2話 表示された名前
2話 表示された名前
ゲートを抜けた瞬間
夜風が頬を打った
ヘリの回転音が空を削り
赤色灯が海面を染める
東京湾岸は混乱していた
だが
建物だけが静かだ
黒い正方形
傷ひとつない外壁
四方の入口上部
巨大モニターが光る
【はじめてのだんじょん 稼働】
文字が切り替わる
【ランキング表示】
一瞬
表示が確定する
【1位 ID JPSH0001】
【地下100階層 相当判定】
空気が凍る
真田の鼓動だけが響く
地下100階層
自分はそこまで行っていない
行っていないはずだ
だが
黒龍は最深層の存在
圧殺でも
世界はそれを“到達扱い”にした
視界の端に浮かぶ
【探索者ID JPSH0001】
少女の声が愉快そうに言う
「最深層ボスだったから」
「システム的にはそうなる」
軽い
真田はモニターを睨む
誰もまだ気づいていない
警察は規制線を張り
消防は安全確認
自衛隊車両が次々と到着する
報道ヘリのカメラが
白い建物を旋回撮影する
生中継のアナウンサーの声が遠くから聞こえる
「突如出現した謎の巨大建造物…」
「内部からは“迷宮”という表示が…」
「ランキングと見られる表示が確認されていますが、詳細は不明です」
世界が追いついていない
だが
モニターは冷静に表示を続ける
【入場は自己責任】
【ダンジョン内死亡時の蘇生保証なし】
【探索者登録 自動付与】
自分のIDが
世界の最上位に表示されている
だが
誰も知らない
まだ
少女が囁く
「隠れたいんでしょ」
真田は歩き出す
人混みの中へ
ランキング1位の男が
規制線の外へ出る
誰にも止められず
誰にも気づかれず
背後で
【1位 ID JPSH0001】
が光り続ける
はじめてのだんじょんは
静かに
世界へ宣戦布告した




