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王と旅人  作者: 遠衣 青
名もなき火に、喝采を
1/4

プロローグ 旅人

挿絵(By みてみん)

街道はまだ濡れていた。


轍の底に残った空が歩くたびに小さく揺れる。雲の切れ間からこぼれた光が、遠くまで続く道をところどころ白く照らしていた。


町の門を出たところで旅人は一度だけ足を止めた。


背後から聞こえていたもう一つの足音も止まる。


けれど、振り返らなかった。


しばらくすると、その足音は町のほうへゆっくり遠ざかっていった。


肩の荷を背負い直す。


行き先は、まだ決めていない。


知らない町がある。


見たことのない景色がある。


名前も知らない花がどこかで咲いている。


この世界には、まだ知らないことが多すぎた。


旅人は顔を上げた。


そして、誰の足跡も残っていない道へ、ひとりで歩き出した。

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