山の中のフロストエルフ
山の中を歩いていると、山深くなってきたなと思えるくらい薄暗くなって、坂道も大分傾斜がきつくなってきた頃に、ひゅんと風を切り何かが足先二十㎝くらい離れた所に刺さった
よく見るとそれは矢で、その矢が行く手を阻むように、突然降ってきたのだ
「「そこの子供達、止まれ」」
どこからか声が二人分、聞こえてきたので皆とまった
ミーシェちゃんがルールウドくんにしがみつきつつ、キョロキョロと辺りを見回しているけれど、多分そこにはいないと思うなと言うような変な所を見渡していた
声がした方を俺とルールウドくんが見上げる
そこには弓矢を構えた二人のエルフさんがいた
この人達が、噂のフロストエルフさん達だろう
とても警戒しながら、弓を構えたままで木の上から降りる気配がなさそうだった
俺達を挟んで左右の大きな木に登って、弓を何時でも放てるように構えて矢筒から弓も出している
「何者だ、見たところ子供だけのようだが、何用でどうやって来た」
「この方達はドラゴニア国王のご子息、ご息女様です。用件は内密に願います」
キューリャさんが姿を現し、そのまま狼から降りて、フロストエルフさん達の前に進んだ
すると二人の見張りのエルフさん達は何やら見合って、頷いてからキューリャさんに向かって俺達が偽物じゃない証拠を見せろと言ってきた
そんな物用意してないよ、だってこっそりと向け出してきたんだもの、なんて言えっこないので、どうしようと不安に思っていたらキューリャさんは懐から何かをとりだした
それは俺からは角度が悪かったとか、キューリャさんが木の上のエルフさん達に見せるために掲げて見せたから、とかの理由でよく見えなかったけれども、掌に収まる位の物だった
よく分からないけれどそれを見せた途端に二人のエルフさん達は木の上から降りてきた
「「宜しい、ついてこい」」
ここに来た用件は内緒だというのに、その件には触れず、何とか里の仲間で連れて行ってくれるようだ
すんなりと話が纏まったようで少し、ホッとした
エルフさん達は弓をしまい俺達を先導するかのように歩き出した
二人のエルフさん達は精々身長が160行くか行かないかのぱっと見子供と言われても違和感のなさそうな高さだった
まあ今俺等はそれより小さい訳ですけれどね?はい
二人もエルフさん達はそれぞれ黄色と緑のマントをしていた
緑のマントを着けているエルフさんは目が丸くて、大きいどこか女性的な顔立ち、体つきをしていて、髪の毛を後ろにきつく縛っている
それでいて、緑色の上着に胸当てをしていてその胸当てはきらりと硬質に鈍く光っていて見るからに丈夫そうだった
そして一番に目を引くのは緑色の指開け手袋を左だけにしている事だった
・・・何故左だけなのだろうか・・・ファッション?
黄色のマントをしているエルフさんは黒い上着を斜めがけにしたベルトで止め、そのベルトの後ろ部分に矢筒と弓を引っかけているのだろう
弓矢が後ろの背中の部分にくっついているように見える
そして黄色いマントのエルフさんは髪の毛が短く、逆立っている
目も半眼と言ったら良いだろうか少し大きめに見開いた三白眼に近いような目、と言うかどことなく眠たそうに半分閉じている目と言うか、そんな目だった
そしてやはり左手にだけ手袋していた
・・・流行なのか?左手だけに手袋するの・・・もしそうだとしたら左手ばかりしているのだろうから、右手用の手袋は余るんじゃないのだろうか・・・
俺がそんな変な事を考えているとエルフさん達は黙々と大きなしめ縄のされた自然の木で出来た、門みたいな木と木で出来た二本の木の間を通っていった
・・・説明下手で済みません、えーと、木が二本あって、上の方でくっつくように枝が一体化している、寄り添って自生している木が目の前にあるんですよ
それの木の間に、縄みたいのがしてあって、それが何だか門みたいだなって・・・
ちょっと俺の語彙力が低くて伝わらないかもしれないけど、トンネルみたいな、鳥居みたいな・・・あんな感じなんだよ
雰囲気が、そこを境にして変わる、みたいな感じで・・・
何だろ、こう・・・
まるで、そこを通る資格がなければ追い出されそうな感じ
目の前に立つと、拒絶をされるかのような印象を受ける
そんなことを思ったのは俺だけじゃないようで、ルールウドくんが若干引いていた
「こ、ここに行くの・・・?」
「は、入っても良いのかな、怒られないかな?」
思わず二人してどうしようかと顔を見合わせてしまった
あの暢気なミーシェちゃんさえも、一寸何かを感じているのかルールウドくんの後ろから恐る恐ると二本の木を見上げている
まごまごとしていると緑色のマントのエルフさんが面倒くさそうに目を細めて怖い顔でせかしてきたので慌てて後をついて行った
木の間をくぐるとそこから先はツリーハウスが様々な木の枝にあり、木の幹に扉があり、木の根元に地下室なんだろうか立て看板や案内板があり、扉があり・・・知的生物が明らかに生活しているという雰囲気が一面に広がった
食事を扱っている店があるのか、美味しそうな香りや、賑やかな店員や客引きの声もどこからか聞こえてくる
如何にも、活気のある街のような光景で、この世界に来てから屋敷や病院内から出たことの無かった俺には目新しく映った
ミーシェちゃんも同じだったらしくキョロキョロと周りを見渡しては目を輝かせている
「・・・何をしている」
「すみません、すぐ行きます!」
「ごめんなさい」
緑色のマントのエルフさんが苛立たしそうに態々足を止めている俺とミーシェちゃんの目の前に来てまで注意してくれた
慌てて後についていくとあきれかえった表情をされて、鼻を鳴らされ、何とも言えない目でじろっと見下ろされた
その後はもう何も言わずにスタスタと先に歩き出し、中心部なのだろう大きな木にドアや家が幾つもあるところに来た
集合住宅と言うほどでも無いが、何だかマンションやアパートみたいだ
そう思って見上げているとその木の一番上にあるであろう木の枝にあるツリーハウスから二人の気配がした
でもなんだろう・・・そのエルフさん達から、どことなく知り合いに似た気配を感じる
この世界に来てから、知り合ったような感じの、気配がする気がするがどうだろ、この気配に似た人って誰だっけ?なんて思って首を傾げた
その気配が似ているエルフさん達が俺等の方を見たのか、誰かに見られている気配を感じて、それから引っ込んだのも、わかった
なんだろう、入院してからこんなに気配分かるようになったけれどここまで誰かに似ている気配は感じたことない
木から吊されている青色の4畳くらいの大きさの板に乗るよう言われたので乗ると板から転落防止なのだろう、サクが俺達の背丈並みに高いのが板を囲むように出てきて、さらにタッチパネルみたいな物がそのサクからでてきた
エルフさんが操作するとフォン、と音がして板が上がっていった
異世界エレベーター!エレベーターだこれ!!
すっご!え、エレベーター凄くね!?
ふぉおおっこれは、これは凄いぞ!?誰がこのエレベーターを考えたのかとかどうやって動かしているのかとかはさっぱり分からないけれどこの世界に来てからエレベーターにお目にかかれるとは思いもしなかった!
一通り驚いていると目的の所についたのかエレベーターは止まってサクが何事もなかったかのように引っ込んだ
二人のエルフさんが一番大きなログハウスの扉の前で左右に分かれて中に入るように言ってきた
「「中へ入れ」」
なぁなぁでついてきてしまったけれどここ何処なのだろう
そう思っているとキューリャさんが扉を開けて、中にいるメイドさんなのだろう人に何かを告げているのが気配や動きからなんとなく感じられた
暫くしてからキューリャさんが入っても良いようですよと言ってきてくれたので中に入ると急にミーシェちゃんとルールウドくんが宙に浮いた
「「わぁ?!」」
「ちょっ」
驚いたけれどよく見るとミーシェちゃんは男性のエルフさんに、ルールウドくんは女性のエルフさんに抱き上げられていただけだった
急に浮いたから驚いたのだけれど、二人の男女のエルフさんはよくよく見てみるとどことなく二人に似ている気がした
んー?もしかして、この二人がエルフママさんのご両親かな?
つまり、ミーシェちゃんとルールウドくんのお爺さんとお婆さんになる訳かな?
そう思っているとにこにこと笑った男性のエルフさんがミーシェちゃんを抱きしめている、そのままでしゃがみ突っ立っていて呆けている俺をもぎゅっと抱きしめてきた
「「よくきたねぇ」」
二人がそう言うとそうそうに俺達を抱きかかえたままどこかへ連れて行った
そこはリビングみたいに大きなテーブルがあり、椅子が何脚かあった
テーブルの上にはこれでもかと言うほど沢山の焼き菓子と食事がのっていた
パイとか様々な木の実とか、果物とか色々とそれはもう皿とは言わず、テーブルからあふれんばかりにおいてあった
積み上がり方が半端じゃない
「えーと、おばあちゃんよぉ?」
女性のエルフさんがにっこりと笑いながらもルールウドくんの隣に座り、握手をした
それを見て微笑みながらも男性のエルフさんがミーシェちゃんと俺にぎゅーぎゅーとハグして来ながら自己紹介してくれた
「君達のお爺ちゃんになるかな。僕はトーマスって言うんだ。お爺ちゃんでもトーマスお爺さんでも好きに呼んでくれて良いよ?妻はレシェルナっていうんだ。お祖母ちゃんと呼んであげてくれて良いよ」
「お爺ちゃんお祖母ちゃんはじめまして。あたし、ミーシェです」
「僕はルールウドです。お会い出来て光栄です」
四人が自己紹介して、自然と俺に注目ががが・・・
「えと、ショージです。」
ここでは俺一人だけ血縁関係では無いので凄く場違いなのですが・・・えっと・・・?
困惑しているとルールウドくんが助け船を出してくれた
助かった、どうしたら良いのか困惑するところだった、と言うか混乱してた
異世界から来まして家族になりました、なんて言って良いのかどうか・・・と思っていた
「彼は新しく家族になった、僕の弟のショージです。」
「知って居るわ。新しく異世界から来てしまった家族のショージくんね。」
「異世界から来たことも知ってるの?」
「知ってますとも。貴方の可愛い精霊ちゃんがお手紙を届けてくれた物。」
可愛い精霊ちゃんとはスミレのことを言っているのだろうかと思っているとトーマスさんがにこやかに手紙を見せてくれた
その手紙は、エルフママさんからで三人の子供が数日中にここを訪れるかも知れないという旨が書かれていた
・・・エルフママさんにはお見通しだったと言う事だったのだろうか
ルールウドくんが首を傾げてスミレが見えるのかと言ってきた
確かに、スミレは猫の姿の時は見えないけれど、スミレが姿を見せても良いと思った時は人型になるから他の人の目にも見えるので違和感は全然湧かなかった
多分このエルフさん達にも人の姿になって会いに来たんじゃないかな、と思っていたから
そしたらレシェルナさんは微笑んで、精霊を見る目をもっているのだと告げた
そんな目もあるんだな・・・流石異世界
俺は異世界については全然知らないけれど、ここまで情報が伝わるのが早いともはや俺が異世界人だと言うことを内緒にしなくても良いのでは無いかとさえ思えてきた
まぁ態々言う必要もないから言わないけれど
するりと何かが足下を通ったのでそちらを見てみると子犬がいた
子犬は子供の柴犬みたいで、とても可愛かったのでしゃがんですぐに撫でた
「わぁ、かわいい。飼い犬ですか?」
「あらあら、ふふふ。」
「おやおや、ははは。」
「?」
何故か二人は笑い出した
なぜか面白そうに笑い出す物だから、俺は子犬を抱っこしながらも飼い犬って可愛いからかなと思いながらも子犬くんを可愛がっていたら、子犬くんが俺の頬を舐めてきた
くすぐったいので俺は子犬を撫でながら止めさせようとして抵抗しつつも床に降ろした
「ふふふ。その子も精霊なのよ。ショージくんは精霊使いの才能を持っているのね」
「そうかそうか、そこには犬がいるのか。私は見えないのだが良いな。」
「え?」
この子犬も精霊だったなんて驚いた
柴犬の子犬がくぅーんと鳴いて俺の足下にじゃれついている
俺は可愛かったので紐を出して振り回してやると一生懸命追いかけ回して来て可愛かった
カプッと紐の端っこを噛んで、ぐいっと引っ張っている子犬に、俺はすぐに夢中になって遊んでしまった
ミーシェちゃんがぷっくりと頬を膨らませて俺に狡いと言い出すまで遊んでいた
「ショージお兄ちゃん狡~い!ミーシェも見たい!わんちゃんみたーい!」
「えぇ?見たいも何も・・・そこにいるじゃない」
『わふ?』
子犬くんも訳分からない、なぁに?みたいな顔をして首を傾げている
俺は不思議に思いながらもミーシェちゃんに触れるように子犬を抱っこしてミーシェちゃんの前に行き、触らせてあげた
「はい、撫でてあげれば良いと思うよ?」
「んんー・・・っ」
ミーシェちゃんが撫でようと手を子犬に触れるところまで伸ばす、が
スカ、スカッと子犬を通り過ぎて、俺の服に手が当たるだけだった
子犬がミーシェちゃんの手を不思議そうに舐めたてみたり、ガジガジと噛んでみたりしているのがとても可愛い
「触れないよ?そこにいるの?」
「いるよ?キョトンとしてミーシェちゃんの手を舐めてるよ?」
「うぅぅ、いいなぁ!みたいのにー!触りたいのに!」
『わふ?』
やはり子犬は分かっていないような態度で尻尾を振っている
「どうしてもみたいなら、キューリャに眼鏡を貸して貰いなよ」
「あ、そうだね!キューちゃん眼鏡かしてー」
「・・・落とさないで下さいね」
キューリャさんに眼鏡を貸して貰い、眼鏡を掛けるなり嬉しそうに子犬の頭を撫でた
すぐに眼鏡を掛ければミーシェちゃんは見える様になって子犬が可愛いというのが分かったのだろう
撫でようとして空を掴むように犬の頭の方に手を伸ばすがその手は残念ながらも犬を透けてやはり俺の服に触れるだけだった
「撫でらんない・・・」
「それは残念だね」
「何でショージお兄ちゃんなでなでできるのー?」
嫌そんなことを言われたって俺にも分からないよと思いつつも取り敢えず俺は柴犬を床に降ろしてからミーシェちゃんも撫でといた
可哀想だからミーシェちゃんを撫でたのだけれど、髪がさらさらだった
「むー?なぁに、ショージお兄ちゃん」
「え、いや、なんとなく?」
「そうなのー?」
「うん、なんとなく」
ミーシェちゃんは何故か満更でもなさそうに笑って機嫌を直してくれたらしく、そのまま子犬の方をジーとみながらも撫でるのを止めた
柴犬が紐にじゃれつきながらも俺の足下で遊んでいるのをついついじーっと見てしまう
『わん!ぁん!』
「可愛い~・・・」
「犬ってつい見ちゃうよね」
「うん!」
俺とミーシェちゃんが二人して子犬に夢中になっていたらルールウドくんとキューリャさんが苦笑しながらも俺とミーシェちゃんを呼んだ
キューリャさんになんて何だかとてもいい辛いと言った表情をさせてしまった
・・・少し申し訳なくなってしまった
「ショージ、ミーシェ。おじいさま達に失礼だよ」
「ショージ様、ミーシェ様。精霊と戯れていても良いのですがご用事は・・・?」
「「!」」
ニコニコと微笑ましいという表情をしたまま俺とミーシェちゃんを見ていたトーマスさん達が思い出したようにお菓子を勧めてきた
ミーシェちゃんはお菓子に素直に手を伸ばしたけれど、俺は遠慮しておいた
嫌別に焼き菓子が嫌いという訳ではないのだがさっきまで犬と遊んでいたからその手で食べ物を触りたくないと言う抵抗感が・・・幾ら精霊だと言うことを考慮しても遠慮しておきたいのだ
用意しておいて貰ったであろう人(嫌二人ともエルフだけれども)には悪いのだけれどそれは仕方ないだろうと思う




