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【BL】いつも側に  作者: Ag/あぐ
第5話「彼の素顔ってヤツですか?」
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06・もしかして、もしかするの

しかし、思ったよりあっさりとこの状況から解放された。


「あ?楓のくせに俺に命令すんのか?つーか俺様に何か聞きてぇってんならもっと可愛く聞いてこいよ」


「か、可愛く!?な、なんだよそれ!比呂は相変わらず性格悪いぞ!き、嫌いじゃねぇけど……っそんなんじゃ駄目だぞ!」


二人が俺のすぐ目の前で仲良く言い合いを始めたからだ。会長は意地悪い笑顔で転校生を見下ろして、転校生は何故か赤くなって会長を見上げる。


好きな相手と所謂恋のライバルってヤツのこういうやり取りをこんな近くで見せつけられている状況って、正直かなり辛いです…。


「…」


俺は若干二人の世界とやらに入ってしまった空間からそっと距離を取る。


(なんだよ、さっきは急に触れてきたくせに)


転校生に対してだって面倒臭そうな顔したじゃん。一体どれが本心なの。忙しいくせに結局転校生に構ってるし、補佐の三人の事何も言えなくない?


……ふんだ。会長のばーか、ばーか。

この俺様鈍感やろーめ。


「…はぁ」


「溜め息を吐くと幸せが逃げますよ?」


「ひわっ…!?」


…っび、びびび吃驚した!

この声は振り向かなくて分かるけど、俺は思わず振り向く。


「しゅ…会計さん」


つい修ちゃんって言おうとして慌てて言い直す。


「頬、大丈夫ですか?少し赤くなってますね」


そっと指先で触れられて一瞬戸惑う。普段の修ちゃんなら兎も角、会計の姿でやられて驚いた。けど、理由は分からないけど修ちゃんの事だからワザとなのかもと思い直した。


「これくらい大丈夫っすよ」


それよりも若干いじけていた所だったから話し掛けてもらって助かった。俺はついいつも通りの気の抜けた笑顔を向ける。すると、修ちゃんは微笑みから、一瞬だけ真面目な表情をして、何故か耳元に顔を寄せてくる。


「ハル、大丈夫だぞ。今の所、ハルの方が優位に立ってる」


「!」


俺は単純にも修ちゃんのその言葉だけですっかり安心してしまった。修ちゃんが言うのなら間違いないからだ。思わずふにゃりとさらに顔が緩む。修ちゃんはそんな俺に、髪を整えるようにして優しく頭を撫でてきた。


「そうだ、シロ君は甘い物が好きでしたよね。口を開けてください。はい、あーん」


相手は修ちゃんなので、なんの警戒心なく反射的に口を開く。俺の瞳はすぐさま煌めいたと思う。


「チョコ、ラスク!」


「正解です。正確にはしみチョコラスクですね。先程料理部の先生にいくつか貰ったのでお裾分けです」


「えっ、もしかして文化祭の試作品ですか!?美味しい!」


「そのようですね。料理部は今年、レトロ喫茶店をテーマにしつつ、数種類のお菓子も販売するようですよ」


「わわ、忙しくてチェック怠ってました!絶対行きます!」


お菓子関係の情報で修ちゃんに負けたのはちょっとだけ悔しいけど、それよりもやはり嬉しさが勝る。


「はい、あーん」


「え、あーん」


もう一度口を開いたら今度は袋ごとくれた。


「…ふふ、シロ君は相変わらず可愛らしいですねぇ」


「揶揄わないでくださいよ。会計さんの方こそ相変わらず格好良いですよね」


「おやおや嬉しいですね。でもシロ君の可愛さには負けますよ」


「可愛くはないですって。それよりも会計さんの格好良さはこう、内面からして溢れて出てきていると言いますか…」


ペシンッ!


「いてっ」


会計姿とはいえ、つい修ちゃんとのお喋りに夢中になっていると、いきなり横から頭を叩かれた。ちょっとデジャヴ?


「…」


すぐそばに、何故か頬をピクピクさせて、不機嫌オーラをガンガンに放つ会長が立っていた。


「…え、あの」


なんでそんな怒ってんの?


「…先輩?」


困惑していると腕を掴まれる。そのまま修ちゃんの側から離された。つい修ちゃんに助けを求めるように視線を向けると、いつもの笑顔で見送られる。でも目がグッドラックって言ってるんだよなぁ。


「一体どうし」


「チッ」


…酷いね!


「お前、水上に餌付けされてんじゃねぇぞ」


「…へっ!?え、餌付け?」


相手は修ちゃんなので、餌付けされてる感覚はなかったのだけど、周りからはそう見えていたのだろうか。


「水上の態度も驚愕もんだったけどな、それよりお前」


会長は俺から手を離すとじっと見下ろしてくる。何を言われるのかと構えたんだけど、会長は数秒躊躇った様子を見せ、何故かふいっと視線を逸らした。そして、


「誰にでもあんな顔見せてんのか」


ぼそりとそんな事を言われる。


「…え、えっと…?」


あんな顔ってどんな顔ですか。

会長の言葉が頭の中で上手く処理できなくてひたすら戸惑う。意味が分からないのではない。期待する気持ちと、後の落胆に備えた否定の感情で思考が滅茶苦茶になっているだけ。


でも今回は俺を喜ばせるものだったらしい。


「…無性にイラつく」


「!?」


俺にだけ聞こえるくらいの音量で、ボソリと呟やかれた。


(え、え、え。会長、今…)


「っ……」


ヤバい。顔がにやけそうになる。だってこれってもしかして、もしかするの会長?


「せ、先ぱ」


「さっきから比呂はどうしちゃったんだよ!話しの途中だったのに!なんでまた俺を置いてシロに構ってんだ!!」


ちょ、転校生!?


良い所に割り込まれて愕然とする。

今、俺にとっては凄く大事な瞬間だったと思う。それを転校生は台無しにしてくれた。


(酷すぎる…)


俺がそう感じている間にも転校生は会長に向かって喚いている。しかし、よく見れば転校生は補佐達三人に羽交い締めされてて、それを信者二人が引き剥がそうとしている状態で、つい目を白黒させてしまった。


「皆なんで邪魔すんだ!比呂もシロなんかより俺に構え!シロは比呂の親衛隊で、親衛隊ってやつは最低な奴等の集まりなんだろ!皆シロに騙されてるんだ!目を覚ませよ!!」


(えー…。君は一体どうしてそこまで俺を悪者にしようとすんの)


相手は転校生でも、流石に傷つくんだけど。


「おい楓、何訳わかんねぇ事…」


『ピーンポーンパーンポーン』


転校生の発言に会長が何か言いかけたその時。廊下にも備え付けられた放送用スピーカーから明るい音が流れた。そしてガガッと小さな雑音の後に気弱そうな声が話し始める。


『…えー、あの、俺は生徒会顧問の…者ですが、役員の皆様はいつ頃生徒会室に戻ってきてくださるのかなーとか思ったり思わなかったりでして…。でも早く戻って来て下さると大変助かるのですが、みたいな…いやぁなんてアハハー』


『はぁ、お前は相変わらずヘタレた言い方しか出来ないのか?…おい生徒会役員共、今日は忙しいって分かってんだろ?早く生徒会室に戻って来い。以上だ』


ブチッ


「「「……」」」


そんな放送に皆黙り込んでしまった。

とうとう役員の皆様、お呼び出し掛かってしまったようですが。会長も言葉を遮られた形になってしまった為、口が半開きだ。その様子が可愛いと思った俺は空気読めてないかな?


まぁでも、この何処と無くしらけた雰囲気をどうにかするのは難しいという事は俺にも分かるよ。


「そ、そうだ!俺達急いで戻らないと☆」


「そ、そうそうォ会長も早く戻ろォ?」


「今日は忙しいんですからねっ」


「会長、もう行く」


だけどこの空気に助けられた者もいて、緒方達はワザとらしくそんな事を口々に言って会長を急かす。うん、君達偉い!


「先輩」


俺もそれに助太刀する事にした。先程の会長の発言の真意を改めて確認したかったけど仕方ない。俺が声を掛けると会長は素直にこちらを向いた。


「呼び出し掛かっちゃったみたいですし、流石にもう行った方がい「比呂!俺との話、まだ終わってねぇのに行っちゃう気かよ!」


(ちょ、だからっー!!)


人の話を遮らないでよ。あと今の放送とか聞いてなかったのかな!?キレて良い?キレても良いかな?流石にキレても良いよね!?


「シロ君」


「っ!!」


いい加減苛立ちが天元突破しそうになっていると、いつの間にかまたすぐ近くに来ていた修ちゃんに両肩を撫でられ宥められる。毎回すまねぇな。


ベシッ


「あてっ」


「チッ行くぞ!!」


なんかまた会長に頭を叩かれた。しかも俺が何か言う前にさっさと歩き出してしまう。


今のは、なんで俺また叩かれたの?


「くくっ…マジでやべぇなこれ。師匠じゃねぇけど“たぎる”。俺のポジ最強で最高じゃね?」


そう小さく呟く修ちゃんには理解出来たみたいだ。


「ひ、比呂ぉっ…」


そこで、会長にスルーされ放置される形となった転校生の泣きそうな声が耳に入り、俺はそちらを向く。この場にはもう、俺と修ちゃんと、転校生とそのお友達しかいない。


「しょうがないよ王道君。先輩達忙しいか「シロ!」…何かな」


「なんでいつもシロは俺の邪魔ばっかすんだ!親衛隊だからってな、俺と比呂の仲を邪魔する権利なんてないんだからな!」


「えー…」


この子どうしたら話を聞いてくれんだろ。


「俺、そんな奴には負けない!!」


「ん?」


何急に。


「シロなんかに俺は負けねぇからな!比呂は俺のもんだ!シロには渡さねぇぞ!」


「……………はい?」


「おやおや何やら宣戦布告のように聞こえましたねぇ」


あ、修ちゃんもそう思う?


転校生は言いたいことだけ言って、そのまま会長達とは逆方向へ走って行った。影の薄い信者二名は慌ててそれを追いかけていく。…ああ、良かった会長達にはついて行かなくて。


「なんか凄い漫画とか小説みたいな展開になってきたな」


「転校生てば文化祭中に何かしてきたりするかな?」


「可能性はあるな」


俺と修ちゃんは二人きりになると、横に並んで転校生達の去った方を見ながら話す。


それにしても転校生の後をついて行ったお友達の二人、「比呂は俺のもんだ」発言にはショックが大きすぎてゾンビのようだったな。


「頑張れよ、ハル。俺はいつでもお前の味方だからな」


「あ、うん。その、あんがとね、修ちゃん」


いつも通りだけど、改めてそう応援され嬉しくもあり照れ臭くもある。明日からの文化祭は一体どうなる事やら。


「おう。さて、俺達も教室に戻るか」


「え、風紀室はいいの?」


「時間的に余裕ねぇな」


「うわ、本当だ。もうこんな時間!?」


随分と長い間廊下にいたもんだ。そりゃお呼び出し放送も流れるわ。お昼食べ損ねた。


一度トイレに寄り、俺達もそろそろ届いたであろう衣装を確認する為に揃って教室に戻るのであった。

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