転生悪魔は揶揄う
もぐもぐ。
二人で虹色の気持ちが悪い配色の果実を食べている。
一人はエルフで反った刃に糸がついたイカレタ弓を持って、一人は黒い煤まみれの鎖に巻かれた女の魔術師だ。
はるか前方に街影が見えてきたくらいで食べるのをやめたアリーシャが話しかけて来た。
彼女は護衛対象に自作の効果が不明の魔法薬を飲ませようとして捕まりそうになった魔術師でその魔法薬は屈強な戦士をしに至らしめそうになるほど凶悪な毒薬だった。それを高貴なエルフの王アルカナ・ラプラス・ユグドラシルが捕らえ家臣にすることにした。
しかし、屈しない強き、精神をもつ女魔術師にしびれを切らした王は秘策を持ち出し一撃で下したのであった。
そう、彼女は食べ物につられて配下に降ったのであった。
彼女は我が盟友アルバート・アレックス・シューシュル王に向けられた刺客だだったのだ!山猿と同じように魔法薬を飲まして殺そうとしたに違いない。しかし寸前のところで気づいた華麗なるエルフの王がそれを阻止。その偉業は世界に伝説として残りつつけるのであった。
-FIN-
「ねぇ、何を見てるの?ねぇ?おーい寝てる?」
「起きている」
「そ、なんか廃人みたいに虚無をみていたから心配になったわ」
「心配するのは家臣のつとめだ」
「してないわ」
「ツンデレか……」
「アンタからお代わりがもらえなくなるじゃない」
「あっ、そう」
「で、なんなの?この果実は。精霊が、異常に反応するのだけど」
「ふむ、そいつはプルパップスから取れる虹色金剛林檎だ」
「は?」
「虹色金剛林檎だ」
「いやプル?何だって」
「しらぬか?」
「全部わからないわ」
「魔界はどうだ」
「なんか邪悪な感じの名前ね、何よそれ関係あるの?」
「そうか、頭が悪いへっぽこ魔術師にもわかるよう教えてやろう。」
「へっぽこ言うな!」
「猿でも分かる虹色金剛林檎だ」
「は?」
今は分からずとも良い。だかこの言葉がいずれ分かる時がくるであろう……ふふふふ。
「そいつはプルパップスから取れる虹色金剛林檎だ」
「さっき聞いたわ」
「まあ、待てぇい。プルパップスは精霊どもが住む世界に生えている木で根っこを動かして移動する化け物だ。自立して動きながら精霊を捕食する植物で、倒すと名もなき虹色の果実を落とす」
悪魔を信じず精霊と言い換えているから精霊って言っているけど、悪魔がすむ魔界に生えて下級悪魔を捕食する気色の悪い木だ。自立して動くし、幹には沢山の目があるし、とにかく気持ちが悪い。
「じゃあ虹色金剛林檎って何よ」
「名もなき虹色の果実じゃ分かりにくいから今つけた名前だ」
「分かるわけないじゃない!」
「我は知っていたがな」
「アンタが命名したものをアンタが知らないわけないでしょ」
「はぁ、これだからへっぽこ魔術師はこまる」
「はぁ!?言いがかりはやめて」
「魔術師なら心くらい読んでみせたまえ。まったく」
「じゃあ、アンタが先にやってみせなさいよ」
「ハッ、できるわけなかろう。何を言ってんだか?」
「ああああああっ!もうっ!」
そんな話が淡々と街に着くまで続いたのであった。