異世界だけど優しい世界だった
異世界に来て元の体の持ち主の少女との違いから病気扱いされた昇次
翌日目を覚まし、部屋から出るとそこは寝る前に見た部屋とは別の部屋になっていて・・・
お兄様は俺を椅子に人形を座らせるように座らせると俺の正面に在る椅子に座った
「もし違うなら違うといってね?」
「・・・?はい」
「ミーシェは昨日、お庭に始めていったんだよね。」
「うん」
そうらしいので素直に頷いたらお兄様は図鑑をとりだして俺の方に見せた
その図鑑には顕微鏡か何かで見たことのある、雪の結晶みたいなのが書かれてた
「ミーシェは昨日これを口にした?」
「・・・?」
雪を食べたか、って事か?確かに気がつくと寒かったけどそんなの口にする訳無いのになぁ・・・雪って上空の埃やら何やらが入ってると聞いたことがあるしと思っていたら、頭の中に初めて庭に出れてはしゃぎ回った映像が主観視点で流れてきた
俺がこの世界に来る前のミーシェちゃんだろう
はしゃぎ回った結果、転んで雪に埋もれ、ドラゴンパパさんが慌てて助け起こして自分の体をドラゴンの姿に変化させて、この隙間だけで遊ぶように言い聞かせた所まで映像が浮かんできた
「・・・昨日はしゃいで、転んじゃった」
「あぁ、やっぱり。その時にこれ口に入ったかも知れないね・・・」
「これ、なあに?」
「・・・雪山特有の、小さい魔物だよ。触れたら溶けてしまう程度のなんてことのない物なんだけど、口の中に入れたら解ける前に、とある病気を運んでくるんだ」
「え、病気?!」
え、俺病気なの?あ、嫌ミーシェちゃんが、か・・・
俺は病気扱いなの?
途端に、自分という物が分からなくなるから困る・・・
否、ミーシェちゃんの人格が変わってしまうのだから家族にとってはミーシェちゃんを殺されたような物だし、重罪か・・・?
「・・・病気といっても大したことないから。一寸二重人格になるんだ。」
「一寸って・・・二重人格はそんな軽い物なの?良いの、それで・・・」
思わず素で驚いてしまい、呆ける
「大丈夫、この魔物の影響は一寸家族が増える程度の物だから。」
「程度を越えてません?」
「あ、もしかして今も様子がおかしいのはミーシェの中のもう一人が話していたのかい?」
「・・・あー、うん、そう・・・じゃないかな」
素直に俺は自分に起こったことを少年に話すことにした
勿論死に際の見苦しいような執着心は隠して唯通勤途中に死亡したと伝えただけだが。
暫く話を聞いていてくれた少年は頷いて、納得してくれた
「じゃあ、その時ショージは違う世界で死んでしまったんだね。それで、異世界の僕らの所に来た、と。急にお父さんのようなドラゴンに出会って驚いただろうに、取り乱さないのは偉かったね。」
「・・・急すぎて、表だって取り乱せなかっただけだよ。内心凄く取り乱してたし」
「そうだね、まぁ驚くよね。」
少年は何故かこんな得体の知れない俺の心情を受け止めてくれるように頷いてくれた
なんてしっかりした少年だろう・・・確か、8歳とかいってなかったか?
あれ、5歳だっけ?前の俺の半分も生きてないような少年に、何故こんな事を話してるんだろうか・・・
「じゃあ今日は色々と話して、今日からショージが困らないように、僕もミーシェに会えるようにする方法を教えてあげるね」
「ミーシェちゃんとやらは、死んでないんだな?」
「うん、多分寝てるだけだよ。この魔物はね、食べると3日は本来の体の持ち主は眠るんだ。その後は片方が起きてるとき、もう片方は寝ていて、好きなときに交代できるようになる。そう言う魔物なんだ。効果は虫下しを言う薬草を煎じて飲むまで続くんだけれど・・・虫下しは、人間界に行かないと手に入らないし、とても高価な物なんだ。」
なるほど、一応この状態を解除するすべもあるんだな
とても大変だろうが、俺は本来いない物の筈だし、なんとしてでもその薬草を手に入れる必要があるか
そうすると俺は死んでいる訳だし、消えるのだろうか・・・
「向こうでは死んでる俺が、虫下し飲んだら消える?」
「ゴメン、そこまでは分かっていないんだ。でも安心して良いよ?僕達はそこまでショージを邪見にしないよ、絶対に。家族が増えたと思って寧ろ喜ぶかもね。だから・・・このままでいいよ。お父さんとお母さんには僕から話しておくしミーシェの変化は親しい人にしか分からないよ?」
「で、でも俺はミーシェちゃん乗っ取ってるみたいな物なんじゃ・・・」
「ミーシェが体を貸してるだけみたいな物だよ?それに、ミーシェに変わることも出来るから大丈夫。明日からだけどね?ミーシェには僕から話しておいてあげるね。」
うわ、ヤダ、この子有能・・・流石は貴族のご子息
否、異世界の魔物に詳しいから、その対策としての方法を教えてくれただけか?
でもすっげぇ頼りになる!困惑してギャーギャー騒いでるだけの俺と大違いだ・・・
あぁ、何だか自分でいってて悲しくなってきた
「ご、ご迷惑おかけします・・・」
「いえいえ。ショージはもう僕の弟みたいな物だと勝手に思うことにしたから、お世話するよ?まずは魔族と人間の違いからこの世界のこと、色々と憶えないといけないこと教えるね?えーと、はい。ノートを上げるから書いておくと良いよ。こっちはもしもミーシェが起きたら君とミーシェとの情報交換用に、使うといいよ。」
「何から何まで悪いな・・・」
「あ、でも一応いっておくね。」
「?」
ノートを10冊程度纏めて紐で縛ってあり、更に羽根ペンとインク壺をセットにして貰った後に急に真面目な顔になった、ルールウドについ俺も真面目に聞いた方が良い気がして背筋を伸ばした
「ミーシェはこの国の第一王女だから、公務もこれから増えてくる。」
「お、おう・・・」
「いいかい、魔族といっても貴族なんだ。当然色んな人に出会うし、パーティもでる」
「おう・・・」
「ショージの今の口調は凄く目立つ。気を付けてね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」
そこは元の、ミーシェちゃんが表立って出てれば良いのでは?とも思うけれど一応こう言うからにはルールウドくんにも何か思うところがあるのだろう
取り敢えず素直に頷いておいた
「貴族の中にはミーシェと政略結婚してやろうとかミーシェの魔力をかすめ取ろうとする輩だっているからね、そう言う輩に弱点を晒すのはどうかと思うし、今の内に女性言葉を徹底して憶えるか、聞いてて違和感の無い敬語を覚えるかしていこう」
「・・・はい」
そう言ってルールウドくんは広辞苑並みの厚さをした辞書をドン!と2冊も机の上に出した・・・俺は、悟った
貴族になるって、良い事じゃないんだと言うことを・・・。
それから俺は徹底的に敬語からこの世界のこと、歴史、人間と魔族との違い、さらには文字からなにまで教わった
一日で、ズー~~~~~~~―っと机に付きルールウドくんに徹底的に習った
「・・・今日はここまでだね。お疲れ様、ショージ」
「ずいぶんきびしうございます」
「一気に色々教えすぎたかな?」
「新情報が多くて・・・整理する時間おくれ。」
「あぁ、そうか。ごめんね?」
何か謝られたので俺がますます情けなくなってくるぞ・・・
えーと纏めるとファンタジーといっても俺の知って居る異世界ととにかく色々と違うらしいと言うのが分かった
まず世界
魔王と英雄譚のようにバトルし合うような物じゃ無い
そりゃ20世紀くらい前ならばそう言うことをしていたらしいが、今ではお互いの地域や特性を生かして世界、文明、営みを発展させているらしい
種族間での争いが無い替わりに、ダンジョンがそこら辺に湧いたり突然強い魔物が巣を作り町や村を襲うそうだから、油断出来ない
また学園というモノがあり、そこに入ればどんな種族でも魔法やらダンジョンのことを教えるようなっているらしい
魔族・人間・その他 種属のこと
魔族というのは人間とは全く異なるもので、魔法がつかえるが人間に食べられるものが口に出来ないし、人間には危険とされる場所に住むことが出来る生き物でその特徴として背中に羽が生えてるそうです
羽根がついてれば白くてふわふわしてても、魔族だそうです
俺は試しに天使みたいな見た目でも魔族あつかいなのか聞いてみたが、あっさりそうだと言われてしまい・・・何だか複雑な気分になった
そこは天使だと言って欲しかった
人間はこの世界の6割をしめる生物で、魔法は使えない物の、精霊術と呼ばれる物と機械に似た何かを生み出すことが出来るそうです
そして集団行動や知恵、どれをとっても他種族より繁栄性が強いそうだ
その他、種族と纏めたが本当に色々といるようだ
獣人族やら、エルフ、人魚、ドワーフ、なんでもあり
でそれぞれ人間や魔族と仲良くしていて、商売したり、加工し合ったりしてるって、それなんて平和な世界なんだ・・・
得手不得手を補いながら、仲良しで・・・争いなんかない方が良いに決まってるし、当然死亡率だって低いのが良い
だから、何かがっかりしてなんか無い
してない、よ?
俺は戦闘狂じゃ無いんだからね、ダンジョンって言うのもあるらしいし?
魔法、精霊術について
簡単に言うと魔法を使えるとしたら精霊術は使えない、逆も同じ
魔法は自分の持っている魔力と空気中に混ざってる魔祖を混ぜて現象を起こす物や、自分の想像力を使い、想像力を形にするため魔祖を少し、おもに魔力で現象を起こすもの
精霊術は自然にいる精霊族にお願いして自分がして欲しいことをして貰う物で、対価として常に何かを上げる必要があるそうだ
で、精霊術は食べ物と良く交換されるらしい
大変だなぁ・・・食べ物沢山持たないといけないなんて、旅してる人達にとっては頭を悩ませる問題なんじゃ無いかな・・・
文字について
文字は魔族、人間等の種族事に違うのと、精霊術限定だけれど、お願いする言葉が在るらしいのでふーんと思ってたら、どの種族でも貴族なら全部を話せたり理解したり書いたり出来ないといけないらしいと言うことを言われ、軽く絶望した
魔族なのだから精霊族の精霊語はいらないんじゃ無いかと思ったのだが、そう甘くは無いそうです
寧ろ貴族だからこそ数々の言語を覚える必要があるらしい
身を守ることや、社交界での会話という意味でかかせないそうです
改めて再確認したが・・・貴族・・・大変だなぁ・・・
「ミーシェが苦手な精霊語もちゃんと理解しようとしているのは凄いね」
「貴族って憶える物多いんだね」
「うん、だかラミーシェはサボってばかりいて、家庭教師から逃げてる。でもこれは必要だから頑張ろうね。ミーシェはミーシェ、ショージはショージだからね?」
「・・・・・ア、はい」
ルールウドくんはとても優しいが勉強中は手を抜いてくれません・・・
まぁあれほど欲しがっていた情報が一気にとは言え手に入ったのだから、嬉しいのだけど
ついでに現状の説明だってされて、万々歳なのだけれども!!!
20時間丸々勉強って・・・休憩や食事に数分だけ時間を貰い、他全て必要な知識をこれでもかと詰め込まれた
「明日は礼儀作法と今日の復習だね。」
「・・・はい、お兄様・・・」
「ふふふ、ミーシェだったらここでキッと悪口言って泣き出してたよ?」
「否、情報が欲しかったのは確かだし、正直助かる。唯ぶっ続けで机に向かってるのは、子供の体だから辛いんだ。体力的にも、精神的にも休憩を少し増やして貰えれば嬉しいかな・・・」
「・・・あぁ、そうか、ショージは人間なんだっけ?魔族は疲れを感じにくいから、つい限界までやっちゃうんだ。明日からは気を付けるね」
さらりと人外な部分が見え隠れしたところで、メイドさんがやって来て俺とルールウドくんが一緒にいるのを見て驚きに目を開いた後微笑みを浮かべご飯だといった
すると昨日と同じくルールウドくんが俺をひょいと抱え、すいーっと抱きかかえたまま昨日と同じ食堂にへと運んだ
「なんで俺を抱っこするの」
「ミーシェはまだ羽根で飛べないんだ。飛べないと屋敷の廊下は長くて疲れちゃうんだ」
「成る程、だから皆さん飛んでるんだね」
「後時折防犯対策で、額淵の上の方にセンサー魔法があって、そこまで頭が行かないと魔法が作動しちゃうんだ。だからこのおうちでは飛んでいくのが当たり前なの。」
「・・・な、成る程魔族ならではだね・・・」
「そうだよ。」
防犯って言われると、確かに納得する他無いな・・・
一応貴族だものな、そりゃ防犯の十や二十、三十は合って当然か
ルールウドくんはそのまま食堂に行き、俺を座らせるまでしてから自分も座る
するともうすでに座っていた両親と俺達に食事が運ばれてきた
食事は・・・残念ながらも俺は人間で、味覚が追いついていかないのか、ミーシェちゃんは魔族だというのに、凄く極端に甘かったり、しょっぱかったり、逆に味がしなかったりソースにべちゃっと浸ってる、虫だったりと・・・壮絶だった
・・・魔族の食事は・・・元人間の俺では無く、元の体の持ち主であるミーシェちゃんが食べてくれた方が、良いみたいです・・・
食事も終わり、何か人として駄目な物も口にした気がするが、精神力を削りながら自室に戻ろうとした
「・・・ミーシェ、まだ席立っちゃ駄目だよ。デザートが来るから」
「んー、もうお腹いっぱいなの・・・」
「そっか、じゃお部屋に運んであげるね」
ルールウドくんに味覚のことを後で何とかする方法が無いか聞いてみよう・・・
若しくは、早くミーシェちゃんと意識を交換して貰える方法を・・・何とかしないとこんな下手物を口にしながら平然と食事するとか、難因度高すぎる・・・
虫の姿煮はきつい・・・否田舎にすんでいたからイナゴの佃煮とか蜂の子とかは見たことはあるが、だからといって北京ダック並みの大きさのばかでかい虫をその場で切り分けてテーブルに出されたら、気分悪くなる
何とか顔色を崩さずにいれたらしい俺を褒めてくれ・・・
・・・衝撃的すぎて、固まっていただけだけど、やや食事スピードがゆっくりだったこと以外に違和感なかったと後でルールウドくんに言われた
その後はルールウドくんとお話ししながら自室で何故自室じゃ無くて書庫のような所に出たのかを軽くだったが聞いた
扉の取手を掴みながら自分の行きたいところを想像すればそこにあの長い廊下を介さずに行けるらしい
俺が説明や世界のことを知りたがっていたから、ルールウドくんの所へと扉が案内し、それをうけてルールウドくんはミーシェちゃんが何か聞きたいことがあるんだと察することが出来たんだと教えてくれた
一言言うと魔法凄ぇな・・・なんでもありかよ・・・
まぁおかげで助かりました、魔法様々だぜ
ルールウドくんはそのままミーシェちゃんに意識が戻ったら見せるように今日のことを書いておくと良いよといって監修を買って出てくれた
ミーシェちゃんのお兄さんはとてもイイコでした
書きたいことを書いて、魔法で訂正したい部分だけを消して(インクなのに消えるとかシャーペン感覚なんだね、羽根ペンとインクなのに・・・)ミーシェちゃんにこれまでの出来事と、俺の事情とを書いた
俺にはミーシェちゃんにうっかり体を貸して貰うことになってしまってすまない共書いておいた
「・・・ショージはやたらと謝るね。」
「・・・まぁ仕事でしょっちゅう謝ってるからね・・・ハハハ・・・」
「貴族はあまり謝ったりするの、良くないとされてるんだ。下に見られて舐められるからね。でも勿論自分が悪いことをしたら謝るけど基本プライドが高いからね。」
「・・・何処もそこは変わらないんだね。上司は謝らないのは同じかも」
「フフフ、面白い!ねぇ良かったら今度は異世界の話を聞かせてよ」
クスクス笑ってルールウドくんは俺の話を聞きたがった
・・・そんな事言っても俺の話なんてつまらないんじゃ無いかな
まぁ俺もこの世界のことを教えて貰ったんだから、俺のいた世界のことを教えた
教えたといっても雑談で、色んな事を話したり、質問に答えたりしただけだが、十分だったみたいだ
「今日は疲れたでしょう、遅くまでゴメンね?ショージ、お休み?」
「うん、おやすみ」
指を一つ鳴らし、寝間着を着替えさせて貰った
やり方は簡単で、あらかじめ服を着た状態の物を想像して魔力を操作し、指を鳴らすだけでいいそうだ
後で機会を見て魔法を教えてくれる時にでも、改めてやり方を教えてくれるそうだ
本当に、ルールウドくんには力になっていて貰いっぱなしで・・・悪い気はする物の、凄く助かるなぁ・・・博識だし、わかりやすく教えてくれるし!
ルールウドくんは俺がベッドに入ったのを見届けて自室に帰っていったので、そのまま眠りにつく前に近くにあった本を適当にてにとり、読むことにした
小さい子供に読み聞かせるタイプの、簡単な物で今日も字を習ったばかりの俺にも何とか読み取れる物を眠くなるまで読んだ
内容は簡潔に、神話のような話で神様が仲が悪い地上の生き物たちに試練を与えることで仲を取り持たせ、人間と獣人、精霊族に、魔族達が力を合わせて試練を乗り越えていくという話だった
子供向けなので絵が可愛らしく、所々読めない文字でも全体的にわかりやすい文面と、話の流れで、なんとなく理解出来た
結局絵本だったので眠くなる前に最後まで読んでしまったけれど、中々面白かった
サイドテーブルの明かりを落とし、布団に潜った