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女神の去ったあと

アタシは気を失っている振りをして目を瞑っている。

1分経ち、2分経ち、5分が過ぎた。

始めは感動しているのかと思っていた。

神様では無いと言われたからと言っても、高位の存在に出会ったのだから。

余韻に浸っているのかなと。


でもいくらなんでも5分放置は酷い。

このままずっと放置なのかしら。

でもいくら兵隊さん達が言う女神様の言葉で自由にさせておいてやれと言われたからといっても、

子供が倒れているのに誰も助け起こそうとはしないなんて、さすがに人としておかしくないかい。

元の世界の日本なら変質者として大騒ぎされた上、逮捕されかねないからしかたがないと思うけど。


振動感知で兵隊さん達が忙しなく動き回っていることは分かっていた。

なんと言っているのかうまく聞き取れないが「女神の……」とたくさんの呟く声が聞こえる。

でも誰も近づいてこない。


放置されていることに耐えきれずにアタシは薄目を開けて様子を伺い、失敗に気がついた。


光魔法のフラッシュが眩し過ぎて兵隊さん達全員が目を押さえながら苦しんでいた。


目を開けたことにより、状況がわかり声が聞き取れるようになった。


女神様はやっぱり白だった。女神様のお尻は危険で危ない。捲れた女神様のマントの中を見ては行けなかった。これは女神様の罰である。受け入れるしかない。女神様申し訳ありません。不埒な我々をお許しください。我々は最後の試練を乗り越えることが出来なかった。だから女神様は去った。無念である。


全ては聞くまい。アタシは理解した。


でもマントの下はパンツではない、水着である。

見られたところで恥ずかしくない。

水着を見られて恥ずかしいならプールにも海水浴にも行けないからだ。

何を気にすることがあるのだろうか。


まともにお尻を見なければ、日中だし少し目がチカチカするだけで済むと思っていたアタシの失敗だけど。

男の兵隊さん達なら分かるが何故かクラウさんまで目を押さえながら苦しんでいるのは理解しがたい。


アタシは迷った末に倒れたままでいることにした。

誰かが倒れているアタシを見てくれないと。まだ女神が居るかもしれないと疑われる可能性があるからだ。

いくらなんでも後数分の我慢だ。



その後、まだ目を瞬かせているクラウさんに助け起こされる事が出来た。

ひとまず放置から解放されて安心したが、アタシはクラウさんを知らない事にするかどうか考えるために茫然自失状態の振りをしている。


知らない振りをするならば。

自己紹介から始めて、今の状況は知っているのに説明を受けるなんて面倒なことをしなければならない。

話しなんてしないで「ここはどこ?あなたは誰?知らない人だらけで怖い」と叫んで逃げても良さそうだが後で面倒になりそうだからそれもしたくない。

やっぱり全て見ていたから知っているとした方が良さそうだ。その方がすっぱり別れることが出来そうな気がする。


そうと決めたら行動開始。

わざとらしく瞬きをたくさんしてからクラウさんの瞳を見つめる。

「クラウさん。あ、クラウディアさんですよね。初めましてアタシはマッキー。冒険者ギルド所属白い風のマッキーです。

世界の王にまつわる人越しに見ていました。あの方はアタシからは抜けてしまわれたようです。

起こしてくれてありがとうございます。もう大丈夫です。

心配して頂きありがとうございます」

ちょっとわざとらしいかと思いつつ、女神はアタシの中には居ないことを確実にアピールした。


クラウさんはアタシを暫く見つめ返してから。

女神がもう居ないことを理解したように頷き。

「クラウで良いわよ。冒険者のマッキー。そっか、もう行ってしまわれたのか。お礼も殆ど言えなかったな。残念だわ」


そう言いながら離れると思いきや、逆に抱き寄せられた。

びっくりしてしまったけど感慨に浸っているのかなと思って、抱き寄せられるに任せていたのだが。

周囲から注がれる視線が痛い。

兵隊さん達は黙って抱き合う二人の少女を見ているからだ。

5分経ち、10分過ぎてアタシは視線に耐えきれなくなりクラウさんをタップした。

そこでクラウさんも状況を認識したのか抱き寄せる力が弛んだ。

でも離してくれない。

そのまま抱っこ、今度はお姫様抱っこに持ち直されてしまい、慌てるアタシを無視して兵隊さん達に近寄ると。


兵隊さん達に、もう女神は居ないことを説明してくれた。

そのあいだもアタシは抱っこされたままである。

アタシは困惑。

兵隊さん達は失意に打ちひしがれている。

クラウさんは兵隊さん達に対してフォローはしないようだ。

アタシを抱っこしたまま場所を移し夜営地の外れにまできた。

そこでようやく降ろされてほっとしたが、両肩を捕まれた。

クラウさんの表情が平民に命令しなれている、それこそよく言われる貴族のようになる。

嫌な感じがすると思っていたらやっぱり。開口一番。

「マッキー。貴方が天涯孤独の身なら私と来なさい」

こんな外れにまで来て何かと思えば。いきなり命令ですか。

これが兵隊さん達が言っていたクラウさんの高飛車モードなのかなと思っていたら。

「私は貴方が気に入ったの。天涯孤独の身ならばしがらみは何もないはず。私は貴族。

冒険者の明日の糧をどうするか悩む日々とは違い安定した生活と自由を保証するわ。だから私と来なさい」

それを聞いてアタシはがっかりした。

貴族は金を出せば何でも手に入ると思い込んでいる生き物なのだと。

元の世界で読んだ異世界トリップの話しに出てくる高慢な貴族のように。

クラウさんの様に冒険に夢を持っている人ならば違うのかもしれないと思っていた。

だからアタシは。

「ごめんなさい。アタシにはしなければならない事がたくさんあるの。だから一緒には行けません。

それに安定した生活というのは何かに縛られる生活です。そこに自由はありえません。

アタシは自由が好き。

だからアタシは安定した生活よりも不安定でも自由を選びます」


アタシがそう言い切ると、とたんに表情が崩れる。


『生意気な平民め。叩き斬ってくれようぞ』


そんな幻影を見たような気がした。

アタシは思わず身構えてクラウさんをみ上げると。

大粒の涙をポロポロ落としていた。


えっと高飛車モードはどこに行ったの?


アタシは戸惑うことしか出来ないでいた。




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