引き抜き 4
こんなに苦労して1500文字前後……パソコンとは勝手が違うスマフォは難しい。
「最近の調子はどうですか御神楽さん」
白川先輩がそう尋ねてきたので僕は肩を竦めて。
「まあ、うまい事やっている」
風紀委員時代に色々働いたせいか、現在僕は内や外を問わず、あらゆる人から相談事を受けている。
最近は南条会長と共にいることが多くなっているが、それでも依頼が減ることは無かった。
「と、いっても大半が話し合いの段階で終わっているけどね」
僕の場合、深く考えずに言葉を紡ぐ方が最善の結果になりやすい。
それに加えて僕が裏に控えている理由で気後れする輩も多かった。
「とにかく、僕としては楽しくやっているな」
気が向く依頼のみ引き受け、嫌な頼み事は断る。
正直、風紀委員に所属していた時よりも輝いている感じがするね。
「それでも風紀委員が恋しいとは感じませんか?」
「いや、あんまり」
「それでは神崎さんのこととか気になりませんか?」
いやに食い下がってくるな。
僕は燻しげな面持ちながらも、神崎さんのことが気になっていたのは事実だったのでそうだとばかりに頷くと。
「そうですか、やはり神崎さんのことは気になりますよね。何せ同期でライバル同士だったのてすから」
早口にそう捲し立ててきたので、僕は嫌な予感がする。
恐らく次に続く言葉は。
「どうです御神楽さん、風紀委員に戻ってきませんか?」
やっばりね。
案の定、風紀委員の勧誘がきた。
「白川先輩……諦めていなかったのですか」
進級試験前辺りにも同じような勧誘をされたので警戒し、時間を置いてみたのだけど無駄だったらしい。
「では御神楽さん、特別役員というのはどうですか? 風紀委員の命令に従う必要がなく、いつでも好きな時に好きな任務を引き受けることが出来ます」
むしろますます熱が激しくなっているな。
「白川先輩、嘘は止めて欲しいのですが」
僕は顔を引き攣らせながら笑う。
確かに白川先輩の仰る待遇なら僕も迷ってしまうけど、残念ながらそれはない。
秩序の維持という風紀委員の特性上、特別扱いを嫌う傾向があるし、何より神崎さんがそれを許すはずがない。
僕がそう言うと、白川先輩は謝るどころか身を乗り出して。
「御神楽さんが戻るというのならばこの白川雪ーー必ず変えてみせましょう」
真っ直ぐとした視線の前に耐え切れなくなって視線を逸らした僕を責められる者はいないだろう。
駄目だ。
このままだと僕はなし崩し的に風紀委員に入ってしまうかもしれない。
まさか白川先輩にこんな強引な一面があるとは。
いやあ、人というのは分からないものだね。
「いや、白川先輩。実は僕も用件があるんだ」
これ以上白川先輩に付き合うと時間がなくなるので僕はそう切り出す。
もうサッサと生徒会室に向かわせた方が良い。
後は僕の知った事で無いし。
「そうですか、分かりました」
僕は手短かに伝えると白川先輩はそう頷く。
「南条会長が白川先輩に何を伝えたいのか分からないが、とりあえず僕の役目はこれまでかな」
後は南条会長が何とかしてくれるだろう。
しかし、僕が言うのも何だがここまで風紀委員に愛着がある白川先輩を引き抜くのは容易で無いぞ。
恐らく成功率は一%以下だな。
まあ、だからといってしり込む南条会長ではないけどね。
むしろ勇んで挑戦しようとするだろう。
「南条から御神楽さんを奪い返してきます」
素敵に勘違いをした白川先輩は変な決意に燃えているし。
「どうして僕に寄って来る人はこう面倒臭い人ばかりなんだ?」
嘆いたところで応えてくれる親切な人など周りにいるはずもない。
「……もう好きにしてくれ」
僕はこの世の不条理に天を仰いだ。
まさか白川雪がここまで物語を引っ掻き回すとは思いませんでした。




