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元エリートおっさんの配信ダンジョン~違法迷宮は調子に乗った奴から全滅する  作者: 夷摺木 帳(イスルギ トバリ)


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3/9

ボスをガチャ召喚したら凄いのがキタ

 手のひらに収まる白いキューブ──ダンジョンコアを視線で捉えた瞬間、空間に淡い光が走った。


 次の瞬間、目の前に立体映像が展開される。

ホログラムで再現されたのは、俺のダンジョンだ。


『……ぶさいくな迷宮ですね』


「うるせいやい」


 ラグナは俺の服の裾を掴み、背伸びするようにホログラムへ指を伸ばす。


『直線が多すぎるんです』


「……ダメなのか?」


 よく遊んだ2Dの探索ゲーム、格子のように組まれたマップを思い出す。


『直線は、向こうまで見渡せてしまいます』


 そこまで言われて、ようやく気づいた。

 直線通路は安心だ。だが同時に、不安でもある。

 先が見えるということは、常に警戒を解けないということだ。


「……緊張を強いる通路しかない」


『常に身構えるのは、マスターも魔物も疲れます』


 ラグナは即答した。


『直線通路ばかりでなく、曲線を混ぜると影が生まれます』


「もしかして、その方が休憩しやすくなる?」


 彼女は胸を張る。


『ラグナは断言しましょう。ここ一ヶ月、肩こりに悩まされたマスター の寝起きが爽快になると』


「おい、ひと月も放置するんじゃないよ」


 金髪が、ぴょこりと揺れる。

 腕を組み、見下ろすように──いや、実際は見上げながら、ラグナは言った。


『お礼を言える男子はモテますよ』


「……教えてくれてありがとう」


『へへっ』


 ……くそう。 可愛いのが腹立つ。

 俺は軽くお腹をポスポス殴られながら、ホログラムを操作する。

 ボス部屋をタッチすると、ウィンドウが切り替わり、購入リストが表示された。


 階層ボスを、選ぶのだ。

 ラグナが、興味深そうに覗き込んでくる。


『ほほう、ようやくですね』


「ダンジョンスコアは有限だからな。

 これでも、ちゃんと計画立てたんだ」


『強いボスを買うため、せこせこ貯めていたと』


「あまり強すぎるのは無理だぞ。俺が勝てないからな」


『レベルが下がって気弱ですね。汚泥粘性体(マッドスライム)とか止めてくださいよ。ラグナも臭いのは御免です』


「わかってるよ。この前は、悪かったって」


 画面を流し見しながら、俺はある一体で指を止めた。


 ──これだ。


 戦闘兵装に包んだ、引き締まった体躯。

背には大鷲の翼。 槍を携えた、小柄ながらも明らかに強者の風格。


『一階層目にしては、慧眼ですね』


「だろ?」


『特に胸が大きいです。マスターにもそんな趣味が』


「うぉい、誤解されるから!

 てかこいつ雄《オス》だろ、たぶん」


 ニヤつく少女に急かされながら購入を確定する。


 ──『大鷲の鳥人(バードンマン)を購入しました』


 天井からラグナの声でアナウンスが流れた。


「うぉっ!?」


 途端に、キューブから突き刺すような光が放たれ目が眩む。


『あ、確定演出』


 ……え、なに?


 鋭いスパークが跳ね回り、衝撃が駆け抜けた。

 虹色に変化する輝きが荒れ狂い、反射的にラグナを抱き寄せ、身を守る。


 ──ヒュンッ!


 見事な槍さばきで、光が薙ぎ払われた。


 ──ズシャリ。


 ゴツい鉤爪が石床を砕き、大きな(・・・)影がゆるりと降り立つ。


 現れたのは、画面の姿とは少し異なる軍服をきた男。

 大鷲の翼をバサリと広げ、俺を射抜くように見定めた。

 肌が痺れるような期待感と威圧に、ゴクリと喉が鳴る。


「……でかいな」


 ダンジョンコアのカタログ一覧は『平均的な種族像』に寄せてるのだろうか。

 それとも、階層ボスは特殊個体が召喚されるのか。

 ふわりと舞い落ちる鋼のような羽根に、格上の力強さを感じた。


 つい、と逸れる男の視線の先には、目を輝かせたラグナの姿。優しく翼を折りたたみ、優雅に跪いてみせた。


「|HELLO WORLD《ハロー・ワールド》、天落の台座。

 雷雲が一席、これよりはマスターの旗下に」


『……おお』


「うぉい!マスターは俺だよ、こっち。

 ラグナもその気になってるんじゃありません!」


『むむ、惜しい』


「……で、ありますかな」


 いや、お前も何残念がってるんだよこのロリコンめ。

 大鷲の鳥人(バードンマン)は俺に視線を移すと、ゆっくりと立ち上がり敬礼した。


 口元はマスクで覆っていて表情は読めない。

 目にはゴツい飛行ゴーグルをかけている。


「ふむ。では、お主が管理者か?」


「……ああ、そうだ。よろしくな」


『……やべぇ、今の俺じゃ勝てないかも』


「ラグナさんや。心を読まないでもらえますかね」


 カカっと快活な笑い声が降りてくる。

 大翼を揺らしてバードンマンが少し砕けた態度を示してくれた。


「ふむ。マスター方は仲がとても宜しいですな。

 よい職場に就職できたようです」


 第一階層の新任ボスは、何気に現実的なやつだった。

 俺は苦笑いしながらも一歩前にでる。

 捕殺者の瞳孔が、興味深げにじわりと滲んだ。

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