転生悪魔は振り返る
PKが好きだ。
助けてくださいと頼んでくるプレイヤーに無慈悲なトドメを刺す時の優越感も、
PK狩りをしている自称中堅プレイヤーギルドとかいうような雑魚共を逆に追いかけ回して一匹ずつ葬り去って行く時の心臓が高鳴る感じも、
人間側のPvPガチ勢が出払って来た時の緊張感も。
それは人によっては眉をひそめる行為かもしれない。
ドMとかドSとかそんな単直的な言葉では表せられない。
ピンポンダッシュをした時のような高揚感、はたまた好きな子のスカート捲りをした時のドキドキ感か。
些細な罪悪感と大きな達成感がひしめくあの感覚。
悪ガキの頃に戻ったかのような、イタズラが成功したとかそんな感じ。
……いちPKerの心情である。
裏切りのアルカナ、闇討ちのアルカナそんな感じで仲間に呼ばれていたから分かるように正面から戦ったことなんてほとんどない。
悪魔と人間が分かれて戦うゲームだが、人間がものすごい勢い優遇されているゲームでもあるから俺が卑怯なやり方をするのも仕方がないこと。
壱に、人間が切り札を出すまで悪魔プレイヤーは酷く能力を低下させられた状態でステータスを固定される。
Lv 35〈封印/Lv 834〉
HP 265〈封印/24060〉
MP 125〈封印/36800〉
これだ。封印という文字。
本来のステータスが封印 後の数字となるが、人間と戦う際は悪魔プレイヤーは前者のステータスで戦うはめになる。
人間は天使というレイドボスみたいなものを召喚してくる。そいつは光のオーラを纏っている上攻撃しても再生するし召喚されているだけで人間陣営の攻撃力とか防御力が爆上がりするバフとかをかけてるし、無限に眷属を召喚してくる上、そいつらも光属性で悪魔の弱点を突いてくる。
天使が召喚された時のみ悪魔も封印が解除されて大暴れするから人間側は天使を召喚しない方が簡単に勝てる。
弐に、悪魔プレイヤーは魔法を使うことが出来る。それはいい。だが、人間プレイヤーも悪魔と契約することで魔術を使用可能にする。
酷い話だ。能力が制限されて弱体化している悪魔の唯一の長所が魔法なのだ。人間には使うことが出来ない圧倒的な力。
だというのに悪魔と契約すれば下位能力となるがそれでも同じ能力を人間も使えてしまう。なら悪魔プレイヤーは契約しないようにすればいいじゃないか。
ダメだった。悪魔はプレイヤーだけじゃないNPCもいるのだ。
だったら契約した悪魔陣営の裏切り者の悪魔NPCをぶっ殺せばええやろ?頭の中が筋肉か札束しか詰まってないプレイヤー達はNPCを殺しまくったが無限リポップした為皆諦めた。
ほら、悪魔は不遇だ。対処しようがない。
参に悪魔には8つの種類がいる。
幻魔ファントム
禁則ラピス
月光パラドーラ
時闇ラプラス
血屍コフィン
殺戮メアム
醜愚ウゴバ
奏響ムルムス
3の月光パラドーラ以外の悪魔は光属性に弱点があり、一撃で固定ダメージHPの一割を失う。基本的に悪魔とか悪魔と契約している魔術師が敵にいたら光属性の武器で殴っておけば勝てる。
超古参の廃課金でレベルマックスの悪魔族プレイヤーが光属性武器持ちのビギナー30人に囲まれて負けるなんてこともあった。だから悪魔は天使が召喚されて封印が解けた時以外は囲まれないよう逃げまわってコソコソ戦うしかない。
だいたいの悪魔は黒いし早いからゴキブリみたいな感じにも見える。
といくつかはなしたわけだがこの体の主人であるアルカナは時闇ラプラスの血脈だ。血脈、眷属、派閥と8つの種類の各種にも細分化された位があるが。プレイヤーネームの後に種の名前がついている奴が一番偉くて、血脈が2番目で眷属が3番、派閥が最下位だ。
時闇の悪魔は総じて"底の見えない深い闇のような影"と"空間や時間を操る能力"を持っている。
俺がアルカナとして収める国であるユグドラシルは全てが影に包まれ国中が真っ黒なだけでなく国民の行動は影を通して監視されている。
その影はアルカナが展開しているもので範囲内にいる限り悪魔陣営の強化、眷属の召喚、影を使ったテレポートが出来る。
王として配置出来る配下として12体の悪魔を領主として支配地域に配置、裏切って悪魔側についた人間もあわせた悪魔からなる守護兵1万を首都に配置。
1万と言っても数字だけで実際みると100くらいしかいないようにみえる。
それから側近には別の悪魔プレイヤーから貰った幻魔ファントムに属するクレハ、半透明の少女でいつも口の前に手を当ててクスクス笑っているのが印象的だ。側近と言っても幻魔系はありとあらゆる攻撃が効かない代わりに攻撃力もないと言う謎の悪魔なのだが……。
だから正面からの戦闘に弱いアルカナをサポートするために殺戮メアムに属する子殺し人形を召喚できるよう召喚魔法を使うことが出来る。
…………んー。
と考えたが、最後の記憶ではユグドラシルの王座にアルカナを座らせ奏響ムルムスの楽音団に死の奏曲を奏でさせていた筈だ。
色んな楽器を奏でて演奏したり作曲できる奏響ムルムスは結構人気で音楽好きのプレイヤーが挙って楽音団を作って遊んでいた。
オリジナル音楽とか凄く楽しくてゲーム内通貨を払ってわざわざ王座まで呼び寄せて演奏させていた筈だが、いや死ぬわけない。死の奏曲だが悪魔には聞かないし死ぬのは人間プレイヤーだけだ。
たしかにpcに取り付けられたスピーカーから流れてくる音楽にうっとりしていたが。
それが最後の記憶で、起きたら夢にまで見たゲームのキャラクターになっていたわけだ。
わけが分からん。




