依頼完遂と笑激の事実
長かった本当に長かった。遺品のお届け任務。本日完遂です。
これで旅の目的が無くなってしまったけどアタシの冒険は続く。いや続けて見せる。
客室から大広間に場所を移した。クラウさんは単純に考えて母親に父が亡くなったことを伝えるだけで良いと思っていた。
だが概要を聞いた母親は慌てて祖父に報告した。
その結果、夜だと言うのに客室では納まらない人数が集まったからである。
緊張するが渡す物と伝える事は準備済みである。さっさと終わらせてしまおう。
バーン家の現在の当主であるブラウン・バーンさんが代表して話しを聞いてくれるようだ。
因みに、ここに集まっている人達はクラウさんから聞いている。
クラウさんから見て。
曾祖母、祖父、祖母、母、父の兄(当主)と妻、父の姉の7人+クラウさんとアタシだから総勢9人。
客室にはとても入りきれない。いや貴族の客室だから入れるだけの広さはあるけど窮屈になるからこその大広間である。
逆に広すぎて閑散としてしまい寂しさを感じる。
ちょうど良いサイズの場所は無いのだろうか。
アタシの横にはクラウさんがいる。侍女とか使用人とか執事とかはいない、情報漏洩とか難しいことを考えているのだろうか。
「では、報告を聞こう」余計なことを抜いてブラウンさんが話しを振ってきた。
「本日は大勢の人に集まって頂きありがとうございます。報告と言ってもアタシはアントニオさまを直接は知りません。
アタシが知っていることはブラクソン王国の極東から北にある広大な魔物の住む草原を越え、更に北にある、深い森の中の洞窟でアントニオさまと思われる御遺体を見つけました。
御遺体の持ち物からアントニオさまの事を知り、そこに書かれていた願いを読み。お届けにあがりました。
残念ながら御遺体はアタシの力では運ぶことが出来なかったので、身につけていた物だけです。お納めください」
そう言って遺留品を積めた金属箱とネックレス型のキーをクラウさんに渡した。
クラウさんはブラウンさんに金属箱とキーを渡す。おもむろに鍵を開けて中に入っている例の物である、遺言書のような暴露本の初めのページを開いた。
「たしかにこれはアントニーの字だ。馬鹿者め、自分の力を過信しすぎだ。だからこんなことになる」
そう言えば初めのページには『バーン家に届けて欲しい』と書かれていたはず。
悲しみに浸っているところで申し訳ないが、この場から出るのは今しかない。
そう考えて「用件は済みました。アタシはここで下がります」と言って大広間から脱出した。
これで初志一貫、岩山で決めた目標をすべてクリアした。長かった本当に長かった。でも長かったような気がするがよく考えてみると産まれてからしてもまだ1年経っていない。
そう思うとアタシの一生を掛けて目的を果たしてやると、安住の地であった岩山を飛び出したのに1年も経たないうちに目的を達してしまった。
長かったと言う感想は持ってはいけないような気がする。あっと言う間だったがアタシ的には激動の1年だったと思う。
クラウさんではないけど、この思い出だけで残りの一生を過ごせるはずだ。
普通の寿命なら。
そうなんだよね普通の寿命の人なら十分なのだけどアタシは普通じゃないから。
この先どうしようかな。
先程まで居た客室のイスに座って改めて考えている。
元の予定なら遺留品を返却したら、バーン家から立ち去る予定であったのだが、遺留品に興味が無かったクラウさんに追い付かれてしまい、問答無用で客室に押し込まれてしまった。
「見せたい物があるから待ってて」と言われたので先程までの事を考えていたのだが、見せたいものとは何だろう。
だが待てども待てどもクラウさんは戻らず。
でも今度は先程とは違い客室だと聞いているので自由にしている。
時間的には深夜の12時になっている。
ここで普通の人ならこんな時間にと思うかもしれないが、アタシは振動感知で隣室で侍女が待機していることが分かっているので呼鈴を鳴らした。
きっかり5秒でドアをノックされたので入室してもらい、事情を説明してクラウさんの様子を見に行ってもらった。
もちろん角がたたないように寝ているようなら起こさなくて良いと伝えてある。
きっとクラウさんに付いている侍女さんに確認を取って来るだけであろうからと思っていたら。
「ごめん。探している間に寝てた」と言ってクラウさんが現れた。
侍女さんなんてことをしでかすんだ。教育が出来ていないのではないか。と思うが人んちの侍女さんだアタシがつべこべ言える道理はない。
クラウさんが持ってきたのは一枚の精巧な絵である。そこには白い服を着た女の子が描かれている。
でも特殊なところはない、強いて言えば描かれている女の子が普通に見掛ける金髪碧眼ではなく黒髪碧眼なだけである。
黒髪碧眼だって珍しくない。だってクラウさんも黒髪碧眼だしね。ってところでやっと気が付いた。この絵は子供の頃のクラウさんの肖像画か。
絵の中の少女は薄く微笑んでいる。
「クラウさんの子供の頃の絵かな?可愛いね」
そう確認するように聞くと、やはり間違いは無かった。
そして、なんでこんなことを言ってしまったのだろうとこの発言を後悔した。
「この絵は私の子供の頃。そうね。10歳くらいの頃かな。目の色が違うけど貴女とそっくりなのよ。だから私ずっと気になっていたのだけど、絵をもう一度確認して確信したわ。私は貴女が妹のような気がして惹かれていたのかもしれないって。わざわざ父の遺品を届けてくれたなんて、もしかして貴女は私の父の子なの?」
言われる度に潰してきた疑惑が、再び蘇ってきた。間違いなく今後ひと騒動あるに違いない。
だが、マッキーの意識は別の方向に行ってしまっている。
アタシそっくりだと言われた絵に向かって『可愛いね』って。それってアタシがアタシの姿を見て可愛いと言ったってことになるのだよね。なんてナルシスト発言をしているのよアタシ。恥ずかしいよお。穴があったら入りたいよお。
やっぱりズレているマッキーであった。




