第10話 成功 X 失敗
——翌日の放課後。
レイに教えてもらった集中力をアップさせるトレーニングをするランセたち。
最大心拍数の90%ぐらいの全力の運動を、短い休憩を挟みながら何度も繰り返す。
「ゼエゼエ、んっはあー!ゼエゼエ」
始めたばかりでやめたくなるほどきつい。
時間感覚が引き延ばされ長く感じる。
「はあはあ、これっ、はあはあ、キツすぎ」
「ゼエゼエ、ゴホゴホッ!」
息も絶え絶えなピノとビート。
「はあはあ、これ、運動不足のやつがいきなりやっていい運動なのか?」
「はあはあ、わかんない、ダメなやつかも」
同じくエレルとズコット。
「8、9、はあはあ、10秒たったわ、あと5本! 行きましょう!」
時間管理をしつつディタが言った。
「「「うおおー!」」」
ヤケクソで取り組む6人だった。
なんとかトレーニングメニューを終えて転がる一年生たち。
「「「もー動けん」」」
全員が言った。
しばらく休憩して呼吸を整えると、今度は目を瞑ってイメージするトレーニングを始めた。
目を閉じ、目の前に大きなイチゴが浮いてるところをイメージする。
それを魔力を使ってギュッとつぶす。
果肉が崩れ、果汁が溢れ出し、ボタボタとしたたり落ちる。
これをそこに本当に存在しているかの様にありありと思い描き、イチゴの香りを感じられるようになるまで続ける。
「あーなんかイチゴ食べたくなってきた」
「んー、いい香り」
目を瞑り、香りをかぐように鼻から息を吸いながらピノとディタが言った。
「練乳の香りもしてきた」
「クリスタリーゼ、それなんか違う気がする」
目を瞑りながらビートとエレルが言った。
「ただただ、真っ暗です」
「ランセは実物を握ってみた方がいいんじゃない?」
同じくランセとズコットが言った。
そのようなトレーニングを一ヶ月続けた。
——結果。
「やったー!」
ランセはボールを24センチまで圧縮する事ができた。
すぐさま長杖を取りに行くと、またがり力を込めた。
ふわふわ浮いた。
あたりを飛び回るランセ。
「飛べたー!」
着地し芝生のグラウンドに大の字で寝転び喜びを表現する。
「ランセちゃんおめでとう」
「ランセやったね」
祝福するピノとビート。
「まーこんなの普通だろ」
「いやいや大きな進歩でしょ」
「努力の力ですわ」
エレル、ズコット、ディタがそれぞれ言った。
「よかったねランセ、これで故郷に帰れるよ」
ピノが言うと、
「うん、ありがとー。これで故郷のみんなとまた遊べる。勉強ともさよならできる」
ランセが答える。
ピノが二、三度まばたきした。
「故郷に帰ったら、もうここには来ないつもり?」
「うん、だってもうやることはやったし、故郷のみんなから手紙が来て早くまた遊びたいって言われてるし」
嬉しそうなランセ。口元が緩み切っている。会話も若干ズレた方向に着地している。
そして体操着のポケットから手紙を取り出しピノに見せる。
「見て、これが手紙。早く遊びたいって書いてあるでしょ?」
差し出された手紙をまじまじと見た。
きっちりカクカクしたピノの字とは違って、可愛らしい丸みのある字体で思いが綴られていた。
その後、手紙を丁寧に折りたたむとランセはまたポケットに戻した。
「もうここには来ないってことは、私たちとはもう遊ばないの?」
なんてことない表情で聞くピノ。
ランセは浮かれ気分で踊っていてピノの話を聞いていない。
「フンフ、フンフ、フーン、誕生日〜」
鼻歌まで歌う始末。
「ちょっとランセ、ちゃんと話を聞いてよ」
ピノがもう一度言うが、ランセはピノの声が耳に入っていなかった。
それを見て、ピノが少しすねたように言った。
「わかった、もういい。友達のために早く故郷に帰ってあげな」
そしてピノは校舎に向かって歩き出した。
「ちょっとランセちゃん、ピノちゃんの話をちゃんと聞いてあげてよ」
ビートが言った。
でもランセは自分の世界に入っていて、まるで声が耳に入っていない。
それを見たビートは困惑した表情をした後、ピノを追いかけた。
「おいランセ、ちょっと落ち着けよ」
エレルが言うも声は届かなかった。
ランセは喜びが大きすぎて、周りが見えなくなっていた。
「わーい」
そのまま走ってどこかへ行ってしまう。
「ちょっと浮かれすぎじゃない、ランセのやつ」
「ピノさんが可哀想」
「まったく、なにやってんだよ」
次の日、ピノはランセと口を聞かなかった。




