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三回まわったらやっぱり

残念ながらと言うか、やっぱりと言うか。

発言権を得るためにビシッと音がしそうなくらい勢いよく右手を挙げたが意味が無いそうだ。


基本はやはり問われるまで待たなければいけない。どうしても話したいのであれば、

3回まわってからポーズを決めなければならないと言うことである。

まわることにより注意を引きポーズの美しさで関心を得る必要があるとのラーディッシュ王子の言葉であった。

そんな話しを聞き真偽を問うためクラウさんに目配せしたが何も反応してくれない。

ところ変わればと言うが、異世界文化とは本当に恐ろしい。郷に入れば郷に従え。今言わないと駄目なことなのだから、何がなんでもやるしかない。


アタシは恥ずかしさに頬が熱くなる事を感じながら3回まわってから両手を胸元に揃えて「ワン」と日本人ならだれでも知っているポーズを決めた。


ラーディッシュ王子もクラウさんもアタシのポーズを見て固まっている。

注意は引けたが関心を得ることは出来なかったのだろうか。だとしたら恥ずかし損である。

頬どころか耳も額も熱くなっている。きっと顔中真っ赤になっている。そうに違いない。


ポーズを決めてから天使さんがワルツを踊れるくらいの時間が経ったような気がする。


とつぜんラーディッシュ王子が吹き出した。その後両手で口元を押さえて肩を震わしている。

クラウさんはアタシを抱き上げてから、再び膝上に座らせた。

そして「やっぱり妖精さんは可愛い」と頭を撫で回しはじめた。


それを見て手では押さえきれなくなったらしくラーディッシュ王子は腹を抱えて笑いだした。その反応から導き出せる答えはただ一つ。どうやら一杯食わされたらしい。

羞恥で真っ赤になっていたアタシであったが状況が判り今度は怒りの感情で真っ赤になった。

その違いをいち早く察したラーディッシュ王子は「まあまあ」とたしなめなるようにジェスチャーをすると正式な方法を教えてくれた。


やはり、一般人が王族に対して話し掛ける方法はない。平身低頭にして話しかけられるのを待つだけである。ただし一度話しかけられたら王族がその場を離れるまでは会話を行って良いことになっているそうだ。

なので馬車内でラーディッシュ王子がアタシに一度話しかけたので、アタシから話しをしても不敬にはあたらないそうだ。

だが夜営地でアタシが仕切る為に話し掛けたのは完全にアウトだったが王子と言う身分を明かしていなかったので許容したと言うことであった。

ラーディッシュ王子は威光を盾に鞭を振るうことは好かないと考えているから許容できたが。他の王族はそうもいかない人物が多いので注意するようにと警告された。

この先、関わるつもりなど無いのでありがた迷惑な話しではあるが「以後気を付けます」と素直に謝った。クラウさんの膝の上からではあったが。


気を取り直して話し掛ける許可を貰う。ラーディッシュ王子が大きく頷いたところで、

漸くアタシの王都での用事と用事が終わったら長居はせずに直ぐにでも旅立つことを伝えることが出来た。

これでバーン家に迷惑を掛けてしまうことはないだろう。

もともとそう言う予定と知っているか知らないのかでは風当たりが違うはずだからだ。

しかもアタシ本人が用事を済ませる前に王族に伝えたのだから効果は絶大であろう。


その証拠にラーディッシュ王子は鼻白んでいる。

でもすぐにそんな表情を消して話し掛けてきた。

「そうか。せっかく妖精さんと知り合えたのに残念だな。でも直ぐとは言っても一週間くらいは王都にいるのだろ」

さりげなく時間稼ぎの言質を取ろうとしているのは見え見えだ。そんな手には乗るものか。

「はい。そこまで長く居る予定ではありませんが、初めての王都なので見て回りたいとは考えています」


「王都には面白い物が色々あるからじっくり見て回るがよいぞ」


よし作戦成功だ。これでラーディッシュ王子はアタシが4,5日くらいは王都に滞在すると思うだろう。でもこんな危険な状況でのんびりとなんかしていられる訳がない。

呼び出しを受ける前に逃走してやる。

そんな事を思っていたら馬車が減速しはじめた。


王都に到着である。

実は3回まわったりしている時にはすでに王都と呼ばれる場所には入ってはいた。

それは長く続いていた田園風景から急に街並みに変わったから気がついたのであるのだが。

そしてここまでまったく馬車は減速していない事をふまえると。

今、目の前にあるのは畏怖堂々と高くそびえる門と左右に延び続いている城壁である。きっとここからが本当の意味での王都であるのだろう。

今までの街並みは王都に住む人々が街道沿いに勝手に作った町だと考える。

そうでなければ馬車が減速しないことの理由にはならないからだ。

一般人が大勢居るさなかを馬車の群れが疾走する。想像しただけでも恐怖である。

もしかしたら保安上の問題かもしれないが、どのみち格差社会が蔓延している国と言うのが感じられた。


減速はしたが馬車は止まらない。タイミングを合わせるように巨大な門が開いていく。

門を入ってすぐにあるのはやはり広場であった。砦の作りと変わりはないようだ。ということはと思い流れる景色を見ていると、やはり広場を抜けた場所に冒険者ギルドがあった。

王都の冒険者ギルドなのだから豪華な作りになっていると思いきや。とても質素に見える。ギルドのエンブレムもおざなりに飾っているだけに見えた。

馬車の進行方向を見ると城が見えた。遮蔽物が無くよく見えるので道は真っ直ぐに繋がっていると考えられる。絶対強者の国と余裕と威圧を見せつける為の造りなのかもしれないが守り辛そうな造りにしか見えないのはアタシがひねくれているからなのだろうか。

そんな感想が口から漏れたらしい。クラウさんが簡単に説明してくれた。


セントラル王国は他国の追随を許さないほどの魔法大国。もし敵が大勢侵入し、この中央通りを駆け上がって来たとしよう。

迎撃する我々は魔法を真っ直ぐに放てばいい。それだけで戦いは終わる。遮蔽物が無いと言うことは身を隠す場所もないと言うことだ。

アタシは先程の火の玉の壁攻撃を思い出して身震いした。

あんな攻撃をされたら散開するしか手がない。

そうなると普通の市街戦になる。確かにこんな一直線の道があっても問題にならないと納得していら。

「そもそも王都にまで進攻された時点で敗けだから意味がない戦術だけどね」とラーディッシュ王子が砕けた口調で言う。


「そうならないように、近隣の国とは仲良くやっている。だから妖精さんもそんなに警戒しないで欲しい」


あら残念。逃げようとしているのバレてましたか。



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