第四項 蘇る巨人(第82話)
第一部 新世界の産声編 第五章 新世界へ 第一節 懐かしの古機体と共に
第四項 蘇る巨人
かつての相棒――アイリーンの改造は順調に進んでいた。
というのも、俺一人では難航すると思われた魔力回路を引く作業がマリアのおかげで驚くほど効率が上がったからだ。
『この魔力回路という物を考案した方は素晴らしいですね。定量魔力における理論的最高値を安定して出力可能な紋様術式の構築をするとは……こちらの世界では無駄かつ面倒という理由から誰もやりそうにない事をして見せるとは脱帽です』
そんなことを言いつつも、俺が教えた魔力回路を凄まじい速度でアイリーンの機体に刻み込んでいる。
「それは馬鹿にしてんのか褒めてんのかどっちなんだ?」
『もちろん褒めています。調べてみましたが、かの世界においては此方とは違って自然界の魔素の量が少ないようですから、そのような環境だからこそ産み出され発展してきた技術からは此方の世界には無い繊細な技術面における研鑽がひしひしと感じ取れます。個人的にはより詳細な情報が欲しいくらいには好ましい技術だと思っております』
「とりあえずお前が気に入ったことは伝わったが……そっちの世界にも魔力回路のような技術があるのか?」
『はい、こちらでは紋様術と言いまして、似たような技術と呼ぶのもおこがましい程度には大雑把な技術となっております』
「そういや無駄とか面倒とか言っていたな。その理由は?」
『単純な話になりますが、魔力の出力量の違いによる物でしょうね。こちらの世界では魔力の素となる魔素が豊富でしたので、絞って放出するという行為がほぼ必要ないのです』
「動力機関を常時全開にしてるようなもんか……? 魔力ってのはたくさんあると細かな出力の調整ができねぇのか?」
そんなことをして身体がぶっ壊れたりしないもんなんだろうか? 機動兵器なら壊れてるぞ。
『できないわけではないですね。ただ必要がなかったという話です』
「魔力が豊富だから、こまかな出力調整を考える必要もなかった。だからその辺りの技術が発展しなかったってことか」
それはもう単なる怠慢ともとれるが……長期的に見直される事が無かったのを考えると、本当に必要が無かったってことか。
『そうなりますね。魔力回路の開発者様はとうに気付いておられそうですが、今の世界であれば、より高出力の回路を組むことも可能でしょう』
かつて限られていた資源が今は使い放題なわけだからな。新しい事にも挑戦はしやすいか。
とはいえ、相棒に刻み込んだ現行の魔力回路でも、発動させればあり得ない位には性能が向上するんだよな。
「今のままでもかなりのもんだと思うんだが、より高出力となると機体が耐えられなくなるな」
『その点につきましては此方の世界の魔法を上手く回路に落とし込むことができれば解決できそうですね』
「そんなことできるのか?」
『はい、時間はかかりそうですが可能です。マスターがクレア=パトラック様を紹介してくれると言うのであれば、より早まるかと』
「そんなことで良いのか? 魔力回路とは別件だが、聞きたいことがあったから丁度良かったな。今から連絡してみるか」
『マスターが一目置く技術者で妙齢の女性……楽しみですね』
「お前、妙な邪推をしてねぇだろうな?」
『していませんよ? 人種の色恋沙汰を観察するのは好きですが』
「してんじゃねぇか。ったく、俺は嫁一筋だっての」
『想い人に対して一途な所はどちらのマスターも同じですね』
そんな所まで似てやがるのか。
「そういや、そっちの俺は結婚してたのか?」
『婚約者は居ましたよ。容姿はマスターの奥方によく似ていましたが、既にご逝去されています』
「……流石に別人だよな?」
そう思いたいが、あちらの世界でアリシアとレイトが生きていたなら、嫁に該当する誰かが死んでいるってのもおかしくはねぇんだよな。
『どうなのでしょうね? 実は私は直接の面識がないのです』
「ああ、そうなのか。まあ、今更気にするようなもんでもないか」
所詮は別の世界であった事だ。今の世界ではみんな生きているんだから不満はない。
『そうですよ。それよりマスター、早く連絡を』
「おお、わりぃわりぃ。クレアの連絡先は――と、ああ、これだ」
携帯端末でクレアの登録番号へ連絡を入れると、呼び出し音がしばらく鳴り――
『汝か。久しいのう。余に何か用か?』
「ああ、ちょっと聞きたいことがあってよ。ほら、前に機動兵器欲しがってたろ? 新型のやつ」
『うむ、メリアの所でセミオーダーメイド品の注文は終わったが、やはり物足りぬ。む、思い出したぞ! 汝、無事に帰り着くことができたら、余に機動兵器の会社を紹介してくれると言う話ではなかったか!?』
「おー、覚えてたか。まあ、その件もあるんだが、実は不要な新型機が五つほどあってな。正確には新型機というよりは試作機とか、改良機とか――正直に言うと俺の息子が使用していた機体がここにあるんだが、買わないか?」
アルフには既に了承を取ってある。
新しい配属先ではまた専用の機体を受領するとのことで、金にした方が都合がいいらしい。
機動兵器は車と違って自由に乗り回すなんてことも出来ないしな。
クレアのように広大な土地を持っているならともかく。
『買う! どのような機体だ!? 写真――いや、現地に行くぞ! どこだ!?』
「落ち着け。場所に関してはダグラス機動兵器修理工場って調べりゃ出てくる」
『ふむ――ここか。ふぅむ、近いな。これから向かえば小一時間で着くな』
「そんな近くに居るのか? そっちこそ今どこに居るんだよ?」
『仕事と注文を済ませた後、所用で海上都市を出て暁星国に向かってな。そこから再び海上都市へ戻っている最中なのだ』
暁星国ってのが何処かは知らねぇが、おそらくあちら側の国だろうな。相変わらず行動力がすげぇ。
「ってことは海の上か? 飛行機の向かう先なんて急に変えられねぇだろ」
いや、こいつの場合は自家用の飛行機を持っていてもおかしくはないか。
『否、鳥の背に乗って飛んでおる。正確には鷲獅子か』
鳥の背中に乗って飛んでいる……? 鷲獅子? 予想外の物が出てきたな。
「……何かの冗談か?」
『冗談ではないのだが……と、こうしては居れぬ。神鳥様とウララよ。余はここから別の場所へ向かう。機会があればまた会おう! ではな!』
そう言った直後、風切り音が――ってこいつ飛び降りたのか?
「おい! どうなってんだ!?」
『――よし。それでは、これよりそちらへ向かう。では後程な』
「あ、こら! 勝手に――あ、駄目だ。切りやがった」
通信が切れた。まったくあいつはせっかちが過ぎる。
『凄い方ですね……少し調べましたが、魔法少女とは誰もがあのように強烈な個性を持っておられるのでしょうか?』
何を見たのかはわからないが、調べて出てくる魔法少女は強烈なのが多いらしい。まあ、当然か。
強烈な個性があるからこそ調べて出てくる程度には知名度があるんだろうしな。
「俺はあいつくらいしか知らねぇが、流石にそんなことはねぇだろ。確かにあいつは個人としてみたら優秀だが、あんなのばかりが所属している組織があるってことになるだろうが」
そして、そんな組織がまともに機能するわけがない。
であれば、組織として魔法少女機関とやらが存在しているならば、その大半は幾らかまともなはずだ。
……まあ、世界防衛軍の上層部みたいなのも居るだろうがな。
『それは――あぁ、そうですね……』
何か実感のこもった様な同意だったな。
マリア側の異世界のどこかの組織も似たような物なんだろう。
結局はどこの世界の組織も似たようなもんってことなのか。
「ま、何であれクレアがこっちに向かってきてるみたいだからな。出迎える準備でもしておくか」
『はい、クレア様は大富豪だそうですから、精一杯のおもてなしをいたしましょう』
……まあ、うちは工場持ちとは言え、一般家庭の部類だからな。とは言え、相手はあのクレアだ。
「あいつならむしろ一般家庭のもてなしの方が喜ぶと思うぞ。珍しい物が好きだからな」
金持ちのくせに野宿をしたがるしな。
『そうなのですね。ではそのようにいたしましょう』
「ああ、頼む。メリッサとアルフ達にも伝えて置かないとな」
飛んでくるってことはあのひらひら格好をしているだろうしな。絶対に誤解を生むぞ。
それからほどなくして、少し前にお試しとして作ってみた魔力計が高速で接近してくる強い魔力の反応を感知した。
「お、近くまで来たか?」
最初にクレアを出迎えるのは俺、マリア、アルフの三人――世界融合の影響を受けていない面子だ。
嫁達には家で待機してもらっている。
『マスターの作った魔力計ですか。この表示はどの程度の魔力量ですか?』
「アルフの魔力量を基準にしてみた。一般成人男性の魔力量基準って所だな」
『あぁ、それで……クレア様は想像以上の方のようですね』
「ん? 何か問題でもあったか?」
『マスター、アルフレッド様の魔力量は一般成人男性のそれを大きく上回ります』
マリアの言葉に驚いたのは、傍で黙って話を聞いていたアルフだ。
「えっ、そうなのか!?」
『はい、元々魔力がない世界の方であることに加えてマスターと同様に融合の影響から漏れたこともあるのか、現在の世界における成人男性のおよそ八倍程度となっております。なぜこのような倍率になったのかはわかりませんが』
「それは……凄いのか? 確か、男の魔力量は低い傾向にあるんだよな?」
『はい、これは他の世界でも同様のようですが、男性の基本魔力量は女性の半分程度となっておりますね。例外はありますが』
「アルフもその例外ってか。ん? それなら、俺も条件としては当てはまるんじゃねぇか?」
『マスターの場合は四肢の欠損があるので、現状で成人男性の三倍程度となっております』
四肢が欠損していると魔力量も減るのか。
「思ったよりあるんだな」
『魔力の最大量は増減する物なので、魔力を頻繁に使用している方は増えやすい傾向にありますね』
「あー、そういやずっと魔力回路で色々作ってはいたな」
それが原因で魔力が増えたってことか。
作った物は大体は失敗作に終わったけどな。今回の魔力計はたまたま上手く行ったものだ。
『それが原因かと思われます』
「俺も魔力ってのを使った方が良いんだろうか。まったく実感はねぇんだが」
「大丈夫だ。俺にもねぇ。素養があるやつは視覚的に見えるらしいぞ」
「へぇ、そうなのか。どう見えるんだろうな?」
『個人によって異なることはありますが、概ねは大気中の魔素或いは魔粒子と呼ばれる形で目視できますね。視覚情報としては大気中を雪のような物が輝きながら漂っていると思ってください』
「それはなんつーか、邪魔そうだな……」
『主観ですが、あまり気にはなりませんね。また、意図的に遮断することは可能ですので不便はないかと』
「そういうもんなのか。俺も一度見てみたいな」
「魔力を視る、か……何か作れそうだな」
『魔力を視ることが可能な道具であれば既に存在するようです。こちらの世界の物ではないので、おそらくは異世界――魔法少女達が居た世界の物かと思われます。魔眼鏡という商品名で販売されているようです』
「お、それなら一つ買ってみるか」
「お前も物好きだな……まあ、俺も研究用に一つ買うか」
「それならもう一つ追加しておくか。金は別にいいや。クレアさんの紹介代ってことで」
「そりゃ随分と安上がりじゃねぇか? ちなみに代金は?」
「普通の眼鏡よか割高っぽいが、そもそも眼鏡が安い……物資が潤沢だと、こうも物が安くなんのか。ちょっと前のお使いの時も色々と安くてビビったしな」
「ああ、それは分かる。それでいて金の価値がそのままだったのはありがてぇよな」
「まったくだ。おかげで今の貯金額で老後まで安泰だ」
「安心するのはまだはえぇぞ。今後何があるのかまるで分からねぇのが今の世界なんだからな」
「それもそうか」
『脅威度だけならば以前の世界よりも増えているくらいですからね』
「そうだった……魔物、怪人、魔女に異形だったか。こっちもまだ異星物の生き残りや異星人だっているってのにな」
「その辺は全く気にしてなかったが、そんなのが居るのか。俺が見たことがあるのは魔物らしき巨大生物くらいなもんだが……マリアは空を飛ぶでかい亀の事は知っているか?」
『空を飛ぶでかい亀、ですか? もしやそれはゲンブ様では? 彼のお方は魔物ではなく魔物を討滅する側で、幻獣種の霊亀という種族の長に当たる方ですね』
「お、おう、そうなのか……もしかして話が通じる相手か?」
『言語でのやり取りが可能という点ではそうですね。ただし、話が通じるかと言われると解りかねます。話に聞くところ、彼のお方は年々呆けが進行しているとか』
「ボケ……そっちの世界にもそういうのはあるのか」
傷病の類いは魔法で全て解決している印象しかなかった。
『ゲンブ様の場合は特殊な例で、心因性の物なので治療は不可能なんです。何しろ創世の頃より生きておられる方なので。世界が作られて間もない頃は大地を支える役目を負って居たという話です』
「それは……逆に良く生きてんな」
前から思っていたが、マリア達の世界は様々な面で規模が違い過ぎる。
『彼のお方やその同胞の方々は基本的に不滅なので』
「不滅か……できることなら敵には回したくはねぇな」
『彼らは基本的に種の守護者という立場なので、余程愚かなことをしでかさない限りは味方でいてくれますよ』
「愚かなことってのは具体的にどんなもんなんだ?」
『こちらの世界では過去に自身を神と称する者が眠りに就いていた彼らから力を奪い、人族に与えたことで一時的に人族が世界の支配者になりましたが、目覚めた彼らによって神は滅ぼされ、人族の権力者や実力者は軒並み死亡しました』
とんでもねぇ世界だな!
「とりあえず神を名乗っていた奴が悪いってのは分かったが、人族ってのは、こっちで言う所の人間だよな? そいつらが与えられた力ってのは奪われた力なんだろ? なんでそんな物が使えたんだ?」
『それは神を称する者が作り上げたステータスという仕組みのおかげです。これにより、人族は本来であればあり得ないほどの力を手にすることができました』
「つまり、貰い物の力ってわけか。そんなもんで世界の支配者になれるってことは、それほどに――あー、ゲンブ様達ってのはやべぇ存在だったのか?」
『はい、やべぇ方々です。間違ってもケンカを売ってはいけませんよ?』
「いや、アレに喧嘩を売る度胸はねぇよ……機動兵器に乗っていても一瞬で叩き潰されてしまいだろ」
「そんなにでかいのか?」
「ああ、山のような大きさだ。それでいて機敏に動く」
「そりゃ無理だな。下手な異星物よりよっぽど恐ろしいじゃねぇか」
『私はむしろ異星物の方が気にな――どうやら到着したみたいです』
「お、来たか――」
直後、久しぶりに聞く喧しい声が工場内に響いた。
「余の機動兵器はどこにあるのだ!?」
こいつ、魔法少女の姿のまま入ってきやがった……。
「まだお前のじゃねぇよ。久しぶりだな、あとその姿をどうにか――」
「おお! これか――どれだ!? たくさんあるではないか!」
「人の話を聞け」
「あだっ! 何をする!?」
「落ち着け。まずはその姿をどうにかしろ」
『ふむ、画像は見ましたが、実物はよりエロ――痴女ですね』
「誰が痴女だ!? むっ? こやつの妙な魔力は……貴様、人ではないな?」
『初めまして。マリアと申します。マスターのメイドを務めております』
「補佐役みたいなもんだ。面倒ごとをやってくれて助かってる。で、こっちが――」
「初めまして。アルフレッドです。その節は親父が世話になったみたいで、ありがとうございました」
「……俺の息子だ。これでも世界防衛軍の中ではそれなりの地位にいた」
「ふむふむ、マリアとアルフレッドであるか。余がクレアだ」
そう言ってふんぞり返る。いい加減に普通の姿になって欲しいんだが。
『クレア様、色々と零れ落ちそうなのですが、そのお姿はどうにかなりませんか?』
「む? ああ、そうであった。どれ――これでよかろう?」
そうして変身を解いた姿は――
「……なんで寝間着なんだよ!?」
ネグリジェっつったか? とにかく生地の薄い女用の寝間着だった。寝間着だよな?
おまけにこいつ、その下には何も付けていない。
『おや、スケスケですね』
「服っ! 俺服持ってくるから!」
アルフが慌てて出て行った。野郎、逃げやがった。
そして、ほぼ全裸を晒したようなもんにも拘らず、クレアは落ち着いていた。
「おお、そうであった。ホテルの自室で寛いでいたのであったな」
「お前、落ち着き過ぎだろ……」
「む? 余の肢体を拝めるのだぞ? 眼福であろう?」
そういやこいつ、海上都市へ向かう道中でも俺の目を気にせず服とか着替えてたな。
『情報の上方修正が必要なようですね。クレア様は伝聞で見聞きした以上の自信家のようです。それにしても見事なお身体ですね。私も自身の身体には自信がありますが、天然物の美しさには敵いません』
「もっと褒めてくれても良いのだぞ? しかし、ふむ……汝のは作り物の身体であったか。こちらの世界では失われた技術の中に自動人形の製法という物があるが、汝がそうなのか?」
『そちらには私達の痕跡があるのですね』
「ほう、伝承の存在であったが、こうして目の当たりにするとは……存外に見た目は人であるな? 声に違和感は感じるが」
『声帯に特殊な加工がされておりますので』
「ふむ、興味深い。余の所に来ないか?」
『申し訳ありません。私はマスターの物ですので』
「しれっと勧誘するんじゃねぇ」
「冗談であるとも。それで、余に売りたい機動兵器というのはどれだ?」
「そっち側の列の五体だな。真新しい感じのだからわかるだろ?」
「うぅむ、確かにデザインからして洗練されておるが……ふむ、余としては此方の列の方が好みだ」
「おっ、わかってんじゃねぇか。でもそっちは駄目だ。俺のだからな」
「うむ、なのでこういったデザインで性能だけは新型の物に――という事は可能か?」
「できるかできないかで言えばできる――というか、今まさにそれをやってる所だ」
そう告げると同時に、クレアが勢いよく機動兵器の方を仰ぎ見た。
「ほう! どの機体だ!?」
「そっち側の一番奥だ。銘はアイリーンってことになった」
「アイリーンとな。平和の女神の名を冠しておるという事は、平和利用が目的の機体というわけであるな?」
「そりゃ軍事目的じゃねぇが――ん? そっちの世界でもアイリーンは平和の女神の名前なのか?」
「ふむ、言われてみたら妙であるな。そういう事もあると言われればそれまでだが、こと神の名前となると単なる偶然とも思えんな」
「そうなのか?」
『そうですね。こちらの世界の女神とも同じ名前と役割ですし、関係が無いとは考えられないですね』
「……そんな名前を付けて良かったのか?」
天罰とか下らないよな?
『問題はないですよ。むしろ神様は喜ぶと思います。ただし、平和に反する行動を取った場合は天罰が下りますが』
「その場合、天罰が下るのは作った俺か?」
『概ねはそのようになります』
「まあ、そうなるか……乗り回す時は気をつけねぇとな」
『余程のことをしでかさない限り、神様は寛容ですよ』
「そうなのか。ならそこまで気にしなくてもいいか」
「それより汝よ。この期待に刻まれている魔力回路は誰が刻んだものだ?」
「ん? ああ、そこはマリアがやった所だな」
「ほう、これが……我の助手に欲しいな」
『お褒めに預かり光栄です。実はその件につきまして一つご相談が』
「む? なんだ?」
『私を貴女の弟子にしていただけないでしょうか?』
「目当ては魔力回路だな? そちらは何を提示するつもりだ?」
『異世界の魔法に関する知識と技術の伝承――でいかがでしょうか?』
「魔法の異世界交流というわけであるか。よかろう! マリアとやら、汝に余の魔力回路の神髄を伝授してやろう! ついでに汝も付き合え!」
「いや、俺もかよ。まあ、教えてくれるってんなら助かるけどよ」
「うむ、余に任せるがよい!」
胸を張って頼もし気に言うが、寝間着姿なんだよな。
そう思っていると、衣服を持ってやってきたステラがクレアを見るなり目を剥いて叫んだ。
「あのぅ、アルフに言われて服持ってきたんだけど……うわっ! 痴女!?」
「余は痴女ではないぞ!?」
「わかったから。とりあえず服を着てくれ」
「まったく、余の身体のどこが恥ずかしいと言うのだ……」
お前は良くても周りが駄目なんだよ。
文句を言いながら服を着るクレアから視線を外し、アイリーンの巨体を見上げる。
機動兵器としては数少ない大型の機種で、通称を巨人――ティターンシリーズとして現在まで改良を繰り返されながら製造が続いている機種の一つだ。
アイリーンの場合は初期の型で、それを現代の技術で復活させるから――
「蘇る巨人。機種名としてはRティターンってとこか」
クレアもやる気になっているようだし、これは思ったより早く直りそうだな。
今回はここまで(2024/07/07)




