表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/102

第一項 空を行く巨獣(第59話)

第一部 新世界の産声編 第三章 異なる世界、異なる人々 第四節 海原の戦士

春香視点

 神鳥様に乗って海上都市に向かう事になったのは良いのだけれど、神鳥様が度々何かしらに興味を惹かれてふらふらと飛ぶものだから、順調とは言い難いのかしら?


 ここまでに宿泊した街で家族への連絡は済んでいるから、特に急ぐことはないのだけれど、私を早く送り届けたいという想いが強いのか、ウララさんが張り切ってしまっているのよね。


「神鳥様! 今日こそは寄り道は禁止ですからね!」


『えー、今の世界、すごく面白いんだけどなぁ。なんか同胞がいっぱいいるしさー』


「だからと言っていちいち会いに行かないでください!」


『そうは言われても、これって本能みたいなものだからさー』


「あら、そうなのね。ウララさん、本能なら仕方がないんじゃないかしら?」


「ハルカはまたそうやって神鳥様を甘やかす……!」


 そうそう、ここまで同行したことで、ようやくウララさんの様付けが外れてくれたのよね。


 あと、神鳥様からのちゃん付けも。こちらは若い頃以来で新鮮だっただけに、少し寂しいかしら?


 とはいえ、少しでも気安い仲になれたようで嬉しいわ。


 私の方からの敬称が外れていないのは――癖かしら? そういう環境で育ったものだから、どうしても付けてしまうのよね。


「まあまあ、ウララさん、そうピリピリしないで? ほら、お茶を淹れてみたのよ?」


 神鳥様に括りつけられている騎乗具の上にはそこそこのスペースがあったものだから、手持ち無沙汰でお茶を淹れてみたのよ。


『あー! ボクも飲みたーい!』


「それじゃあ、休憩にしましょうか? 結構長いこと飛んでいるものね」


『りょーかい! 降りる所探すねー』


「飛び立ってからまだ一時間ほどですが……まあ、そうですね。ハルカのお身体に響いてしまわないように休憩をはさみましょう」


「ごめんなさいね。もどかしいと思うのでしょうけれど、神鳥様がついはしゃいでしまう気持ちもわかるの」


 神鳥様が同胞と呼ぶ方達は別の世界では神獣だとか幻獣などと呼ばれているそうで、彼らもまた私達のように融合した世界の影響を受けずに過ごしているようなの。


「このような状況下ではしゃいでいられるのは神鳥様くらいでは……」


『ウララちゃん、もしかして同胞が怖いの? 大丈夫だよ。基本的に同胞の多くは人間に興味なんか示さないからさ。ほら、ウララちゃんだって、森の中を歩いていて足元に居る虫の事なんか、ほとんど気にならないでしょ?』


 幾ら事実とは言え、その例えはどうなのかしら? とはいえ、これ以上にわかりやすい例えもないのだけれど。


 私がそんな感想を抱いていると、ウララさんは些かむっとした様子で答えた。


「毒虫ぐらいは警戒しますが? 益虫は殺してしまわないように気を遣います」


 ああ、そちらに引っかかったのね。確かにそれも大事なことだわ。


『あー、言われてみると、その認識もだいたい似た感じだったかなぁ? 昔の同胞達は毒虫なら容赦なく踏み潰してたけど、益虫っていう発想はなかったんじゃないかな? ただ、虫を見つけたら積極的に踏みに行くっていう奴らが多かったねぇ。ひと踏みして確かめるみたいな?』


「神鳥様の同胞が滅びた原因が分かった気がします」


 ウララさん達の世界の神の使いは過激な方達が多かったみたいね。私達の世界に居る方もなかなかだとは思うけれど。


 それにしても、秘密結社の事もあるけれど、ウララさん達の世界の人は対超常存在への技術が極めて高いのかしら?


『あ、降りれそうな所見つけたから降下するよー』


「ええ、お願いね」


「わかりました」


 神鳥様がゆっくりと降りていく。


 これまでに何度か急降下してウララさんに怒られているからか、慎重になっているみたいね。



 そうして神鳥様が降り立ったのはどこかの平原で、付近に建物などは見当たらず、よく開けていて気持ちの良い風が吹いているところだった。


「今の世界にも、このような場所があるんですね」


「ええ、風が気持ちいいわねぇ。お茶が美味しいわ」


『ねえねえ、ハルカー。お茶受けはなぁにー?』


 普段の大きさに戻った神鳥様が首を上下に振りながらレジャーシートの上で踊っている。


「昨日の街で買ったナッツ入りのケーキよ。はい、どうぞ」


『わーい! 外のお菓子は美味しいから好きなんだよねぇ』


「神鳥様、ボロボロこぼさないでください。はしたないですよ」


 そういうウララさんはフォークを使って、とても上品にケーキを食べている。


 なんとも様になっているけれど、森の人達は手づかみで食事を摂っていたのよね。


「ウララさんは、とてもお上品ね。そう言った作法は森を出てから?」


「え? ああ、はい。秘密結社の目を逃れて潜伏する為に必要だと思いましたので」


「大変ではなかったかしら?」


「いえ、攫われた子供達の事を思えば、この程度は些末なことです」


「頑張り屋さんなのね。とてもすごい事だと思うわ」


 森暮らしの生活から町暮らしの生活への移行やそのための準備と並行しながら主目的である子供達を助けるために秘密結社と戦って……本当に大変だったと思うの。


「いや、その……あ、ありがとうございます」


『あははっ、やーい、照れてやんのー』


「なっ! て、照れてなどいませんっ!」


「もう、茶化さないの。神鳥様だって、ウララさん達が帰ってくるまで心配していたでしょう?」


『ちょっ、ハルカ! それは内緒にしてっていったよね!?』


「あら? そうだったかしら? やぁね、歳を取ると物忘れが激しくて……」


『絶対わざとだよねっ!?』


「神鳥様、そこまで我々の事を案じて……」


『そりゃ何年も音信不通だったら心配するよねぇ!? 何らかの方法で連絡は出来なかったのかな!? 君たち三人もいたんだから一人くらい連絡に寄こしても良かったよねぇ!?』


 それはごもっともね。


「そ、それはすみませんでした……」


「目の前の事に必死になり過ぎていたのかしら? 私も若い頃は目先の事に囚われすぎて失敗をしたことがあるけれど」


「はい、その通りです……私と兄が子供達の居場所を調査する傍ら、諜報に向かないゼララを自由にしていたのですが、ヤツときたら悪鬼に挑むばかりでした。せめてあの時にゼララを森にやっていれば良かったと反省しています」


「そうだったのね。他に頼れそうな人はいなかったのかしら?」


『だねぇ。ゼララ君だと説明にも手間取りそうだし、グララ君をこっちに寄こして調査を他の人に協力してもらうっていう方法もあったかもね。秘密結社っていう所は敵が多かったみたいだし』


「実は、調査の過程で人民軍という民間の組織と協力することになったのですが、自分達の事は自分達でどうにかすると言ってしまったので、子供達の行方を調査するのはほとんど自分達だけで行っていました。その結果、間に合わなかった者達が出てしまったのは私の落ち度なのです」


『あー、それはしょうがないとしか言えないかなー。敵の敵は必ずしも味方じゃないって考えるのは当然だもんね。どちらかというと、その人民軍って所と協力関係を築けただけでも僥倖じゃないかな? 助けられなかった子供達が居たのは悲しい事だけれど、悪いのは秘密結社の奴らであってウララちゃんじゃないんだしさ』


「そうね。確かに反省点はあるようだけれど、ウララさん達が頑張った結果が今なのだから、それを誇りに思う事はあっても責められるようないわれはないと思うの。そもそも、森の人達は誰もウララさん達を責めてはいなかったと思うのだけれど」


「それはそうなのですが……夢を、見るんです。亡くなった子供達が、痛い、怖い、助けて、と助けを求める姿が、どうして助けてくれなかったの、と泣きながら訴えてくる姿が……」


『うわぁ、これは自責の念に駆られてるねぇ。ウララちゃんは良くも悪くも真面目だからなぁ』


「亡くなった子供達に責められる夢、ね。心因性の物だったら実際に亡くなった子供達に対面して聞いてみるのが良さそうだけれど……」


『えっ、なにそれ怖い。死者に会えるってこと? ハルカたちの世界にはそんな技術が?』


「ああ、違うのよ。技術として確立しているわけではなくて、ドリームアイランドのアトラクションに死んだ人に会えるというものがあるのだけど、これは夢幻島の特性を利用した物だからどこでも好きなように使えるという物ではないのよ」


『あ、そうなんだね。それでも十分すごいと思うけどさ。じゃあ、ウララちゃんの心労を減らす為にもドリームランドには絶対に行かないとね』


「私は同行できないけれど、それが良さそうね。アトラクションの名前は忘れてしまったのだけれど、行けば分かると思うわ」


『うん、探してみるね。ほら、ウララちゃんは何時までも落ち込んでないでお菓子でも食べなよ』


「もう頂いてますが」


『もっと食べなよ! ボクばっかり食べてるじゃん!』


「そんなに食べてばかりいると太りますよ」


『残念でしたー! ボクの身体は食べたものが全部魔力とかに変換されるから太らないもんねー!』


「はあっ!? それは都合が良過ぎませんか!?」


「あら、神鳥様のお身体は精神体寄りなのね。私の知っている神の使いは実体寄りの方ばかりだったから、てっきり神鳥様もそうなのかと思っていたわ」


『へー、そっちの御使いはそんな感じなんだ。ボクは生まれた時からこんな感じだよ?』


「あの、精神体とか実体というのは……?」


 ウララさんは知らないわよね。私が居た方の世界では少し専門的な知識ではあるけど、内容としては一般常識の範疇なのよね。


「そうね。わかりやすく説明すると肉体――身体を構成する細胞の違いのような物かしら? 実体の場合は生物学にあるように大半が水分だけど、平たく言ってしまえば原子という認識でいいわね。一方で精神体の場合は各細胞を模した魔力で出来ていて、身体機能の再現も可能なの。こちらは実体を構成する原子に対して魔子という呼ばれ方をしているわ」


「つまり、その魔子という物で実際の身体を再現しているという事ですか?」


「そのような認識で凡そ合っているわ」


『まあ、再現できてもわざわざ太ったりする必要はないわけだから、ボクみたいに余剰分のカロリーなんかは魔力とかに変換して余すことなく利用することもできるんだよね』


「つ、都合が良過ぎる……健康被害のような物はないんですか?」


「それは見ての通りだと思うけれど」


 そういうと、ウララさんは神鳥様をじっと見つめてから言った。


「……確かに、神鳥様が病気になったという話は聞いた事が無いですね」


『ウララちゃん、ボクじゃないよ』


「え? ハルカが、ですか!?」


 ああ、気付かなかったのね。魔法少女に変身して見せたし、気付くと思ったのだけれど。


「ええ、そうよ。私の場合は三歳の頃に魔力に目覚めたから、その頃からずっと細胞が魔子で構成された物で作られていって、神鳥様と同じく身体の半分以上が精神体になっているの。ほら、私って魔法少女に変身すると若返るでしょう?」


「あれは魔法少女だからではないのですか?」


「そんなに便利なものじゃないのよ? あの姿は魔力によって精神体としての細胞が活性化した結果若返っているのであって、魔法少女の姿になるのと若返るのは一緒ではないの。それに、私の場合はやろうと思えば、変身しなくても若返ること自体は可能なのよ?」


「そ、そうなのですか。では、なぜ老人の姿でいるのですか? 若返ることができるのならば、そちらの方が過ごしやすいのでは?」


 それはこれまでもよく聞かれたわね。でも答えは変わらない。


「確かにそうかもしれないわね。でもね。私は人として生きることを選んだの。色んなことを学んで、成長して、大好きな人達と出会って、結婚して、子供を産んで、大切な人達と一緒に歳を重ねて、少しずつ老いていって、何時か死んでしまう。そんなふうに生きたいと思ったから、こうして歳を取っているの。それでも病気とは無縁だから、ちょっと普通とは言い難いかしら?」


「あ、いえ、その……とても、尊い事だと思います。むしろ私が恥を晒したような心地です」


 別に恥ずかしい事なんてないのに。


「疑問に思ったことは素直に聞いてくれていいのよ? ウララさんはまだまだ若いのだから、色々と経験して学んでいけば良いの」


「はいっ」


『ハルカの世界の魔法少女って、そんなふうだったんだ。やっぱりみんなハルカみたいな感じ?』


 あら、少し誤解させてしまったようね。


「私のような半精神体は私が所属していた所では私の同期を含めても七人だけだったわね。こういった身体になる条件が若年で強大な魔力に目覚めるというものだから、魔力に目覚めた時点で身体が耐え切れずに死んでしまう子供も多かったそうよ。今では対策がしっかりしているから大丈夫だけど、私の時は高熱が出て大変だったと母から聞いたわ」


『だよねぇ。ハルカの魔力は明らかに人間離れしてるし』


「そうなのですか? 私にはさっぱり……」


『ウララちゃんはまだ初心者だからね。ハルカも普段は抑えているみたいだから、全開でどんな物かは想像もつかないけど、ボクとやりあうことくらいはできるんじゃないかな?』


「若い頃ならともかく、今は無理ね。逃げ遂せるので精一杯よ」


『うわー、全盛期のハルカって化け物だったの?』


 あら、そう呼ばれるのは懐かしいわね。


「なっ! 神鳥様! 言い方が酷いですよ!」


「いいのよ。良く言われていたから慣れているわ。特に私達の世代は良くも悪くも目立ってしまったから、一時期は外を出歩くのにも苦労したわね」


 私はともかく、同期の夏燐さんが特に大変だったのよね。その分やり返してはいたみたいだけれど。


『まあ、力を持つ者って憧れや尊敬の対象であると同時に恐怖の対象でもあるからねー。ましてや人間は逸脱したものを怖がって攻撃したがる獣の本質を持ってるからね。どんだけ知的ぶっても獣の領域から抜け出せないのが人間っていう生き物さ』


 あら、なかなかの毒舌ね。過去に人間関係で嫌なことでもあったのかしら?


「神鳥様、もしかして人が嫌いだったりしますか?」


『どうだろうねぇ。でも、ウララちゃんを始めとした森の皆は大好きだよ? あとハルカも!』


「それならよかった。でも人間だって捨てた物でもないのよ? そんな状況でも私達の味方をしてくれる人達はたくさんいたもの」


「わかります。私も怪人の姿をしている際に石を投げつけられたことがありますが、友人が庇ってくれました」


『はあ? うちのウララちゃんに石を投げつけたバカが居るってホント? ウララちゃん、そいつの事詳しく教えて。見つけたらお仕置きするから』


「だ、大丈夫です! 怪人化するとその程度は痛くもかゆくもないですし、思いのほか怒ってくれた友人が殴り倒して、むしろこちら側がやり過ぎたと怒られたくらいなので……」


『おっ、そのお友達いいじゃん! どういう子? ボクの加護をあげちゃおうかな?』


「勝手なことをしないでください。彼女に手を出したら怒りますよ?」


『わ、わかったよ。だからそんなに怒らないでくれる? ていうか、怪人っぽい気配が出てて怖いよ』


 そんな気配するかしら?


「神鳥様、怪人っぽい気配とはなんですか?」


『え、そう言われてもそうとしか言えないなぁ。なんていうか、ぞわっとする感じ?』


「そうなのね。私は特に何も感じなかったけれど。森で怪人化した時も同じように感じていたのかしら?」


『うーん、あの時とはまたちょっと違うような。多分、ウララちゃん特有のナニカだと思うよ。そもそも怪人化ってどんなことをされてそうなったのかよくわかってないんでしょ?』


「はい、秘密結社の者達は私達の事を適合者と呼んでいましたので、それが何か関係しているのかもしれません」


「適合者、ね」


 魔法少女と異形の関係に似ているかしら? ただ、ウララさん達の世界には異形が居ないようなのよね。


 怪人とは何なのか……どのように機関へ報告したものかしらね?



 休憩を終えた後、再び神鳥様に乗り込んで空の旅へ。


 その最中、神鳥様がこんなことを聞いてきた。


『そう言えばさ、ハルカが昔にやっちゃった失敗ってどんな感じだったの?』


「私もそれは気になります」


 どうやらウララさんを励ましている時に私が言ったことが気になっていたらしい。


「そうね。きちんと説明すると長くなってしまうから、簡潔にまとめてもいいかしら?」


『うん、いいよー』


 神鳥様の返事とウララさんの頷きを肯定と受け取って、過去最大の失敗を思い出しながら説明する。


「私達の敵対組織に所属している子と互いに素性を知らない状態で仲良くなって、ひょんなことから戦闘中にそれが判明してしまっった結果、互いに感情的になって暴走して、その戦闘の余波で街のシンボルタワーを倒壊させてしまったのが、私の大失敗のひとつかしら」


『ハルカも失敗とかするんだねぇ』


「とてもそうは見えませんが……」


「あの頃は若かったというか、とにかく経験が足りなかったわねぇ」


 後に彼女とは和解したけれど、互いに機関と組織に所属したままだったから、自然と連絡は取らなくなってしまったのよね。


 私が魔法少女を引退した後に一度会ったけど、彼女は相変わらず組織に居て、昔と変わらない姿のままだった。


 その後、最後に会ったのは組織が行っていた非人道的な実験に巻き込まれてしまった私を庇って、命を落としてしまった時だ。


『それで、組織って言うところに居た子とは仲直りできたの?』


「ええ、ちゃんと話し合って、互いの意思を尊重できたわ。ただ、それで彼女が組織を抜けることはなかったし、私も機関を辞めたりはしなかったから、そこでお別れという事になってしまったの」


『そっかぁ。人間ってそういうしがらみがめんどくさいよねぇ』


「えぇ、本当にそうね」


 それでも、そのような仕組みを作ってしまったのは外ならぬ人間なのだから、私達はそこに折り合いを付けながら生きていくしかないのよね。


「ハルカ、その組織というのは秘密結社のような所だったのですか?」


 私が聞いた印象として秘密結社は凶悪な犯罪を行っていた組織という認識なのよね。


 では組織はどうかというと、秘密結社程ではないと断言はできる。


 とはいえ、一部の者達が行っていた非人道的な実験や所属していた異形による殺人事件などは凶悪と言わざるを得ないでしょうね。


 でもそれは、あくまで一部の者による犯行であって組織全体として見た場合、彼ら独自の良識を持った――ある意味では善良な組織なのよね。


 その価値観が機関とは決定的に噛み合わないというだけで。


「色々と複雑なのだけれど……わかりやすく例えるのなら、ヤクザ屋さんのようなところかしら?」


「ヤクザ屋さん? ああ、ヤクザですか。とりあえず、秘密結社とは違うというのは伝わりました。まだマシな方、という認識であっていますか?」


「ええ、そうね。ついヤクザ屋さんと例えてしまったけれど、ウララさん達の世界にもあったのね」


「はい、任侠だとか極道だとか色々と呼ばれているようですが、詰まることろは暴力団。あまり褒められたものではないですが、秘密結社と比べるなら可愛い物です。それに、彼らの中には秘密結社と敵対しているところもありましたから」


「あら、ヤクザ屋さんとは言え、生身の人間がそんなことをして大丈夫だったの?」


「彼らは非合法の手段による人体改造や戦闘スーツを用いて秘密結社に対抗していましたからね。実際に怪人を討ち取っていた方もいます」


『うわぁ、普通の人がそこまでする?』


 神鳥様が引いているけれど、彼らの在り方が私の世界と同じようなものであれば、多少納得は出来るのよね。


「良くも悪くも、彼らは普通ではありませんから。裏社会は彼らにとって唯一の居場所なので、秘密結社に居座られるのは都合が良くなかったのだと思います」


 ああ、やっぱりそんな感じなのね。思いのほか、私が居た世界とウララさん達の世界は似通っている部分が多いみたいね。


『あー、要は縄張り争いかぁ。それにしても、人体改造って字面を聞くからにまずそうだけど、改造された人達はどうなったの?』


 それは私も気になるわね。


 そんな技術が今の世界にはあるのだから、警戒するためにも知っておきたいところだわ。


「私も詳しくは存じ上げませんが、手術の成功率は凡そ二十パーセント。五人に一人が超人的な力を手に入れることができるそうです」


 思ったより高いわね。そんな確率で怪人と渡り合える力が得られるのなら、手を出す人は少なくはないでしょうね。


『え、それって結構すごくない? 百人いたら二十人の超人が作れるってことじゃ――』


「ただし、その五人中四人が異形の化け物になり果てます」


 美味い話はなかったようね。それでも百人に一人が姿をそのままに超人化できるというのは凄まじい技術ね。


 これは要警戒ね。機関への報告案件だわ。


『ダメじゃん! よくそんな手術受ける人がいたね!?』


「まあ、はい、彼らは普通ではないので。それに、彼らの大半は戦闘スーツを使っていましたから」


『そ、そうなんだ……じゃあ、その戦闘スーツって言うのはどんなのだったの?』


「こちらは企業戦士なども使用していたスーツの試作品や失敗作を裏のルートで手に入れたものだとかで、なかなか強力なものが多かったと記憶しています」


 企業戦士とは何かしら? スーツって何? 戦闘用のリクルートスーツを着て戦うの?


 とても気になる言葉があったけれど、神鳥様が別の所に食いついた。


『え、試作品や失敗作が強いの? なんで?』


「それは……試作品や失敗作だからとしか」


『え? え? どういうこと?』


 神鳥様が戸惑っている。試作品や失敗作というと――


「その戦闘スーツというのがどういう物かはわからないけれど、そういった物の試作品というのは開発段階で資金面の制限が緩いから、開発費用が高くて性能面も高いのよ。何せ試作品を作るのは量産品を完成させるためのデータ取りが主目的だから、性能を数値化した際の上限と下限が取れるようにしないと話にならない。と、技術者の友人が言っていたわね。失敗作の方は……性能が過剰過ぎたとか、かしら?」


 うろ覚えの知識だけど、合っていたかしら?


 一時期、機関で魔装具のテスターをやっていた際に聞いたものだから、記憶としても古いのよね。


「そうです、凡そはそのような感じです。神鳥様、わかりましたか?」


 それでも一定の線は越えていたようで、ウララさんが肯定してくれた。神鳥様は微妙な様子だけど。


『うーん、なんとなくはね。失敗作の方の性能が過剰過ぎたって言うのはわかりやすいけど。性能が過剰ってことは使ったら怪我したり、最悪死ぬとか?』


「確かにそういう物もありましたが、私が見た物の中にはもっと悍ましい物もありました」


 もっと悍ましい物とは何かしら? ちょっと想像がつきにくいわね。


 口にした当人のウララさんは不快そうに眉根を寄せているから、相当に酷い物を目にしたのだと思う。


「ウララさん達の世界には怖いものが思ったより多いのね」


「それだけ秘密結社が脅威であったのだと思います。倫理を捨てた者達を相手に対するには、こちら側もそれなりの覚悟が必要だと、友人の一人が言っていましたから」


「そうね。正義の心だけで戦えるなんて言うのはお話の中だけだもの」


 最も、魔法の場合は心とか意思の力でどうにかできてしまう事も稀にあるのだけど、再現性がないのよね。


『そうだね。結局のところ、最後に物を言うのは力だからね。強い力を持ったものが勝つのが自然の理だもの』


「そうね。だからこそ、力を持っている人は力の使い方を間違えてはいけないの」


「そうですね。私も、この力に振り回されぬように今後も精進していきます」


『はー、なんか真面目な話で疲れちゃった。ウララちゃん、次はなんか面白い話してよ。恋バナでもいいよ。ほら、オーガ君だっけ? 好きな人がいるんでしょ?』


「あら、私も気になるわ」


「いやっ、それはそうなのですが!」


 真面目な話から一転、唐突に始まった恋バナに、神鳥様と同様に疲れていた私も、年甲斐もなくはしゃいでしまうのだった。真面目な話は疲れるわよね。歳を取ると本当にそう。

ちなみに魔法少女のイメージはアニメ【リリカルなのは】シリーズと【プリキュア】シリーズから着想を得ています(前者からは魔法少女の設定部分、後者は主に衣裳関係)

要は【プリキュア】みたいな衣装をまといつつも【リリカルなのは】みたいに戦う魔法少女というイメージとなっています

ちなみにどちらも履修具合は不十分です


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ