第三項 ■■■■■(第30話)
第一部 新世界の産声編 第一章 交差する世界 第六節 混沌世界
神々の苦労と共に成し遂げられた世界融合。
その余波は遥か彼方の次元にある世界にまで届くほどのものであり、これを感じ取った者達の中には、わざわざ様子を見に来たものまでいた。
世界融合に関わったもの達とは別の観測点にて、とある吸血姫。と、彼女が住まう世界の女神。
「不快な気配を感じてきてみたら、新しい世界が生まれたのね。これは……融合でもさせたのかしら? 随分と思い切ったことをしたわね」
「あの、エル様? 確認が済んだのなら元の世界に戻りませんか?」
「……そうね。この世界の神々は私とは関わり合いがないみたいだし、見逃してもいいわね」
「はいっ、その通りです! この世界の子達は私達の下位互換みたいなものなので、そうして頂けると幸いです!」
「あら、そうだったの? あまり大差なく感じるのだけど?」
「エル様の物差しと我々の物差しは違い過ぎるので……」
「本当に忌々しいわね。自分で言うのも癪だけど、強過ぎるというのも考えものだわ」
「あ、でも力の制御はできるようになっていますよね?」
「ええ、今はあまり抑えてないけど」
「え……いや抑えてくださいよ! この空間にも許容限界はあるんですよ!?」
「大げさね。この空間って、創世用に使われているものでしょう?」
「あの、あっちの世界とこっちの世界はそもそも規模が違うので――」
――みしぃっ。(←形容し難い音を敢えてわかりやすく表現した音)
「なるほど。壊れそうね。――はい、抑えたわよ」
「久しぶりにこの規模の空間がきしむ音を聞きました……」
「世界が壊れそうな時の音に似ていたわね。昔はよく聞いたものだわ」
「ええ、身(内)から出た錆とは言え、当時は大変でした……」
「まあ、自業自得よね。ともあれ、誰かしらが何か悪巧みをしてるわけでないのなら用済みね」
「はい、早く帰りましょう」
「そうね。ああ、一応、警告――じゃなくて挨拶くらいはしておいた方が良いのかしら? あちらも気づいているでしょうし」
「今日のところは止めてあげてください。世界の融合でかなり消耗しているようなので」
「この程度で消耗するの?」
「創世とはまた違うのです。色々と調整もしていたようですし、体力の消耗というよりは気疲れのようなものですね」
「なるほど。じゃあ、挨拶はまた今度にしましょう」
「挨拶はするんですね……あっ、来る時はちゃんと私を呼んでくださいね? 絶対ですよ?」
「わかってるわよ。――ん? あら、あの人が帰ってきたみたい。ほら、さっさと帰るわよ!」
「あ、私も久しぶりに会いたいので後で顕現すると伝えて置いていただけますか?」
「ええ、いいわよ。それじゃあ、帰るわよ。私達の世界へ」
「はい!」
同じ男を伴侶として持つ者同士、わりかし気安い関係でもある吸血姫と女神は、自分達の世界へと帰って行った。
世界融合を行った者達の観測点にて、様子を見に来た異界の神と迎え入れた現世神。
「……去ったか。あれが吸血姫。聞きしに勝る悍ましさであったぞ」
此方を覗き見る彼の存在が去るまで、息を潜めるようにしていた異界の神が安堵と共に言葉を吐いた。
それに応じるのは、融合した世界の様子を見守っていた者だ。
「かつて、八百万の神々を葬った存在。消されるかと思った」
「うむ、あれの憎しみは全ての神々に向いていると聞いたが、節操無しというわけでもないらしい」
「今は敵対しなければ問題ないとは聞いた」
「ほう、それは朗報だな。手出しさえしなければ怯える必要もないか。我も戻ったら他の神々に伝えよう」
「あれは我々にとっての災害と同じ。どれだけ力があっても災害はどうにもできない」
「それを生み出した八百万の神共には恨みしかないがな……」
「最上位存在が聞いて呆れる」
「生き残りと思われる神が共に来ていたようだが、やけに親しげだったな。一体何があったのか」
「詳細は不明。でも、後ほど挨拶に来るらしい。逃げたい」
「はっはっは、我はその前にお暇するとしよう。なんにせよ。あれだけの大事を成して消滅を免れたこの世界は前途有望であるな」
「今のところ滅びる心配はない。我々も誇らしい」
「うむ、条件こそ厳しいが、消滅の憂き目に遭っている世界を存続させ得る手段が出来ることは我らにとっても良い進歩である」
「これが上手く行ったら、他の候補でも実行する予定」
「この手段が確立できたならこちら側でも行ってみるとしよう。昨今の世界は滅びるのが早すぎてな」
「我々の方は原因究明に至っていない」
「それは此方も似たようなものだな。まあ、せっかく接点を持ったのだし、今後も良き関係を築きたい」
「同意。どうせならもう少し先達の話を聞きたい」
神としての歴史がまだ浅い現世の神が異界の神に話をねだる。
「まあよかろう。こちらも手詰まりだからな。失敗談で良ければいくらでも話そう」
「それはそれで助かる」
こうして世界を見守るだけだった現世の神は暇つぶしの相手を捕まえ、失敗続きの異界の神は気分転換もかねてその場に残ることを選ぶのだった。
文字数は自重できてるけど自分の作品内で一番自重できない人が出現
色んな所にちょいちょい顔出しする超危険人物(他作品では無害)でした
世界の枠組みを越えられるキャラって便利だけど使いにくい印象
色んな作品でこういった強キャラが作品の都合で死ぬのを見てきたけど、その影響もあってか彼女だけはどうあがいても殺せないキャラとして作ってしまったので容易に出せない……




