいつらを倒す、追っ払う事でもすれば俺たちに正義がある……つまり。


「俺たち魔族軍は愚かな人間共からこの街とここの住民を守る……だな」

「人間の為に戦うんですか?」

「ま、そう言う事だ……建前は」


 最後の方は小声で言った。ランティスは聞こえたみたいだが追及してこない。

 ちなみに本心は折角手に入れた街を手放すなんてバカな真似はできないし……この戦いは結局魔族の為になる。決して人間の為なんかじゃないな。

 まあ、これでここの人間の信頼が得られるんならそれはそれで良いんだけど。


「ほ、本当に我々の為に戦ってくれるのだね!?」

「ああ、お前らはここで待っているが良い」

「ジョーカーさん、何か良い作戦はあるんっすか?」

「慌てるな、考えてある」


 どうやら兵士共は全員入って来たんじゃなく、街の中まで入ったのはほんの一部だそうだ。

 殆どは外で待機している……これは魔法具からの兵士達の会話から予想できる。

 なら後は簡単だ……楽に一網打尽にできる。


「外で待機している奴らは俺が能力でブッ飛ばす」

「なるほど、後は中に居る少数の兵士達だけという事ですね」

「なるほど、なら全員出るまでもないっすね」

「ああ、その通りだ」


 意外にジャック頭いいな。全員で出たら絶対周りに被害を出すからな。 

 それにここの住民を守る為にも人員を割かないといけない。


「ジョーカーさん……おれが出ても良いっすか?」

「なんでお前が?」

「許せないからっす……おれが折角統治する事になった街っすよ?」

「そうだな……ここは少数精鋭で言った方がいいだろう」

「ならわたしも行きます」

 

 お、クインティー、体調は大丈夫なのか?


「さっきはお見苦しい姿を見せてしまい申し訳ございません……ですが大分落ち着いてきました」

「ク、クインティー……あまり無理するなよ?」

「心配して下さってありがとうございます、ジャック様……しかしわたしもあの方たちを許せません」

「よし、決まりだな」

「そうっすね」

「俺とジャックとランティスとクインティー……この四人で十分だな」


 四天王二人に第一部隊隊長が二人……むしろどうやってこのメンツに勝てと?

 というわけで早速俺たちは外に出る事にした。



「さて……俺は早速街の外の連中を消し飛ばすか」


 俺は街の周りの地面が割れ、マグマが噴き出すイメージをする。


「な、なんだ!?」

「地面が割れる!」

「うわあああああ!」


 そして俺のイメージ通りの事が起き、外の兵士共を片づける。


「フッ……流石はマジックイマジネーション」


 勿論片付け終わった後、割れてマグマが溢れ出る地面を元に戻す。

 これもイメージするだけで出来るからな……チートだな、この力。


「さて、後は中に居る数十人程度の兵士共だ……」


 俺は魔剣を握りしめ、戦地へ向かうのだった。

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