再会の勇者
「よう、久しぶりだな」
俺は勇者共の前に姿を見せ、軽く挨拶してやる。
どうやら天道は誰かまで特定出来ていなかったらしく俺を見た瞬間驚いていた。
だがすぐいつも通りのムカつく表情になって。
「ああ、久しぶりだね、和馬君」
「何だ、好青年の方か」
「おいおい、人を多重人格みたいに言わないでくれよ?」
しかし……これからどうするか……今は見逃しても良いが……。
「さて、お前らはこれからどうするんだ?」
「は?何言ってんだ?」
「お前らは俺がどういう立場にいるのか知らないのか?」
「……なるほど、やはりな」
どうやら人間共もただのバカではなくちゃんと俺が魔族側に付いた事を認識してるようだ。
おそらく逃がしてしまった敵の兵士達の報告からだろう。
「ここの砦を襲ったのはお前か?」
「俺が答えると思うか?」
「……じゃあ、ここにゾンビ兵を置いてオレに嫌がらせの様な事を仕向けたのはお前か?」
……はい?
何言ってんだ……こいつ?
「被害妄想も大概にしておけ」
「なんだと?」
「ただの偶然だ、俺は任務でここに用があっただけ、お前らが来る事は想定外だ」
「チッ……そう簡単には口を割らないか」
まあ、任務を知られても特に問題は無いがな。
今回の任務内容を人間共が知っても……得る情報は魔王城の警備が厚くなるという凶報だけだ。
「で、お前らどうする?」
「どういう意味だ?」
「俺の慈悲で見逃してやってもいいんだぜ?」
少し喧嘩腰になるのは相手が天道だからだろう。
で、どう出るか……怒るか?
「一応、理由を聞かせてもらおうか……まさか、元の世界の人間同士仲良く……な訳無いよな?」
「おい天道、これ罠じゃ……」
「安心しろ腰巾着、そのまま引き下がるなら本当に見逃してやる」
「誰が腰巾着だ!」
うるさい、ギャーギャー騒ぐな。イライラする。
「で、理由を教えてくれるかい?」
「……つまらないからだ」
「……は?」
俺がこいつらを見逃すのにはもう一つ訳がある。
今の戦いを見ても分かるがこいつらは弱い……そんな奴らを殺しても楽しくないからな……。
俺はこの世界に刺激を求めてるんだ……天道、お前もそう思ってるはずだ……。
「簡単に言えばお前らザコを殺しても俺が楽しめないからだよ」
「!」
俺がそう言った瞬間天道がいきなり斬りかかって来た。
そういや忘れてた、俺と考えが似てる部分があってイラつく存在のあいつだが唯一俺と違うところがあるんだった……。
天道、お前は沸点が低いんだったな。
この世界に来る前も自業自得の様な事で俺に突っかかって来たし、何かあるとすぐキレるんだよな。
「てめえ!避けるんじゃねえ!」
「剣はシャレにならないからな」
というかそのセリフ、この世界に来る直前に聞いたような気がする。
「オレがザコだと?ふざけるな!」
「本当の事だろ?現にお前らは俺に勝てない」
「てんめえぇぇ!!」
おっと、がむしゃらに剣を振ってやがる。
見ろよ、腰巾着と彩香さんが若干引いてるぞ。いや、彩香さんは相変わらず表情読めて無いが。
「さて……見逃がしてやると言ったのにな」
「うるせえ!」
「まあいい、頭を少し冷やしてやるか……」
「……っ!」
俺は向かってくる奴の剣を魔剣を呼び出し受け止める。
「何!?」
「……弱い」
俺は魔剣を大きく横に振る。
それだけで奴の剣は砕け散り、奴自身は吹き飛ぶ。
「グハッ!」
「天道!」
うむ、やはり剣事態に性能差があり過ぎるな。
天道の使ってた剣は所詮は安物……俺は魔剣だからな……一方的に勝ててしまうな。
そもそも俺は魔剣によって体が魔族化してるから勇者補正と相まってこいつらより身体能力で勝っている……お前らに勝ち目なんて無いんだよ。
「さて、どうする?まだ続けるか?」
「てめえ……」
……まだ抵抗する気満々だな。このまま殺すか?
……いや、これ以上相手にするのは面倒臭いし……かといって直接手を下すのも面倒臭い……ならば。
「はあ、仕方ない」
俺は指を鳴らす。
「おいお前、何をした!」
「黙ってろよ腰巾着……今に分かる」
俺が指を鳴らしてすぐに、倒されたゾンビ兵が復活する。
「な、なんだと!?」
「お前らなんぞ、俺が手を下すまでも無い……こいつらで十分だ」
俺はその場を後にし、ランティスの下へ向かう。
「クソがああああああ!」
天道、いきなり叫ぶな……うるさい。
まあいい、さっさとランティスの所に行くか
「ランティス、戻ってきたぞ」
「ジョーカー様……大変な事が起こりました」
ん?問題発生か?
「今、砦にアルカイン王国の兵士が入ってきました」
「ほう……ある意味マズイな」
「……もっと焦るべきでは?」
「そういうランティスも結構落ち着いてるように見えるけど?」
「ジョーカー様には何か策があると思って」
ハハハ、こいつめとやりたいところだが……これはゾンビ兵と俺たちしか居ない中でこの砦を守るのは不可能に近い……いや不可能だ。
「よしランティス、砦を放棄するぞ」
「え……本気ですか?」
「やっと焦ったな」
「いやいや、ジョーカー様でも無理ですか」
「ああ、残念だが砦は諦めるしかない……砦はな」
さて、良い事を思いついた……!
「ジョーカー様……何か思いつきましたか?」
「お、分かるか?」
「はい、結構悪そうな笑みを浮かべてたので」
「ブッ飛ばすぞ……」
「ハハ、で、何を思いついたので?」
「ああ、実はだな……」
この作戦は良い……砦を必ず放棄する事になるがな……上手くいけば敵共を一網打尽にできる。
「総員、続けええ!」
「おおおおおおおお!」
フッ……気合入ってるな……中にはもうゾンビ兵しか居ないと言うのにな。
「全く……砦と部下を餌にするとは……」
「何か文句があるのか?」
「いえ、結局は砦を放棄しなきゃいけませんし……それで敵を巻き添えにできるなら」
「ああ、じゃあ早速やるか」
俺は手を空にかざし丁度砦の真上に巨大な魔法陣が出来るようなイメージをする。
手を空にかざしたのは演出だ。やる必要はないがな。
「……ジョーカー様、わざと時間をかけてませんか?」
「わざとだけど?」
「何故です?」
「簡単な事さ、その方が人間共の恐怖感を煽る事が出来るからだ」
俺は今、魔法で砦を跡形も無く吹き飛ばそうとしている。
勿論、中のゾンビ兵や敵兵士……そして勇者諸共な。
俺の能力を使えば一瞬で消滅させる事も出来なくはないが……わざと魔法陣を展開させたり、いかにも高威力魔法を撃とうとして時間掛けたりしてからの方が俺の気分がスッキリする。
「相変わらず凄い事を……ジャック様も言ってましたが本当に人間ですか?」
「元、人間な」
さて、そろそろ良いだろう。
俺は魔法陣から巨大な光線を砦に向けて放った。
凄い轟音と衝撃がこっちまで来る……強すぎたか?まあいい。
「成功だしな」
元々砦のあった場所は巨大なクレーターになっていた。目を凝らすとゾンビ兵や敵の肉片が見える。
まだ残ってるかよ、案外人間って頑丈なもんだな。
「……だが、勇者の死体や肉片は見つからんな」
「そういや勇者はどうしたんです?」
「ああ、弱すぎたからゾンビ兵けしかけた」
「……最上階に居たので跡形も無く吹き飛んだかと」
うーん、本当に仕留められたのか?
すこし不安があるな………例えば腰巾着の能力。
あれを使われたならここから脱出できるからな……。
いかんな、何かあいつらが生きてる事を期待している俺が居る。
やっぱり自分で直接止めを刺せば良かったか?いや、あんなザコだとやる気なんて出ないしな……。
「さて、帰……」
『ジョーカーさん!大変っす!』
帰ろうとした所で連絡用にと持っていた魔法具からジャックの声が聞こえてきた。
「どうした?」
『今近くに居るっすよね?街に人間共が近付いてるっす』
「……マジか」
『マジっす……しかもかなりの人数っす……街を奪還する気っすね』
「仕方ない……今行く」
俺とランティスはジャックの居る街に向かうのだった。




