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第二項 過ごしやすい場所(第22話)

第一部 新世界の産声編 一章 交差する世界 第四節 密林での生活


「魔力の回復が早い……?」


 密林に辿り着いた翌日、起床すると魔力が大幅に回復していた。


 全快とまではいかないけれど、体感だと三割近くも回復している。


 これなら変身もできるわね。


 とはいえ、ここまで回復した要因が不明だ。


 明らかに自然回復した量ではないし、大気中の魔力濃度も少し濃く感じる程度だから、ここまで回復するはずもない。


 そもそも、魔力総量が多い私の魔力がここまで回復していること自体が異常だわ。


 そうなると考えられるのは――


「――昨晩の飲食物かしら?」


 昨晩に摂ったものと言ったら近くの水場の水を煮沸消毒したものと初めて見る果実だったわね。


 どちらも魔法で毒性や寄生虫の反応がないことを確認した以外は特に変わった所はなかった。


 それに、これだけ魔力が回復するなら食べ飲みした際に気付くはず。


 となると、飲食物の可能性も低いわね。


 そもそも、昨晩の寝る前までは自然回復量の分しか回復していなかったはず。


 自身の魔力量は常時把握しているわけではないけれど、平時でも体感でおおよその量はわかる。 


 となると、就寝から起床までの数時間に何かがあったという事になる。


「寝ている間に、何かあったのかしら?」


 少なくとも、身体に直接何かをされたのならすぐに目覚める。


 であれば、気付かない程度の異変となるから――


「――大気中の魔力濃度が増加したのかしら?」


 月の出ている夜などは大気中の魔力が微増する現象が確認されているけれど、この回復量となると相応の増加が起こっているはず。


 一部の植物は日中に貯めた魔力を増幅吸収して、余剰分を夜間に吐き出すという現象だってある。


 そう言えば、大気中の魔力濃度が少し濃く感じたわね。


 となれば、夜間に何かがあるのは確実だと思う。


 今のところ健康被害などはないけれど、夜間の魔力濃度によってはここを放棄する必要が出てくる。


 自分の許容魔力容量を棚に上げるけど、この回復量は異常すぎるもの。


「今夜は眠れそうにないわね」


 夜に何が起こっているのか、起きて確認しないと。



 

「……なるほど」


 昼間に仮眠を取って夜の異変に備えて起きていたら、あからさまな異変が起こった。


 日が暮れて夜が更けていくにつれて、地中から滲み出るように魔力の粒子が湧き出てきた。


 地中から天に向かって、粉雪のような粒子が昇っていく様は幻想的ですらある。


 魔力の素――魔素は自然界に置いて一定域を超えると粒子化し、魔法の素質を持たない者の目にも見えるようになる。


 それが今見えている魔力の粒子であり、これには少し変わった特性がある為に、人体にほぼ影響のある物ではなくなっている。


 この現象は魔力密度が極めて高くなる事によって引き起こされる物であり、非常に珍しい現象でもある。


 また、この現象が引き起こされる場所にはとある特徴がある。


「龍脈が近くにあるのね。方向は……泉の方?」


 魔力の粒子が放つ光は水場として利用している泉の方に行くほど明るくなっていた。


 龍脈とは世界各地に点在する大きな魔力の流れとその終点にある魔力溜を指すものであり、地中の奥深くに位置する。


 地中深くで貯まり続けた魔力は密度の増加に伴い粒子化し、物体を透過する性質を得ると共に地表に向かって浮いて行く。


 本来であれば地表まで出てくる量は微々たるものなのだけれど、この量は機関の観測史上でも初めてじゃないかしら?


 未知の現象に少しばかりの興奮を覚えながらも、原因を突き止めるべく泉の方へと向かう。


「あら? 泉の底から湧いているのね」


 泉に着くと、どうやら魔力の粒子は泉の底から大量に湧いてきているように見える。


 龍脈と水脈がぴったり重なった場合にこのような現象が起こるのではという仮説はあったけれど、これがまさにそれなんじゃないかしら?


 ここまで来ると、もはや奇跡ね。


「それにしても、綺麗ねぇ……」


 本来であれば、このような場所を発見した場合は機関へ報告する義務が生じるのだけれど、それはあくまで機関に所属している魔法少女の義務となる。


 生憎と今の私は民間人の協力者であり、あくまで元機関の者でしかないため、その義務の対象外となる。


 早い話が、私はここの事を報告する気はないという事ね。


 こんなに綺麗なのだし、危険と言うわけでもないのだから、機関の手が入るよりは今のままの方が良い。


「少し、ここで魔力の回復をしていこうかしら」


 魔力の粒子の特徴として物体を透過するというのを挙げたけれど、例外はある。


 それは魔力を扱える者であり、欠乏などにより魔力を必要としている者の身体には染み込むように吸収されるという点だ。


 しかも、この性質はあくまで魔力が足りていない時だけに生じる物で、魔力が充足している者の身体はすり抜けてしまう。


 実に都合が良い性質をしているけれど、元々こういう性質なのだから仕方がない。


 これが、私の魔力が大幅に回復した理由で間違いない。


「これなら、今後の活動がしやすくなりそうね」


 森の中に出た時はどうなる事かと思ったけれど、ここは存外に過ごしやすい場所なのかもしれない。

まだ大丈夫

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