#3 名前の無い少女
エレナ・チェイナー先生に案内され、聖騎士学園の
男子寮がある建物に到着した竹中ユウと、ダン・ヒーラン。
彼らの学園での日々が始まろうとしていた...
「なあ、ユウ。オレは、ここで最強の力を手に入れたい。」
ユウは、その言葉を聞いて、寮の廊下を歩く足を止めた。
「最強の力? 俺たちは無能力者。無理があると思う。剣の腕を磨くくらいしか...」
「なら、オレが前例になってやる。」ユウの言葉を遮ったダン。
「オレの先祖は治癒魔法と光魔法が使えた。オレにも、先祖の血が流れている。」
拳を握り締めるダン。ユウは、ダンの決意が本物だと悟った。
「だったら、俺も応援する。俺は剣の道を突き進む。ダンなら、きっと最強になれる。」
「ユウ...。ありがとな。」その時だった。二人が居る建物の表玄関が騒めき出した。
「なんだ? 人だかりが出来てる...」ダンが窓から様子をうかがうと、驚きの光景が。
不良っぽい生徒たちが輪を作り、パーカーのフードを被り、傷だらけの一人の生徒を取り囲んでいた。
「え?まさか、カツアゲ?」ユウは、その方向へ走り出した。「待て!!」ダンも続く。
「おい、雑魚。俺たちから逃げれるとでも思ったか?」
不良のリーダーが言うと、傷だらけの生徒は、「ボクの邪魔をしないで...」と、か弱い声で言った。
「お前、女か!! おもしれえ、結構金持ってんだろ!?」
不良のリーダーが、傷だらけの女子生徒に殴りかかる。だが、拳は空を切る。
「は?」
女子生徒は、不良のリーダーの背後に居た。
「てめえ、どうやって!? まさか、瞬間移動か!?」不良のリーダーは、驚きを隠せない。
「...ギャラクティック・レールガン。」
女子生徒が呟いた次の瞬間、眩い閃光が不良のリーダーを直撃した。
「ぐっ... ああああああああああああ!!」不良のリーダーの悲痛な叫びが響く。
そして、爆発音にも似た轟音が、静かな学園の静寂を破る。
光が収まった時には、不良のリーダーは地面に倒れていた。彼は恐怖を感じた。
パーカーのフードの下から、ピンクの瞳がこちらを睨んでいた。
「ボクを殴ろうなんて、百年、いや、キミの人生を百回繰り返したって無理だよ...」
「なんだと...」そう言うと、不良のリーダーは気を失った。他の不良たちも、慌てて逃げだす。
ユウとダンが、息を切らしながら男子寮の3階から現場に着いた。
そこには、強そうな不良が、気を失って倒れていた。
一連の出来事を見ていなかった二人は、呆気にとられる。
「なあ、あの不良たちはどこ行ったんだ?」と、ダン。
「爆発音もしたし、何があったんだろう...」ユウも、状況を理解できていない。
「キミたち、もしかして、この人の仲間?」背後から声が聞こえた。
驚いた二人が振り返ると、そこには、さっきまで不良に囲まれていた女子生徒がいた。
「君、大丈夫だった? 怪我はしてない?」
ユウが慌てて尋ねると、女子生徒は首を振った。
「てか、そもそも女子がここで何してんだ?」と、ダン。
「ここの寮のリーダーに、学園長からの伝言を伝えに来ただけ。」
女子生徒は、そう言うと、先に進もうとした。
だが、あることに気付いたユウ。その女子生徒の首には、
ユウの母アイリの物にそっくりな、半星形のペンダントが。
「ねえ、君!」女子生徒は、ユウの方を見た。
「名前を聞いてなかった。俺は、竹中ユウ。で、こっちが...」
「ダン・ヒーランだ。よろしく。」二人の自己紹介を聞いた女子生徒は、
「竹中...、ヒーラン...、どこかで聞いたような...」と呟いた。
「チェイナー先生が言ってた、入学予定っていう...」彼女は、二人について、知っていたようだ。
しばらく考え込んだ女子生徒。
「あ、さっきは、心配してくれてありがとう。じゃあ、またね。」
その場を立ち去ろうとした女子生徒に、「君の名前は?」と、慌てながらユウが尋ねる。
「ごめんね、ボクには名前は無い。"青いの"って呼ばれてる。」
ユウの顔も見ずに答えると、女子生徒は、歩き去って行った。
「何があったんだろう... あの子、傷だらけだったけど...」ユウが呟くと、
「多分、周りから良く思われてないんだろ。」ダンが、ぶっきらぼうに返す。
ユウは、あの女子生徒を知らないはずだ。なのに、何故か知っているような気がしていた。
(あの子、なんか知ってるような気がする。でも、なんで?)
不思議な感覚のまま、ユウは、心配そうに、遠ざかっていく女子生徒の方を見ていた。
つづく




