修学旅行10
「えっ?」俺は耳を疑った。冬馬さんが、沢田さんの濡れ衣を晴らしたのに、その濡れ衣を被せたのが、冬馬さんだったからだ。
「どう言うこと? 冬馬さんが沢田さんを押したってこと?」
「そう。私が沢田さんを押したの。」
聞き間違いではなかった。
「何故押したの? 他にも聞きたいことあるけど、まずその押した理由、教えてくれるかな?」
何故証言したのか、何故それを俺に教えてくれるのか。聞きたいことが山ほど出てくる。
「それは、普通に理沙ちゃんを困らせたかったから。」
友達を困らせたかったってことか。
「友達だよね? 船木さんとは。2人の間になにかあったんだね?」
「友達だから余計だよ。理沙ちゃん、私の彼氏を寝取ったんだよ。だから、沢田さんを押して、理沙ちゃんにぶつけたんだ。」
「船木さんが? そんな…彼氏の翔太さんとラブラブじゃないか。それなのに?」
「私が聞きたいよ。それなのにだよ。私の彼氏と浮気して、私はそれで別れたのに、理沙ちゃんは、彼氏と仲良くしてる。そんなの許せる?」
「だから、やったの。ただ私の力だと、たいしたことなかったけど。」
「船木さんが…信じられないけど、証拠はあるんだよね?」
「当たり前だよ。なかったら、押すような真似しないし。」
は〜怖っ。あんなに仲良くしてるのに、別の男子、しかも友達の彼氏と関係持つなんて、うわぁ。俺は恐怖を感じた。
「それはわかったけど、沢田さんは、可哀想だよ。船木さんに抱きついたって噂立てられるじゃんか。」
「別に、沢田さん変態だから。噂立っても本当みたいなものだから。例えば晴人さんだったら押さないから。」
「冬馬さん沢田さんに何かされたの? 偏見で変態とか言ってるんじゃなく?」
「私の体操服の匂い嗅いでたの。それ見たの。気持ち悪いでしょ?」
「それは…うん、気持ち悪いね。トラウマになるよな。そりゃ。」
「そう言うことだから。修学旅行で大勢いるから、聞かれたらまずいから、もうこの話終わりにするね。」
「ちょっと待って、でもなんで、それを俺に教えたの?」
「理沙ちゃんに気をつけて欲しいから、それと普通に誰かに愚痴りたくて、晴人さんなら信用出来るから。」
「濡れ衣晴らそうと頑張ってた姿見たらそう思うもん。それじゃ」そう言って彼女は、人混みに紛れた。
ふぅ、色々聞かされた。いや聞いたっていう方が正しいな。
人間不信になりそうだ。
それは、冬馬さんもか。最初会った時は、凄い礼儀正しい女の子だったのに、感じが少し違った。
さて、穂乃果に癒してもらうか。
早く戻れって言われてたしな。
でもちょっと待てよ? 冬馬さんの話が、全て正しいって考えるのは、早計だよな? 何も俺は他の当事者には、聞いてないし。
しかも、確認するのは、かなりデリケートな話だし、実際目撃が事実だとしても、沢田さんの痴漢の意図は、なくて、違った訳だしな。
そう俺が思うのは、自分も噂の被害者になった事があるからだ。
中学頃…思い出したくないけれど。
あれ? 穂乃果の隣にいるの、船木さん? ちょうどいいところに。
「よっ、戻ったよ。」
「晴人君お帰りなさい? 今理沙ちゃんと話してて。」
「こんにちは、グループなのにあんまり絡めなくてすみません。」
「あーいえいえ、あの船木さんに聞きたい事があって、彼氏の翔太さんとは、仲良い感じですか?」
「えっ、ちょっと待って、この人地獄耳? さっきの会話聞いてた?」
「晴人君、さっき理沙ちゃんと、彼氏の束縛が凄いって話してたんだよ。」
凄い偶然だな。いきなり吹っかけて正解だった。けど、自分がそのことに、関わっていいものだろうか?
しかし、気になるので、聞くことにした。
「その束縛って最近? それとも船木さんがその…浮気したとかで、酷くなったとか?」
「はぁ? 私浮気なんてしてないし! ああ、ごめん、心配で聞いたんだよね。最近だよ。浮気なんてしてないのに、束縛強い。」
「あんまり酷いと、別れようかな〜って穂乃果ちゃんに相談してた。」困った様に船木さんが言う。
「束縛酷いと上手くいかないよね。私も気をつけなきゃ。」俺を見つめて穂乃果が言った。
そんな見つめるなよ。俺を束縛しないように気をつけようって意味だよな。
船木さん、浮気の件全否定だな。どう再度聞けばいいか。
「最近、冬馬さんがちょっと変だなって思ってて。船木さん、冬馬さんと何かトラブルとかなかった?」
「最近? 彩綾とそんな仲良いの? あーそれか、彩綾の元彼が私にしつこい件かな。」
「ってかさ、晴人さん、私に興味深々? めっちゃ心配してる?」
「あー、そうだ。理沙ちゃん、晴人君と会話すると、束縛君が嫉妬するかもよ。彼氏のとこ一旦戻る方がいいよ。」
「ひぃー…だな。一旦彼氏のとこ行ってくる。」
あー情報が…穂乃果の邪魔が入って調べ尽くせなかった。
「そんな凄いんだ。束縛。」
「みたいだけど、私がさっき介入するように言ったのは、晴人君が理沙ちゃんに好意を持たれそうだったからだよ。」
「えーさすがにないだろ?」
「それがねぇ、晴人君。私の友達がみんな晴人君を好きになっちゃうんだよ。だから怖くて。ほら、可憐ちゃんもそうだったでしょ?」
「あー、でも、1人じゃん。そんな惚れられる訳ないよ。」
俺は穂乃果が、買い被り過ぎてると思って言う。
「ヒトリジャナイヨ、サンニンダヨ」穂乃果が、片言で言った。
「3人も? 1人は可憐だよな? 他に? 美咲も入ってるの?」
「入ってるよ。」
「あと1人誰だろ?」
「とにかく、4人目は、ほんと避けたい。トラウマになってるから! 友達みんなが、晴人君を…はぁ怖い。」
「いや、穂乃果そんなの偶然だよ。例えばさ、100人みんなが俺を好きになる。なんてあり得ないだろ?」
「晴人君の言ってる理屈は、分かるよ。けどさ、100人も友達出来ないよ。仲良い友達が、ほぼだよ? なんかバフがかかってるみたいだよ。」穂乃果がため息を吐いて言った。
「バフかー。面白いこと言うなぁ。」俺は笑って言う。
「晴人君、笑い事じゃないよ。もう、友達から、晴人君遠ざけなきゃ。」
「まぁ、でも思い当たる節はある。モテる時は、同時にモテたり、好きな人が出来ると、余裕が出てきてモテたり、女友達繋がりでモテたり。」
「そう言うのあるよね。」俺は言った。
「晴人君、自覚あるなら気をつけて下さいね?」
「でもさ、俺も男友達作ったら、みんな穂乃果好きになるかも?」
「そうならないように、私も気をつけるから、晴人君、私の友達とは、関わらないでね。」穂乃果が笑顔で言う。
「晴人君、自覚あるなら気をつけて下さいね?」
「そんな難しいこと言うなよ〜。大体向こうから絡まれたら?
どうするんだよ?」
「冷たくあしらいましょ? って無理か。冷たくあしらう人だったら、私もす…凄い尊敬しないし。」
「うん、さて話は、食事してから自由時間でまた話そう。」俺はそう提案した。
「今もう、自由時間みたいなもんだよね。周り気にしないで、私たち話してるし。」
「だな。」彼女の意見に同意した。




