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第三項 人恋しくなって(第23話)

第一部 新世界の産声編 一章 交差する世界 第四節 密林での生活

「……誰も来ない」


 泉の傍の大樹の洞で待つこと一週間、未だに誰かが来る気配はない。


 おかしいわ。明らかに人の手が入っているのに、誰も来ないなんて……。


 この一週間で魔力もすっかり回復してしまった。


 ここで過ごすうえで少しずつ魔力は使っていたけれど、使用量を回復量が上回る為、ここにきて三日目からは常に身体に魔力が満ちている状態だ。


 魔法少女のように、魔力に対する親和性の高い者は、これが身体に顕著に出る。


 具体例を一つ上げるならば、若返りだろうか。


 おかげで加齢による諸症状が抑えられて身体の調子が頗る良い。


 お肌の張り艶も出てきているし、ここに定住しても良いくらいなのだけれど、流石に少し人恋しい。


 そういえば、破滅の魔女もこの近辺には居ないようだった。


 すっかり魔力が回復してから毎日一度は魔力波を発して居場所を知らせているのだけれど、反応はなかった。


 魔力波は魔法少女や魔女ならその波形から相手の意図を読み取ることができるから、気付いているならここに姿を現しているはず。


 お互いに大きな怪我をしていたわけでもなかったから、怪我で動けないという事もない。


 魔力欠乏だったとしても動けないわけではないし、魔女である彼女ならとうに魔力も回復しているはずだから、ここに来ない理由にはならない。


 となると、私とは大きく異なる場所に飛ばされている可能性の方が大きい。


「この環境は惜しいけれど、これ以上ここに留まる理由もないわね」


 誰かしらが来ることを期待していたけれど、ここまで待って来ないなら、そろそろ動いてもいい頃合いかしら。


 そうとなれば変身して――と行きたい所なのだけれど、変身した状態でこの近辺に住む人と出会ったしまったら面倒なことになりかねない。


 魔法少女は公な存在となっているけれど、果たしてこの未開の地に住んでいる人達が魔法少女を知っているかと言う所が問題ね。


 変身状態は長くても一時間もてば良い方だから、一日中変身しているわけにもいかない。


 変身状態の姿は若々しい物だから、私の場合は変身が解けると少女からの老婆という、知らない人からしてみたら衝撃的な変容に驚かれ、警戒させてしまう恐れがある。


 同様に老婆から少女への変身も無理となると、このままの姿で動くのが正解なのだけれど、それだと密林の中での行動の妨げになる。


 ここの影響で多少は若返った気になってはいるけれど、年相応の老婆であることに変わりはない。


 このままここに留まる事での若返り効果に期待が持てないわけではないけれど、それだと時間が掛かり過ぎてしまう。


「それに、あまり長引くと捜索願が出されてしまいそう……」


 それはそれで助かるのかもしれないけれど、やはり自力で帰るのが最善だと思うの。


 決して恥ずかしいとかそういった感情は微塵も無い。無いと言ったら無いのよ?


 ともかく、家に帰ることを最終目標として、まずすべきこと、それは――


「ここが何処なのかを調べないといけないのよね」


 その為にも変身して木に登るなり飛ぶなりして、この近辺の位置情報を把握しておきたい。


 しかし、前述のようにこの近辺に住む人達に姿を見られるのはよろしくない。


 その為に変身は使わずに来たけれど、この一週間なにもしてこなかったわけじゃない。


「やっぱり、これを使うしかないのかしら?」


 変身による姿の変化を隠す為に、毎日少しずつ作ってきた変装用の衣装を使う時が来た。


 密林の中という事で材料が限られているため、全容としてはほぼ緑色の衣装となっている。


 時間をかければ布や染料も用意できたけれど、時間がないためそこまでの準備はできなかった。


 そうして出来上がったのは――


「ギリースーツだったかしら? こういうのって」


 迷彩服の一種だと聞いた覚えがあるけど、実物は見たことがない。


 私が作ったものは固く乾燥した蔓草で身体の各所に合わせた輪を作り、それをつなぎ合わせて服の上から着装できるようにした後、輪の方にやわらかい蔓草などを括り付けて全身を覆えるようにしたものだ。


 これを着ると顔はほとんど見えず、身体の線も出ない。


 これなら変身による姿の変化は分からない。


 ただ一つ問題があって、これを着ていると木の精か何かに見えるというか……端的に言ってすごく怪しく見えてしまうという点だ。


 泉を水鏡にして確認したけれど、ちょっと弁明のしようがないくらいには怪しい姿だった。


 とはいえ、そこは変身による姿の変化を隠すためだから許容するしかない。


 言い訳としては獣から姿を隠す為とでもいえばいいかしら。


 変身による身体の変化はほんの一瞬だから、十分に誤魔化せる。


「とにかく、これで動くことができるわね」


 あと気を付ける点としては、変身してから変装衣装を身につけないと、諸共変化してしまう所かしら?


 そういう仕様だから便利と言えば便利なのだけれど、こういう時に不便なのよね。


 とりあえず、人と接触するまではあまり気にせず魔法少女の姿になることができるから、ここを拠点としてあちこち探してみることにしましょう。


 きっと、この辺りを手入れしている人達も近くにいるはず。


「友好的な人達だといいんだけど……」



※気になりそうなワードの解説

魔力波

 魔力を扱う者であれば簡単に使える基礎的な技術の一つ。

 魔力を放出することで攻撃として利用したり信号として使うこともできる。

 力の強弱によって波形が変わるため、細かい情報の伝達にも利用可能。


こういった注釈とか書いてたんだ……(驚)

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