プロローグ.『お前は何者だ』
けたたましく鳴るサイレンの音が、ズキンズキンと今も尚、脳を揺らすように響き渡る。
雨粒が、目玉に直撃し続けるが、もう何も感じなくなっていた。
真っ赤に染まる世界の中で、黒澤 零は、理解した。
――あぁ、そうか、俺は死ぬのか。
思い返せば、良い人生だったとは言えない。
迷惑をかけっぱなしの人生だった、満足には程遠い。
死んだら、人はどうなるんだろう?
天国とか地獄とか、本当にあるのかな?死後の世界ってあるのかな?
輪廻転生...あ、そういえば、異世界転生って、本当にあんのかな?
異世界転生...いいなぁ、転生したら、もう一度、人生をやり直せるなら、今度は何かを成し遂げる、凄い人になりたいな。
そう、例えるなら、
「――『英雄』...と...か」
その一言が、黒澤 零の最期の言葉だった。
『――あなたは、『英雄』よ、ルイ。』
金色の、輝きを放つ光の声がそう言ってきた。
「――『大罪人』ルイ・レルゼン、武器を捨て投降しろ。既に、お前は包囲されている。」
黒色の、邪悪で殺意のこもった声がそう言ってきた。
――こんな、ハズじゃなかった。
「――あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
血が、溢れ出す。
真っ赤な噴水が土手っ腹から吹き上がり、空前絶後の激痛が腹部を中心に広がり始めた。
「ぐぎぁやぁああああ――」
「お前....ふざけてんのかぁ!!!」
再び、剣の矛先が暴れ回る零の背中に突き刺さる。
「――ぁ!っが、あぁ、あああああああだああああああああああああああああ」
痛い、痛い、痛い、痛い、
なんで、俺が
こんな、
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
「な、んで...こんな、こと」
掠れた声を振り絞って、捻り出した言葉は疑問の投げかけだった。
溢れる血を抑えるので精一杯で、今にも意識がどこか遠くへ飛びさそうなのは踏ん張って、疑問を投げる。
「なんでこんなことを!」
「ふざけるなぁあああ!!!!」
「――っ!」
そんな零の言葉を覆す程の、無情な怒号が、瓦礫の山の中で響き渡る。
「『大罪人』の分際で、何を惚けたことを宣う!お前は、世界の災厄だ!この程度の痛み、お前の被害者の苦しみに比べれば話にならない!!!」
――こんな、異世界転生は、聞いてない。
お前は、何者なんだ、"ルイ・レルゼン"。




