異世界だけど優しい世界だった
***
はた、と自然に目が覚めたのでよくわかんないまま、周りを見渡すとなぜか俺は異世界に来る前に散々着ていたスーツ、何時も同じ色のネイビー色のネクタイ、親父に買って貰ったネクタイピンをつけていた
・・・一瞬、異世界に行くなんて変な夢を見ていたのかと思ったのだが俺のすぐそば、右の方に俺が着せられたオレンジ色のドレスを身につけた少女がいた
その少女はやはり紫色の髪の毛にくりくりした目を瞬かせ、俺の方を見ていた
『君は、ミーシェちゃん?』
変に思われるかも知れないが、俺は真っ先にそう聞いた
あ、俺はロリコンとかじゃ無いからな?!鏡で見た姿やガラスに映る顔にそっくりだったのを憶えてただけだからな!
その証拠に少女はこくりと大きく頷き、にっこり笑った
『うん、ミーシェです!お兄さんは?』
『あー・・・昇次、で良いよ』
『ショージお兄ちゃん!ミーシェの夢に、なんで居るのぉ?』
『ミーシェちゃんの、夢?』
『うん!ここはね、ミーシェの夢の中なの!ほら、ユニコーンだっているし甘~いお菓子だって出せるわ!』
そう言うとミーシェちゃんは両手を器のようにして上に向けて掲げた
するとあめ玉がどこからともなくぶわーーーーっと降ってきた
あめ玉が降るとか非常識で、しかも当たると痛そうな物だが全然痛いなんて事無く
寧ろ今本当に当たってたのかと思うほどだった
ただちょっと条件反射で目を咄嗟に瞑ってしまうがそれはしかたない
ヒヒーン、とどこからか一角獣であるユニコーンが走ってきて、ミーシェちゃんの前に来てなんとそのまま座り込んだ
・・・角が生えてるところを除けばユニコーンは唯の白い馬に見えるのだがなぁ・・・
ミーシェちゃんは自慢そうにエッヘンと胸をはった
まるで褒めて欲しそうだったので、俺は褒めてあげた
『えへへー、ショージお兄ちゃんミーシェの夢に何のご用時?』
『あ・・・えっと、俺ミーシェちゃんの体を借りてるんだ』
『ほえ?』
素直に事情を説明すると、ミーシェちゃんは何だか凄く嬉しそうにその場でジャンプしたり、俺の手を取ってぶんぶん振り回したり、抱きついてきたり・・・何故か、凄くはしゃいだ
『お兄ちゃんが新しく出来たわ!わーい!ミーシェの夢で何時も会えるね!』
『・・・え、えっと・・・う、うん?』
『ミーシェね、もう一人お兄ちゃん欲しかったの!魔族は、特にドラゴン族はね、男の子一人、女の子一人しか出来ないの!ハーフでもそうなの!魔力が大きすぎてそうなっちゃうの!だから、弟ももう一人お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、いないの!』
『へぇ、そうなんだ・・・』
『うんー!だから、ルー兄様もすっごく喜んだでしょぅ?ミーシェも、嬉しい!』
ルールウドくんをルー兄様、と呼ぶのか・・・
お兄様とか丁寧に読んでた方が無難だと思ってて、そこで違うと違和感を憶えられたのかも知れないな・・・ルールウドくん、賢いし
俺は勝手にミーシェちゃんの体に乗り移ってしまった形になってるのを謝ったらミーシェちゃんは寧ろ共通の秘密を抱えてるみたいで嬉しいといってくれて、さらにミーシェちゃんの苦手な礼儀作法の授業や難しくて退屈な授業を変わってくれるといいなぁっといってきたので思わず苦笑いしてしまった
・・・まぁ気持ちは分かるが、ちゃんと受けないと駄目だよと言い聞かせたらふくっと頬を膨らませてルールウドくんと同じ事言ってるといわれてしまった
ノートを貰ったから、それを通して沢山お話しすると約束をして、どうしても嫌だったらたまに、体を交換して一緒に勉強をしていくと約束させられてしまった
『あ、ミーシェそろそろ起きる時間!』
『え、そうなの?と言うかどうやってそれが分かるの?』
『ミーシェの腕とショージお兄ちゃんの腕に同じ数字浮かんでるでしょ?』
『・・・ア、時計だね。なるほど・・・』
『これが、7,0,0ってなるとミーシェ起こされる時間なの!』
7時起床なんだ・・・子供なのに、もっと早くないんだ・・・
俺が子供の頃なんて5時に起こされたけどな・・・
実家が農家なので、早く起こされたんだよ・・・手伝わされるためにもっと早く起こされたこともなくはない
そんなこんなで俺は夢の中で、ミーシェちゃんとお話をしたのだった
***
「お嬢様、おはようございます」
朝起きると昨日カートを押してきたメイドさんが俺を起こした
ミーシェちゃん・・・まだ体を貸して貰うことになりそうだね、ゴメンよ・・・
でも、俺もルールウドくんに教わること沢山あるから、まだミーシェちゃんの言う苦手な授業や礼儀作法は変わってあげられないよ・・・
後マジで俺が変わって欲しいんですけど、今、現在!
緑色液体エックスが!今日も朝からコイツとの格闘が!!
笑顔のメイドさんが今だけ恐怖の対象になる
助けて・・・(泣)あぁ、不味い・・・この後味最悪の兵器と呼んで差し支えの無い液体エックスを飲み下すのは、朝からはきついっすよ・・・><
無理して何とか飲み込む、飲み込んだ先から後味で甘みがきて渋みも同時に来る
あー・・・しんどい・・・
そしてその後昨日と同じくドレスの選択に移った
今日はシックな黒がベースのドレスと、黄色い明るいドレスの二択だった
黒のドレスはワンポイントに、白い刺繍で薔薇の絵がありレースがついてて何だか大人向けな感じのドレスだと思った
少なくとも夢で会ったミーシェちゃんのような年齢の子供の着るドレスじゃ無い気がするんだが、まぁメイドさんが選んだのだし、良いんだろ・・・多分・・・
因みに俺はそろそろジーパンとかジャージが恋しくなってきました
ラフな服装の方が、一々汚さないか気にしなくて良いよ、本と・・・
貴族の子女って大変だよね・・・うん・・・
ドレスが汚れでもしたら大変だと、食事にも気を遣わなきゃいけないし、迂闊にはしゃげないよ・・・はしゃぐような歳でも無いけど!夢の中のミーシェちゃんは俺に会ったときめっちゃ跳んだり跳ねたり、抱きついたりしてたけれど・・・
まぁいいや、服は相変わらずお任せで、指ぱっちんで着せて貰った後、髪飾りも幼女メイドちゃんが適当に持って来てつけた後、二人が下がったので俺はルールウドくんの所をイメージし、取っ手を引いた
ガチャッと開けるとそこにはルールウドくんとドラゴンパパさんがいて、エルフママさんが黄色い飲み物をカップに3ついれてあるお盆を持っていた
「あ、ショージ。」
「・・・えっと、ルールウドくん、もう話したの?」
「うん。こういうのは早いほうが良いからね。父様、母様、ミーシェの体を借りてるけどショージは異世界から来たんだよ」
「「異世界!詳しく聞きたい」」
すんなり受け入れてるけど少しは疑わないのか・・・?
否、子供の言うことだし、信じてないのかも知れない・・・適当に、話を合わせてるだけだったりしてね・・・?うん、そっちの方が可能性はあるね
と、思っていたらドラゴンパパさんが手招いてきたのでその近くに行ってみると大きく力強い手で、頭を撫でられた
「知らないこととは言え、昨日一昨日はすまなかったな。話はルールウドから聞いてるから、異世界の人間での生活を楽しんで行ってくれ。」
「あら、貴方。子のこの体であるミーシェは魔族ですわ、魔族の生活、ですよ。体事態はミーシェのですから魔法も使えるはず、魔法を憶えてみて楽しみましょう?人間は精霊術しかできないんですもの!どうせなら、人間で出来ないこと沢山しましょうよ」
「あぁ、それはいい!もう一人の息子が出来たのだ、沢山旅行へ行くのも良いな」
「あら、仕事があるので貴方は駄目ですわよ?」
「仕事はウィルソンに任せるのだ、俺はなんとしても息子達と旅行行くぞ!」
・・・なんて脳天気な・・・自分の子供が、変な病にかかり二重人格になってるんだぞ?良いのかそれで!?俺は思わず目を見開いて驚いていた
「え、でも俺ミーシェちゃんの体を勝手に・・・」
「まぁ始まりはミーシェの不注意だしな。それにこの世界では何が起こっても可笑しくないぞ?むしろショージといったか、もう一人の息子が出来て喜ばしいくらいだぞ?」
「えぇ、私たちは男女一人ずつしか子が出来ないので貴方という家族が出来て朗報ですよ」
「・・・・・・い、良いんですか・・・こんな、身元も分からないようなのが・・・大事な子女さんの意識を奪っているのに・・・」
俺は不安に思うことを聞いたら、頭をもっとわしゃわしゃと乱雑に撫でられた
ドラゴンパパさんが力加減しているのは分かるんだが、若干痛いのでもうちょい何とかして欲しいところではある・・・今はそんなことより大事な話してるのでその事は黙るけど
「問題ない。それにショージは向こうで亡くなっているときいたぞ?虫下しなどを飲んで、万が一向こうの世界へ帰ってしまえばそのままきっと亡くなってしまうだろう。そのような事はさせられん、この世界でよければ君が好きなようにこの世界で生きると良い。居場所もある程度の地位も私たちが用意する。体事態はミーシェの物だしな。」
「そうですよ。ミーシェには後で言い聞かせておきますわ。あ、後人間の口に合う物を用意させるから、何でも言って頂戴ね。グリーン茶は、口に合わないみたいだし」
あ、それは純粋にありがてぇ・・・液体エックスはもう飲まずに済む、それだけで大分助かる
思わず一寸安心するとルールウドくんがにこやかに、でも頼もしそうにしていた
「ね、ショージ。いったとおりに喜んでくれただろ?父さんも母さんも細かいことに拘って五月蝿く言うような心の狭い魔族じゃないんだよ。それよりショージ今日は魔法の勉強しようか。書庫へ行こう?弟に教えるのはお兄さんの特権だよね」
ルールウドくんが手を引いてドラゴンパパさんの手から俺を逃がした
うーん、それで良いのか?とも思うけど魔法を憶えてみたいのは、確かなので嬉々として手を引かれるまま歩いて行った
昨日の書庫へと来て、昨日の復習をして、ルールウドくんに理解してるのか確かめて貰ってから魔法のことに移った
礼儀作法は魔法の後にしようと言われたのでうなずいた
4時間、途中途中で休憩したとは言え基本的に体力も精神力も魔族の方が上だからと簡単に魔法を使ってみせるけれど、俺には少し難しくて大変だった
「ショージは魔法を使うときちゃんとイメージが出来てないからだよ。」
「イメージしてるけど上手くいかないんだよ・・・」
「そうだなぁ・・・あ、ショージの元の世界での小さい火を使うイメージで、フレアっていって見て。」
「小さい・・・」
小さくて手頃な火と言えば、ライターやマッチかな?
俺は言われた通りに想像し、指先に小さな火を出した
「できた!」
「・・・ショージの世界の小さい火は可愛いんだね」
「もっと大きいのを想像した方が良いのかな?」
「うーん、もう少しくらい大きくしても平気だよ?」
そうはいってもここ書庫だからなぁ・・・火気厳禁、湿気も厳禁だぞ?
書庫で魔法を使って良いってどうなんだと思わなくもないが、それは最初にルールウドくんが実際に小さい規模の魔法なら問題ないから試しにやってごらんと言うので本当に小さいのを想像したんだよなぁ・・・
因みに想像したのはマッチの火で、指先にぽんと灯がともる程度。
うーん、確かに少し小さすぎたかな・・・
「この書庫は一寸した魔法ぐらいなら持つように設計されているし、傷つかない魔法が掛かってるんだよ。あと自動修復の魔法も掛かってるから、焦げても大丈夫!」
「そんなのもあるんだ?!凄ぇ・・・」
「こら、言葉に気を付けなきゃ駄目だぞ」
「は、はい、すみません・・・」
「すげぇ、じゃなくて凄い、でしょ?」
「はい」
どっちが年上だと言われそうだが、うっかり口から出てしまったのは仕方ない
今度からは気を付けよう・・・
もう少し大きくしても平気だというのでよく見かける野球ボールのような物が燃えているを想像しもう一度フレアと呟いた
するとゴウ、ッと音を立てて掌の中に野球ボールくらいの大きさの火の玉がでた
「わ、急に大きくなったね。でも良いよ、その位の大きさが丁度良いと思う」
「じゃあ最初としては合格?」
「うん、合格だね。次は、水の魔法の基本を憶えようか。」
「はい、先生質問」
「せ、先生・・・!?何だか格好良い呼び方だね!先生なんて呼ばれたこと無いよ。」
一寸巫山戯て先生といっただけなのにかなり気に入ったのか何度も先生と繰り返して口にしては嬉しそうにしていた
ルールウドくんの子供らしい一面を見て、驚き半分、安心半分で彼が落ち着くのを待った
5分位してから漸く落ち着いたようなので、もう一度質問があるというと今度はすんなりと内容を聞いてくれた
「火の魔法はさっきのフレアだけなのか?」
「魔法学校に行ってない子供の魔族は、基本的な魔法以外は使っちゃ駄目なんだよ。制御が出来ないから、大惨事になるし、感情のコントロールできてないからうっかりで魔法を漏らしちゃうときがあるからね。魔法学校でお友達を作ったり、色々と経験をしていくとフレアより上の魔法も使えるよ。」
「基本的な、魔法・・・?」
ルールウドくんはノートに火、水、風、土、光、闇、無、空と書いた
んー、闇、まではファンタジー系の物で属性魔法の代表格だし、分かるんだけど・・・
無、空っていったいなんだ?
「無、空ってなに?」
「空は火とか水と同じように自然現象の中の一つ、属性の一つ。無属性は他のどの属性にも当て嵌まらない、主に生活魔法なんかを指すよ。例えるならば、空の間法は天気を操ったり、空を飛んだり浮かんだり。魔族以外の種属は空魔法を使わないと飛べないんだ。母さんがよく使ってるよ。父さんや僕達は使わないけどね。」
「あぁ、なるほど・・・」
ミーシェちゃんやルールウドくんのお母さんはエルフだからね、それはたしかに魔法かなんかを使わないといけないわな
そして背中に羽が生えてるドラゴン族のパパさんやルールウドくんはそんな魔法は不要だ、と・・・ふむふむ・・・
「無属性の魔法は、そうだなぁ・・・この屋敷の扉みたいに好きなところに行けるようにしたり、荷物を持たなくて良いようにしたりぃ・・・ステータス、自分の体の状態を見えるようにしたり!汎用性が高い魔法だよ。あと、凄く計算が速くなる魔法とかもあるし、一寸嫌われるけれど、人の思考を読み解くことも、出来る。お勧めしないけどね!」
「なるほど」
俺が納得して無属性の魔法は意外に使われているのを実感している(たとえで出てきた扉の魔法とか、着替えの魔法とか・・・聞いた今だからこそ思えばそう言う魔法を無属性というくくりに入れているのかと感心した)とその反応を見たルールウドくんが真剣な顔をし出したので驚いた
「思考は読んだりしちゃ駄目だよ!ショージは弟だから言うけど、そう言う魔法は親しい魔族の友達でも使ったら嫌われるくらい、忌み嫌われてる魔法の一つ。でも・・・やっぱり、必要とされることも、在るんだ・・・悪い人を捕まえて、悪さをする仲間がいないかとか・・・調べなくちゃ、いけないときとかに・・・でも、僕と約束して?ショージは絶対にその魔法を憶えても使わないって!」
「・・・は、はい・・・」
よく分からないけれど、読心術系は使っちゃ駄目と散々言われた
そして絶対にミーシェちゃんにもそれは言い聞かせるから俺も徹底してその手の魔法は対策を憶えても良いが、使うことはしないようにと言われた
余程嫌われる魔法なんだなと思った
「僕達は一応貴族だから良く犯罪とかに巻き込まれることがあるんだ。で、追い詰められたりしてこの手の魔法を使う、使わないで大分未来で付き合う魔族の貴族や人間の貴族達から線引きだってされるんだ。誰だって、心を読むような奴と友達になんてなりたくないし、自分と意見の合わない価値観の人をポロッと悪く思う心はあるでしょう?それを聞かれたくないのは、当然だよ。良いね、絶対駄目!だからね」
「・・・はい」
俺はルールウドくんを少しでも安心させるように、頷いた
余程のことが無い限り絶対に使わないよと指切りまでして約束した
この時はそんな魔法を自分が使うなんて思わなかったから、指切りまでしたんだ
まさか、この約束をあんな形で破ることになるとは・・・そして“子供の約束”だとキチンと受け止めなかったのがいけなかったんだと俺が後悔する事になるとは思わなかった
・・・ルールウドくんは俺がうたい文句を言いながら小指を軽く振るとどういう意味だか聞いて来たので、俺の世界、そして俺の住んでた国で約束をするときにやることだといってしまったのだ
「“針千本のーます、指切った!”はい、これで約束な!絶対、約束は守るから安心して良いぞ?」
「・・・ふふ、面白い!こんな約束の仕方があるんだね」
ルールウドくんの目がキラキラと輝いて見えたのを、この時ちゃんと意識していれば良かったのに、俺は単純に異世界の文化が珍しいんだと思い込んでいたんだ・・・
子供でも、一応魔族だったというのに・・・




