第二項 惑う者、夢幻に沈む者(第29話)
第一部 新世界の産声編 第一章 交差する世界 第六節 混沌世界
世界融合の際に融合した人々の大半は主格となった者を基に、その認識や記憶を調整された結果、平常通りの生活を送っている。
一方で世界融合の前に平行存在を取り込んでいた者達は現在の世界に違和感を抱きつつも、融合の際に生じた覚えのない不備を修正していった。
これらの人々の中でも大変だったのは、調整を受けていながらも不備(書類関係)に悩まされた者達だろう。
異常を異常と認識できなくなっているために生じた問題ではあったものの、現在は修正に動いた者達のおかげで彼らも事なきを得ていた。
ともあれ、これにて世界融合の際に生じた些細な問題は解決へと向かって行った。
しかし、如何な神々といえども世界融合の全てを平穏無事に済ませられたわけではない。
世界融合の際に、その影響から漏れ出てしまった者達が少なからず存在していたのだ。
影響を受けたのは世界が融合する前に平行存在があり、尚且つ存命であったもの。
世界融合の前に平行存在が統合されていた者は省かれているが、この辺りは神々も把握している。
であるならば、影響から漏れ出た者とは……?
ある者は異生物のサンプルを確保する為に最終決戦に赴く部隊へと潜入し、サンプルの採取に成功するも、戦闘の衝撃により宇宙へと放り出された。
咄嗟に救難信号を発するも、衝撃によってサンプルを収めていた容器が壊れ、彼は溢れ出てきた異生物に取り込まれてしまう。
彼が採取しようとしたのは異生物の特殊個体で、通称をクイーンと呼ばれる物であり、通常の異生物とは異なった性質があった。
それは魂とも呼べる生命の根源をも取り込み、融合するという性質であった。
この性質によって、クイーンと融合した彼はその魂諸共に溶け合い、世界融合の影響を逃れるとともに新たな存在へと変貌していった。
ある者はすでに死亡していたと思われていたが、その種族の特性故に自然と溶け合い、永き眠りに就いていた。
もとの世界では希少種とも呼ばれていた彼らは、他の世界に平行存在が居ない代わりに生まれながらに強大な力を有していた。
不滅でこそないものの、強靭な身体と不死性を持って生まれた彼らは肉体は死んでも魂は滅びずに復活することが可能だった。
世界が融合する前に死んだと思われた彼女もまた、例外ではなかった。
彼女が復活するには足りなかった自然の力が世界の融合によって満ちた時、永い眠りから目覚めた彼女が目にするものは、待ち望んでいた平和な世界だった。
ある者は最後の戦いの余波で仮死状態となり、意識を失ったまま異空間を漂っていた。
秘密結社の総帥であった彼は異世界から転移してきた存在であり、己の異能の力で世界の平和に貢献しようと努力をしていた。
しかし、彼が努力によって手にしたものを狙って近づいてきた者達に、彼は全てを奪われ、大切な者まで失ってしまった。
復讐の鬼となった彼は復讐を果たすと共に、己の力で世界を平定しようとした結果、かつての自分と同じような存在にそれを阻まれた。
最後の足掻きも自身の目的を阻んだ者に阻止され、異空間に吞まれた彼だが、世界の融合に伴って仮死状態のまま融合後の世界へと帰還する。
ある者は魔法少女との戦いにおいて力を使い果たし、最後の足掻きすらも故人の意思によって無為にされた。
彼女は、姉と共に在れば、それだけでよかった。
大好きな姉だけが全ての彼女に取って、姉の死は耐え難い事だった。
だから、自分を含む全てを利用してでも姉を殺した機関を潰してやろうと画策したが、それも叶わず、最後の攻勢においても姉の意思が自身の目的を阻むこととなった。
敵だったはずの魔法少女と共に異空間に閉じ込められ、共に脱出することを選んだ彼女は、脱出の際に感じた意志の元へと、惹かれるように向かう。
影響を逃れた彼らは、融合後の世界で何を思い、何を成すのか。
神々でさえも知りえない彼らの存在は、世界にとって災禍となるか福音となるのか。
融合した世界の未来は、神々ですら見通すことはできない。




